エアフォース・オンライン:フェアリーズ 作:Bishop1911
各部隊が損害の報告を終え、カールターナーが数分沈黙した。
その沈黙が何を意味するかは判らないが、
状況が良く無いことくらいは俺にでもわかる。
ーーピコン
メッセージを受信した。
俺だけでなく上空を旋回しているプレイヤーや
滑走路で待機しているプレイヤーも全員が同じように
メニュー画面を操作している。
俺もそれに倣ってメッセージを開くと、
ついさっき見たブリーフィングビデオと同じような
ホログラフィックマップが映し出された。
『状況を説明します。
先ほどの敵機の奇襲で我々は基地の防空設備と、
滑走路で待機していた主力攻撃部隊に大きな被害を受けました。
単刀直入に言うとこの状況で作戦を遂行するのは困難です。
しかし、この機を逃せば我々は来週まで再び防戦を
強いられるでしょう。
困難を承知の上で決断します。…作戦は続行です。』
「マジかよ…。」
別にマジ卍の戦力を過小評価しているわけでは無いが、
過大評価してもこの状況からの作戦遂行は厳しい。
『当初の作戦計画を変更し、
ブラヴォー1、あなたにも対地攻撃に加わってもらいます。
ECMでミサイルを躱しつつ、
天使隊とブラヴォー隊を率いて敵基地に突入。
地対空ミサイルを全て破壊してください。
無理を承知の上でのお願いです。』
「はぁ…。何で俺が飛ぶ時に限ってこうトラブルばっかり…」
『地対空ミサイルを破壊し終えたのちに
残存戦力とユエニ基地からの増援でワレラ基地の機能を
徹底的に破壊します。
以上、諸君の健闘を祈ります。』
優しいお姉さんボイスと裏腹にかなり重要な任務を
押し付けられた俺は、早速指示通りに
天使隊と合流してワレラ基地を目指す。
よりによってあの双子とだ。
しかも天使隊の双子とマリーの3人をどういう風の吹き回しか
俺が指揮することになってしまった。
『新入りさんよろしくなの!』
合流するやあの怖い双子の挨拶にビビった俺は
思わず苦笑いで返す。
『メティ、この人は新入りさんじゃ無いの!
隊長さんって呼ぶの!』
『わかったの!』
さすが双子というべきか、声まで同じに聞こえる。
『『隊長さん、よろしくなの!』』
「えっと…、よろしく…。」
見事にハモった双子の挨拶でタジタジとなった俺に、
今度はマリーからの無線が入る。
『ブラヴォー1、顔。』
「うるさい!」
ケモノフスタンのワレラ基地までの道中、
敵がレーダーに引っかからないよう超低空飛行で
ニヨッテ基地に接近してきたことを思い返していた俺は、
そのまんま返しをしてやるために
3人に高度150m以下の超低空飛行と、無線封鎖を支持した。
それでも喋りたがりな双子は声が届く距離まで
編隊の距離を狭めて話していたが。
地上スレスレの高度で飛行すること30分ほど。
なかなかの高ストレス環境にリアルの俺の体は
汗びっしょりだろう。シーツの洗濯を考えると頭が痛いが、
今はこの時を楽しもう、と
低空飛行の維持に神経を研ぎ澄ませる。
レーダーを見ればあと1分でミサイルの射程内。
地平線の向こうにはワレラ基地のものらしきアンテナが見える。
「こちらブラヴォー1、無線封鎖解除。
これよりワレラ基地を奇襲する。
天使隊は敵戦闘機を優先的に排除。
ブラヴォー2は俺の直掩を頼む。」
『『了解なの!』』
『わかった。』
機首を上げた俺はワレラ基地を見下ろした。
ログインしている人数が少ないのか、
滑走路に敵機はあまりいない。
≪こちらワレラタワー、接近中の機体、聞こえますか?
所属を明らかにしてください。≫
どうやら向こうはまだ敵だと気づいていないようだ。
俺は管制塔をロックオンすると、最初の1発を放った。
≪えっ!?ウソ!てっkーー≫
管制塔のプレイヤーは最後まで
話し終える事なく吹き飛んだ。
≪なに今の!?≫
≪敵機!敵機よ!≫
奇襲は成功だ。
しかし相手の対応は早く、対空砲はすでに動き出し、
射撃管制レーダーにさっきから狙われている。
地対空ミサイルに狙われるのも時間の問題だ。
「こちらブラヴォー1。奇襲は成功。
繰り返す、奇襲は成功だ。」
『こちらカールターナー、了解。
主力攻撃部隊到着までに敵防空設備の半数以上を
無力化してください。』
さらっと制限時間まで追加された俺は
返事もせずにECMを起動した。
するとさっきまで鳴り響いていたロックオンアラートが
嘘のように静まり返り、
俺たちを捉えきれていない対空砲が四方八方に
デタラメに撃ちまくっている。
俺は作戦通りに地対空ミサイルをロックオンして
片っ端から破壊していく。
ECMがリチャージのために停止すると
再びロックオンされるので回避行動を取って時間を稼ぎ、
ECMの準備が終わるともう一度起動。
そして対空兵器の破壊。
数回も繰り返すうちに最初の対空砲火が懐かしく思えるほど
ワレラ基地は静かになった。
離陸しようとする迎撃機や、逃げようとする機体も
3人が徹底的に破壊し尽くし、
ワレラ基地は戦闘開始から僅か15分ほどで完全に沈黙した。
「こちらブラヴォー1。
カールターナー、聞こえるか?」
『こちらカールターナー、どうぞ。』
「ワレラ基地の防空設備、および航空機を全て破壊。
ワレラ基地の無力化を完了した。」
『了解。
それではこれから攻撃部隊を…え?』
カールターナーはおそらく豆鉄砲を喰らったハトのような顔を
していた事だろう。
何せ俺たちの任務は防空設備の無力化だけなのに、
マリーと天使隊が航空機まで徹底的に破壊してしまったからだ。
ワレラ基地の上空を旋回しながら各自に機体をチェックさせ、
残りのミサイルを数えさせる。
3人とも総量の4割以上を使い切っており、
俺の方も130発近く持って来ていた通常ミサイルが
残り70発ほどになり、12回使用できるECMに至っては
あと3回で使い切ってしまう。
「基地はもう無力化した。
管制塔と格納庫も吹っ飛ばしたからあとは
物資の貯蔵庫とかぐらいしか無いけど。」
『…わかった。予想以上の戦果ね。
報酬も期待して良いわよ。』