エアフォース・オンライン:フェアリーズ 作:Bishop1911
雲ひとつない青空。
地平線の果てまで続く熱帯雨林が現実世界の蒸し暑さを
思い出させる。
ーーピコンっ
何をするでもなく遊覧飛行を楽しんでいた俺は、
視界左下に表示されたレーダーに機影を見つけた。
サイズからして輸送機か、はたまた爆撃機か…。
向こうも遊覧飛行中なのだろうか?
敵味方識別装置にも反応はない。
…というか、ソロの俺にとっては金を払うヤツが味方だ。
ともかく撃墜すればかなりの報酬が手に入る。
問題は護衛機だが、レーダーに視線を戻してみても
反応はさっきと変わらず。
今現在一応雇われてはいるが、
次のクラン対抗イベントに備えての使いっ走りばかりで
最近まともに撃墜スコアが伸びない。
このままだと他のソロプレイヤーに仕事を奪われかねない。
ここで一稼ぎするのも悪くは無いだろう。
俺はヘルメットのバイザーを下ろし、火器管制システムを起動した。
「ショウ、エンゲージ」
誰に向けてでもなくそう呟いた俺は、
エンジン出力を上げて加速させる。
頰を撫でる風が強くなり、
下に広がる景色があっという間に流れていく。
数十秒もしないうちにレーダーの機影を目視で捉えた。
背中の翼は可変翼。腹に抱え込むようにランドセルのような
爆弾槽を身につけている。間違いなくB-1B爆撃機だ。
アメリカが冷戦期に開発した可変翼超音速戦略爆撃機で、
無論、戦略爆撃機というからには核爆弾も搭載できるが、
このゲームでの核爆弾は課金アイテムで、
購入しようとすれば乗用車が1台買えるため、
日本サーバーで購入したバカは1人しか居ないらしい。
B-1Bの真横をすれ違うように通り抜け、
垂直尾翼のエンブレムを見る。
不気味な笑い声が今にも聞こえてきそうなピエロの顔を
あしらったエンブレムだ。
相手のクランがどれほどの実力かなんて気にした事もない俺に
エンブレムだけでクランを識別するなんてできるはずもなく、
それ以上は考えるのをやめた。
Uターンして背後に着いた俺は相手を射程内に収める。
<テメェ俺が誰だかわかってんだろうな!
ああ、答えなくていい!俺をロックオンしている時点で
わかっていないだろうからな。
まぁ、いいや。相手は選んだ方がいいという
格好の教材になるだろう。
授業料はあとで取り立てにいくので悪しからず!>
B-1Bのプレイヤーが俺の方を振り返ってギャアギャアと
文句を言ってくるが、この手の脅し文句はフェアリーズが
サービス開始してすぐの頃に横行した“虎の威を借る狐”戦法だ。
しかし、大抵は大したことないヤツばかりと聞いたことがある。
それに、それほどのプレイヤーが
護衛機も付けずに爆撃機で遊覧飛行なんてするわけが無い。
俺はB-1Bにまず通常のミサイルでロックオンしたが、
俺がミサイルを発射すると同時に
すぐさま相手はフレアをばら撒いて加速した。
背中に背負う翼から切り離されたミサイルが火を吹きながら
B-1Bがばら撒いたフレアの1つを追跡して自爆した。
爆発音とともに相手は体を大きく振動させ、
さらにフレアと罵声をオープンチャンネルでばら撒き続ける。
可変翼を閉じてあっという間に音速へと向かうB-1Bへ向けて
通常ミサイルでロックした俺はもう1発発射した。
「フォックス2」
俺はリロードを終えた通常ミサイルとレーダー誘導が必要な
特殊兵装のSAAMを立て続けに発射する。
SAAMの存在に気づいていないのか、大量のフレアを
ばら撒き続けるそいつは断末魔とともに爆散した。
ショウ[SAAM]トード 10000
キルログに表示された名前に目も止めず、
報酬の1万クレジットの使い道を考え始めた俺は
仮加入中のクランベースへと進路を変えた。