エアフォース・オンライン:フェアリーズ   作:Bishop1911

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#20 盲目の親鳥 I

『作戦内容を伝える。

今回の任務はニヨッテ基地からそちらのワレラ基地を経由して

ユエニ基地へ向かう友軍機の護衛。

暇を持て余したリア充どもにはうってつけの任務だ。』

 

ホログラフィックマップに表示される友軍機には

「E-767」の文字が映し出されている。

 

『護衛対象はE-767早期警戒管制機。

先日喰らった墜落ペナルティから完全に修理が終わっていない

不完全な状態での飛行だが、

ユエニ基地に向かえば補修用のパーツと交換して

即戦線復帰が可能になり、早ければ今夜の作戦に間に合う。

それと…、他の護衛機だが、

正規メンバーは今夜の作戦に向けて準備中のため、そこらで集めた寄せ集めだ。

統率のかけらもないが指揮は貴様に任せる。

もし失敗した場合、その時は貴様に請求書を送らせてもらう。

わかったな、ショウ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

「疫病神。」

 

滑走路をタキシングする俺の背後でマリーがボソリと漏らす。

 

「聞こえてるぞ。」

 

「聞こえるように言った。」

 

マリーの沈んだ表情からして向こうにもさっきの脅し文句は送られたらしい。

ぶつぶつと文句を言われながら離陸許可を貰った俺は、後ろを無視して離陸した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

離陸して他の友軍機と合流してからもマリーは

オープンチャンネルで俺の悪口を言い続ける。

 

『不幸マグネット』

 

「うるさい。」

 

『災いスイーパー』

 

「黙れ。」

 

『災い吸着ウェットシート』

 

「誰がウェットだ。」

 

『じゃあスウェット』

 

「汗まみれってあのなぁ…」

 

無線からは他の友軍機からの笑い声が聞こえる。

編隊も組めないような素人集団に笑われるのは不愉快だが、

こういう長時間飛び続ける任務では

全員が黙りこくったまま退屈な時間が過ぎることもあるので

士気向上に努めることができたと考えれば少しは

楽かもしれない。

 

『天災』

 

「それ絶対意味違うよな!?」

 

『こちらエッジレス。夫婦漫才はそのくらいにしてね。

ユエニ基地までのエスコート、よろしくー。』

 

聞こえてきたのはカールターナーの声だ。

前方を見ると、数km先から背中に巨大な翼と円盤を載っけたような

デザインの早期警戒管制機が飛んで来ている。

 

「…了解。全機、エッジレスを中心に編隊を組み直せ。」

 

『アルファ隊、了解。』

 

『ブラヴォー隊、援護位置に付く。』

 

編隊も組まないアルファ隊とブラヴォー隊は

一旦バラバラになって各々の機動で機体の向きを変えると、

カールターナーの周囲を取り囲む。

 

『さってとー。

言っとくけど私のレーダー使えないからみんな頼らないでね。』

 

やはり聞いていた通りカールターナーの機体は

完全な状態じゃないらしい。編隊の先頭でレーダーを見ていると、

 

『エッジレスさーん、この後、お茶でもどうっすか?』

 

早速ナンパが始まった。

これだから傭兵同士であまりつるみたくないのだ。

”傭兵“という立ち位置を無礼なことでも許されるものと

勘違いしているやつばかりだ。

 

『俺は先頭のMIGっ子が好みだなぁ…』

 

『ああ、良いケツしてやがるぜ。』

 

今度は相棒が話のネタにされている。

不快感のあまりチラリとマリーの様子を伺うと、顔色ひとつ変えていない。

マリーの感情を消せるところは見習いたいが、

こういう時くらいは何か反応して欲しい。俺はプライベート回線に切り替える。

 

「…レイヴン2、その…なんて言うか…。」

 

『気にしてない。』

 

俺の心配をよそに当のマリーはキッパリと言い切った。

ここまでメンタルが強いと相棒以前に男として自身をなくしてしまいそうだ。

 

『…いざとなったらお前がいる。』

 

「…ああ、任せろ。」

 

 

 

 

 

 

 

1時間もしないうちに予定されていた飛行経路を飛び、

ユエニ基地をレーダーマップの端に捉え、

向こうからも無線連絡が入った。

 

≪こちらユエニ・タワー。接近する友軍機、所属と目的を明らかにせよ。≫

 

レーダーに映っているマーカーの色や文字で所属まで明らかになるはずだが、

マジ卍はよほどソロの傭兵を信用していないらしい。

いや、声色からは毛嫌いする空気さえ感じる。

 

「こちら混成特殊戦術飛行隊のレイヴン1だ。

エッジレスの護衛任務中だ。」

 

数秒の沈黙が流れる。

 

≪確認が取れた。レイヴン隊、エッジレスの着陸を優先する。周辺を警戒せよ。≫

 

管制塔の指示通りにエッジレスが着陸するための道を開けると、

俺は傭兵たちに散開するよう指示した。

俺もマリーと編隊を組んで基地を中心に旋回する。

 

『みんなご苦労様、ありがとねー。』

 

無事に着陸できたエッジレスの無線を聞いて俺は思わず胸を撫で下ろす。

 

≪こちらユエニ・タワー。着陸はアルファ隊、ブラヴォー隊、レイヴン隊の順で行う。

レイヴン隊は引き続き警戒を維持せよ。≫

 

着陸を待つブラヴォー隊はまだ貰ってもない報酬の使い道で無線を盛り上がらせる。

 

『イヤッハアアァァァァ!!楽勝だったなあ!』

『このあと飲みに行くやつ、俺の奢りな!』

 

俺は無線の音量を下げながら着陸の進み具合を見ようと滑走路に視線を向ける。

滑走路には着陸してハンガーに向かうはずのアルファ隊が機首を反転させてエンジンをふかしている。

 

≪こ………エニ…ワー……ア……ァた…、かっ……ろを…け…≫

 

音量を下げたばかりの無線から途切れ途切れに管制塔からの音声が入る。

 

≪アルファ隊、何のつもりだ。滑走路を空けろ。≫

 

音量を戻すと数秒としないうちに何が起きているかは理解できた。

 

直後、滑走路から4機のF/A-18Fがアフターバーナーで飛び立ち、俺の目の前を横切った。

 

「クソッタレ…!!」

「なに…!?」

 

あまりの勢いに俺とマリーは機体が揺られる。

 

≪アルファ隊、いったい何のマネだ。指示に従え。命令違反に払うクレジットは…。ん…?≫

 

アルファ隊の危険行為に管制塔は無線の声色に怒りを含むが

何かに気づいたのか、管制塔からの警告が止まった。

 

≪ボギーが急速接近!方位0-9-6だ。全機、警戒。場合によっては撃墜も許可する。≫

 

『こちらブラヴォー、了解した。追加料金は頂くぜ。』

 

管制塔の指示でブラヴォー隊が機首の向きを変えると、

 

『なぁ、レイヴン1?だっけか?』

 

今度はユエニ基地に近づいてから無言を貫き通していたアルファ隊の隊長が口を開いた。

ギャアギャアと馬鹿騒ぎしていた傭兵たちがシーンと静まり返る。

 

「何だ?」

 

『あんた、例の”疫病神“だろ?』

 

「そうだとしたら何だ、アルファ1。」

 

『んーやぁ、ただ…、』

 

アルファ1は少し間を置いて口を開く。

 

『あんたら、今回もツキがねーみたいだ。』

 

「…?」

 

バイザー内が真っ赤に照らされ、警報音が鳴り響いた。

 

「クソッ!レイヴン隊、ブレイク!」

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