エアフォース・オンライン:フェアリーズ 作:Bishop1911
フレアを散らして急旋回すると背後でミサイルが爆発した。
『撃たれたッ!』
『主翼が…!』
ブラヴォー隊のメンバーが次々と撃ち落とされる。
『墜ちる…!墜ちるッ…!』
「誰だ!味方だぞ!ブルーオンブルー!ブルーオンブルー!」
マジ卍にも伝わるようにオープンチャンネルで叫びながら
後ろを見ると、さっきまで友軍を示す青色で表示されていた
アルファ隊のマーカーコンテナは敵を示す緑色に変わり、
青色で表示されるブラヴォー隊機に喰らいついている。
「アルファ隊、貴隊は友軍機を攻撃している!いったいどういうつもりだ!」
アルファ隊に向けた無線に答えるものは無く、ただブラヴォー隊の悲鳴と断末魔だけが聞こえてくる。
「答えろよアルファ1…、答える義務があるぜ…!!」
『レイヴン1、どうする?』
マーカーが敵を示しているとは言え、さっきまで味方だったアルファ隊に
うまく応戦できていないマリーが俺に指示を仰ぐ。
混乱する無線で管制塔からの指示も通らない。
マリーにアルファ隊撃墜の免罪符を与えれるのは俺だけだった。
「もういい、アルファは敵だ。…全部落とせ。」
裏切りという初めての経験にあまり声を張れない指示だったが、
スイッチの入ったマリーは水を得た魚そのものだった。
俺もブラヴォー隊機を撃墜して油断したアルファ隊機の背後を取るが、
『そうはいくかよ。』
今度はアルファ1の声とともにミサイルの警報が鳴る。
俺はすかさずECMを起動し、飛び交う敵のミサイルを全て無力化した。
『はっはぁッ!!やるじゃねーか!』
「チッ…何のつもりだ!契約違反だぞ!」
ようやく口を開いたアルファ1は俺の背後で品の無い笑い声をあげる。
『そうか?だが向こうの方が払いが良いもんでなぁッ!』
レーダーを見るとアルファのコールサインを使う傭兵たちは
俺とマリーを狙ってばかりでユエニ基地には見向きもしていない。
『ヒャッハッハァッ!』
背後に付かれた。アルファ1のF/A-18Fだ。
ロックオンアラートが鳴り、砲弾が横を掠める。
『おらどうしたぁ!俺をもっと楽しませろッ!!』
ミサイルが来る。
即座にフレアを撒いた俺はそのまま急減速とバレルロールで
背後のアルファ1を追い越させた。
『何ッ!?』
機銃を向けた俺はそのまま引き金を引く。
右腕のバルカン砲が6本の銃身を回転させながら大量の砲弾を放つ。
しかしアルファ1も体を左右に揺らしたり、
フェイントをかけたりしてそのほとんどを躱した。
『当たるかよ!』
ならばとミサイルでロックオンするが、
今度はフレアと急減速で機首を直立させるコブラ。
あっという間に俺の背後に回り込み、攻守が元に戻った。
俺と同じ機体のはずなのに、プレイヤーが変わるだけで
想像もつかない動きをする。
またロックオンされた。
相手は俺よりも上手くF/A-18Fを使いこなす。
背後を取ろうとしてもさっきと同じ手は通用しないだろう。
サポート特化のE/A-18Gを使う俺が打てる手は必然と限られてくるし、
今の俺の技量ではコイツに勝つことはできない。
だが…、ここでドッグファイトに乗ってやる義理はない。
俺は無線をマリーとのプライベート回線に切り替えた。
「レイヴン2、合流しよう。」
『わかった。』
卑怯者と言われようと知った事じゃない。
名誉やプライドは傭兵に必要ない。
俺は低空を逃げるマリーを見つけると、その進行方向に向かって加速した。
2人の距離はどんどん縮まり、衝突する間際で
俺は右から左に進むマリーに背を向けるように機体を
左へ傾け、敵機とマリーの間に入って右腕の機銃を構える。
「ーーッ!?」
マリーを追っていた敵からしてみれば目の前に
突然俺が現れて機銃を向けているのだ。驚くのも無理はない。
ブヴヴヴヴヴヴヴッ
機銃の砲弾を全身に浴びた敵機はそのままヨロヨロと高度を落としていく。
『くそっ、ドジった!!』
『気ぃ抜くからだマヌケ!俺が墜とす!』
交差した俺たちを追う4機のうち、1機を墜とした。
残り3機は衝突しないようお互いの距離をとる。
『ショウ!』
一気に加速して俺と距離をとったマリーがハイGターンで反転し、左腕を伸ばす。
何をするかはすぐにわかった。
同じように伸ばした俺の左腕をマリーが掴み、
旋回性能の劣る俺は振り子の要領で一瞬のうちに180度旋回した。
見えるのは俺たちに背を向ける3機のF/A-18Fだ。
『なんて
すかさずマリーが
特殊兵装の中でも特に弾速の速いHVAAに背後から狙われた2機は
回避機動を取る間も無く撃ち落とされた。
『ぐああぁぁッ!』
『マーティン、先に逝くぜ…。』
『おう、待ってろ。すぐにコイツらも送ってやる。』
これでようやく3機だ。
最後に残っていたアルファ1は戦闘開始前に管制塔が接近を知らせたボギーと合流して数を
元に戻している。
「チッ、キリが無え…!」
『まだまだ終わらねーぜ!第2ラウンドだ、ヒャッハッハッハッ!!』
機種は変わらず全員がF/A-18Fだが、今度は茶色を基調とした迷彩が施されている。
どこか猛獣のような雰囲気を漂わせる彼らは俺とマリーの攻撃を躱しつつ、俺たち2人を包囲した。
『カラスにちょうどいい鳥かごの完成だ!』
マリーは包囲に気づいて突破を試みたが、
機銃やミサイルを回避しているうちにアルファ隊は包囲網を再形成してくる。
『…っ、逃げられない…!』
ECMは残り2回。マリーの方も特殊兵装は残弾が少ないはず。
「レイヴン2、俺のECMを合図に突破してやつらの陣形を崩してくれ。」
『それだとレイヴン1が…!』
『俺の仲間を全員墜とすたぁな…!カラスのくせしてやるじゃねーか!』
ハイGターンで向きを変えて向かってくるアルファ1と俺は
ヘッドオンした状態で加速する。
『来いッ!疫病神ィッ!!』
俺とアルファ1の距離はあっという間に近づく。
お互いのミサイルがロックオンできる距離に入るコンマ数秒前。
俺はECMを再び起動して通常ミサイルに切り替える。
ECMのせいで向こうはロックオンできないが、俺は何の問題も無い。
『何ィっ!?』
俺は構わず撃った。
ミサイルが2発とも命中し、ズタズタになったアルファ1と
すれ違う時には機銃で撃ちまくった。
『この…卑怯者めぇ…!!』
全身に被弾エフェクトを煌めかせながらアルファ1は
俺を罵るが、味方の背中を撃ったヤツらにだけは言われたく無い。
ミサイルと機銃で普通なら撃墜されててもおかしくないダメージを受けたにも関わらず、
傷だらけになってなお飛び続けるアルファ1の背後に回り込んだ俺は、
もう一度アルファ1をロックオンする。
「嘘つきは墜ちろ。」
『もう一度だ!もう一度俺と戦わせろぉッ!!』
迫り来るミサイルを前にアルファ1はそう叫びながら爆散した。