エアフォース・オンライン:フェアリーズ 作:Bishop1911
密林エリアの境界線を過ぎると一瞬の光ののちに
砂漠エリアの最西端に転送された。
視界には地平線の彼方まで続く砂、砂、砂。
360度どの方向を見ても見渡す限りの砂漠だ。
『こちらAWACSオーディン。
これより作戦指示を行う。』
AWACSの名前がいつもと違うが、きっとトードの仕業だろう。
『レイヴン隊は方位0-9-0に進路を取り、
公式ベースから接近する敵航空部隊を迎撃せよ。』
方位0-9-0ということは、北を0度と見た時の90度。
つまり真東だ。進路に変更はない。
「レイヴン隊各機、高度1万mまで上昇。
太陽を背に敵機を上から叩く。」
『レイヴン2、了解。』
『レイヴンマスター、了解。』
太陽を背に戦うのは一歩間違えば自分のシルエットが
丸見えになる諸刃の剣的な戦術だが、
AFOのプレイヤーが頼りにするのは
マーカーをロックオンした時の表示だ。
そしてそれは赤色で表示されるため、
夕日を背にした相手はロックオンできているのか
分かりづらいのだ。
相手が腕の立つプレイヤーなら話は別だが、
できる小細工は全てやっておきたい。
HMDに表示される高度が1万mを越えると、
いくら機体セットに身を包まれていようとも少し寒い。
その上、この高度では少しでも荒い機動を取ると
すぐにエンジンが
この高度でのドッグファイトはケモノフスタン側の
カナード翼機に部があるため、避けたい。
『こちらレイヴンマスター。レイヴン1、いいか?』
戦略を練っている俺の耳にセーナの声が届いた。
よく聞けばなかなかの美声である。
「どうした、レイヴンマスター。」
『戦闘が始まったら私を前衛へ。』
だが、その美声のあまり、俺は一瞬耳を疑った。
攻撃機が前衛…?
何をバカな事を言い出すのか。
「
『了解、では私は何を。』
そう言われると確かに痛い。
対地攻撃機なんて使ったことのないおれは
その性能を理解できていない。
頭の中にあるのは「基地攻撃以外に活躍できない」という
攻略サイトの情報のみだ。
しかし、なぜ上は攻撃機のプレイヤーをよこしたのか。
こうなることは目に見えていただろうに。
今回F/A-18Fで出撃した俺はECMで援護することもできない。
はっきり言ってお荷物だ。
使い所に困るからそばに置かれる。
監視役としては絶好のポジションなのだろうか。
『レイヴン1、指示をください。』
どうしようもない。気に食わなくても俺の部下だ。
捨て駒のように使うわけにもいかない。
「…レイヴンマスターは俺の直掩に付け。」
『…!?』
マリーは驚愕の表情を浮かべるが、俺と目が合うと
すぐに逸らして普段通りの様子を取り繕う。
あとでしっかり弁解しないといけないだろう…。
『こちらAWACSオーディン。機影を捕捉した。
方位0-5-7、高度100mを高速でソレガ基地に飛行中。
数は5。
「レイヴン1、了解。
敵機と判明次第、ただちに迎撃する。」
AWACSとのデータリンクで表示された敵機の方向へ、
アフターバーナーで加速して向かう。
射程が長く、4つの敵航空機を同時に狙える4AAMを選択した。
マリーも高速高威力のHVAAに切り替えたようだ。
セーナは俺の背後を黙ってついてきている。
敵の無線が混じってくる。
『敵機だよ!』
『太陽で見えない!』
狙い通りだ。
5つの敵マーカーのうち4つにロックオンした俺は
間を空けずに発射した。
「良いぞ、レイヴン2。」
『……。』
さっきのことで不貞腐れているのか、
無言で急降下して行くマリーは俺が発射したミサイルを
躱そうと編隊を崩したケモノフスタンの
プレイヤーの1人に食らいつく。
『後ろに…!?』
あっという間に1人が火の玉に包まれて砂漠に墜ちていく。
間を空けずにリロードが終了した俺は2度目の斉射。
しかし、さすがに2度も同じ手が通用する相手では無かった。
2度目の斉射を易々と躱して退けたケモノフスタン側の
プレイヤーたちは2機がマリーに。
もう2機が俺たちに狙いを定める。
セーナに逃げるよう指示をしようと口を開いた俺の隣を
セーナが通り抜けた。
「あいつ何をっ…!?」
困惑する俺を置いて単機、敵に突っ込むセーナを見た
ケモノフスタン側のプレイヤー2人は
セーナが攻撃機だと分かった途端に速度を増す。
『飛んで火に入る夏の虫ってやつね。』
『攻撃機なんてチョロいよ!』
アフターバーナーで追いかける俺はロックオンすると同時に
4AAMを2発ずつ発射するが、
ヘッドオン状態の彼女らがすれ違う瞬間には間に合わない。
敵機からミサイルが放たれた。
通常ミサイルが4発。
対するセーナは更に加速する。
ミサイルとセーナが衝突する寸前。
セーナの体がローリングを始めてフレアを放出する。
四方八方に散らばったフレアを追いかけていくミサイルは
セーナには目もくれずに彼女のはるか後方で爆散し、
俺の4AAMもそれにつられて目標を逸れる。
動揺するケモノフスタン側のプレイヤーたちが
左右に分かれ、セーナは体を左右に一度振って上昇した。
『がああああああぁぁぁっ!?』
『うっ…!?』
セーナが無事にミサイルを躱したことで安堵していた俺は、
敵プレイヤー2人の断末魔で今度は目を疑った。
敵プレイヤー2人の背中に何かが突き刺さり、
腹から突き抜けているのだ。
ワインボトルに羽を付けたようなデザインのそれは、
紛れも無く
なぜ?どうして?どこから?
バグではないかと疑いたくなるような光景に
俺の理解が追いつくよりも先に爆弾は
爆発するという役目を果たして敵プレイヤーを木っ端微塵に
吹き飛ばした。