エアフォース・オンライン:フェアリーズ 作:Bishop1911
「セ…、レイヴンマスター!何を考えてる!?」
目を疑うような飛び方を見せつけられた俺は、
驚きや戸惑い以前に怒りに任せて怒鳴ってしまう。
それはもうコールサインも忘れるほどに。
『お前たちの茶番に付き合う義理は無い。
私はマジ卍の利益のために行動する。』
冷めた表情で再び編隊を組んだセーナは、
遠くで2機目の敵機を撃ち落とすマリーを
見ながらメニュー画面に何かを打ち込んでいる。
≪こちらオーディン。方位0-7-4より
多数接近。レイヴン隊は敵機と確認でき次第、
直ちに迎撃せよ。≫
AWACSからの指令を受け取った俺は
マリーの合流を待って指定された進路に機首を向ける。
そして接敵するまでの数分で戦略を練り直す。
セーナというプレイヤーは攻撃機を極めまくった
いわゆる玄人プレイヤーだ。
俺があらゆる任務に対応できるようマルチロール機を
選んだのとは逆に、
攻撃機で全てを熟せるようにしている。
そして彼女は俺より強い。心配するだけ無駄だ。
今の俺が制限を掛ければそれはただの足枷となりかねない。
「編成を変える。レイヴン2は俺と
レイヴンマスターは自由に飛べ。」
『オッケー』
『了解。ありがとう。』
セーナは嫌味っぽく礼を言って翼を軽く振ると、
そのまま可変翼を閉じて急加速、上空の雲の中へ消えた。
『レイヴン1』
呼びかけてくるマリーの声は何とも言えない憤りを訴えてくる。
「さっきは悪かった。」
『…別に。好きにすれば良い。』
咄嗟に謝罪を口にした俺の選択は間違っていたようで、
マリーは拗ねたような態度でソッポを向く。
その姿はどこかで見覚えのある気がしたが、
視界端のレーダー画面に現れた光点によって
その思考は遮られた。
『機影を目視。5機編隊、Rafale MとTyhoon。』
セーナが続くように報告し、
マリーは無言で俺の背後に着いて並走する。
2人はすでに戦闘準備を整えているようだった。
俺も頭を振って思考を戦闘モードに切り替える。
ラファールの対空用の特殊兵装はリロード速度が
早い
セーナのように対地兵装を敵機にぶち当てるような
猛者じゃない限り、対空戦で注意すべきはそれだけだ。
対するタイフーンは戦闘機というだけあって
3種類の特殊兵装は全て対空用。
どれも使い方によってはとても厄介なミサイルだ。
しかし、話によればケモノフスタンのメンバーは
ほぼ全員が素人。
「よし、2人とも。タイフーンを優先して狙うんだ。」
『チッ…、なぜ私が』
『…自分でやればいい。』
2人とも俺に対する当たりが厳しい。
俺も朴念仁というわけででは無いから
それなりに心当たりはあるが、今やるか…?
「ん…っと……」
とりあえず、こんな雰囲気で無理やり仕切っても
うまくいくはずがないのは火を見るよりも明らかだ。
となれば、逆のやり方を試すのも手だろう。
たとえそれで失敗してもこっちは雇われの身だ。
正規メンバー以上の働きを期待して貰っても困る。
「じゃあ、各機自由戦闘。」
ぎゃあぎゃあと文句を言ってくる2人を置いて
アフターバーナーを吹かす。
「久しぶりだな…。」
半ば無意識に呟いたように、
1人で戦うのは数週間、いや、数ヶ月かそれ以上ぶりだろう。
自分の能力を確かめ直す良い機会だ。
レーダーに映る敵機が
射程に入った。
<相手は3機?>
<油断しちゃダメ>
<編隊飛行もできないなんてウチら以下じゃん>
敵にはバカにされているようだが、
それが命取りだ。
俺は4AAMを発射すると、回避のために
編隊飛行を解いた隙を狙ってTyhoonの背後を取った。
敵はカナード翼機の機動性を活かして
右へ左へと回避機動を取るが、俺だってドッグファイトを
避け続けてここまで成り上がったわけじゃない。
敵の動きにピッタリ合わせてロックオンした。
Tyhoonはフレアを放出してさらに左へバンクしたかと思うと
スロットルを緩めず豪快な宙返りで俺を振り切ろうとする。
俺はF/A-18Fの中速度域での安定性を活かし、
巡航速度までスピードを落とすとハイGターンで
Tyhoonの背中を捉え、機銃を構えて引き金を絞った。
毎分6千発を超える速度で連射される機関砲弾が
Tyhoonのプレイヤーの左肩から右の脇腹を縦断し、
体を真っ二つに引き裂く。
よくこれでR18指定されないなぁとつくづく思うが、
余裕をかましている暇はないと言いたげに
ロックオンアラートが鳴り響いた。
続いてミサイルアラート。
宙返りの途中で失速した状態の俺は無理に回避するのを
諦めてフレアを撒き、失った速度を稼ぐために
地上めがけて急降下。
後方でフレアに釣られたミサイルが爆発し、
間髪入れずに今度は6発のミサイルの接近を
AWACSが警告する。またTyhoonだ。
優先目標なだけに願ったり叶ったりだが、
大方、機体性能的にいちばんドッグファイトに向いてない俺を
狙ってのことだろう。
「カモられてたまるか…!」
機首を水平にしてバレルロールを始めた俺は
右腕の機関砲を後ろに向けて砲弾をばら撒く。
AFOだからこそできる芸当だが、
当たることは滅多にない。
しかし、ミサイルが6発もまとまって飛んでくれば
その確率も上がる。
早速、先頭から2番目のミサイルが砲弾で撃ち落とされ、
3発目を誘爆させる。
4発目と5発目はシーカーがミサイルの爆炎を誤認して自爆した。
残りは1発目と6発目。
ミサイル2発なら余裕で躱せる。
大きく右に旋回してフェイントを掛けた俺は
そこから左に切り返して時計回りのバレルロールを始める。
2発は呆気なく俺を見失い、迷走し始めたが、
母機のTyhoonは健在だ。
再び背後を取られるが、流石に攻守交代すべきだろう。
減速しながら通常の機動に戻った俺は、
ロックオンアラートが鳴ると同時に
機首を大きく上げてコブラを決めた。
こうなればいくら機体性能が優れた戦闘機でも
素人のパイロットは軽いパニックを起こす。
フレアを撒き、アフターバーナーを使ってでも
敵を振り切ろうとするが、
速度が速いと旋回性能はガタ落ちする。
カナード翼戦闘機と言えど例外はない。
目の前のTyhoonパイロットもそうだ。
俺は機関砲の射程から逃げられるまで砲弾を浴びせ、
動きが鈍ったところにミサイルを撃ち込んだ。
ミサイルで脚とエンジンを吹き飛ばされ、
機関砲で垂直尾翼をへし折られたTyhoonが墜ちていく。
さらなる獲物を求めて周囲をグルリと見回した俺は、
黒煙を吐きながら逃げるrafale Mを追うマリーを見つけた。
レーダーを見る限りあれが最後のようだ。
マリーが背後を取り、トドメの一撃を放とうとする。
その時、遥か後方のソレガ基地から白い光を放つ光球が
打ち上げられた。
AWACSから状況を知らせる通信が入る。
≪オーディンからレイヴン各機。
ただちに戦闘を中止せよ。≫
「こちらレイヴン1、意味がわからない。説明をしてくれ。」
≪ケモノフスタン側が休戦交渉を申し出て来た。
上層部が受け入れるかはともかく、
指示だ。戦闘を中止し、待機せよ。≫
「レイヴン1了解。レイヴン2、聞こえたな?」
『レイヴン2、確認。』
マリーは不満気な表情を浮かべてロックオンを
解除したようだが、敵機の背後を離れるつもりは無いようだ。