エアフォース・オンライン:フェアリーズ 作:Bishop1911
それっぽくなる説
土曜日の朝。
朝早くから自宅前を駆け抜けて行く同級生を尻目に
大きなあくびをしてカーテンを閉めた俺は、
二度寝の誘惑に抗いながらリビングに向かった。
高校進学とともに姉ちゃんと同居し始めた俺は
仕事で家を飛び出していった姉ちゃんと入れ替わるように
リビングを占領し、テレビをつける。
無論、お決まりの偏向報道になど興味のない俺は
テレビをタブレット端末と同期させて
AFOのトップニュースを画面に映し出させる。
冷蔵庫から取り出した牛乳とコーヒーを
キッチンの上に置いたコップで混ぜて
口に含んだ俺は今日のAFO内のニュースに目を通す。
ーーピコン
ニュースが更新された。
『AFO最大クラン“マジ卍“、”シグレニ同盟“へ宣戦布告』
「ぶふぉっ!?」
口に含んだコーヒー牛乳を全てシンクに口と言わず
鼻からも噴き出した俺はすぐさま端末を操作した。
やはり、トップニュース更新の数秒前から
非常招集のメールが十数秒おきに送られている。
朝食を片付けて自室へ駆け込む俺は自問自答を続ける。
なぜ?どうして?
俺が雇われているするシグレニ同盟は
レベルの低いクランのはずだ。
そんな食っても身にならないクランにAFOトップクラスの
クラン、マジ卍が宣戦布告だなんて意味がわからない…!
誰かが喧嘩を売ったとしか考えられない。
大急ぎでベッドに滑り込んだ俺は
すぐさまアミュスフィアを起動した。
「リンク・スタート!」
シグレニ同盟
バッテン基地格納庫
格納庫にスポーンした俺はすぐさまメニュー画面を開いて
あらかじめシグレニ同盟の幹部が作成したブリーフィングビデオを
再生して機体の準備をする。
『まず、朝早くからお集まり頂いたプレイヤー諸君に感謝する。
時間がないので早速、本題に入るが、
我々シグレニ同盟の基地であるここ、バッテン基地に
マジ卍の航空戦力が接近中だ。』
クランマスターのイケメンメガネが基地の防空設備では
迎撃が難しい事や向こう側にステルス機が居ることを言っている間に、
俺は特殊兵装の選択を済ませて装備決定ボタンをタップした。
『また、1番滑走路では輸送機が離陸中だ。
迎撃機は2番滑走路のみの使用となる。』
「バカか…!さっさと迎撃機上げろよ。」
思わず愚痴をこぼす俺の頭上から降りてきたアームが
背中にF/A-18Fの特徴的な折りたたみ式の翼を装着した。
パイロンからは俺が選択した4AAMという4機同時に
ロックオンできるお気に入りのミサイルが吊るされている。
威力を比較すればSAAMを使いたいが、
空対空の乱戦でSAAMを誘導し続けるのは難しい。
6kmの長射程もどこにいるかわからないステルス機に邪魔されれば活かしきれないだろう。
それはともかく、最後に20mmバルカン砲を腕に装着して機体セットの準備は完了だ。
出撃準備が完了した俺は格納庫から滑走路に向かうのと同時進行で
主翼や尾翼、垂直尾翼の動作を確認する。
空襲警報のサイレンが鳴り響く滑走路には
密林地帯特有の湿った空気に航空燃料の臭いが混じっていた。
手前の1番滑走路にはずんぐりむっくりとした胴体の輸送機が
リソースや整備用のパーツなど金目のものを満載して滑走路に長蛇の列を作っている。
2番滑走路は迎撃機のプレイヤーが2機ずつ離陸しているが、
それでもかなりもたついている。
火器管制システムのチェックついでに無線を繋ぐと、
滑走路の雰囲気同様に無線回線もピリピリとした雰囲気で覆われている。
≪俺の機体はまだ飛ばないのか!?≫
≪前のヤツは誰だ!さっさと飛べ!≫
≪静かにしろ空賊ども!誘導ができないだろうが!≫
しまいには管制のプレイヤーまで怒鳴りさす始末だ。
数分の待ち時間の後にようやく俺の番が回ってきた。
隣は同じくソロで傭兵をしている女性プレイヤーだ。
「おはよ…、ショウ。」
「なんだ、マリーか。今日も僚機頼めるか?」
「オッケー」
俺とマリーがメニュー画面を開いて僚機申請の操作を
終えると同時に息を切らせたような声で管制官からの指示が入る。
『悪い、待たせた…!ショウとマリーだな?離陸を許可する!』
「「了解」」
腰のあたりに装着されたエンジンが轟音を立て始めると同時に
俺とマリーは離陸に必要な速度を稼ぐために助走を着ける。
俺のF/A-18Fよりも速度が速いマリーのMIG-29Aは
俺を置いて宙に浮く。俺も追いかけるように
走り幅跳びの要領で地面を蹴ると体がふわりと宙に浮いた。
『先行した部隊はすでに交戦中だ。今は数で押せているが、時間の問題だ。
出来るだけ急いでくれ。幸運を祈る。』
管制官からの指示に従ってマリーはアフターバーナーを使おうとするが、
「あ…」
俺を見て何か気づいたようにその手を止める。
「…遅い。」
「お前それ絶対に他人に言うなよ?」
そう、俺のF/A-18Fの最大速度がマッハ1.6なのに対し、
マリーのMIG-29Aはマッハ2.25も出せるのだ。
遅いと言われればぐうの音も出ないが、言い方と言うものがある。
「そっちに合わせる。最高速度で飛ばして。」
はいはいと言われた通りに最高速度のマッハ1.6を出す。
機体にかかる負荷はアミュスフィアを介してプレイヤーにも課されるため、
俺は少し苦しいくらいだが、
対するマリーは最高速度のおよそ半分しか出してないため涼しい顔をしている。
「…遅くない?」
「マリー…、お前がソロの理由わかった。」