エアフォース・オンライン:フェアリーズ 作:Bishop1911
「ったく…、トード。なんでこんなヤツ雇ってるんだ?」
『こんなヤツ』などと呼ばれるのは心外だが、
その質問の答えは俺も知りたかった。
眉を寄せて不快な表情を作りつつ聞き耳を立てたが、
「うん?なんでだろーなぁ?」
本人からその答えを聞くことはできなかった。
マジ卍が俺を雇うことに政治的な意味があることは
カールターナーに聞いたが、
そんな理由で雇ったプレイヤーに大金を支払い、
加えて重要度の高い任務に就かせる意図が読めない。
…もしかするとただ単に俺の考え過ぎで実は
これ以上大した意味はないのかもしれない。
「それはさておき、カルシア。
こいつの機体のカスタム、頼んだぞ。」
「おい、ちょっと待て。」
トードは前々から決まっていた事を頼むような口調で
カルシアに言ったが俺はそんな話聞いてない。
「出会って数分の相手に自分の機体を任せられるかよ。」
「まあそう言ってくれるな。
性能が上がることはあっても下がるようなことは
絶対に無い。」
眉間にシワを寄せる俺の肩に手を置いたトードは
そう言ってハンガーを出て行く。
知りたい事をまだ何も聞き出せていない俺は
トードの後を追おうと踵を返すが、
そこをカルシアに呼び止められた。
「なぁ、アンタがトードを追っかける理由なんて
知りたく無えし聞く気も無え。
でも、こちとら朝から2時間ぶっ通しで
ここまで飛んできたんだ。
アンタの機体を弄る為だけにな。」
足を止めてカルシアの方を振り返ると、
彼は整備していた自分の機体をメニュー画面を操作して
ストレージに収納する。
「それに俺はこの後の予定もビッシリだ。
イエスかノーの2択で答えな。
アンタは自分の機体を改修する気があんのか?」
1時間後
結局、自分の機体が心配でしょうがない俺は
改修が終わるまでの1時間近くの間
ずっとカルシアに付きっ切りで居たため、
追いかけて今後のマジ卍の方針はあるのか
問いただすつもりだったトードは見失った。
「ふぅ…、これで終わりだ。」
パッと見た感じ特に…いや、何も変化は無いが、
メニュー画面を操作して機体のステータスを見てみると
恐ろしいほどに数値が上がっている。
「ピッチ、ロール、ヨーの強化にエンジンの出力強化、
エアブレーキの換装で減速性能も上げておいた。
まぁあとのことは自分で試してみな。」
促されるままに機体セットを体に装着し体を振ってみると、
心なしか幾分か軽くなった気がする。
「気づいたか?」
俺の表情を察したカルシアは得意げな笑みを浮かべた。
「少し前に手に入れたばかりの新型複合素材だ。
機体強度を上げながら重量を落とせる。
ファイター並みとまではいかねえが、
鼻くそほじりながらでも余裕で渡り合える程度には
なってるはずだ。それと…」
そこまで言いかけたカルシアは
足元の工具箱の隣に置かれたペリカンケースを
俺の前の机にドンっという効果音を伴って置き、
ケースを開いた。
「
現れたのは超未来チックな垂直二連散弾銃と
例えるのが適切だろうか?
純白のボディのそれは散弾銃でいう2本のバレルの間に隙間があり、
右利きの射手が左手を添える位置から後方にかけては
本体同様の白いパーツが2本のバレルを覆う構造になっている。
「散弾銃か…?」
「鳥撃ちじゃ無えんだ。こいつぁレールガンさ。
使い方を説明する。」
カルシアは散弾銃では無いと言ったものの、
中折れ式の散弾銃と同じように
ストックとバレルの間でレールガンを折るり、
現れたバレルの後端に乾電池のようなサイズの
円錐形の物体を差し込むと、
レールガンを元の形に戻してハンガーの外に狙いをつける。
照準の先にあるのは燃料タンクだ。
「ちょっ…!?」
当たれば大爆発を起こして隣のタンクにも誘爆するだろう。
慌てて静止しようとする俺を気にする様子もなく
カルシアの指は引き金を引いた。
ーーピピッ
『Error…Please supply power』
「…はぁ?」
俺が本気で慌てた割に何も起きなかったせいで
マヌケな顔をしていたのは置いといて。
結論を言うと、弾は出なかった。
弾丸が音速を超えたせいで視認できなかったとかではなく、
引き金を引いてもEMLからは塵ひとつ発射されなかった。
「なーんてな。
こいつを撃つにはそれ相応の電力が必要だ。」
「つまり?」
「EMLは特殊兵装扱いでな。
ミサイルみてぇな誘導機能が無い代わりに
大抵の航空機は一撃でサヨナラだ。」
話を聞く限りはとても魅力的でロマン溢れる武器だが、
要は飛びながら飛んでいるマトを狙い撃てということだ。
相当な熟練技が必要とされるだけでなく、
のんびり狙っていると逆にマトにされてしまう。
だが、使いこなせばこれは強みになる。
「それなりにデメリットも多いが、
そこはアンタの腕次第だ。」
ほらよ、と軽く渡されたEMLだが、
受け取るとそれは想像以上に重く、受け取った腕が
10cmほど下に下がるほどだ。
試しに構えてみると、狙いを定める照準器は
中心に置かれた点を起点に円が描かれているだけの
シンプルなものだ。
「照準器の中心に点があるだろ?
撃ち出した弾はそこに飛んで行く。
円は衝撃波がダメージを与える範囲だ。
手負いじゃない限りなんてこたぁ無えが、
耳鳴りはする。」
「なるほど…」
ハンガーの外、遥か上空、
成層圏で燃えているに
照準器の点を合わせて追い続ける。
「いくらレールガンつっても射程はあるんだ。
そりゃ流石に無理だ。」
「分かってる。」
「じゃあ、そいつはどうする?」
俺が抱えるEMLをアゴで示したカルシアに
俺は考えるまでも無く答えた。
「使ってみるよ。使いこなしてみせる。」