エアフォース・オンライン:フェアリーズ 作:Bishop1911
「心配するな。貴様らは墜落地点を制圧して
その周りをクルクル飛び続ければいい。」
テルキスは簡単に言ってくれるが、
作戦空域の全方向から来るであろう
他クランの部隊は流石に俺たちだけの手に負えない。
マリーも同じ事に気付いたようで、
テルキスにその事を質問すると
腕を組んでおとがいに手を当てた。
セーナと違ってこちらはすっぽり隠r…収まり、
見る者にクールな印象を与える。
このサイズ感や立ち振る舞いにはどこかで見覚えがあるが、
記憶を探る俺の思考をテルキスが遮る。
「その心配は無い。
作戦空域外周部に
他に質問は?無いならさっさと飛べ。」
半ば蹴り出されるように追い立てられた俺たちは
数分後には滑走路に並んだ。
≪こちらカラ・タワー。
レイヴン隊、離陸を許可する。≫
「了解。レイヴン隊、離陸する。」
前に並んだマリーとセーナがエンジンの出力を上げて走り出し、
俺もその後に続く。カルシアの改修のおかげか、
いつもより短い滑走距離で体がフワリと浮き上がった。
あまりの動作の軽さに機体を時計回りに1回転させてみる。
『レイヴン1、遊ぶな。』
俺の一挙一動を監視している(らしい)セーナに注意されるが、
そんな言葉は頭に届かないほど俺は興奮していた。
今ならF-22Aのような戦闘機相手でも戦えそうだ。
編隊から離れない程度で機体の動きを確かめていると、
『レイヴン1、浮かれてる。』
もう1年以上の付き合いになるマリーにまで注意された。
わかったわかったと編隊に戻った俺は、
マリーの横顔が少し嬉しそうにニヤけている事に気付いた。
確かマリーの機体もカルシアに改修されたはずだ。
「2人とも。久し振りの任務だから機体チェックを。」
『…了解。』
マリーは俺の意図を汲み取ってくれたようで、
返事と同時に一気に機首を上げて急上昇した。
雲を突き抜け、さらに高度を上げる。
肉眼では見えないところまで行ってしまったマリーと対照的に、
セーナは軽く機体を上下左右に振っただけで
チェックを終えている。
「良いのか?」
『日頃からこまめに機体を見ていれば
あんなマニューバをやってまでチェックする必要はない。』
「そうか…。」
数分で戻ってきたマリーと改めて編隊を組み直した俺たちは
10分と経たないうちに作戦空域に入った。
こういう情報収集ミッションは複数のプレイヤーが
同時にスタートできるよう独立したマップが作成されており、
開始時刻より早く作戦空域に入ったプレイヤーは
同じ風景の場所を開始時刻まで延々と飛び続けることになる。
怪奇現象染みた状況になるのはもちろん、
その間は1mmも進んでいないという物理法則ガン無視の
ゲームだからこそできるシステムだ。
まぁ、何もできないわけではなく、
その間に消費した弾薬はカウントされないため、
普通は仲間内で模擬空戦をやって時間を潰すのだとか。
俺たちはミッション開始の数分前に到着したため、
すぐにミッション開始のメッセージが視界に広がった。
≪こちらAWACSエッジレス。
レイヴン隊、天使隊、よろしくね。≫
回線を軽い挨拶が飛び交ったところで
エッジレスことカールターナーが指示を出す。
≪作戦内容はもう知ってると思うから省くね。
支持を出すときはレイヴン隊と天使隊で
別々の回線を使うのでご心配なく。≫
ブツ…ブツ…と無線が切れる音がしたかと思うと、
≪よし…あー、あー、聞こえる?≫
「こちらレイヴン1、聞こえます。」
≪じゃあ指示を出すね。作戦空域内の敵集団は2グループ。
一方は天使隊が対処中で、
もう一方はそちらから見て10時方向から接近中。
長射程のミサイルがあったとしても射程に入る頃には
そっちが先に墜落地点にいるから安心して方位そのまま。≫
指示内容の確認のためにマップを見ると、
確かに敵はまだ遠くにいる。
向こうも最高速度でかっ飛ばしているようだが、
カルシアに改修してもらった俺たちの比じゃない。
「よし、墜落地点周辺に敵機はいない。
地上の制圧はセーナに任せる。マリーは俺の直掩を頼めるか?」
『了解。』
『オッケー』
セーナはスロットル全開で敵に突っ込んで行き、
マリーは少し減速して俺の背後に着いた。
マリーの方を横目で見ると
彼女の翼にはいつも通り対空兵装が吊るされている。
いつもとちがうのは今回マリーが4AAMを
積んでいることだろう。
いつもなら俺が4AAMで相手のフォーメーションを
乱す役目を果たしているが、
今回の俺の兵装は無線中継用のポッドで、
戦闘能力は無いとまでは言わなくともそれに等しい。
前方の墜落地点周辺で火柱が上がり始めてすぐに
カールターナーから悪い知らせが届いた。
≪方位1-9-0からボギーが急速接近中。
機数は3、確実に敵機だから警戒してね。≫
「こちらレイヴン1、迎撃は間に合うか?」
カールターナーのデータリンクのおかげで
作戦空域全体を見渡せるレーダーには南側から
俺たちの方へ飛んでくる3機の機影が映っている。
≪正直言うとムリね。自力で頑張って。≫