エアフォース・オンライン:フェアリーズ 作:Bishop1911
『こちらはAWACSスカイアイ。臨時編成を行う。』
戦闘空域に入るとすぐに航空管制機からの無線が入った。
航空管制機はプレイヤーでは無く、いわゆるNPCだが、
ミサイルで狙われている時の警告や、
レーダーで捉えた目標の伝達と言った聞き流すわけにはいかない情報を伝えてくれる。
ソロでいる時はプレイヤーごとに個別に着き、
俺とマリーのように編隊を組めば各編隊ごとに着く。
少々無線が混乱することもあるが、
その分、データリンクで僚機のレーダー情報を共有して
ミサイルの誘導性能が上がったりするため、メリットの方が多い。
『ショウのコールサインはエコー1、
マリーのコールサインはエコー2だ。』
「エコー1、了解。」「エコー2、了解です。」
『これより防空任務の指示を行う。
アルファ隊からデルタ隊はすでに交戦中だが、損耗が激しい。
エコー隊は方位3-0-0に進路を取り、
アルファ隊の支援に当たれ。』
防空任務中はAWACSからこんな感じで、
指示をもらうが、これはクランマスターかそれが任命した
クランメンバーからの指示を中継しているだけなので
クランによってはポンコツな指揮を執るAWACSが居る。
しかし、今回のAWACSは頼りにできそうだ。
指示通りに方位3-0-0、つまり真北を0度とした時の時計回りに
300度なので、直進していれば良い。
「エコー2?」
『何?』
「特殊兵装は?」
『HVAA、レベルは5』
HVAAは、Hyper-Velocity Air-to-Air missile
つまり、超高速空対空ミサイルの略で、
文字通りとんでもない速さの飛翔速度が売りのミサイルだ。
その分、誘導性能が低く設定されているため使い所はかなり選ぶが、
敵機の背後に付ければかなりの腕があるプレイヤーでない限り
実質回避不能だ。
それに加えてレベルが5ということは射程が7kmほど。
7km先の敵機を撃っても大抵は躱されるが、
それでも牽制くらいにはなる。
そして何気に俺よりスペックが高い。
『相手はネームドばっかりでしょ?
ミサイルばら撒いてもどうせ当たらない。』
そして全否定される俺の戦略。
中堅プレイヤーとしてのプライドが少し傷つくが
マリーの兵装や機体カテゴリーが戦闘機である事を含めて
戦略を立て直す。
今回の俺は相手を散らせる事に専念して、
ドッグファイトはマリーに任せる。
実質的な戦闘を女性プレイヤーに押し付けるのは少々気が引けるが、
お互いにソロの傭兵である以上は
性別もランクもレベルも関係ない。
重要なのは「どうすれば1番効率よく稼げるか」だ。
「わかった。俺が牽制するから
そっちは散ったヤツのどれかに着け。」
『オッケー、背中は任せる。』
空域に近づくと、ミサイルの尾が無数に交差しては
爆発している様子が見えてきた。
俺のヘルメット内蔵型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)にも
友軍と敵軍が青と緑のコンテナとして表示される。
『レーダーが敵機を捕捉した。
エコー2の特殊兵装が射程内に入る。』
「まだだぞ?」
『わかってる。』
最高速度で飛んでいた俺は少し速度を落とす。
『エコー1の特殊兵装が射程内に入る。』
AWACSの声と同時に俺はマリーにハンドサインを送る。
「よし、行け。」
ミサイルを4AAMに切り替えた俺のHMDが
4機の敵機を捉えると同時に俺はマリーに指示を出した。
マッハ2.25まで加速する轟音を轟かせながら
マリーが飛んで行き、それを追いかけるように俺が発射した
4AAMはマリーを追い越して敵機に向かって突っ込む。
ミサイルの接近を察知した敵機は交戦していたアルファ隊の
追尾をやめて回避行動に移る。
「こちらエコー隊。加勢するぞ。」
≪こちらアルファ2、助かった!
ヤツらなかなかの腕だ…!気を付けてくれ!≫
俺がアルファ隊に挨拶している間にもマリーは
敵機のうちの1機の背後を取って自慢のHVAAをお見舞いする。
物理レーザーとも揶揄される超高速ミサイルは
あっという間に敵プレイヤーの背中から翼を捥ぎ取り、
翼を奪われた敵プレイヤーを密林に叩き落とした。
『エコー2が敵機を撃墜。』
それでも動じない敵チームの様子からして
やはり相手は最強クランのマジ卍で間違いなさそうだ。
敵チームも反撃しようとアルファ隊や、次のチャンスを
待つために離脱したマリーの方に機首を向けるが、
そうはさせない。
リロードを終えた4AAMをロックオンしてもう一度発射する。
残った3機は自分めがけて飛んでくるミサイルを躱すために
再び散り散りになり、そのうちの1機にマリーが喰らいつく。
寄せ集めながら体勢を立て直したアルファ隊も負けじと
2人1組で敵を追いかける。
マリーが敵プレイヤーを撃墜するのを眺めながら
データリンクを維持できる距離を保っていた俺の視界を
何かの影が横切った。
マズい…!
本能的にそう感じて体をひねって急旋回した。
ーーヒュン ヒュン ズダダンッ
「ーーっ!?」
レーダーに反応は無かったし、AWACSからの情報も無かった。
『エコー1が被弾。』
「遅ーよっ!」
思わず文句を言うが、今の今まで反応が無かったということは
おそらくステルス機だろう。
まさかステルス機を相手にする事になるとは…。
まんまと貧乏くじを引いたわけだが、
撃墜された時の機体修理費を考えれば
そう簡単に堕ちるわけにはいかない。
『エコー1、無事っ!?』
2機目を撃墜して余裕ができたマリーがすぐさま反応する。
俺は上から下へ通り抜けていったステルス機を警戒しながら
回避起動を取る。
「大丈夫、それよりステルス機だ。警戒しろ。」
『…わかった。』
やや不満げなマリーの返事をよそに俺はもう一度
レーダーに目をやる。
いくら無敵のステルスでもミサイルを撃つ時には
ミサイルを機外に露出させる必要がある。
それを捉えれる可能性が僅かながらにあるからだ。
<ふっふっふーん!よく躱したな!>
突然の、しかも幼い幼女の声に俺は思わず首をすくめた。
しかもオープンチャンネルで。
フェアリーズのアバターはALOやGGOと同様に
自分では選べないはずだからロールプレイか…。
それはともかく、オープンチャンネルで会話とは…
敵だろうと味方だろうとバカに変わりはない。
「誰だ!?」
<よくぞ聞いてくれた!我こそはマジ卍のカトラス!
“雷神”の二つ名を持つ者だ!
空賊ども!討ち取って手柄とせい!>
…サムライか!