エアフォース・オンライン:フェアリーズ   作:Bishop1911

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#5 灰の中から I

基地が文字通り灰になったのを目の前で見ていた俺とマリーは

シグレニ同盟のもう一つの基地であるサレドモ基地では無く、

最寄りの公式ベースへと向かった。

シグレニ同盟のクランマスターと連絡を取るためだ。

 

 

 

 

 

 

 

「クビだ。二度と顔を見せるなこの疫病神め…。」

 

「は!?一体どういうことだよ!」

 

突然の契約解消に俺は声を荒らげる。

 

「マジ卍が宣言文を出した。

どこかのバカがマジ卍のクランマスターを撃墜したそうだ。」

 

俺は顔から血の気が引くのを感じた。

VR空間でも血の気は引くらしい。

 

「それって…」

 

「お前のことだ!

…向こうは我々の損失分を全て弁償した上で今回のことを

不問にしてくれるようだが…。

こうでもしなければ私の腹の虫が治まらない…!」

 

悔しさのせいか今にも泣き出しそうな

クランマスターの顔を見ると、

彼が失ったものの大きさが身に染みる。

 

「…わかりました。

今回はご迷惑をおかけしてすみませんでした…。」

 

 

 

無言で立ち去るシグレニ同盟の一行を見届けた俺は

さっきから背後でおかしな空気を漂わせているマリーの方を見た。

 

「…ぷぷ…」

 

「何笑ってんだよ…。」

 

見ればマリーは落ち込むどころか、今の会話の間中

ずっと笑いを堪えていたようだ。

 

「だって…ショウが撃ち落としたって自慢してきたB-1Bが

あのトードだったってことでしょ…?」

 

「そうらしいな。」

 

「ぷふふふ…バカ過ぎる…!」

 

「ったく…、そこで好きなだけ笑ってろ。俺はまたフリーだ。

これでお前とも…ってお前何してんだよ!?」

 

一瞬目を離した隙にマリーはメニュー画面を開いて

シグレニ同盟に契約解除申請を送っていた。

 

「お前がまたどっかのクランマスターを撃ち落とさないように

私が見張っとく。」

 

「…あのなぁ…。雇用主から解雇されたんだから

俺の評価は今、下がってるはずなんだぞ…?

次の雇い主だなんてそう簡単に…」

 

メニュー画面を開いてプロフィールの評価を確認しようとすると、

 

「やーっほっ!!」

 

突然何かが俺の背中に飛び乗った。

 

「その声、アンタは!!」

 

マリーの方は声だけで”何か“が何者か分かったらしいが、

俺にはさっぱりわからない。

 

「誰だよ!てか放せっ!!」

 

首に巻かれた華奢な腕を掴んで思いっきり投げ飛ばすと、

“何か”は体操選手のような身のこなしで着地する。

 

「よっ!」

 

「何が『よっ!』だ!こっちは今失業中なんだよ!」

 

見た目幼女に自分の哀しい現実をぶつける大人げ無い姿が

公式ベースのホールに響き渡った。

周囲からの憐れみ100パーセント(濃縮還元)の視線が痛い。

 

「ていうかお前誰だ!」

 

「よくぞ聞いてくれた!我こそはマジ卍のカトラス!

“雷神”の二つ名を持つ者だ!

空賊ども!我らの忠臣となれ!」

 

ということは目の前のこのちっさいのが

さっきのF-35ということになる。

俺はカトラスの目線の高さに合うように膝をつく。

 

「お前…何であの時、撃たなかった?」

 

「ん?」

 

カトラスはよくわからない、

といったような表情で首を傾げる。

 

「あ〜!アレね!なんかね、楽しかったから!

他の空賊は鈍いっていうか鈍臭いっていうか…」

 

「鈍くなかったらクランマスターなんて

撃ち落としてねえよ…」

 

「ぷふ…!」

 

「そこ笑うな。」

 

ため息とともに立ち上がった俺は頭を掻く。

確かに雇ってもらえるに越したことはないが、

ついさっき戦った相手に雇われるというのは抵抗がある。

 

「んで、どーするの!」

 

さっきからぴょんぴょんと落ち着きのないやつだが、

裏に何か隠してそうで怖い。あまり乗り気はしないが、

虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ。

 

「報酬は?」

 

「えっとねー…」

 

メニュー画面を開いて何かを見ているカトラスは

何度かふむふむと頷く。

 

「無職よりずっと良いよ!」

 

そりゃそうだ。

考えれば考えるほど選択肢が無い。

 

「マリーは?」

 

俺について来ると言ってくれた以上は

確認しないわけにもいかず、念のためマリーにも確認する。

 

「私たちは傭兵よ?

だったら黙って金出す人について行きましょ。」

 

「じゃあ決まりだね!」

 

「ちょっと待て。」

 

俺の返事を待たずにメニュー画面を開こうとする

カトラスの手を止めさせる。

カトラスの方はどうして、と言いたげに首を傾げる。

ちくしょう可愛い顔しやがって。

 

「契約はする。ただし!仮契約だ。

正式なメンバーじゃない。俺たちはあくまでも傭兵だ。」

 

「えーっ!!」

 

数分ほどギャアギャアと口論した後、

結局は俺の条件が通った。

カトラスはぷくーっと不満そうに頰を膨らませながらも

メニュー画面を開いて契約書を送ってきた。

俺とマリーは契約承認のボタンを押し、マジ卍に雇われた。

 

 

 

 

 

 

 




ショウ
「っていうかこのマジ卍っていう
ダサい名前はどうにかなんないのか?」

マリー
「シグレニ同盟ってのもなかなかダサかった。」
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