エアフォース・オンライン:フェアリーズ   作:Bishop1911

7 / 34
#6 灰の中から II

「…ふう…。」

 

ようやくひと段落ついてフェアリーズからログアウトしたが、

スクランブル発進してネームドのステルス機と渡り合って

基地に核撃ち込まれてクビになったと思ったら

数分前まで戦ってたネームドに雇われるという、

1時間と少しの間に起こったとは思えないほど過密な出来事に

俺の体内時計はおかしなことになっていた。

 

何はともあれ、部活をしていない学生の土曜日は

暇でしょうがない。1年生ともなれば尚更だ。

俺は中断された日常の続きを始めようと

もう一度タブレット端末をテレビに接続した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝からテレビの大画面でAFOの攻略情報を見たり、

学校の課題を終わらせたり、

ハリウッド映画をして数時間過ごした俺だったが、

昼過ぎには暇を持て余すようになった。

やはりAFOの空を飛ぶ感覚が病みつきになってしまっている俺は

映画のようなテレビ画面では満たされない欲求を満たすべく、

リビングを片付けて再びアミュスフィアの元へ向かう。

しかし、元はと言えばこれが俺の日常であって

滅多な事がない限り朝からスクランブルなんてしない。

俺の活動時間は午後だ。

ベッドに潜り込んでアミュスフィアをかぶる。

 

「リンク・スタート」

 

目を開けると、そこはバッテン基地の格納庫…では無く、

マジ卍の密林エリアにあるニヨッテ基地の格納庫だ。

つい数時間前のことなのに数週間も前のことに感じられる。

 

バッテン基地を核の炎で更地にしてしまったことだけが

記憶に新しい。

気持ちを切り替えようと頭を振る。

気を紛らすためにグルリと周囲を見回すと、

格納庫はバッテン基地の数倍は広い。

しかもこれが1人のスペースというから驚きだ。

マジ卍では機体セットの複数持ちは当たり前なのだろうか?

 

メニュー画面から自由出撃を選ぼうと指を動かす俺は、

すんでのところでその指を止めた。

またどっかのクランマスターを撃ち落としては敵わない。

俺はクランから提供されるクランミッションの画面に移る。

今回のマジ卍との空戦で色々と試したい事ができたからだ。

 

「まずは…あった。」

 

 

ーーマニューバ・トレーニングーー

先行する教官機を追跡し、そのマニューバを会得せよ。

 

 

 

 

カトラスとの空戦では同じ速度帯で戦っていたにも関わらず

彼女の機動に翻弄され続けた。

つまり、裏を返せば速度が遅くてもテクニックがあれば

ドッグファイトはなんとかなる可能性があるのだ。

空戦機動を磨ければドッグファイトに弱いF/A-18Fでも

少しはマシになるだろう。

 

出撃準備を整え、出撃する。

格納庫から出ると、目の前の景色は朝のバッテン基地と

大違いだった。

滑走路は見えるだけで4本あり、ズラリと並ぶ格納庫の向こうには

公式ミッションで見たことのあるレーザー兵器が

空を見上げている。

 

『こちらニヨッテタワー、出撃申請を受領した。

ショウ…新入りか。まあ良い、2番を使用せよ。』

 

「こちらショウ、了解。」

 

格納庫から2番滑走路へと歩いていると、

別の滑走路に侵入してくる大型機が目に留まった。

ヨロヨロと不安定な飛び方をしている上に、

機体セットを身につけるプレイヤーには

GGOのようなゲームで見られるダメージエフェクトが見える。

 

『こちらニヨッテタワー、滑走路の全機に告ぐ。

友軍機が不時着する。退避せよ。』

 

何かまずい事が起きそうな気がする。

そんな予感にかられた俺はメニュー画面から

マニューバ・トレーニングの中止を選択し、

編隊を解いていないマリーの状態を見た。

今はこのニヨッテ基地の娯楽室に居るようだ。

俺は滑走路から駆け足で退避すると、

マリーにすぐ出撃するようメッセージを飛ばした。

何もなければ彼女に何か奢る羽目になるかもしれないが、

何かあった時困るよりは良いだろう。

疫病神の汚名はどこかで晴らさなければならない。

 

滑走路に侵入する大型機のプレイヤーはよろめきながらも

なんとか着地するが、完全に停止しきる前に

膝から崩れ落ち、滑走路と接した機体セットが火花を上げる。

 

「どうした?何があった?」

 

背後から聞こえるマリーの声からは戸惑いの色を感じる。

 

「わからない。ただ、大型機が不時着した。」

 

「こちらマリー、ニヨッテタワー聞こえる?

ショウと出撃する。」

 

半ばゴリ押しで管制塔から出撃許可を取ったマリーは

急かすように俺の背中にを押して2番滑走路へと向かう。

滑走路に入るとすぐさまマリーは走り出した。

俺も遅れぬよう走り出す。

ふわりと浮いた体を左に傾け、マリーと編隊を組んだまま

ニヨッテ基地の上空を旋回して待機する。

 

 

数分も経たないうちに基地にサイレンが鳴り響き始めた。

メニュー画面のメールボックスには“非常召集”の文字がある。

添付されたブリーフィング動画を視界の隅に移して再生した。

画面には金髪の強面な男が映し出され、

ただでさえ物騒な強面に眼帯までしている。

 

『諸君、突然の招集で申し訳ない。

マジ卍のサブマスター、テルキスだ。

諸事情によりトードの代理として指揮を執る。

すでに知っていると思うが、

本日13時頃に我々の管制機が攻撃を受け、

ニヨッテ基地に不時着した。

今回我々に手を出した相手は先日のバカ者と違って

カーディナル・システムだ。

管制機はカーディナルが作成した新ミッションの

ミッションエリアに侵入したため、

Mobを刺激してしまったと予測される。

いくら我々に手を出したと言っても相手がカーディナルでは

手出しのしようがない。

そこで今回招集をかけた諸君には威力偵察を行ってもらう。

輸送機の飛行ルートを飛行し、ミッションエリアの範囲と

ミッションの開始条件を調査してもらう。諸君の健闘を祈る。』

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。