エルとジュリエットの寄宿学校   作:ヨーグリー

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再開

 フランスのとある空港。そこで俺はお世話になった人たちと別れの挨拶をしていた。

 

「9年間本当にお世話になりました!フランシスさん」

 

「こちらこそありがとね君と過ごした9年間はとても楽しかったよ。でもよかったのかい?こっちでお父さんたちといた方が安全なのに」

 

「はい、自分にはどうしてもやり遂げなくてはいけない夢があるんです。それに約束もしましたしね」

 

 今話している人はお父さんのお父さん、まぁ俺のおじいちゃんだね。そのおじいちゃんとは昔から仲が良くて今回の事で俺たちを匿ってくれた人だ。

 

「......そうか。なら私からは何も言わないよ。...だけど何かあったらまた連絡してくれ私たちはいつでもエル君の味方だからな」

 

「ありがとうございます。......さてと」

 

 フランシスさんと会話を終えるとその後ろにいた親友のセドリックや他のクラスメイト達の方に顔を向ける。

 

「みんなも今までありがとね」

 

「おう!またいつでも遊びに来いよ!その時には何か手土産も頼むな!」

 

「もちろんセドリックには大好物のトマトをたくさん持ってきてやるよ」

 

「好きじゃねーよ!むしろ大っ嫌いだ!」

 

「まぁまぁセドリック落ち着いてトマトは甘くておいしい食べ物だよ?」

 

「ふん!あれのなにが甘いんだよ」

 

「まぁこんなセドリックは置いておいて」

 

「おい!」

 

「本当にありがとう!セドリックとは9年間ずっと一緒にいて学校もクラスも全部一緒で切っても切れない何かがあったし、他に辛いことや楽しかったこと色々あったけど今こうしてここに俺が居るのはみんながいたからなんだ。だからしつこいようだけど何回でも言わせてほしい......本当にありがとう!すごく楽しかった!」

 

「何くさい事言ってんだよ!お礼なら俺らも数えきれないほどあるわ。けど全部含めてみんなを代表して一言」

 

 途中で言葉を切って後ろにいるクラスメイトに顔を向けて一度うなずく。

 

「俺らの方こそ本当にありがとな!お前と一緒に過ごした今日までの日々は最高に楽しかったぜ!向こうでも元気にやれよ!」

 

「おう!」

 

 セドリックとみんなの思いも込められた言葉を受け取りそれに対して俺も全力で答える。

 

「エル」

 

「エル...」

 

「お父さん...お母さん...」

 

「今日まで本当によく頑張ったな流石俺らの息子だ」

 

「なにかあったらすぐこっちに戻ってきなさい。あなたがいつでも戻ってきてもいいように準備してるからね」

 

「うんありがとね二人とも」

 

 そう言って二人に近づき片方ずつ手を握り言う。

 

「二人の夢は必ず俺が叶えて見せる...だから二人はここで待ってて」

 

「ああ」

 

「ええ」

 

「それじゃあ行ってきます」

 

「「「「「「「行ってらっしゃい!」」」」」」」

 

 (はぁ、会おうと思えばいつでも会えるのにもこういう別れは見送りされる嬉しさと別れたくないという悲しさで胸がいっぱいになるな。それにあの子は元気だろうか...もしこれで覚えられてなかったら悲しすぎて立ち直れないかもしれない。なんか心配になってきたな...)

 

 

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ペルシアside

 

 最近同じような夢を見る。それは私が幼いころの記憶。

 

『ペルちゃん今日はどうする?』

 

『今日はなんかボーっとしてたい気分かな』

 

『わかった!』

 

 たったそれだけの言葉だけを交わし二人で公園のベンチに座る。そしていつも私の方から手を繋ぐ。最初の頃はお互い恥ずかしながらも繋いでいたが回数が増えていくたびに慣れていって手を繋ぐのが当たり前になっていった。その時の私は何も思わなかったが今思うと少し残念な気分になる慣れっていうのは時に残酷ね。だけどたまに彼から手を繋いでくれることもあった。もちろんその時はうれしくてつい小さくガッツポーズをしたのをよく覚えている。

 

 だけど昨日と今日の夢は...

 

『実は僕明日フランスに行くことになった』

 

『やだ!私はエル君と離れたくない!』

 

 いきなり言われた彼からの言葉。私はそれを受け止められず離れたくないとわがままを言ってしまう。だってそれは仕方のないことだと思う。その時から私は彼に恋をしていたのだから。彼はウェスト公国と東和国など関係なく話せる唯一の友達そして時折見せるあの笑顔が私は堪らなく好きだった。そんな人が突然親の都合で遠く離れた国に行ってしまう私の前から大切な人がいなくなってしまうどうしても私は行かないでほしかった、だけど私はただ行かないでと言う事しか出来なかったそんな自分に腹が立ってしまって泣いてしまった。だが彼はそんな私を見てこう言った。

 

『僕ねダリア学園に入ろうと思ってたんだ。初等部と中等部はフランスの学校になると思う。けど高等部までには帰ってくると思う。それで戻ってきたらダリア学園に編入するつもりだよ』

 

 彼はそう言ったその時の私はよほど彼から離れたくなかったらしく『戻ってきたらダリア学園に編入するつもりだよ』って言葉を聞いて勢いで私もダリア学園に行くと言った。まぁその時から学校はダリア学園に行くと決めていたから問題はなかったけどね。そして二人でいつかまたダリア学園の高等部で会うという約束をした。

 

 なぜ最近あの日の夢を見続けるのかはいまだわからない。けどきっと私が彼の事をそれぐらい好きだという事なのかもしれない。

 

「ペルシア様!」

 

 突然ドアの前から女の子の声が聞こえる。

 

「今すぐ外の方に!黒犬の野郎どもが!」

 

「わかったわすぐ行く!」

 

「はい!」

 

 ドアの前から話しかけてくる女の子に言って準備をする。そして今日も彼からもらったイタリアンホワイトのヒマワリの花びらがついているヘアピンを着ける。

 

 このヘアピンをもらった時に彼は『僕の今の気持ちだよ!』と言ってきた。それに対して私は意味が分からず首を傾げる。すると彼は親にこれの花言葉を聞くか自分で調べてみてを言った。その夜私はお母様にどういう意味か聞いてみた、だけどお母様にもどういう意味か分からなかった。それなら調べてもいいが、なぜだか調べることだけはしたくなかった。なら彼に会った時にでも聞こう。それまでこのヘアピンは大事に使おうと決めた。

 

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エルside

 

 (あーやばい!やらかした!時差ぼけの所為で寝坊した!どうするか考えろ神崎エル......あ!これなら!)

 

 周囲に人がいないか確認をする。

 

 (よし周囲に人はいない!やるなら今だ!)

 

 周囲に人がいないかを確認をしたら足に思いっきり力を入れて飛ぶ。

 

 知らない人の家の屋根を足場にしてまた飛ぶそれを何度か繰り返していくうちにダリア学園が見えてくる。

 

 (見えてきた!よしこの距離なら本気で飛べば一回で行けるはず)

 

 そして赤い屋根の家の上に着地をして軽く準備運動をする。

 

 (よし!行くぞ!)

 

 ダンッ!

 

 さっきの倍の力で飛ぶ。......が少し力を入れすぎたため思ったより飛んでしまった。

 

 そしてダリア学園まで飛んできたが力加減をミスったせいで校門よりも先の校内と校門の真ん中の通路あたりで徐々に高度が落ちていって......

 

「うわぁぁぁぁ!どいてどいてぇぇぇぇぇぇ!」

 

 派手に落ちてしまう。

 

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ペルシアside

 

 エルが落ちてくる少し前。

 

「ウェストのクソ貴族が!」

 

「東和国の野蛮人め!」

 

 今日も東和国の生徒との戦闘だった。

 

「犬塚!手を貸そうか!?」

 

「いや...ペルシアは俺が倒す!手ぇ出すな!」

 

 そう今の私は白猫のリーダーになるくらい強い。もし彼がこんな私を見たらなんていうのだろう?初めて彼と出会った日私は彼の夢を聞かされた。その夢を聞いて私はその手伝いをすると言った。だが今はこうやってウェスト公国と東和国とか言いながら黒犬の生徒と争っているのだ。彼が見ればきっと失望されるだろう。そう考えるだけで胸が痛む。

 

「ペルシア様ここはお任せください」

 

「スコット...」

 

「命をかけてあなたをお守りする...僕にできるのはそれくらいですから」

 

 そういって私の両手を包むように握ってくるスコット。

 

 こう言ってくれるのはうれしいのだが私はそれを彼に言われたらどれくらいうれしくなるだろうと考える。けど彼はまだここにはいない。

 

 そう思ってると突然上から声が聞こえる。

 

「うわぁぁぁぁ!どいてどいてぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

「え?」

 

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エルside

 

 ズドン!

 

「いったぁ!...くない!?」

 

「う...うう...」

 

 突然下から声が聞こえたため下に向くと白い服を着た人がいた。

 

「うわぁ!すみません!つい力加減を間違えてしまって!」

 

 下敷きになってた人に謝る。そして周りを見ると全員が俺をじっと見ていた。

 

「あ、あれ?もしかして俺お邪魔?」

 

「ああすっげぇ邪魔」

 

 今度は後ろから声が聞こえたから振り向くと黒い制服、自分と同じ制服を着た目つきの悪い生徒がいた。

 

「ごめんね?今どくか...ら......って!もしかしてロミオ!?」

 

「はぁ?なんでお前俺の名前知ってるんだ?俺はお前なんかしらねぇけど」

 

「もしかして忘れた?ほら!小さい頃家が近くてよく遊んだじゃん!」

 

「小さい頃?家が近くてよく遊んだ......?あ!」

 

「思い出した?」

 

「ああ!お前よく遊んでた神崎エルだろ!」

 

「うん!久しぶりだねロミオ!」

 

「おう!あの時はいきなりフランスに行くって言ったからびっくりしたぜ」

 

 そういって俺の前にこぶしを出すロミオ。

 

「お?久しぶりにやるか」

 

 ロミオのこぶしに俺のこぶしを軽く当てる。

 

 これは俺とベルがよくやっていことだ。それをロミオに教えたのだ。

 

 すると突然ロミオの後ろにいるサイドテールにしている黒髪の女の子が犬塚に話しかける。

 

「犬塚こいつだれだ?」

 

「こいつは俺が小さかった頃に家が近くてなよく遊んでた幼馴染の神崎エルだ」

 

「Ravi de vous rencontrer. 初めましてロミオの幼馴染の神崎エルです!今日からこのダリア学園に編入することになりました!ちなみにフランスからの帰国子女です」

 

ロミオの隣に移動してきたサイドテールの女の子に自己紹介をしてフランスからの帰国子女だと伝えると、ええええええ!?と驚いていた。

 

 すると今度は俺のすぐ後ろで泣いている声が聞こえた。

 

「本当に...本当に帰って...来たんだ...」

 

 後ろを向くと両手で口元を抑えて泣いている金髪の女の子が立っていた。

 

 とても綺麗でまぶしい金色の髪の左に少し大きめの黒いリボンを着けてその反対側の髪には俺が幼いころにとある女の子にあげたイタリアンホワイトのヒマワリの花びらが付いたヘアピンを着けていた。

 

 そんな目の前にいる女の子が俺がこれまで三回別の世界で生きてきて心から本気で愛した人......ジュリエット・ペルシアだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

 

はい、どうもヨーグリーです。

 

初めにお気に入り登録してくださった方ありがとうございます!

 

今回から原作開始です。

 

一応自分の中でこれで試作品は終わりの予定でしたが原作前で二話使っちゃたのであと一話続きます。

 

それでは今回はここまで!また次回!

 

 

 

 


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