仕事忙しい過ぎて書けない
エタるのだけは避けたいと思います。辞める時は俺たちの戦いはこれからだ!って終わらせます
『よう、坊主』
そう声をかけて入って来たのはいかにもな軍人然とした金髪の男性だ。短めに切りそろえられた髪と整った顔立ち、うっすらとある無精ひげがまるで映画の役柄のような印象すら受ける。
ぱっと見で不自然なところがあるとすれば腰のホルスターに下げられている自動小銃だろうか。銃は詳しくないが前世なら思いっきり銃刀法違反だろう。この世界では違うのかも知れないし、こんな俺みたいな人間を作るやばい組織なのだから今更なのかもしれない。流石にモデルガンなんてことは無いと思う。
この男性はほとんど俺のお付きと言ってもいい存在で、俺が部屋を移動する時に必ず同伴している。
性格は明るく、言い回しが独特で話上手だから会話していて飽きない。俺に勉強道具だといってこの世界を知ることをできた教科書を渡してくれた恩人でもあり、俺は感謝している
『おはようございますケビンさん』
俺は昨日教えてもらったほとんど様式美となった挨拶を口にする。するとその男性はチッチッと舌を打ちながら指を振る。
『今日の俺はウィリアムスだ、坊主。悪いがめんどくせえ仕事の時間だぜ。』
『準備できてるよおっさん』
『俺はまだ20代だからお兄さんと呼んでくれっていってるだろう!』
理由は分からないがこの男性の名前は日毎に変わる。
昨日はケビンだったし一昨日はマークだった。顔が同じのクローンというわけでもなくただただ呼んでもらう名前が日毎に変わるだけ。
めんどくさくなっておっさん呼びしているが、本人はおっさん呼びは嫌らしく、一日の最初だけオーバーなリアクションで毎回否定してくれる。今も『そんなに老けて見えるかな?もしかして加齢臭?』なんて脇の匂いを嗅いでいて正直いじりがいがある。
このおっさん呼びを否定するところまでが毎日の様式美で俺は嫌いじゃない。
毎日名前が変わるのだしおっさん呼びは仕方ない。一度否定した後はふつうに受け答えするし。
ここの施設では名前で呼んでるのは今んところ聞いたことがない。頭文字なのか番号なのかソルジャーA2だの、プロフェッサーDだの呼び合っていて秘密基地感溢れるけどモブ臭が半端ない。
ちなみにこのおっさんはソルジャーXお母さんこと俺の生みの親の研究者はプロフェッサーTとか呼ばれている。
そう呼んだらおっさんはマジで怒るしお母さんはめっちゃ泣きそうな顔になるからその一度しかそう呼んだことはない。
そんな環境だから俺も数字呼びは抵抗はすぐ無くなったんだけど、俺だけ横文字じゃない被験体01なのは疎外感すごくて泣きそう。でもモルモット01よりかはましかもしれない。
『その貫禄ある顔でお兄さん呼びは無理だよ。早く行かないとおっさんが怒られちゃうよ?』
『あのクソババア、少し遅れただけでお小言がウルセェからな。だから一生結婚できねぇだろうな。ヒステリー起こされる前に行くとするか。』
どうやら今日のウィリアムスは口が悪いらしい。
検査をする部屋までの通路を歩いているあいだ、俺は以前より気になっていることを聞いた。
『そう言えばムスメさんの具合はどうなの?』
前に会話で聞いたんだが、どうやらここで兵士として働いているのはその娘さんが病気、しかも心臓の病を患っていてお金とドナーが必要だかららしい。ドナーはどうにもできないが、お金はここで働けばなんとか出来ると言っていた。
俺の心残りの一つである。
だから俺は人間一人作れるんだから心臓ぐらいは作れるんじゃないかとお母さんことあの人に頼んでみたのだ。
結果はokどころかほぼ解決しているとのこと。
しかし詳しくは教えて貰えなかったのでどんな進捗なのか気になって聞いてみたのだ。
しかし聞いたらほぼ解決しているなんてやはりあの人は優しい人なのだろう。気にかけていたに違いない。
『ん?あ、あぁ…どうにかなったよ。心配してくれてサンキュな』
そうかそれはよかった。
でもなんとなく疲れた様な笑顔なのは気のせいだろうか?あんなに心配していたんだし気苦労でもしていたんだろう。
『よかったじゃん。今日にでも辞めちゃうの?』
俺もあと数日で上手く行けば脱出だろうが、その間にくる交代の人と気が合えばいいが。
それに辞めてくれるなら好都合だ。
脱出する時に一緒に逃げないか誘おうとした人だけれども今考えればこの人の場合は辞めればいいだけだ。
『いや、そうだな…あと数日はここで仕事かな』
そう言って俺の頭を乱雑に撫でる。その触り方は雑だが優しさが篭っていて暖かく感じる。
少し寂しかったからその言葉は嬉しく感じるけれども同時に心配でもある。
俺が脱出した責任を被ったりしなければいいのだが、逃した責任と一緒に逃亡するのでは罪の重さが違うだろうからこれでいい。
『そうなんだ、またどこかで会えるといいね。』
ちょっと言葉選びをミスしたかな。
辞めるんなら会えるはずが無いのにもう脱出する気分でいたから。そんな言葉を口にしてしまった。
『おうブラザー、この空が続いてる限り俺たちはまた会えるさ。』
そう言って俺を乱暴に引き寄せ俺の頭を抱えるような形で先ほどよりも強くガシガシと頭を撫でまわす。
俺の変な発言を気にしていないようで助かった。
『ここじゃ空見えないよおっさん』
『うるせー!んな細かいこと気にしてんじゃねーよ!』
空が見えないツッコミどころある臭いセリフを吐いたのが恥ずかしかったのか乱雑に撫でる手が更に強くなる。
正直ちょっと痛いけれど、別にじゃれているようなものなので思わず俺もワーキャー言ってじゃれてしまっていた。
じゃれあって他愛もない言い合いをしていたら目的の部屋についたらしい。
この研究所は広大らしく道も部屋もかなり広い。すれ違えないが、大型のトラックぐらいなら通れそうなほど道幅は広く、天井も高い。
自転車やセグウェイでも使えば良いと思うんだが、それじゃかっこ悪いか。想像したらシュールだし。
今まで行った事のある部屋までの道筋は覚えているからこの部屋はいままで来た事がないことが分かる。今日はなんの検査なんだか。
おっさんがインターフォン先の相手と2.3言話すとドアのロックが開いて入室する。
そこには何やらよくわからない装置と機械の群れ。
今までは筋力測定みたいな単純なものが多かったから今回から本格的な検査だというのがわかる。
インターフォンの相手と思わしき声をした研究員が俺に対応してここの説明をしてくれる。その間おっさんはいつものように入り口のドアの横に待機している。
話を聞くにはどうにもここは耐Gの訓練施設で俺はその耐G能力がどんなものかを検査するためにいるらしい。
その検査にあたっての説明を聞いていると奥の扉が開き、一人の少女が出てきた。
訓練が厳しいのか玉の汗をかいており肩で息をしているのが遠目で見ても分かる。
その少女と目が合うと疲れていることを感じさせない軽快な走りでこちらに寄ってくる。
『お兄ちゃん!』
『おーよしよし。まどか、訓練お疲れ様かな?』
『うん!頑張った!7.6まで出来たんだよ!』
『おーそれは凄いな。偉いなまどかは』
褒めて褒めてとジェスチャーしているので頭を撫でてあげるとこれまた満足そうに目を細める。まるでじゃれつく犬のようで可愛い。
2.6がなんの値なのか分からない。ここの施設を考えるに耐Gなのかななんて考えるも7.6の数値の何が凄いのか俺にはさっぱり分からないけどとりあえず褒めておく。
この可愛らしい少女はまどか。俺の心残りのもう一つだ。
もちろん俺の妹として作られた存在という訳ではない。彼女も人間だ。と言うより俺以外に作られたっていうのは見たこともなければ聞いたこともない。
この閉鎖された環境で外の世界(IS)のことを教科書越しで教えてくれた存在でもある。
そんな彼女の境遇は酷いとしか言いようがなく、本人から聞いた限りだと親から捨てられるか売られる様にしてここの施設に引き取られたとのこと。その後ここでまるで奴隷の様に扱われ訓練させられていたそうだ。
今でこそこんな笑顔を振りまいてくれるが、最初に出会った時はそれはもう酷い状態だった。
瞳は絶望したかのように虚ろで、まるで機械のような受け答えだった。それに齢10歳ぐらいの子の呼び方がエージェントMだ。
親から捨てられた後に引取先で名前すら呼んで貰えなくて流石に病んでしまったのだろう。
おじさん満員電車の疲れ切ったサラリーマンより虚ろな目なんて初めてみたよ…あれはマジモンのレイプ目ってやつだった。
そんな状態をもちろん見過ごす事なんかできなくて、なんとか出来ないものかとなるべく親身になって会話をしていたんだが、何がきっかけなのかはわからないがこんなに心を許してくれるようになった。
研究所の人たちもまどかの成績が俺に懐いてくれてから訓練に積極的になったことから見逃すどころか、メンタル面でのケアが目的か、なるべく同じ時間を過ごすようにしてくれている。
『あ、おっさんもおはよう』
まどかが俺の後ろにいるおっさんに気がついたらしい。まぁ俺とおっさんは必ずセットだからな。
そのおっさんはというと毎度のごとく、まどかのおっさん呼びに顔を伏せて大ダメージを受けていて返事が出来ていない。
娘さんがいるのに娘みたいな年齢のまどかに言われるのは堪えるのだろう。
だから名前をコロコロ変えるのを止めればいいのに…
『まどかちゃん、おっさんはやめてお兄さんと呼んでくれと言ってるじゃないか。それじゃダメなのか?』
『お兄ちゃんは一人だからおっさんがいい』
ねっ?と言ってこちらに顔を向けるまどか。可愛い。
後ろのおっさんから恨めしい視線を感じるが完全に無視してまどかを撫でながら、ねー、と同意する。おっさんの方は見ない。おっさんとの二択なら俺は可愛い子の味方なのだ。
そんなことをしておっさんを二人でいじっていると、先程の研究員に呼び出された。
離れるのを惜しまれるまどかに終わったら沢山話そう、話したいことも有るしと別れを告げて促されるまま先程まどかが出てきた部屋に入る。
彼女に脱出の話をするのはもう少し後でいいだろう。
訓練では体にGがかかるらしいのだが、慣らしのためなのか説明された酸素マスクも停止ボタンも使わずに済むほどGというものを感じなかった。体は重くて動かなかったけど。人生初体験だからもっと凄いものなのかと期待していたのに少し拍子抜けした。
まぁ明日も来るだろうし気にしないことにした。
モニターに映る映像と現在画面に示される数値との差異に検査をしている研究員は冷や汗をながしながら改めて再確認する。
やはり被験体01は人間ではない、と。
今までは単純な筋力や知力の検査だった。それでもかなり見た目少年から弾き出される数値は異常だったが、天災という前例がいるため納得はできないものの理解はできた。
しかし今回の検査はたとえ、かの天災だろうとも01の数値を出すことは叶わないだろう。
この部屋で測ることのできるのは01にも説明したが耐G能力だ。
耐G用のスーツを着て人間が耐えられる限界は個人差はかなりあるものの、おおよそ9Gだ。着てないと1〜2Gほどこの数値は下がる。
優秀な戦闘機乗りのパイロットでその値なのだ。もちろんIS乗りも高速戦闘が予想されるのでこの値が高いほど良い。
エージェントMは酸素マスクを被ったとは言えスーツ無しで7.6Gというのはかなり優秀な値だ。
しかもそれが10数歳の少女なのだから彼女の優秀さがよく分かる。
しかし現在の01は異常だ。
モニターに映る彼はなんとも無いような顔で座っているが、示された数値は13G。この施設で出せる最大値だ。
こ13Gという数値は現状の戦闘機では出せなくも無い数値ではあるものの戦闘機が分解し壊れるだろう、間違いなく人間では耐えられるものではない、パイロットは死ぬだろう。
ISなら先にパイロット保護機能で動かなくなる。
酸素マスクもスーツもなく、戦闘機が壊れるような環境下で平然としているのが人間なわけがない。
01は礼儀正しくおとなしい性格をしていて人当たりも良い、優しい良い子だからといって騙されてはいけない。
彼はそもそも人から胎児として出生した人間ではなく1から人間をベースに作られた存在だ。
あれは人間の皮を被った悪魔なのだ。
かっこいいおっさんめっちゃ好きなんですけど自分で書くのは難しいですね。
合間合間に書いたせいで変な所とかあるかもしれません