無限の龍神と永遠のメモリ 作:サイクロンアクセル
日本にあるメモリ探しを一旦切り上げ、オーフィスは数日ぶりにオカルト研究部にやって来ていた。数日で見つけられたのは『結晶』の記憶を内包するプリズムメモリと呼ばれるもの1つだけ。オーフィスとしてはメモリ探しを続行しても良かったのだが、たまには顔を出してと言うリアスの言葉を思い出し、一旦帰ってきたと言うわけだ。
「あ」
「……あら、限無ちゃん。いらっしゃい。私と朱乃は少し用事で抜けるけどゆっくりしていってちょうだいね」
オカルト研究部へと向かう廊下で鉢合わせたリアスは、オーフィスにそう言い残し朱乃と共に何処かへ行ってしまった。追いかける事も出来たが、必要性を感じなかったオーフィスは廊下を進み、オカルト研究部へのドアを開いた。
「ありがとう小猫ちゃん!俺は今感動している!!」
「一応僕も行くんだけどね?一誠君」
開いたドアの先でオーフィスの眼に入ったものは、泣きながら小猫に抱きつく一誠とされるがままの小猫、そして苦笑いしながら自分を指さす祐斗の姿だった。メモリを使えば話は別だが、過去を見れないオーフィスは何故こんな事になっているのか理解出来なかった。しばらく目の前の様子を黙って見ていると、オーフィスに気付いた祐斗が事情を説明してくれた。
「ドラ……一誠、友達助ける?」
危なくドライグと言いかけたが、幸運にも一誠はそこを追求する事なくオーフィスの問いに頷くだけだった。
「我も手伝う」
どうせならガイアメモリの実験台にでもしてやろうと、オーフィスは協力を申し出た。
「限無ちゃんもありがとう!」
お礼を言いながら抱きついてくる一誠をそのままに、オーフィスはどのメモリを使ってやろうかと思考を巡らせていた。
*
「ここだね」
使われなくなった教会を前に、祐斗は言った。確かに堕天使の気配も中から感じ取れるが、それ以外にも人間の気配も感じる。堕天使と共に居る人間となると、おそらくはエクソシストだろう。
「変身」
『エターナル』
「よし、アーシアを取り戻しに行くぞ!」
オーフィスの変身を見届けてから、一誠が叫びながら扉を蹴り開けた。と同時に飛んできたナニカをオーフィスがエターナルエッジで弾き、全員が構えを取る。
「おやおや〜?誰かと思えば、あの時の悪魔君じゃあ〜りませんか。お仲間ごっこですかい?んじゃ、みんな纏めて僕チンがぶっ殺してやるよ!!」
「テメェ!フリード!!」
ナニカを飛ばしたのであろう拳銃をしまい、光の剣を構えて突っ込んでくるフリード。それを一誠がまだ目覚めきっていない赤龍帝の籠手で受け止めよう手を前に出したが、それよりも早く祐斗が闇の剣を持ちフリードの一撃を受け止め、数度の切り結びの後鍔迫り合いへと移行した。
「ここは僕に任せて!」
「任せてったって、どこにアーシアがいるのかも分かんねえんだぞ!」
「こっち」
困惑する一誠を他所に、オーフィスは隠し階段を見つけていた。でかしたとばかりに先行する一誠。それを追う小猫とオーフィス。
「アーシアァァァ!!」
降りた先にあった扉を開け、叫ぶ一誠。そこで待っていたのは囚われたアーシアと堕天使1人、そして多くのエクソシストだった。
「あら、来たのね。そこで大人くし見てなさい。私が至高の堕天使に至る瞬間をね」
「夕…いや、レイナーレ!アーシアを返せ!!」
「それは無理な相談ね。悪魔なら奪ってみれば?」
エクソシストをけしかけながら、アーシアを拘束している魔法陣を弄り始めるレイナーレ。1人1人は全く手応えの無いものだが、量が増えれば厄介極まりない。加えて一誠と小猫は悪魔である為、彼らの持つ武器による攻撃は擦り傷すら致命傷になりかねず、少しばかり手こずっている様だ。オーフィスはオーフィスで正体を隠す為に力をセーブしている為、この量を蹴散らすなんて事は流石にできなかった。ガイアメモリを使わなければ、の話ではあるが。
『Tーレックス』
取り出すは『ティラノサウルス』の記憶が内包されたTーレックスメモリ。エクソシストの振るった光の剣をエターナルエッジで受け止め、そのままエターナルエッジにTーレックスメモリを挿し込む。
『Tーレックス!マキシマムドライブ!』
「邪魔」
エネルギーが満ちたエターナルエッジを振った瞬間、エネルギー体のティラノサウルスが現れエクソシスト達を薙ぎ払いながら突き進み、壁に当たると霞の様に消えていった。
「今です。一誠先輩」
「ありがとう!限無ちゃん、小猫ちゃん!!」
Tーレックスメモリの力によりエクソシスト達が薙ぎ払われた隙を突き、一誠はアーシアの元へとたどり着いた。邪魔をしてこないレイナーレを不思議に思いながら、一誠はアーシアを魔法陣から引き剥がす。
「一旦引きましょう。一誠先輩」
『コマンダー!マキシマムドライブ!」
小猫が一誠に撤退を提案したとほぼ同時に、オーフィスはマキシマムスロットに『指揮官』の記憶を内包したメモリを挿し込んでいた。オーフィスから別れる様に現れた通称『仮面兵士』達が撤退を妨害しようとするエクソシスト達を相手取る。
「これとこれも」
『アームズ!マキシマムドライブ!』
『バイオレンス!マキシマムドライブ!』
*
「アーシア……!」
階段を登り、オーフィスが見たものは力なく教会の長椅子に眠るアーシアとそれを悲しそうに見つめる一誠の姿だった。小猫も祐斗も、その近くでやるせない顔をしている。アーシアが死んだ。分かるのはそれだけだった。と、そこへレイナーレが現れ仮面兵士に負わされたであろう傷をドヤ顔を晒しながら本来アーシアが持っていたはずの力で治療してみせた。
「テメェ!レイナーレェェェエエ!!」
一誠の怒りの叫びに呼応する様に、彼の左手が眩い光を放ちながらまだ目覚め切っていない赤龍帝の籠手が本来の、オーフィスがよく見知った姿へと変わる。それは、一誠の中のドライグが完全に目覚めた事を意味していた。
「ドライグ、漸く目覚めた」
満足そうに頷きながらも、オーフィスは手を出さない。龍は良くも悪くも色々と引き寄せるものであり、赤龍帝と呼ばれるドライグをその身に宿す以上、この程度なんとか出来なければ赤龍帝として今後やって行く事はできない。そうでなくても悪魔なのだから厄介ごとは起こるだろう。この程度で死ぬのならこの先、生きていけるとは思えない。
「逃がすか!」
「私は至高の……!」
「吹っ飛べクソ堕天使!!」
オーフィスが見守る中、祐斗と小猫の助けが多少はあったとは言え、一誠はレイナーレに勝利した。教会の扉をぶち破り吹っ飛んだレイナーレを回収に動く小猫を他所に、一誠は再びアーシアへと近寄った。その目には、涙が浮かんでいる。
「一誠君……」
祐斗もそんな彼にかける言葉が思い浮かばず口籠もっていた。そんな中、オーフィスは一誠へと近づきアーシアを見た後、一つのメモリを取り出した。
「一誠、悲しい?」
「そりゃ悲しいよ。俺は、アーシアを救えなかったんだ」
「なら、アーシアが生き返れば嬉しい?」
「当然だ!もしアーシアが生き返るなら……」
そこまで聞いて、オーフィスは動き始める。取り出していたメモリ、『昨日』の記憶を内包したイエスタデイメモリをマキシマムスロットに挿し込み、オーフィスはアーシアを生き返らせる準備に入る。
『イエスタデイ!マキシマムドライブ!』
「限無ちゃん、一体何を?」
「生き返らせる」
淡々と語ったオーフィスに、祐斗と一誠は驚愕した。地球の記憶を内包したガイアメモリはそこまで出来るのかと。2人が見つめる先で、オーフィスはゆっくりとアーシアに手を向ける。そこから、砂時計の様な刻印が現れアーシアに張り付いた。刻印は張り付いた後、下に溜まっていた砂が、上に戻るという奇妙な動きを見せそして消えていった。数秒後、レイナーレが吹っ飛んだ方向からアーシアの神器のみが飛来し、彼女の中へと戻っていき、そして──
「んん〜あれ?一誠さん。なんでここにいるんですか?」
「アーシア?覚えてないのか?」
──アーシアは目を覚ました。オーフィスがやった事は単純で、イエスタデイメモリを使ってアーシアを昨日の状態に戻しただけである。ただ、記憶まで昨日の状態に戻っているので、今日起きた事を今のアーシアは記憶していない。アーシアが不思議がっているのはその為だ。いくらイエスタデイメモリのマキシマムドライブと言えど、あくまで昨日の状態に戻しただけな以上、寿命や病気で死んだのならいくら戻したところで翌日同じように死ぬが、今回はレイナーレによる干渉が原因の為、原因がいなくなった今同じ様に翌日死ぬなんて事はない。
『メモリー!マキシマムドライブ!』
最後に『記憶』の記憶を内包するメモリーメモリで、アーシアの記憶を蘇らせれば終了だ。全てを思い出したアーシアが一誠に泣きつき、それでアーシアが生き返った事が夢や嘘ではないと確信した一誠も泣き出してしまった。
「まさか生き返らせる事まで出来るなんて、流石地球の記憶ってだけはあるわね」
泣きながら抱き合う2人を眺めていると、背後から朱乃とリアスがやって来ていた。リアスの後ろの扉からはレイナーレを引き摺って此方に向かってくる小猫が見える。
「ぶ、部長!?」
一誠が驚きの声を上げるが、実は一誠たちが教会に入り込んだ辺りでリアス達は教会付近にいた3人の堕天使と戦っていたのだ。まあ、戦いと言うよりは一方的な蹂躙に近かったが。
「部長、持って来ました」
「ありがとう。じゃあ、起こしましょうか。朱乃」
「はい」
魔力で作り出した水を顔にぶつけられ、咽せながらもレイナーレは目を覚ました。
「はじめまして、堕天使レイナーレ。最も、すぐにさよならする事になるでしょうけど」
「ゴホッ!……その髪、グレモリーの」
「ええ、そうよ。さて、堕天使さん。貴女には消えてもらうわ」
消滅の魔力を生成しながら言うリアスを前に、レイナーレは何故か一誠へと命乞いをし始めた。きっと何か接点があるのだろうが、オーフィスにはそれが分からない。知ろうと思えば知れなくもないが、そこまでする必要はないだろう。
「……部長、お願いします」
「い、一誠君!まっ──」
命乞いは、残念ながら失敗に終わった様だ。一誠が何やら辛そうだが、それはオーフィスには関係のない事だ。
「あの、限無さん」
そう言えば『消滅』の記憶を内包ガイアメモリは未だ手に入れてなかったななんてぼんやりと考えていたオーフィスに、アーシアがおずおずと話しかけて来た。
「何?」
「あの、お礼を言っておこうと思いまして……一誠さんから聞きました。私を生き返らせてくれたんですよね?ありがとうございます」
深々と頭を下げるアーシアに、どういたしましてとオーフィスは返した。お礼を言われたらこう言っておけば良かったはずである。少なくともメモリ探しの旅で見かけたお礼を言われた人間は、殆どこう言ったニュアンスの言葉を返していた筈だ。
「さてと、アーシアさんだったかしら?色々聞きたいことがあるのだけど、それは明日にするとして貴女、今日何処か泊まれる場所あるかしら?」
「あ、いえ、ありません。ここに住んでいたので、その、お金もあまりありませんし」
「そう、ならホテルも難しいかしらね。……イッセー?貴方、アーシアを泊めてあげなさい」
「ええ!?俺がっすか!?」
リアスの提案に驚く一誠に、リアスは当然だと言わんばかりに指を向ける。
「当たり前でしょ。アーシアを助けたいって言ったのは貴方なんだから。最後までちゃんと責任取りなさい」
「それはそうっすね。分かりました部長。アーシアもそれで良いか?」
「はい!」
「じゃあ、それで決まりね。あ、限無ちゃん。明日って平気かしら?今日の事について少し話したいのだけれど」
本当はメモリ探しに行きたかったが、ドライグのことも気になるのでオーフィスは平気とだけ返した。結果いつかの様に夕方辺りにオカルト研究部の部室に集まる事となり、その日は解散となった。