短編集。またの名を駄文廃棄場。   作:ゆらぎみつめ

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転生するらしいのでチートを頼んだら リメイク版没6

 

 

 

 

 

 チートを手に入れ、転生した先は魔法少女リリカルなのはの世界。

 

 転生する際にされた神様の注意によると、この世界は原作の世界ーー二次元の世界ではなく、あくまでも無限に存在する並行世界の中から一番原作に酷似した世界から選ばれた世界であり、二次元と勘違いしてはいけないとのこと。

 

 ちなみに俺がループさせられていた世界もそうらしく、既に身に染みて理解していた身としては今更の話だった。

 

 だが、いざ転生してみればそこは遥か過去の世界。

 

 未だ類人猿すらいない古代生物が闊歩する時代だった。

 

 ーーえ?

 

 何がどうなっているのか理解出来ない。理解出来るけど理解したくない。

 

 まさか、まさかの古代スタート、だと!?

 

 未だ人間という種が存在しない世界に転生させるとか神様は一体何を考えているのか。

 

 一度その脳ミソ引きずり出して調べてやりたいぐらいに意味が分からない。

 

 原作十年二十年ならまだ分かる。百年前でもなんとか理解出来る。

 

 しかしおよそ五百万年以上前の世界に転生させる意味が全く、これっぽっちも理解出来ない。

 

 思わず視界に入った山を一つ消し飛ばしてしまうぐらいには理解出来ず、俺は頭を抱えた。

 

 更に転生したばかりの俺はかなり不安定な存在らしく、今まで手に入れてきた力同士が反発しあいながら一つの肉体の中で渦巻いている。

 

 神様に奪われていた力が一度に返却されたせいだろう。

 

 肉体が人の姿からかけ離れた形をとっていて、絶えず流動し変質したりと不安定である。

 

 とりあえず今は悠長に悩む時間はないな。まずは力を完全にコントロールする事に集中するべきだ。

 

 下手したらこの地球らしき星どころか隣接する次元世界まで消し飛ばしかねないからな。

 

 

 

 

 転生してから千年ほど経ち、ようやく力の完全掌握に成功した。

 

 流石は五つの世界で頂点に君臨する力達だ。上手く反発しあわないように馴染ませていくのは苦労した。

 

 これでようやく落ち着いてこの古代地球に転生した理由について考えることが出来る。

 

 因みに姿形は自由に変化させられるようになったので適当な人の姿をとっている。

 

 神様はこの世界をリリカルなのはの世界と言っていたが、原作まで大体五百万年ぐらい空白の時間が存在するのは何故か。

 

 あの神様が間違えたとも思えない。恐らく故意に俺を古代に転生させた。その意味は?

 

 転生者?

 

 いや、俺と同じように古代に転生する転生者はまずいないだろう。転生者はまず原作の時間軸に転生を願うだろうし、そうでなくても現代に転生する事を願う筈。神様が故意にそうしない限り。

 

 だが俺を転生させた神様はともかく、他の神様とやらがそうするとは何故か思えない。

 

 なら別の理由か。

 

 全くその理由に思い当たらない。

 

 幾度ものループを経験したが、元は凡人だ。神様の思惑を理解出来る筈もないか。

 

 仕方ない。

 

 五百万年とちと長い時間だが原作まで適度に暇を潰しながら過ごすとしよう。

 

 ただ待つだけならばこれまでのループと比べればイージーだ。

 

 原作が始まれば神様の思惑も知ることが出来るだろう。

 

 既に未来視によってこの世界が魔法少女リリカルなのはの世界と確認は取れている。

 

 原作に至るまでの歴史も元いた世界の歴史と相違ないのも確認済みだ。

 

 ならば原作が始まるまでの間、人類史を見物して暇を潰すとしよう。

 

 世界各国の英雄達をリアルタイムで見る。成り行きだが悪くない案だ。

 

 この世界でのギルガメッシュやアーサーも見てみたい。いや、この世界では物語にしか存在しなかったか?まあいい。そうであっても十二分に楽しめるだろう。

 

 ああ、早く人類が生まれないものか。

 

 

 

 

 ようやく類人猿らしき生物が生まれた。

 

 百万年ぐらい経った頃だろうか。

 

 気分が良かったので思わず力を与えてしまった。

 

 大した力ではなく、ほんの少し他の個体より優れる程度の力だ。大丈夫大丈夫。

 

 そういえば、神様から貰った英霊の座的なものだが怖くて未だに覗けていない。大丈夫大丈夫。もう少し後で覗いても大丈夫。大丈夫な筈。うん。

 

 

 

 

 更に二百万年が過ぎた。

 

 進化し、より人間らしくなった個体についまた力を与えた。

 

 前に力を与えた個体の子孫でもあったから感慨深い。

 

 この頃から進化のスピードは加速し、百数十万年も経てば現行人類が生まれた。

 

 それにより、ようやく人類史が始まった。

 

 これから人類史に名を轟かせた英雄達が生まれ、偉業を果たし、歴史に名を刻む。

 

 さぞ見応えがある暇潰しになるだろう。

 

 ……だがその前に、そろそろ転生者対策に色々仕込んでおくとしようか。

 

 転生者には期待しているが、それで無関係な人間を巻き込むのは本意ではない。

 

 無意味な犠牲はいらない。

 

 ならばどうするか。

 

 原作通りに進むならば被害が少なからず発生するし、転生者という存在がいるならば被害の拡大も縮小もあり得る。

 

 ーー極論。転生者さえいるならば別に原作はいらない。

 

 うん。そうだな。それにしよう。

 

 それなら話が早い。

 

 原作がどうして原作たりえたのか。

 

 それはこの地球に魔導師による組織が存在しなかったからだ。

 

 地球は魔法にたいして何の対抗手段も持たない。だから原作では時空管理局という組織に干渉されたし、ジュエルシードや闇の書に何も出来なかった。

 

 ならば組織を作ろう。

 

 外から訪れる超常的な存在に対処する組織を。

 

 ループのお陰で組織を作った経験なら豊富にある。何も問題はない。

 

 思いついたなら即行動だ。

 

 まず組織を作るためには人が必要である。

 

 外からの脅威に対抗でき、人類の守護者足り得る資格を有した者達が。

 

 俺はそれに心当たりがあった。

 

 英雄である。

 

 人類史に名を刻むであろう英雄達こそ守護者に相応しい。

 

 彼らに力を与え、抑止力とする。

 

 これだ。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………これ型月の抑止力まんまやん。

 

 いや、流石にエミヤみたく酷使するつもりないし、あくまでも任意で守護者にするし。うん。

 

 ま、まあいい。

 

 次は与える魔法についてだ。

 

 俺の力はNARUTO、ドラゴンボール、BLEACH、fate、鋼の錬金術師の五つの世界の技術だ。

 

 その内、魔法がある世界はドラゴンボール、fateの二つのみ。

 

 だがfateの魔術はどちらかというと戦闘ではなく研究の為に研鑽されるもので、根元に至るためのもの。ドラゴンボールの魔法はユニーク過ぎるし、与えるには強過ぎる。

 

 リンカーコアを使うリリカルなのは世界の魔法をそのまま与えるのもいいが、それだと普通の魔導師はともかく、転生者を相手にするのは不安が残る。

 

 いっそ魔法以外の力を与える事も考えるべきか。

 

 しかし、力を与えるというとユーハバッハを思い出すな……。

 

 ーーそういえば、滅却師の血装って魔術回路に似ているな。

 

 ……ふむ。

 

 滅却師の血装を魔術回路の代わりにするというのはどうだろうか。悪くないアイディアかもしれん。

 

 都合よく、現行人類にはその先祖に与えた俺の力が受け継がれているわけだし。

 

 これに少し力を足せばリンカーコアがあろうがなかろうが関係なく、俺が選んだ守護者に値する者全てが魔法を扱えるようになるだろう。

 

 更に他の力も混ぜてみるのもいいかもしれない。

 

 これはテンションが上がるな!

 

 

 

 

 紀元前を過ぎ、西暦が始まった。

 

 構築した新しい魔法を人に与え、問題点を洗いだして改良する。そしてそれをまた人に与え、と繰り返していくうちに西暦になっていた。

 

 何かに熱中していると時間があっという間に過ぎるな。

 

 お陰で新しい魔法形式が完成した。

 

 名付けて血統回路式魔法。

 

 まんまである。

 

 先祖から受け継がれた力に更に俺の力を足すことで使用可能になる魔法。

 

 血管を回路に見立てて発動する魔法形式である。プリズマ世界のイリヤのあれに近いが、あれとは違って肉体へのダメージはない。そこら辺はかなり念入りに設計している。基本魔法として滅却師の静血装、動血装、聖隷を扱える。ただし用いるのは魔力であり、聖隷は魔力の絶対隷属となっている。ミッドチルダ式やベルカ式の魔法も使用出来、リンカーコアと回路を同時に使用して静血装をしたまま砲撃なんて真似も出来る。

 

 悪用禁止のために俺か血統回路式魔法を使える者から直接力を分け与えられなければ使用出来ないようにしてある。当然、遺伝もしない。親が立派でも子がそうであるとは限らない為だ。相応しくない者に魔法を与えるつもりはない。まあ、リンカーコアがあれば血統回路式以外の魔法は普通に使えるわけだが。そこまでは知らん。

 

 他にも幾つかルールを定め、それを破ればペナルティを負うように設定している。死にはしないがかなりの激痛を味わい、回路の色が青から赤に変わるといった具合に。

 

 その中には魔法の秘匿も含まれている為、魔法の存在が表に出ることはなく、歴史は俺が知るものと大差なく紡がれている。

 

 せめて人類が自力で魔法を見出だすまでは秘匿するつもりだ。

 

 いきなり魔法の力を人類に与えてもろくな事にはならないだろうからな。

 

 それぐらい俺は人間を信用している。

 

 

 

 

 西暦に入ってから少し経った頃、外の世界から侵攻を受けた。

 

 アルハザードと呼ばれる場所から来た魔導師だといい、原作のミッドチルダ以上の技術力を有し、ロストギアクラスの兵器を大量に戦場に投入可能な戦力を有していた。

 

 控えめに言って頭がイカれている連中で、ジェイル=スカリエッティ以上にマッドな奴等が掃いて捨てるほど存在した。

 

 この地球に目をつけたのも俺が作った血統回路式魔法が理由である。

 

 この世界を守るために作った魔法が、逆にこの世界に災いを呼び寄せる事になった事態に溜め息しか出てこない。

 

 その時代の守護者達は外から来たアルハザードの魔導師にたいして最初は交渉で何とかしようとしたわけだが、何が何でも魔法の秘密を手に入れたいアルハザードの魔導師と、世界を守護するための力である魔法を秘匿したい守護者達とでは噛み合わず、しまいにはしびれを切らしたアルハザード側からの宣戦布告によって戦争が始まった。

 

 いかに守護者でも、技術力があり、ロストギアクラスの兵器を大量に投入する魔導師が相手では力足りず、その時代の守護者だけではなく、過去に守護者として活動していた英雄達までもサーヴァントとして呼び出し、戦場に送り込むはめになった。戦争は熾烈を極め、最終的には俺が直接前に出て戦争を終結させた。

 

 流石に周辺の次元世界をまとめて消し去るような兵器を使われては堪らないからな。

 

 ーーそして、アルハザードは滅びた。

 

 アルハザードは虚数の海に沈み、その存在はお伽噺となった。

 

 原作通りといえば原作通りだが、なんだかな。

 

 まあ、過ぎた事はどうでもいい。これからの話をしようか。

 

 今回の戦争を経て守護者システムは大幅な修正が必要になった。

 

 今回のように現役の守護者達で対応出来ない場合、その度に俺が直接干渉するのでは守護者がいる意味がない。

 

 なので現役の守護者でどうにもならない事態に陥った場合、過去の英雄達を守護者としてサーヴァントの身で召喚し対処するシステムを構築。更に、そもそも力の差や技術力がかけ離れ過ぎていて戦いにならないといった事がないように、守護者に能力と道具を貸し与える事にした。

 

 以上の要素を守護者システムに追加した。安定した戦力を揃え、同じ土俵で戦えるようにするために。

 

 尚、サーヴァントとして再び守護者の使命を果たした者には報酬を与える事にした。流石に新しい命は与えられないが、サーヴァントとして現世を楽しむ時間くらいは与えられる。その方がやる気が出るだろうしな。

 

 

 

 

 

 アルハザードとの戦争から数百年が経ち、千年が過ぎ、原作まで残り数十年を切った頃、再び外の世界から侵攻を受けた。

 

 相手は時空管理局。

 

 原作崩壊の足音が聞こえる……!

 

 ーーまあ、うん。こうなるかなあとは思ってたよ。

 

 原因は俺が守護者達に与えた道具。

 

 俺がループした五つの世界から持ってきた様々な道具が管理局の目に留まったらしい。

 

 控えめにいってロストロギアクラスの道具が殆どだからな。聖杯とか崩玉とか。

 

 それら全てが俺の管理下にあるといっても、管理局としては、はいそうですか。と放置出来る筈もない。

 

 守護者達の中には俺の事を神と同一視している奴等もいるせいか、神から与えられた道具を管理しようなどとほざく奴等にはあまりいい顔はしなかった。俺としても原作の管理局を知るがゆえに守護者達を正しいと思えるが、俺の行動が裏目に出て戦を招いている事態にとても頭が痛い。

 

 そして戦争が始まったが、大変なことになった。

 

 ……管理局が。

 

 考えてみれば当たり前の話だ。

 

 アルハザードを仮想敵として強化した守護者達に管理局が叶う筈もなく。

 

 あっさり敗北。

 

 管理局はすぐさま軍を引き返して引きこもってしまった。

 

 知ってた。

 

 うん。まあ、そうなるよな。

 

 ロストロギアを自由自在に振り回す敵とか厄介だよな。うん。

 

 分かるぜ。その気持ち。

 

 守護者達もそうだった。

 

 だから戦力を揃えた。

 

 力を与えた。

 

 その結果がこれである。

 

 原作を知っている身としては複雑だが、こうなる事は守護者を考案し作り上げた時から分かっていた事である。

 

 まあ、管理局にはちょっと大人しくしていてもらおう。なに、代わりにジュエルシードも闇の書も解決してやるんだ。な?それでいいだろう?うん?

 

 

 

 

 ーーその後の話だが、管理局はこの世界を第97接触禁忌世界とし、以後干渉をしてくる事はなかった。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 ……………………わけではない。

 

 真正面から来る事がなくなった代わりに、秘密裏に潜入しての守護者やこの星の調査をするようになった。

 

 見つけ次第守護者達が対処しているが、数は一向に減らない。

 

 むしろ手口がだんだんと巧妙化しており、守護者達の目も時々振り切るようになっている。まあ、俺の目は誤魔化せないので少し早いか遅いかの違いしかないが。

 

 投入されている奴等も最近は傭兵や賞金稼ぎのようなならず者まがいの連中が主で、管理局が直接人員を送るのは稀である。ただそんな奴等が多いせいで被害が少なからず出てきてしまっているのがなあ。

 

 守護者達の対魔導師戦闘における経験値を積めるのは有り難いが、被害が出ているのは見逃せない。守護者達も頑張っているのだが。俺があまり手を出すのもよくない。……どうするべきか。

 

 

 

 

 


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