私はその日、運命に出会った。
お父さんが事故で入院し、大変になった家族に迷惑をかけないよう一人ぼっちでいた私は、いつものように一人で公園にいたら、知らないおじさんに襲われた。
私がいい子じゃなかったからこうなったのかな。
そう、諦めながら思った瞬間、横から凄い助走をつけて跳び蹴りをおじさんに当てた女の人が現れた。
その人は白く綺麗な髪に、まるで宝石のような赤い瞳をした美人さんで、私は思わず見惚れていた。
その人は倒れたおじさんに馬乗りになると、一言二言何かを話しかけた後、あっさりと解放した。
また襲いかかってこないかと心配したけど、女の人はお話ししたからもう大丈夫って言ったの。
大体の奴は一発かましてお話すれば聞いてくれるとその人は締めくくり、その通りに起き上がったおじさんは私に謝った後警察に行きました。
その時私の頭の中に閃いた事は決していい子の考える事じゃなかったと今になっては思うけど、その時の私はそれしかないと思い込んでいて、女の人の名前すら聞かずに家に帰ったの。
そして、出迎えたお兄ちゃんに走った勢いのまま突っ込んで、何もないところで躓いて、そのまま頭からお兄ちゃんにぶつかってしまいました。
「かっはッ!」
「恭ちゃんの恭ちゃんが!?」
「なのは!?」
お母さんとお姉ちゃんが何だか焦った声を上げたけど、私は気にも止めずに叫んだ。
「お兄ちゃん!私を鍛えて!」
それから数年。
私は、運動音痴を克服し、並みの大人なら素手で制圧出来るようになっていた。
周りからは聖祥の白い悪魔とか魔王とか呼ばれているけれど、私はただお話をしているだけ。ちゃんと話せば皆分かってくれるから、私はなんと言われようとかまわない。
ただあの日出会った女の人のようになりたくて、私は今日も頑張るのだ。
私はその日、運命に出会った。
私が気味の悪い三人の男の子達に囲まれて困っていた時、助けてくれた猫。もとい女の人に出会ったのが始まりだった。
その人は魔法が使えたり猫に変身したり魔法少女に勧誘したりと訳が分からない、とにかく意味不明な人だった。美人で結構ボインやったけども!
けれど、私はそれ以来一人ぼっちじゃなくなった。
親を早くに失って、父の友人が後見人になってくれたけれど遠くにいて一度も会ったこともなく、付き合いのある大人といったら病院の担当医である石田先生ぐらい。足のせいで学校にも行けず、一人で過ごす日々。
そんな日々も彼女と出会ってからは変わった。
というか変わり果てた。
気が付いたら庭に妙にふてぶてしい黒猫がいたり、屋根裏からおかっぱ頭の忍者みたいなお姉さんが現れたり、白い仮面を被った黒いのがいたり、クローゼットの中から出所不明の大金が雪崩れてきたり。
……うん。
極めつけに、私の足は家に前からあった本の呪いだとかで魔法であっさり治してしまい、四年経った今では足のリハビリもとっくに終わり、復学して普通に学校に通い、今では皆勤賞更新中である。
なんだろう。なんか違う。なんかこう、な?例えるなら魔法少女の第二期の薄幸のヒロイン枠でその健気さでファンのハートをがっちりキャッチする感じだったのに台無しにされた感じがするんよ。
なんやろな、これ。
まあええわ。とりあえずそろそろ学校だからあの子達呼びに行こか。
あの時から一緒に過ごしてきた大切な家族を。
今日も私の一日は始まる。
願わくば、こんな日々がずっと続きますように。
私はその日、運命に出会った。
いきなりだった。
いつものようにリニスに魔法を教えてもらっていたら、突然時の庭園全体が大きく揺れ、激しい爆発音が響きわたった。
リニスは授業を中断すると私とアルフを安全な場所にいるように言って何処かへ慌てて向かっていった。
この時の私は何か嫌な予感がして、リニスの言いつけを破ってお母さんの所を目指した。
そして、お母さんのいる場所に辿り着いたとき、私は見た。
お母さんとリニスを襲う白髪の男の人と、その男を一撃で叩き潰す白髪の女の人を。
それからの事は急過ぎて私にもよく分からない。
私には姉がいて、実は姉のクローンで、お母さんが病気で先が長くないとか。
そんな事実を知って、ショックを受ける暇もなく姉が生き返って、お母さんの病が治って、うん。
気が付いたら私は小さな姉と優しくなったお母さんと、リニスとアルフも一緒に過ごしていた。
正直その時の私には意味が分からなかったけど、今なら分かる。
私は幸運だったということが。
だから私は、あの人、うちはカエデに憧れた。
悲劇を喜劇に変えるあの人に。