短編集。またの名を駄文廃棄場。   作:ゆらぎみつめ

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間桐臓硯に転生したらいろいろやっちまった件。2

 

 

 

 

 第四次聖杯戦争がいよいよ始まるわけだが、ここに来るまで本当に長かった。それはもう長かった。

 

 まず織田信長ことノッブには無事に出会えた。

 

 その父親の代から臣下として仕え、ノッブが生まれ、教育係になり、親密(意味深)になり、共に戦場を駆けた。

 

 そして本能寺の変が起き、俺は歴史の表舞台から姿を消した。

 

 それから約三百年後には聖杯戦争が始まった。

 

 第一次はやはり儀式がまともに出来ず、仁義なき殺し合いに発展。俺は召喚したバーサーカー(ヘラクレス)で無双してちゃっかり聖杯獲得。適当な願いを叶えてもらう。

 

 第二次は色々ルールを加え、更に令呪も与える。第一次では俺だけ令呪を作って持っていたので余裕でした。今回もバーサーカー(ランスロット)を召喚して無双。聖杯獲得。今回も適当な願いを叶えてもらう。

 

 問題の第三次。アインツベルンはやはりアヴェンジャーを召喚した。が、予め知っていたので対策済み。特製の魔術礼装で正も邪もない純粋な魔力の塊に変えて聖杯に叩き込んだ。むしろナチス・ドイツとダーニックがうざかった。が、無事に聖杯は完成し、そ知らぬ顔で獲得。適当な願いを叶えてもらう。三度目という事で流石にアインツベンと遠坂から文句を言われたが、かたや反則、かたや特に目立った事をしていない奴に言われる謂れはないと突っぱねる。

 

 そして第四次。遠坂桜を引き取ったが原作みたく蟲蔵で陵辱などせず、ちゃんとした魔術師としての教育を行う。間桐の魔術刻印はもうこれ以上先がないから株分けか新たに家を興させるしかないだろうが、まあ、原作よりは百倍マシなのだから文句は言わせん。

 

 間桐雁夜は原作通り家を飛び出していたが、桜の事で一度帰ってきて色々話をし、なんとか納得したのか再びどこかに行ってしまった。

 

 そうなると間桐の魔術師は俺しかいないので今回の聖杯戦争も俺自身が出る事になりそうだ。

 

 正直下手な奴出して聖杯戦争が狂ったら余計手間だし大変だから仕方がない。

 

 さて、そうなるとサーヴァントはどれにするか。......原作通りバーサーカー(ランスロット)で行くとしようか。愉悦愉悦。

 

 

 

 

 side.アインツベルン

 

 

 

 ドイツにあるアインツベルンの城にて、衛宮切嗣とアイリスフィール・フォン・アインツベルンは此度の聖杯戦争に参加する他のマスターについて話し合っていた。

 

「――しかし問題は、あの男がどう出るかだ」

 

「第一、第二、第三次の聖杯戦争を勝ち取ったマスター。間桐臓硯の事ね」

 

「ああ。確かに言峰綺礼は恐ろしいが、しかしこの男ほどではない」

 

 アインツベルンに婿養子に入り、第四次聖杯戦争におけるアインツベルンのマスターとなった『魔術師殺し』衛宮切嗣は、机に広げた資料のある一枚の書類を指で叩いた。

 

 その資料には青髪の見目麗しい青年が映った写真が付いている。

 

 その男の名は、間桐臓硯。

 

 間桐家現当主にして、約五百年もの長きに渡り生き永らえてきた人外。

 

 聖杯戦争を三度勝ち抜いてきた真の強者であり、現代に生きる魔術師の中でも五本指に入るであろう存在。

 

 その出自は、元々ロシア系の魔術師であり、何を思ったかある程度魔術師として学問を修めると、日本に渡った変わり者。

 

 当時の魔術協会に惜しまれるほど有能な魔術師だったが、日本に来るや否や尾張の織田勢力に属し、共に戦場を駆けたと耳を疑う事をしでかした大うつけ。一応、神秘の秘匿は十分に気を使っていたようで、全く魔術を使わずに参加していたらしい。これは当時の魔術協会によって調査され、真実とされているが、正直魔術師が魔術を使わずに戦場に出る時点で大変な気狂いにしか思えない。

 

 それから織田信長が本能寺の変にて自決してからは一旦歴史の表舞台から姿を消し、次に現れたのは幕末の新撰組。当時天才剣士でありながらも病弱であった沖田総司と共に戦場を駆けたと言われている。

 

 それから新撰組が解体してからは再び姿を消したが、それからは歴史の裏で協会の封印指定執行者と講師をバイト代わりにこなしては冬木にて聖杯戦争に参加したりなど好き勝手に行動している。

 

「この男には僕がとる戦術の全てを把握されていると判断した方がいい。僕がフリーで活動していた時期に何度か遭遇した事がある。その時に少し矛を交えたが、相手にさえしてもらえなかった。魔術師としての腕は超一流。ロード・エルメロイですら足元にも及ばない上に、実戦経験もあまりに桁違いだ。かの第六天魔王と天才剣士と肩を並べた事もある。更に他の魔術師とは違って科学を毛嫌いしていないどころか、むしろ科学の利点と魔術の利点を上手く利用する器用さがある。間違いなく、彼は今回の聖杯戦争最強の敵だ」

 

「弱点はないのかしら」

 

「戦闘面に関してはまずないね。恐ろしいことにサーヴァント並の戦闘能力だ。第三次では単独でアインツベルンのサーヴァントを打倒しているぐらいだし、もしも天寿を全うすれば確実に英霊の座に迎えられるだろう。だが、だからといって他の面にしても大した弱点もない。人質になるような縁者もいないし、いたとしても人質の価値がない」

 

「......手詰まりね」

 

「ああ。だがなんとかしてみせる。僕の望みは何としてでも叶えてみせる」

 

「ええ。あなたなら出来るわ。キリツグ」

 

 

 

 

 

 side.遠坂

 

 

 

 

 冬木にある遠坂邸地下にある魔術工房には、二人の男の姿があった。

 

 一人は上品な赤のスーツに身を包んだ顎髭を蓄えた男性。

 

 もう一人はがっしりとした体躯をカソックに収めた男性だ。

 

「......やはり今回も間桐の翁は参戦するようだ」

 

「間桐の......。あの『聖遺物狂い』がどうかしたのですか?」

 

「ああ。彼は今回も聖杯戦争に参加するらしいんだ」

 

「たしか第一次から第三次までの全ての聖杯戦争で勝利を収めた魔術師でしたか」

 

「そうだ。聖杯戦争始まりの御三家の一つ。間桐の現当主にして五百年を生きる大魔術師。彼の偉業は今尚魔術協会で語り継がれ、その影響力は未だ根強い」

 

「そんな男が何故また聖杯を?」

 

 カソックを着た男、言峰綺礼は尋ねながらも大した興味はないのか手元の資料を読んでいる。

 

 その資料にはボサボサの髪に目が死んだ魚のような男の写真が映っている。

 

 この場にいるもう一人の男、遠坂時臣はそんな綺礼の様子を一瞥し椅子に体重を預ける。

 

「彼にとって聖杯とはそこらの便利な魔術礼装の一つでしかないが、しかしだからといって放置していい代物でもない。だから悪用されないように手に入れておこう。その程度の気持ちで彼は聖杯戦争に参加している」

 

「彼は根源を目指さないのですか」

 

 魔術師にとっての到達点。

 

 根源に至る事。それだけのために数多の魔術師達は魔導の道を歩む。中には魔術使いと呼ばれる者達もいるが、そんな者達は少数だ。間桐臓硯は聞いた話だけで判断すれば魔術師の典型といっていい。そんな男が何故、聖杯を得ながらも未だに根源へと至らないのか。もしかしたら。綺礼の脳裏にそんな思考が過る。

 

 だがその淡い希望は、自身の師によって否定された。

 

「いいや、彼も根源を目指す魔術師の一人だ。ただ聖杯には頼らず、己の魔導による根源の渦への到達こそを望んでいる」

 

 お陰で聖杯による根源への到達は今現在も可能である。

 

 間桐の翁の目指す己の魔導のみでの根源の渦への到達はたしかに素晴らしい理想だろう。

 

 だがそこにあるのならば一も二もなく飛びつくのが魔術師ではという思いもある。

 

 優雅ではないが、それが魔術師だと理解している己からしてみても、間桐の翁は魔術師としてとても誇り高い人物だと認めている。

 

 だからこそ。

 

 遠坂時臣は重いため息をついた。

 

 彼は強敵である。

 

 時計塔のロードよりも、魔術師殺しよりも、尚強大な敵である。

 

 五百年を生きる大魔術師。その実力は己に計れる領域には既にないだろう。宝石爺。大恩ある大師父と並べても見劣りしないのではないか。凡才たる我が身からすればどちらも魔導の遥か先を行く魔術師である。そう見えて仕方がない。

 

 それ故に養子に出す宛に困っていた次女の桜を安心して任せることが出来たのだが。かの魔術師の下で研鑽を積めばあるいは、そう思ってしまうぐらいには期待もしていた。

 

 今はその全てが心を重くする。

 

 やはりかの魔術師に勝てないのではないか。

 

 ネガティブな思考が止まらない。

 

 だがそれでも、それでも今回の聖杯は遠坂の物となる。という思いもあった。

 

 絶望的な状況でありながら、その闇を切り裂く希望を己は既に手にしている。

 

 机の引き出しから小さな箱を取り出す。

 

 中には世界で最初に脱皮した蛇の抜け殻の化石が入っている。

 

 これを用いれば、考えうる限り最強のサーヴァントを召喚出来る。

 

 古代ウルクの王ギルガメッシュ。彼を召喚出来れば遠坂の勝利は確定といってもいい。

 

「綺礼。この戦い、我々の勝利にて幕を引こう」

 

「はい。我が師よ」

 

 

 

 

 side.時計塔

 

 

 

 ロンドンにある時計塔にて、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは聖杯戦争に関する資料を眺めながら、分かりやすく頭をかかえて項垂れていた。

 

 その隣では婚約者であるソラウ・ヌァザレ・ソフィアリが、自らの爪をつまらなそうに眺めながら横の婚約者を冷たく見下ろしている。

 

「ケイネス。いつまでそうしているの」

 

「ソラウ......」

 

「聖遺物が盗まれたのは過ぎたことよ。代わりにランサーを召喚出来たのだから良かったじゃない。貴方の考案したアイディアもちゃんと機能しているし、何も頭を抱える必要なんかないわ」

 

「ソラウ。しかし......」

 

「なに?」

 

「いや、たしかに聖遺物の件以外は万事上手く行った。だがな......」

 

 ケイネスは言いずらそうに視線を下に向け、二つの目と目が合い、思わず上を向いてしまった。

 

「あ、主......!」

 

「ええ。全て上手く行ったわ。召喚するサーヴァントの逸話を正確に把握していなかったせいで私が魅了にかかってしまったけどね」

 

「私が悪かったソラウ!だからお願いだ!そろそろ機嫌を直してもらえないだろうか?」

 

 頭を下げるケイネス。それを見下ろすソラウ。

 

 そして、ソラウの下から声が慌てて割って入った。

 

「お待ちください我が主よ!悪いのは全て私です!ですからどうか!頭を上げてください!頭を下げるのは私ですから!」

 

「ええい黙れ!それ以上どうやって頭を下げる気だ貴様は!」

 

 ソラウの下。四つん這いになり彼女の椅子になって頭を垂れていた男は、つい先程ケイネスが召喚したサーヴァントのランサーである。

 

 真名はディルムッド・オディナ。

 

 フィオナ騎士団の筆頭騎士にして、愛の黒子により主君の妻を望まずとも奪ってしまった男。最期は主君から見殺しにされた経歴を持つが、己の婚約者によって椅子にされている姿はあまりに哀れで、婚約者に魅了をかけた狼藉者と思っていても見ていられない。

 

 既に魅了を自力で解いているソラウは、ランサーの背を椅子に足を組み替え、ケイネスを睨んだ。

 

「ケイネス。この事はあの方に伝えておきますね」

 

「ま、待ってくれソラウ。あの方には、あの方にだけは伝えないでくれ」

 

 途端、冷や汗を垂らし始めたケイネスは、しかし何を言っていいのか分からずわたわたとするばかり。

 

 ケイネスの脳裏に過るのは、師と仰ぐ一人の魔術師の姿が。

 

 間桐臓硯。

 

 ケイネスが未だ若き学生であった頃に出会ったその男は途徹もなく優れた魔術師だった。

 

 当時既に天才の名を欲しいままにしていたケイネスに挫折と敗北を味あわせた男であり、また、魔術師としての在り方とソラウとの仲を取り持ってくれた恩師である。

 

 彼には時計塔にいる大体の魔術師にとって頭が上がらない存在だが、ケイネスは個人的に更に頭が上がらない。

 

 まずあの頃の天才の名に天狗になっていた鼻をへし折られ、当時の自分の最高傑作といっていい論文をその場で全て事細かく訂正をされて敗北を味わい、魔術師としての科学蔑視の在り方を身一つで戦場に直接叩き込まれる事で矯正され、ソラウとの仲を互いに愛し合う関係になるよう仲を取り持ってくれた。

 

 それ故に、ケイネスは彼に逆らえない。

 

 あれから十年以上経ち、今や自分も講師をしているが、未だに顔を会わせれば頭を下げるばかりだ。

 

 そんな彼にこの失敗を伝えたらどうなるか。

 

 根性を叩き直す名目で死徒狩りに連れていかれるか、それともソラウの前で過去の恥ずかしい話を延々と話されるか。

 

 とにかく自分が精神的に破滅する未来しか見えない。

 

「ソ、ソラウ」

 

「ケイネス」

 

 静かな、しかし断罪するかのような冷たい声音。

 

 それを聞いた瞬間、ケイネスは死を連想した。

 

「諦めなさい」

 

「ソラウウウウウ!!!」

 

 

 

 

 side.とある未熟な魔術師

 

 

 

 ウェイバー・ベルベットは回想する。

 

 かの偉大なる魔術師との邂逅を。

 

 それはある種の神との邂逅に等しかった。

 

 彼と出会い、会話した事は今も尚この胸に焼き付いたかのように鮮明だ。

 

 間桐臓硯。

 

 五百年の年月を生きた大魔術師。

 

 まだマキリ・ゾォルケンを名乗っていた頃、衰退を始めていた家を二十代の若さで立て直し、突如日本に渡った男。

 

 日本に渡った理由は分からないが、彼ほどの魔術師にしか分からない深遠なる理由があったに違いない。

 

 彼の偉業によりもたらされた物は当時の魔術協会をして度肝を抜くものであったらしいが、それは今尚魔術協会で取り上げられる代物で、一時期嘘か真かかの魔術師の論文、礼装を調べる学問を立ち上げるかどうか議論されたとさえ言われている。

 

 そんな魔術師であるから、ウェイバーは最初鼻持ちならない時計塔のほとんどを占める血統主義の魔術師だと見下していた。

 

 だから実際に会い、彼と会話したウェイバーは己の勘違いを恥じた。

 

 ――代の浅い魔術師が代を重ねた魔術師を超える。なるほど、素晴らしいアイディアだ。それを現実の下に出来たならば、君は魔導の歴史に名を残すだろう。

 

 最高傑作と自負する論文を彼に見せた後の感想だ。

 

 その瞬間、ウェイバーはあまりの事にその後の会話が全く頭に入らなくなったが、しかし著名な魔術師に認められた高揚感に支配された彼にはどうでも良かった。

 

 やっと自分の才能が認められたのだ。

 

 嬉しくないわけがない。

 

 その時の事を何度思い返してみても胸が張り裂けんばかりに高鳴ってしまう。

 

 だからこそ、その論文をあの講師、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトに見せた時の事を思い出すだけで腸が煮え繰り返った。

 

 ――くだらん内容だ。こんな物をあの方に読ませたのか?正気を疑うぞウェイバー・ベルベット君。

 

 心底失望したと、怒りすら滲ませた言葉をケイネスは投げつけた。

 

 許せなかった。

 

 己の全てを否定されたように感じて。

 

 だからつい出来心でケイネスに送られる筈だった聖遺物を盗んだ。

 

 そして聖杯戦争の事を知り、直ぐ様日本に渡った。

 

 己の才能を証明するために。

 

 

 

 

 

 

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