俺はループから解放された。
……のだが、それは最初のループであり、まだ後四つあるとの事。そういえば転生特典て複数だったりしますよねー。神様太っ腹ー。ふざけんなくそが。
そして次のループはfate/stay nightの世界。やべえ。神の力でも安心出来ねぇ。
今回のループ終了条件は
うん。無理ゲー。
型月屈指のチート二つとか。まず無理である。
正直鋼の錬金術師の世界は原作知識さえあればどうにかなる世界だが、fate/stay nightの世界はそういう次元じゃない。主人公はバンバン死ぬし人理崩壊するし混沌過ぎる。神の力でもかなり辛い。
まあ、もっとも、神様の意向で鋼の錬金術師の世界で得た力はループの間は没収するらしく、再びゼロからのスタートになるのだが。ご丁寧にアイテムボックスの中身も空にされていて夢も希望もない。
神は死んだ!むしろ◯ね!
そんなこんなで心機一転、fate/stay nightの世界でのループは始まった。
悲報。俺氏衛宮士郎に転生。しかもループ転生先も衛宮士郎固定。なんでさ。
あの数多あるルートの大半がBAD ENDでお馴染みの主人公で料理が得意でブラウニーな少年とか。ええ?もう一度いうけど、なんでさ。
どうせならギルガメッシュに転生させてくれよ神様。
……まあ、考えようによってはまだ優しいループなのかもしれない。
無限の剣製を手に入れる目処が最初からあるのだから。
鋼の錬金術師の世界でもそれぐらいして欲しかった。
どうやって王の財宝を手に入れるか全く見当もつかないけどな!
というかアイテムボックスあるから要らなくない?ダメ?そですか。
仕方ない。手始めに無限の剣製を手に入れて、王の財宝の事は後で考えよう。そうしよう。そうでなければ絶望で折れそうだ。
最初のループ。
冬木大災害を経験する。正直鋼の錬金術師の世界で内在闘争を経験していなければヤバかった。この世全ての悪はアカン。アインツベルンぜってえ許さねえ。原作を生き残ったら真っ先に潰してやる。
その後衛宮切嗣に引き取られ、魔術を教わり、月下の誓いを経て、俺は第五次聖杯戦争に向けて本格的に準備を始めた。
魔術回路を毎日作る鍛練を原作と同じように行う。そうでなければ宝具の投影に耐えうる魔術回路は手に入らない。原作士郎よりも切嗣から魔術に関しては多く学んでいるので簡易的な結界や暗示、治癒や修復等の魔術も使えるが、五十歩百歩だ。あまりあてには出来ない。流石投影特化。
投影の魔術で投影出来る刀剣類を増やすために度々旅行にも出掛けた。博物館や展示会等を巡って古刀や神秘に満ちた物を見聞きし、投影出来るように鍛練を欠かさなかった。
肉体の鍛練も並行して行う。鋼錬金術師の世界で鍛えた身体能力は初期化されたが、記憶と経験は残っているのでそれを基に戦える肉体を作っていく。最低でも鋼の錬金術師の世界ループ終盤レベルの身体能力は欲しい。
間桐桜、間桐慎二とは切嗣が存命の頃から知り合っていて、既に友好関係である。原作通りに間桐桜は衛宮邸に通うようになったが、スルーでいいだろう。今の俺にはどうにもならない。桜ルートは今の俺には難易度が高過ぎる。
そうして、色々と備えて過ごしていたらあっという間に時は過ぎ、聖杯戦争が始まった。
高校二年に上がり、そろそろ聖杯戦争が始まるかという頃。
夢を見た。
聖剣を手にした少女の夢を。
俺は頃合いだと判断し、夜の学校でランサーに殺されるへまをせず、自宅で余裕を持ってサーヴァント召喚を行った。
召喚されたのはやはり、セイバーである騎士王アルトリア・ペンドラゴン。
魔力のパスはしっかり繋がっており、宝具は頻繁に使用出来ないが通常の戦闘に問題はないだろう。原作と同じく霊体化出来ないらしいので、藤村大河や間桐桜には切嗣関係でホームステイに来た子として紹介するしかないだろう。
原作士郎程ではないが料理は出来るのでセイバーに料理を振る舞いながら聖杯戦争について話し合う。流石にエロゲ主人公並のコミュ力はないが、一時的に協力し合うぐらいにはコミュニケーションは取れる。ちなみにその日はある程度の方針を決めて眠りについた。
尚、寝室は同じである。アサシンを警戒したセイバーに圧され、仕方なく同じ部屋で就寝である。いくら原作より多少は魔術が出来るとはいえ、キャスターに狙われたらどうしようもないので認めざるを得なかった。
しかし流石はメインヒロイン。可愛いな。
青はオワコンと最近では赤やら黒やらに押されているが、うん。思わず令呪を使っていけないことをしてしまいそうだ。実年齢はともかく、今の俺は現役高校生だからね。性欲旺盛な時期だから仕方ないね。
まあ、流石にそんなくだらないことに令呪は使わないけども。メディアの元マスターみたいにはなりたくない。
次の日、藤村大河と間桐桜に一週間学校を休むことを伝えた。ホームステイにきた設定のセイバーの世話を焼くことを理由に強引に納得させたはいいが、後が怖い。
仕方ないと諦め、朝食を食べた後セイバーと一緒に買い物に出掛けた。
数日分の着替えを用意するためである。
いくら本人が女を捨てたとかいってもまごう事なき美少女だ。霊体化出来るならともかく、出来ないなら常に鎧を着させておくのも良くない。間桐桜はいいが藤村大河に不審に思われるのは不味い。無駄に野生のカンが働くから厄介だ。
途中、ゲーセンに寄ったり、ぬいぐるみをプレゼントしたりとしながらも買い物を終え、家に帰ろうとすると目の前に雪の妖精がーー。
ループである。
まさかのイリヤ遭遇で死亡である。
原作より強いからって油断した。
バーサーカーにぺしゃんこにされてデッドエンド。次のループへゴーである。ちくしょうめ。
そしてループした先は月下の誓い直後だった。
まさかのここからループとか。
いやまあ、都合がいいからいいんだけどさ。今回のループはサービスが行き届いていて怖い。
とりあえず現状を確認しよう。
魔術回路を確認。二十七本。本数に変化無し。やはり増やすなら他から持ってくるしかないようだ。これは原作を終えてから考えるとしよう。
次にアイテムボックスの中身を確認。前ループで投影した物等が大量にあった。投影たのしかった。
そして体の調子を確認する。子供の姿に戻っているが前回のループ分身体能力は上がっている。ふと体に違和感を感じて調べてみれば、なんと俺の体が
けれど色々と確認していくうちに、メリットが数多くあるのが確認出来た。
まず、全て遠き理想郷の投影が可能になった事。セイバーとの繋がりがない状態でも投影出来るようになっており、投影した劣化品とはいえ全て遠き理想郷を投影出来るようになったのは素晴らしい利点だ。
次に投影にかかる負担が軽くなっている事。これも多分全て遠き理想郷と融合したお陰だろう。未だ固有結界に手は届かないが、切り札の負担が軽くなるのはいい。
最後に治癒力がかなり上がっている事だ。全て遠き理想郷のお陰か、軽い怪我なら数秒で完治してしまうレベルだ。また体も遥かに頑丈になっており、サーヴァントの攻撃でも数回は耐えられそうだ。
これなら今回のループはかなりいいところまでいけるだろう。
先ずは聖杯戦争を生き残る事。それが大切なのだから。
やったぜ。さんるーぷめだぜい。
再びイリヤエンドとか。俺は成長しないのだろうか。馬鹿野郎。
バーサーカーは鬼門。せめてエミヤならまだなんとかなりそうなのに。ちくしょうめ。
投影のレパートリーとしてヘラクレスの斧剣と
身体能力も短時間ならばサーヴァントと戦える程度に馴染んで来ているが、それだけ。本気を出されたらどうしようもない。
とりあえず原作を生き残ることが最優先だ。頑張ろう。
七十ループ後。
ようやく原作を生き残ることが出来た。
まさか原作に近しくなるよう行動したら簡単に行けるとは思わなかった。
あまりにどうしようもなかったから原作通りにしてみれば、あっさりと原作を生き残ることが出来た。俺の努力は一体……。
まあいい。
お陰でエミヤの腕入手に成功したのだから!
桜ルートに入り、紆余曲折ありエミヤの腕移植。その後色々あって死亡し、次のループへ。
ループを越えたため、エミヤの腕は完全に取り込まれ、無限の剣製を入手。
エミヤの記憶と経験。投影魔術にサーヴァントとしての霊的強度も少しだけ手に入った。
とても素晴らしい成果である。干将・莫耶も投影出来るようになったしね。
これで後は王の財宝のみだが、手に入れる目処が立たない。
原作通り時計塔に来たが、さてどうするか……。
百ループが過ぎた。
原作の衛宮士郎のように世界を回ったり、正義の味方して処刑されたり、間桐桜を助けるために奔走したり、遠坂凛と結ばれたり、執行者になったり。
浅上藤乃の歪曲の魔眼を手に入れたり、衛宮士郎専用の魔術刻印を作ったりもした。そのせいで封印指定にもされたが、それは余談である。
様々な衛宮士郎の可能性というか、未来というか。とにかく様々な結末を迎えたわけだが、王の財宝を手に入れる術は未だ見当もつかない。
なので、聖杯に願うことにした。
聖杯であれば、無茶な願いも叶うだろう。余程の馬鹿げた願いでもない限り。
その為に俺は、聖杯を創造する。
冬木の聖杯は使い物にならない。ならば新しく作るしかない。
だから手始めに魔術回路を増やすことにした。
稀代の人形師である青崎橙子に五桁に及ぶ魔術回路を持つ義手を造ってもらい、移植した。一本増やすだけでも大変な魔術回路を無数に持つ義手だ。移植すればまともに魔術を扱えなくなる代物らしいが、どうせループを利用するつもりだったので遠慮なく着けさせてもらった。ついでにエミヤの赤原礼装を内蔵した義手も造ってもらい、移植した。
次に、間桐の魔術の修得。
何ループか前に、間桐桜を救うついでにマキリの魔術に関する資料は根こそぎ手に入れていたのでこれは時間をかければ比較的容易に修得出来た。
その次はアインツベルンの魔術。
アインツベルンを襲撃し、聖杯の製造法を含む資料を根こそぎ奪い、魔術師として終わらせた。起源弾は便利だ。ついでにイリヤを助け出し普通の暮らしが出来るようにした。この時イリヤの聖杯としての理論をすっ飛ばして結果を現出させる魔術特性を再現したものを青崎橙子に加工してもらい、体に移植する。最後に遠坂凛から遠坂の魔術について学んだ。
その後、アインツベルンの魔術を基に新しい大聖杯の創造に入り、並行して外付けの魔術回路を青崎橙子作の義手を投影で大量に用意し、ループの度に移植を繰り返した。刀剣以外の投影は大変だが不可能ではないのでどんどん行った。
そうして揃ったのは、数百のループを越えてようやく完成させた大聖杯と小聖杯に、数百のループの間増やし続けた七騎のサーヴァントに匹敵する魔力を生み出す魔術回路。俺は考えた。聖杯を発動出来るだけの魔力さえあれば七騎のサーヴァントはいらないんじゃないか。と。
小聖杯に魔力を注ぎ、願望機として完成させる。その願望機を使用し、大聖杯を俺の魔術回路に融合。これにより、俺そのものが聖杯と成った。
さて、これで王の財宝を手に入れる事が出来る。
英霊の座にアクセスし、ギルガメッシュを読み取り俺自身にインストールする。
プリズマ☆イリヤにて、エインズワース家が置換魔術により造り上げた英霊の力を人の身で扱えるようにした魔術礼装。それを聖杯の力で再現する。
だが問題点として、かの英雄王をインストールする事は、あの自我の塊を己の内に入れるという事で、無事ではすまないという事。
だが俺にはループがある。ギルガメッシュをインストールしたと同時に、聖杯の力でもって自害する。ループする際、俺の人格だけが残る事はこれまでのループで理解していた。それで次のループにはギルガメッシュの力を手に入れた俺だけが残る。
今回のループ終了である。
千ループ近い数を費やしたんだ。
成功しなければ困る。
さあ、やろうか。
……次のループ。
ギルガメッシュの力を得るのは見事成功した。
王の財宝も、エアも、全てを我が物とする事が出来た。
お陰で今回のループが最後になるだろう。
……うん。
だけど、何故に俺はギルガメッシュとして転生しているのだろうか。
今回のループは本当に親切なのか心折なのか分からない。
だが凡人に神様の考えなんて読める筈もない。
俺に出来るのはループをいかに早く終わらせるか。それだけである。
よし、この世界のループが終われば後は三つ。頑張るぞう。