オーバーロードの世界に転生!? 古典派鍼灸師の異世界探訪記   作:鉄鍼

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第1話:プロローグ

『エラーコード《100年の揺り返し》を検知。コード《六大神》、《八欲王》を超える大規模なデータ流入を確認。予測される世界変動を緩衝するため、異空間転生システム《ユグドラシル/世界樹》を起動します』

 

 

 

『システムオールグリーン。異世界《リアル》において、転生システムに適合する魂魄体を有する人間種の検索を開始します。検索範囲を西暦2020から2119に設定』

 

 

 

『適合魂魄体を検索中………』

 

 

 

『…………』

 

 

『…………』

 

 

『………適合体を感知。時間座標……西暦2020年。アーカイブから当該時間座標における地政学データを参照します』

 

 

『…………』

 

 

『…………』

 

 

『…………』

 

 

『データ参照完了。適合魂魄体の存在する国名………日本。続いて、当該地における適合魂魄体の個体情報を収集します』

 

 

 

『…………』

 

 

 

『完了。個体名《尹藤鐡矢/いんどうてつや》。年齢28。職業鍼師・灸師・あん摩マッサージ指圧師。配偶者、子孫の存在は無し。また、同個体の未来時間においても家族構成に変化は確認されませんでした。転生による生体消失の影響は限定的であると予測されます。よって、社会的損失に対する異世界《リアル》への補填は必要無しと判断します』

 

 

 

『………これより、異空間転生システム《ユグドラシル/世界樹》は異世界《リアル》への事象介入を開始します』

 

 

 

『転生者の運命に幸多からん事を…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

 

 

(ここはどこだ?)

 

 フワフワとした妙な浮遊感の中、俺はうっすらと意識を取り戻す。身体とその外側との境界が無くなってしまったかのような、不思議な感覚だ。

 

(真っ暗でなんも見えない………)

 

 ふと、意識を周囲へと向けてみるが、真っ暗な闇が延々と広がっているようだ。そもそも、目で見ている感覚すら曖昧で、本当に感じたままの映像が広がっているかは定かではない。

 

(俺は……)

 

 何故こんな状況になっているのか、ぼんやりとした頭で考える。幸いな事に記憶は無事であるようで、自分の最期の瞬間を思い出せた。

 

(そうだ、帰り道でトラックに突っ込まれて……)

 

 そして思い出した途端に、現状について確信めいた認識が頭を擡げる。

 

(………俺は死んだのか?)

 

 

『肯定します。個体名《尹藤鐡矢》は2020年12月24日、午後7時39分53秒に死亡しました』

「うわっ!! びっくりした!」

 

 

 突然耳に飛び込んできた機械的な音声に心臓が跳ねた………気がした。

 

(いや、良く考えたら死んでるなら心臓も何もないだろ)

 

 ブラックジョーク染みた感想を思い浮かべてしまう辺り、自分は割と冷静なんだと思える。多分、驚かされたのが大きいのだろう……。

 

 

「えーと、声の主さん? 貴方は一体何者ですか? 姿が見えないみたいなんで……」

『回答します。現在、個体名《尹藤鐡矢》が意思疎通を行なっているのは、異空間転生システム《ユグドラシル/世界樹》の制御を担う、主人格(メインパーソナリティー)の1柱《二ブルヘイム》。姿が見えない理由は、個体名《尹藤鐡矢》が魂魄のみの存在であるため、視覚情報を取得できないためと推測されます』

 

 

 これはまた随分と現実味の無い答が返ってきたものだと、俺は存在しない(と思われる)頭を横に振る。目が見えていないというのも割とインパクトが強い訳だが、それ以上に気になるのは《異空間転生システム》とやらだ。まさかとは思うが、創作の設定として巷に溢れていた異世界転生とやらに巻き込まれてしまったという訳だろうか?

 

(いやまぁ、何だかんだそう言うのは嫌いじゃないけどさ………)

 

 

「あの……二ブルヘイムさん、俺は一体どうなるんですか?」

『回答します。個体名《尹藤鐡矢》の転生は、転生後世界に迫る大変動に干渉し、予測された結果を変化させる事を目的としています』

「ちなみに拒否権は……?」

『回答します。転生は確定事項です。どうしても拒否される場合、転生に際して付加される特典は失われます。その場合、転生後世界での1年生存率は0.000035%程になるものと推測されます。転生を受諾する事を強く推奨します』

 

 

 完全に強制イベント。しかも、脅迫つき。更に、拒否した場合の1年無事に生きていける確率が低過ぎとか、糞ゲーじゃねぇかよ。これはもう、受け入れるしかなさそうだ。

 

 

「わかったわかった。受諾しますとも。未練が無い訳ではないが、仕方がないから腹括るよ。で、具体的に何をすれば良いんだ?」

『回答します。個体名《尹藤鐡矢》に与えられた使命は、世界を知り、思う儘に生きる事』

「??? 成る程分からん」

『これ以上の詳細な回答は権限を有していないため不可能です。続いて、転生体の生成に移行します』

「展開早くない?」

 

 

 こちらのツッコミを意に介す事なく、二ブルヘイムと名乗る機械音声は話を進めていく。

 

 

『転生後の生体アバターを設定します。エラーコード《100年の揺り返し》に対抗するため、《100年の揺り返し》を媒介する拡張現実システム《YGGDRASIL》のリソースを流用します。続いて個体名《尹藤鐡矢》としての経験値を反映して、最適化した設定を例示します』

「うわ、頭ん中に映像が流れてくる……」

 

 

 よく分からないが、どうやら転生後の身体を作るという話らしい。頭の中に流れてきたのは、元々の俺とは似ても似つかないイケメン。紺色の髪はウルフヘア。切れ長の目に、スッと通った鼻筋。色白ではあるが健康的な肌色。瞳の色はなんと金色だ。体格は中肉中背だが体脂肪率が低そうな引き締まった体躯をしている。

 

(どこのアニメの主人公だよこれ?)

 

 更に、なんだかゲームの様な設定(?)が書き連ねられた映像も頭に流れ込んでくる。俺は律儀にそれを読み進める……つもりだったが、いきなり突っかかる。

 

『種族……医神、万物の根源、偽る者、星霊』と、のっけからとんでもない事が書かれているのだ。スルーして読み進められる程、俺のスルースキルは高くない。

 

 

「あの、種族が人間ですらないんですが……。しかも神とか入ってますけど……」

『回答します。種族《偽る者》の力により人間種に擬態する事が可能です。既に示したアバターは擬態状態の姿となります。また、種族《医神》は個体名《尹藤鐡矢》の経験を反映しています』

「いや、そういう事じゃないんですが……」

 

 

 いまいち噛み合わない問答から察するに、種族がどーのというのはあまり大きな問題ではないらしい。仕方ないので、さらに設定(?)を読み進める。

 

 

「えーと、今度はジョブ? ……あぁ、職業か。何々……、《気マスター》《錬金術師》《創造者》《大賢者》《属性王》《陰陽五行操者》《ドクター》《東洋医学者》《アスクレピオスの徒》………って、なんじゃこりゃ!?」

『回答します。流用したリソースを用いて個体名《尹藤鐡矢》に必要と思われる職業ツリーを構築しました。本来の《YGGDRASIL》には存在しない構成を為し得ていますが、現在エラーは発生していません。なお、例示した構成を破棄し、1からカスタマイズする場合は《YGGDRASIL》に存在するものからのみ選択が可能です』

 

 

 オーケー。つまり、特別扱いは初回限定って事か。なんか、色々押し付けられている気がしなくもないな。とはいえ、さっきからチラチラ出てくる《YGGDRASIL》がなんなのか良く分からないので、そのまま受け入れるしかなさそうだ。

 

 

「わかったよ、二ブルヘイム。何だかんだ、俺に合わせた設定だって言うなら、それで構わないよ」

『受諾を確認しました。続いて、異空間転生システム《ユグドラシル/世界樹》の提案に対して、潔い決断をした事を評し、《YGGDRASIL》のリソースから世界の名を冠するアイテムを付与します』

 

 

 何だかまた物騒な単語が出てきたぞ? 世界の名を冠する……とか、ただ事ではない気がする。相変わらず、機械的な音声は淡々と、こちらの懸念など何処吹く風だ。

 

 

世界級(ワールド)アイテムの付与に成功しました。固有名《アスクレピオスの杖》、固有名《杏林の薬露》、及び固有名《星辰の羽衣》を付与しました。続いて、残存リソースで資源データ・消費アイテムデータを付与します。それに伴い、インベントリの容量を最大拡張、利便性の強化を行います』

 

 

 それからしばらく二ブルヘイムの作業は続いた。武器がどうの、防具がどうの、神話がどうの伝説がどうのとブツブツ言っていたが、そこら辺は丸っとおまかせだ。改めて考えれば、RPGを始める時の初期設定をしているみたいだ。

 

 そして、ついにその時を迎える。

 

 

『全作業の完了を確認しました。最後に、個体名《尹藤鐡矢》に個体名の変更を希望するか確認します』

「いや、たった28年しか使ってないからな。このままでいい」

『了解しました。それではこれより《ユグドラシル/世界樹》による転生を行います。転生先座標はリ・エスティーゼ王国東方、トブの大森林と平原の境界地。転生者に幸多からん事を』

 

 

 二ブルヘイムの言葉にほんの少しだけ人間味のようなものを感じた瞬間、何か物凄い力に吸い寄せられる感覚が俺を襲った。

 

 次の瞬間、暗闇だった世界は真っ白へと変わり、そして気が付くと目の前には圧倒的な緑が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やれやれ……。上手くいくだろうかね』

『分からない。今度のプレイヤーの保有戦力はこれまでに比べて規格外。消されないようになるべく詰め込んだけど、急拵えなのは否めない』

『我々の手を離れてからは、後は見ているしかできないからね。本来なら100年の揺り返し自体を止めるべきなんだけどね……』

『それが可能なら既にそうしている。600年前に種の平衡を守ろうとした結果、世界そのものに組み込まれてしまったのは完全に想定外。お陰で尻拭いが大変』

『八欲王で完全にバランスが崩れたからね。まぁ、その後は割と平和だったわけだけど……』

『ともかく、賽は投げられた。あとは見守る他あるまい』

 

 

 

 

 

 

 




始めてしまいました。初めての投稿ですので、お手柔らかにお願いします。

最後に出てきた黒幕みたいな方々の出番はこれだけです。思わせぶりですね。


主人公のスペックをば。


名前:インドウ・テツヤ(尹藤鐡矢)
種族(LV):医神(10)、万物の根源(5)、偽る者(5)、星霊(10)
職業(LV):気マスター(5)、錬金術師(5)、創造者(10)、大賢者(10)、属性王(10)、陰陽五行操者(5)、ドクター(5)、東洋医学者(5)、アスクレピオスの徒(15)

医神:医を司る神。治癒系・強化系のスキルに長ける。毒に関するスキルも多い。神族だけに基本スペックが高い。

万物の根源:非生物系の古代種。属性系・創造系スキルに長ける。反面、物理攻撃を行うのが苦手。

偽る者:ドッペルゲンガー種の亜種。隠蔽系のスキルに長ける。他者の能力を一時的に借受けるスキルを持つ。耐久力は低い。人間のアバターを設定できる。

星霊:精霊系の上位種。万能型で攻守・物魔のバランスが良い。属性攻撃との相性が良い。




気マスター:「気」という生体エネルギーの扱いに特化したジョブ。

錬金術師:様々な物質を用いて、付加や創造を行うジョブ。戦闘はやや苦手。

創造者:《ユグドラシル/世界樹》によって生み出された特殊なジョブ。魔力を用いて様々なものを創り出す。

大賢者:《ユグドラシル/世界樹》によって生み出された特殊なジョブ。魔力系・信仰系・精神系の魔法の行使を可能にする。

属性王:《ユグドラシル/世界樹》によって生み出された特殊なジョブ。属性攻撃に特化している。

陰陽五行操者:《ユグドラシル/世界樹》によって生み出された特殊なジョブ。魔法の特性を変化させる術に特化している。

ドクター:状態異常の治療に特化しているジョブ。逆に状態異常を付与する術にも長ける。

東洋医学者:《ユグドラシル/世界樹》によって生み出された特殊なジョブ。経穴や気の運行を熟知する。また、薬効のある動植物に精通する。

アスクレピオスの徒:《ユグドラシル/世界樹》によって生み出された特殊なジョブ。その力は冥府に送られた死者すら蘇らせる。


こんな感じでチート属性満載なのです。
ワールドアイテムやら装備品やらはまた違う話で。

ゆる〜く続けていきたいと思います。
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