部屋の窓から飛び込んできていた陽光の残骸が尽きた。太陽が遂に沈みきったのだ。明かりをつけてない部屋の中は真っ暗だ。いつもなら煩いくらいに聞こえてくる両親がキーボードを叩く音も、画面に向かって怒鳴る声も聞こえない。車の音も、虫の音も、風の音も、石の音も、なにもかも聞こえない。目の前にいるはずの八重さんからですら、音が聞こえない。いや、いるかどうかすらも定かではなかった。
静かで、落ち着いていて、誰にも干渉されない、好奇の視線に晒される事のない、寞な空間。それは、村で居場所を求めてあてなく彷徨う私にとって、望ましい場所であるはずなのに、私を酷く混乱させた。
――暗い
煩いものから離れてやってきた音もなにも存在しない世界は、ただ、ただ、頼りなかった。ともすれば自分なんて消えてしまって、どこかへ飛んで行ってしまいそう。自分の発する音が聞こえなくなった瞬間が、自分の最後の時だと思った。
――なんで
なんでこんなことになったのだろう。さっきまで楽しくお話していたはずなのに、なんでこんなことになってしまったんだろう。丸でさっぱり訳が分からない。訳を求めてもがいていると、向こう側に何かがいることに気が付いた。
――おーい
呼びかけてもみたけど、それはまるでこちらに気付く様子を見せなかった。何かはこちらを見ていなかった。もがいても、もがいても、まるでなににも辿り着けない。私はまるで迷路の中にいるようだと思った。そうだ。私はまるで透明な迷路の中にいる。
――おーい
閉ざされた世界の中で何を叫んでも、誰も何も、私の答えに応答してくれなかった。向こう側の人もやがて消えていった。どんなに叫んでも、反響すらなかった。ここには誰もいない。なんの指標もない。なんの頼りになるものもない。私は混乱した。回らない頭で必死に考えた。
――何か……、何か頼りになるものは……
手探りで空間を弄っても何も見当たらない。宙を掻いていると、私には自分の体があることに気が付いた。何もなくても私はいる。誰もいないところでも、私はいる。どこから逃げ続けても、結局私がいる。気が付くと私の手の中にはスマホがあった。
――やった!
これで助かる。
――ここはどこ
そうして万能の辞書に答えを求めても、それは答えてくれなかった。
――どうすれば助かるの
いくら文字を打っても、いくら検索ワードを変えても、それはまるで私を助ける道具として機能してくれなかった。私は途方に暮れて画面を見返すと、その中に自分が移ったのに気が付いた。そして同時に、スマホの中には両親がいた。両親は、画面の向こう側、私に変わっていた。
――そうか
だから私は――