脳筋魔術師の人理修復(仮題)   作:夢理庵

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前回投稿からちょっと空いちゃったけど、遅筆なのとPCがバグって
二回くらい原稿飛んだからでまだ失踪はしてませんよ~


作中でのグランドオーダー開始は2015年説と2016年説があるらしいのですが、本作では原作アプリの配信日準拠で2015年をグランドオーダー開始日としています


第2節 生き残るため、カルデアへ

生後まもなく母親らしき人物に抱えられ病院から大きなお屋敷に連れて行かれた時には「大金持ちの令嬢なんて親の財産頼りで人生勝ち組コースじゃん、やったぜ。」と心の中で小躍りするくらいに目の前の両親共々喜んでいたのだが、両親の口から次々と発せられる「未来の3代目当主」「どれほど偉大な魔術師になるか」「いずれは時計塔で」などというフレーズを聞いているうちに、自分が現実的な世界ではなくいわゆるFate世界の魔術師の家系に生まれたということがわかった

 

この時点では勝ち組人生を謳歌しつつゆるゆる魔術の研究でもやって、聖杯戦争が起こればサーヴァント同士の対決の観戦でもしてみようか、あるいはサーヴァントを召喚して参戦してやろうかなどとまだ楽観的に構えており、両親が俺に魔術の教育を始めた時にもそこまで真剣に打ち込んでいなかった

 

しかし俺が10歳になろうかとしていたある日、何か面白いものがないかと忍び込んだ父の部屋で見つけた歴史年間に書かれていた「1990年、カルデアにてマリスビリー・アニムスフィアが疑似地球環境モデル・カルデアスを完成させた」「2004年、冬木の聖杯戦争においてセイバーが勝利した」という文言を見た辺りから、俺の悠々自適な勝ち組魔術師ライフ計画はもろくも崩れ去っていくこととなった

 

どうやらFate世界と言っても最も自分に関係深い、そう生まれ変わる直前にプレイしていたゲームであるFate/Grand Orderの世界に転生してしまったようだ

 

これには一つ大きな問題点が存在する

 

このまま時が進めば確か2015年にはゲーティアによる人理焼却が発生する、これは恐らく存在するであろうカルデアのマスターが自分の知っている物語と同じプロセスで解決してくれれば再び活動できるとしても、その一年ほど先に待っているのはクリプターによる人理漂白である

 

こちらの方は自分が物語の結末を知らないうちに転生してしまったがために、カルデアのマスターらがどのような方法で事態を解決するのかがはっきりとわかっていない

 

あり得ない話だとは思うがもし彼らが『漂白された世界を回復させる手段は無く、残された人類によって再び歴史を紡いでいく』なんて結論を選んだ場合には当然世界もろとも漂白されたままになるだろうし、最悪のケースとしてそもそもカルデアのマスターたりうる人物が存在しなかった、あるいは彼らが人理修復に失敗した場合には人理は焼却された状態から修復されないまま終わってしまう

 

そのため俺が進むべき道は、『人理焼却までに、スタッフでもマスターでも良いのでカルデアに参加する』一択となった

 

なので、その日以降俺は両親が突然の心変わりに心配するくらいに目の色を変えて魔術の修得に力を入れるようになったのだが・・・

 

「平凡・・・あまりにも平凡・・・」

 

15歳の時に至ったのは、単に魔術を学ぶだけでは人理焼却の年である2015年までにカルデアのスタッフに抜擢されうる人材となるのは不可能だという絶望的な結論であった

 

人類史を存続させるという尊命の下に、カルデアには魔術・科学の区別なく優秀な研究者が集められたと聞いており、その中に入り込むためにはやはり自らの出自を活かして魔術師としてカルデアのスカウトの目に止まろうと思ったのだが、これが上手く行かなかった

 

まず、前述の両親の言葉にもあったように俺はこの家の3代目にあたる魔術師になる訳だが、確かFate世界における魔術師は魔術回路や魔術刻印の存在のため代を重ねるほど優秀とされていたはずである

 

魔術師の家系において3代目というのはあまり多くの代を重ねたとは言いづらく、実際に魔術回路は20本ほどと書物曰く平均程度の本数しかなかった上継承した魔術刻印も父と祖父の2代で作られたというだけあってそこまで優れたものではない、と父は言っていた

 

ではそれらの逆境を覆すだけの才能が俺に有ったか、と言われれば答えは否である

 

道を決めたあの日以降必死に魔術の修得に勤しんできたが、ある程度の所からそれ以上の成長が望めなくなり、限界が見えたかと思ったところで魔術の師である父から「私を超えたお前に、もう私から教えることはない」という衝撃的な言葉を貰い、結論に至った訳である

 

両親曰く、まだまだ始まったばかりなのだから焦る必要はない、もう少しして時計塔で学べばもっと成長できるはずだ、と温かい言葉をかけてくれてはいるが正直このままではマズい

 

当然両親には人理焼却のことなど伝えていない(よほど未来予知の魔術の才能にでも開花してない限り、言ったところで信じてもらえないか狂人扱いされるだけである)ので、俺の焦っている本当の理由が伝わるわけもないのである

 

間違いなくこのままでは人理焼却までにカルデアに参加できない→人理修復という偉業の一切から蚊帳の外となり最悪の場合人理もろとも最期を迎えるという死のコース一直線となってしまう

 

焦った俺はとにかく一歩前進するためのヒントを掴もうと、家に有った書物という書物を読み漁り参考となるものを探し続けた

 

父も、父の話によると祖父も治癒魔術を得意としていたため魔術刻印が治癒魔術に特化してできているらしく、他の魔術が凡人の域を出ない中で治癒魔術だけは多少秀でていたのでそれを伸ばそうと医学や薬学についての文献を探し、時には魔術の領域を飛び出し一般用の医学書や薬品の本を両親に頼んで購入し読みふけることもあった

 

そんな努力が功を奏したのか、18歳の時にようやくある一つの魔術薬の開発に成功した

 

『生命の土(ソリ・ヴィーテ)』とラテン語で名付けた軟膏状の魔術薬は、傷口にそのまま使えば純粋な治癒能力を示しある程度の傷であれば一瞬で塞ぎ、治してしまうというそれだけではありふれた魔術薬に過ぎないが、その真価は『魔力を流した時』にある

 

『生命の土』に魔力を流すと、それによって『生命の土』自体に組み込まれた魔術式が励起し、周辺の細胞にアポトーシスと細胞分裂を超高速で連続して起こさせる魔術が発動する

 

蝶魔術(パピリオ・マギア)を参考としたこの魔術により傷の修復速度が増すのは勿論、その真髄は『切断された四肢・胴体などの再結合による復元が可能である』ということにある

 

通常手首などの再生となるとかなり高度な治癒魔術を要求されるものであるが、『生命の土』を使えば俺レベルの魔術師でも切断された部分が存在していれば『失われた部分を再生させる』のではなく『切断面を再結合させる』ことで復元させることができるのだ

 

ネズミを使った実験では、尻尾や四肢と言った末端部分は問題なく再結合し、胴体や頭部といった致命的な部分を切断した個体でさえ迅速な復元を行えば問題なく生存していることが確認された

 

しかし突貫工事で作り上げたが故に課題点もまだまだ多く、復元に時間をかけ過ぎたりあまりに多くの断片に切断した・・・例えば試しに『十七分割』した個体ではパーツ単位が死んでしまうためか切断部の復元はできてもそのまま死んでしまうため当初目指していた『どのような状態からでも肉体を復元する万能薬』レベルには到底至っておらず、またそもそも人間の体での実験は行っていないためこの効果が人体にも正常に働くかは不明である

 

これらの問題は今後の課題として研究して、特に人体の切断部に使用した際の効果の確認はこの先実践していく他ないだろう・・・幸いにもこの先使う機会はたんと有るはずなので、そこでデータを取っていくこととしよう

 

『生命の土』の完成を伝えたとき、両親は俺の生まれたときと同じかそれ以上の喜びを見せていた

 

父はこれまでの研究の成果を論文にまとめ時計塔に送ればすぐにでも生徒として迎え入れてくれるだろう、と言っていたがそうする気は全くなかった

 

今から時計塔で学んで魔術師としての力量を付けたところでもはや猶予は後1年か2年しかなく、また時計塔で学ぶよりも先に俺にはやるべきことが有ったのである

 

さてどのようにして相手方と連絡を取ろうかなどと考えているうちにどうやら相手の方からこちらを見つけてくれたようで、ある日突然屋敷にスーツ姿の男が数人俺を訪ねて来たとメイドから聞いたときには思わず心の中でガッツポーズを決めたものである

 

俺の期待通り男達はカルデアのスカウトマンであり、齢18にして独自の魔術薬を開発した優秀な能力と一定水準以上の治癒魔術の才能、そして医学薬学の知識を買って俺をカルデアの医療スタッフに迎え入れたいとのことであった

 

当然だが両親は反対した、まぁそれは当然のことでこの先時計塔で学ばせて優秀な魔術師に育て上げいずれはこの家を継いでいくであろう大事な一人娘をどこぞとも知れない『天文台(カルデア)』の、しかも医療スタッフにするだなんて話は到底受け入れられるわけもないのだ

 

だが両親の意見に反し、俺が出した答えは当然イエスであった

 

何故ならそれこそが俺が必死に魔術の修得や研究をしてきた一番の目的であり、チャンスをみすみす逃すつもりはなかったのである

 

そこからはもうトントン拍子に話は進み、必要最低限の荷物をサクッとまとめると娘のとち狂ったような行動にただただ泣きはらす両親を背に、俺は18年ほどの生活ですっかり住み慣れた屋敷を出た

 

(ごめんなさいお父さんお母さんメイドさん、いつの日かまた会いましょう)

 

そんなことを心の中で思いつつ、男達に促されるまま車に乗り込むとカルデア到着まで機密保持のために外さないようにとアイマスクとイヤホンを渡された

 

(正直言うとカルデアがどこにあるかもう知ってるんだけどな・・・まぁそんなの口走ったらこの場で消されかねないから言わないけど)

 

アイマスクとヘッドホンを付け、真っ暗な世界でよくわからない不気味な音楽(後で聞いた話だとどうやら正確な時間をわからせないようにするための一種の音声魔術だったらしい)を聞き続け、ようやくアイマスクを外されたときそこにはゲームの画面で見慣れたカルデアの景色が広がっていた

 

時は2013年6月17日、人理焼却およびグランドオーダー発令まで残り773日

 

この世界に生まれ変わった俺こと魔術師『宿名 美琴(すくな みこと)』は目論見通り、カルデアに医療スタッフとして参加を果たしたのであった




人物紹介

宿名 美琴
 
・読み:すくな みこと
・誕生日:11月9日
・血液型:A型
・身長:165㎝
・体重:秘密
・イメージカラー:艶のある黒
・特技:治癒魔術(と言うよりそれ以外の魔術は平凡)、魔術薬の研究
・好きなもの:美味しい食べ物
・苦手なもの:不明
・天敵:高等な術式の魔術(理解できないので)
この小説の主人公
 
・略歴
元々は平凡な男性大学生だったのだが、自宅でFate/Grand Orderをプレイ後にウトウトしていたところ、次に気がつけばなぜか女の赤ん坊のになってFate/Grand Orderの世界に転生していた
 
・人物
転生後魔術師の教育を受けたが、両親とも根っからの魔術師という性分ではなかったため感性は一般人と大差はない模様

幼い頃に男性じみた行動や仕草を両親に叱られて以降、あまり感情を表情に出さないようにしてきたため周りからは何を考えているかよくわからない人物と評されがちである
 
・能力
3代と短いものの魔術師の家系に生まれ、属性は水と土の二重属性で魔術回路を起動させる為のイメージは『心臓から抹消までの血流』である

家系が短いこともあり宿名家の魔術としての明確なスタイルは存在しないが、歴代当主である祖父・父ともに治癒魔術を専門としてきたことから魔術刻印も治癒魔術を主体としたものになっている

現時点では実戦レベルで使える魔術はほぼ無く、自ら開発した魔術薬『生命の土』による傷の治療・肉体の修復が唯一の能力である
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