調査編2です。
「…では、そろそろ行くとしよう。」
「どこへだ?皇。」
「ミーティングの準備をしようと思ってな。白暮、葛城手伝ってくれるか?」
「りょーかい。」
「あぁ。もちろん構わないよ。」
そう言って3人は立ち去っていった。
時計を見るとミーティング開始までまだ30分ほど時間があった。
「今から食堂に行くのも早いか…。他のところも見ておきたいな。」
「そうだね。もう一回二階を見てから他の所を見ておこう。」
再度、二階を見て回りここにはもう何もない事を確認してから移動を始めた。
少し気になったことしては、
「そういえば、三階への階段もあったけどシャッターで塞がれていたな。」
「先へ行くにはまだ何かあるってことだろうね。」
今は封鎖されている階段…開かれるのはいつなんだ?
ひとまず、一階に戻ってきてまだ玄関ホールを見ていなかったからそこの探索をすることにした。そこには、
「あら?お2人もここの探索へ?」
柊と氷室と八咫の3人がいた。
「まぁ、そんなところかな。」
「その様子だと…まだこの扉の先を見てないようだな。」
「この扉、開くのか?」
「あぁ。だが、その先にとんでもないものがあった。」
「とんでもないもの?」
「百聞は一見にしかず…。とりあえず見てもらおうか。」
そう言われ扉を開けると…。
その先には庭と青空が広がっており、何の変哲もないように思えた。
だが、その奥に視界を向けると…。
「な、なんだあれは…!」
庭の更に奥に…巨大な壁が聳え立っていた。
「高さは推定50m…。距離はおそらくここから600mほどかと思われます。」
「あの壁は恐らくこの学園を中心にぐるっと囲んでいる。…まるで箱庭のようにな。だが、それは問題ではない。」
「あの壁になにかあるの?」
「なにかあるって言うより、むしろ逆かな。何もなかったんだよ。」
「どういうことだ?」
「とりあえず近づける範囲で壁を見たんだけどあの壁、入り口がなかったんだよ。ほら、あの壁って凄く高いよね?普通は上から越えるのは出来ないから下に入り口を作るものだと思うんだけど、それっぽいものがなかったんだ。」
「そして、この学園にいる人間は私達16人だけ…。どういうことか分かるな?」
つまり…
「外部からの侵入がない…。そして文字通り脱出不可能…。」
「その通り。ランクSの回答だ。」
外からも内からも侵入出来ない壁…。一体どうやって作ったんだ?
そもそも俺達はどうやって中に入ったんだ?
「まぁ序盤から秘密が分かってもゲームは面白くない。このことはひとまず置いておこう。代わりといってはなんだが、この庭にも施設があった。見てきたらどうだ?」
「分かった。時間が許す限りみておくよ。」
氷室達と別れて庭の探索を始めた。
「にしてもこの庭、花も植えてあって結構綺麗だよな。」
「そうだよねぇ。天気も良いしここで昼寝したくなってきたよ。」
玄関ホールを出てすぐの庭は中央に噴水とベンチがあり今の状況を忘れさせるくらい穏やかな雰囲気を出していた。
…噴水の中央にあるモノクマのオブジェと嫌でも視界に入る巨大な壁を除けば。
「…とはいえいつまでもゆっくりしてられないしとりあえず行こう。」
庭には噴水を挟んで左右に施設があるようだ。
俺達は右の施設を訪れることにした。
「……お前達か。」
「おっと、もう先客がいたか。」
そこには獅子谷と本代とアレックスがいた。
「ここは寄宿舎だ。個室になっててそれぞれのネームプレートが付いてる。」
寄宿舎か…部屋はどんな感じなんだ?
「俺の部屋は…ここか。あ、あれ?鍵が…。」
「個室の鍵はこのモノドロイドらしい。このリーダーにかざしてみろ。」
本代に言われた通り、ドアに付いたリーダーにかざしてみるとピッという音がした。
「お、開いた。」
「一応言っておくが、モノドロイドで開けることができるのは自分の部屋だけらしい。他の部屋に入るには内側から鍵を開けるか本人のモノドロイドがいるようだ。」
「それとこの鍵はオートロックになってて、ピッキングやサムターン回しも出来ないようになってるみたいね。…下手なセキュリティよりしっかりしてるわ。」
なるほど。
「それにしても随分詳しいな。」
「……さっきモノクマが来て説明してくれた。……アレックスがピッキングが出来るか試そうとした時にな。」
「安全の為に試そうと思っただけなのに怒りすぎなのよ。あのクマ。」
……やっぱりお前の仕業か。
ってそうだ。部屋を確認しないと。
部屋に入ると中はベッドとクローゼットとユニットバスが設置された黒を基調としたシックな部屋になっていた。
「…意外と悪くないな。」
「正直、もっと劣悪な環境かと思ったけど思ったよりしっかりしてるね。」
部屋を見渡してると、例によってカメラとモニターがあった。
「……またカメラかよ……。」
「プライベートまで筒抜けなんだね…。」
部屋を確認してから再度ドアを閉めた。
「…ん?」
「どうしたの?」
「いや、あの部屋がちょっと気になってさ。」
俺が指差した先にはネームプレートが付いていないドアが開くあった。寄宿舎の丁度真ん中にある位置だ。
「あの部屋はプレイルームだ。中には囲碁、チェスなんかのボードゲームと卓球台が置いてあったな。」
プレイルームか…今は別にいいかな。
寄宿舎を後にしてもう一つの施設へ向かった。
もう一つの施設は和風な外観をしたまるで道場のような建物だった。
「なぁ、小鳥遊ここはなんだと思う?」
「うーん。そうだね…道場みたいな見た目だから…多分誰かの研究資料室じゃないかな。」
「だよな。」
和風な外観の研究資料室…恐らくここは『薙刀家』の研究資料室だろう。
「じゃあ、開けるぞ…。」
厳かな雰囲気を漂わせていたので一瞬開けるのを躊躇ったが、改めて戸を開けた。
中は静まりかえっており、畳が敷かれた部屋の中心に道着を着て正座をしている夜桜がいた。
「あれ?夜桜なにを「シッ」
声がして横を見ると東雲と飛田が座っていた。
「2人も来てたのか。何をしてるんだ?」
「まぁ見てれば分かるよ。とりあえず、ここに座って。」
そう促され、俺達は2人の横に座った。
すると、夜桜が薙刀の形をした竹刀を構えて立ち上がり、
「…ハッ!」
掛け声を上げて、踊るようにポーズを決め始めた。
「セイッ!タァッ!」
その華麗な動きに魅了されて思わず見入ってしまった。
一通りポーズを決めてから一礼をしてそれは終わった。
「うわー!凄い!凛ちゃんかっこよかったよ!」
「あぁ。実にクールだったよ。」
「うふふ。ありがとうございます。」
「夜桜、凄いかっこよかったよ。でもあれは何をしていたんだ?
俺達途中から来たからよく分からなくてさ。」
「あれは『演舞』というものです。」
「演舞?」
「はい。薙刀で使う型の美しさを競う競技の事です。本来は2人一組で行うのですが…この場所に薙刀家はわたくしだけですから1人で行ったのです。」
なるほど薙刀って戦うだけかと思ってたな。流石超高校級の技だったな。
「それにしてもここに来た時の凛ちゃん面白かったよね〜。」
「ハハ、そうだな。入った瞬間凄いテンション上がって『どれも一級品ですわー!』って言ってたからな。」
「そ、それは忘れてください!」
それは見たかったな…。
「って皆、もう時間ヤバイぞ!そろそろ集合時間じゃないか!」
「え?うわマジじゃん!大和に怒られちゃうよ!」
「思わず時間を忘れていたな…。急ぐぞ!」
「ちょ、ちょっと!わたくし、着替えないと行けないから置いていかないでください!」
「それもそうか…ならオレが「邪な考えを持ってるならやめてください!」…やれやれ。」
「じゃあアタシ残るよ!3人は大和に遅れるって伝えといて!」
「あぁ!分かった!」
着替えのある夜桜と見張りの飛田を残して、俺と小鳥遊と東雲の3人は急いで食堂に向かった。
安心してください。
まだ死にません。