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前日の夜9時35分頃、剣崎しかいない食堂の隣、誰もいない倉庫へ入っていく人間がいた。
『超高校級の幸運』白暮夕斗だ。
「……誰も来てねぇな、流石に早すぎたか?はぁ、…にしても手掛かりか。んなもん、ある訳ねぇと思うけどなぁ。」
そんな事を呟いてると、
「……ガッ!」…不意に背後から頭部を殴られた。
「悪いな…。お前に恨みは無いが、死んでくれ。」
白暮を殴った瓶を持ちながら、そう呟いたのは、
『超高校級の???』本代荘士だ。
白暮が倒れたのを確認し、彼からモノドロイドを奪い取った。計画通り、剣崎を犯人に仕立て上げるため、彼を食堂から遠ざけて冷蔵庫に閉じ込める準備を始めた。
……すると。
「………ってぇなぁ。なんだよ。」
「……!驚いたな。まさか、起き上がるとは。」
運良く急所を外した彼は起き上がった。
「……どうやら、オレはお前のターゲットにされたようだな。………流石に想定外だったわ。」
「そういう事だ。お前の存在が目障りなんでな。じゃあ、今後こそ…死ね。」
そういうや否や、2人は争いになった。この時、お互いのモノドロイドが落下し、本代の指輪が奪われる結果になった。
「……この!大人しくしろ!」
本代の持った瓶の一撃が白暮の頭部に決まった。
「グッ…!あー、チキショウ…。ここまでかよ……悪ぃな………あと、たの……む。」
「クソ…。無駄に手こずらせやがって。」
想定外の事が起こり、焦った本代は急いでその場を片付けて冷蔵庫に白暮を閉じ込めた…。
……後は上手くいくことに賭けるしかない…!大丈夫だ…!俺は『超高校級の勝者』なんだ…!
そう信じて、本代は倉庫を後にした。
だが、この時2つのミスをしていたことに気づかなかった…。
ーー
「うぷぷぷぷ…!大正解ーーーーーー!!!『超高校級の幸運』白暮夕斗クンを殺したのは、なななななんと!前代未聞!才能不明の本代荘士クンでしたーーー!!!!」
「どうしたぁ諸君!?見事正解したんだ!!もっと喜べよ!!」
……相も変わらず不快極まりない笑い声を上げるモノクマ、モノパパをよそに喜ぶ奴なんか誰もいなかった。
喜べる訳がない。
「………さぁ、オシオキという物を始めようか。」
本代は何も言わず、結果を受け止めた様子だった。
「あれあれぇ?そんなすぐオシオキしちゃっていいの?もっと色々話しても良いんだよ?」
「……別に構わない。早く死にたいんだ。」
「待ちなさい。」
宵月が割り込んで来た。
「なんだ。敗者の俺に語る事など無いが?」
「あなたはそうでも私達は納得してないわ。何故、白暮君を殺したの?……話すまでオシオキは始めさせないわよ。」
そう言って、宵月は本代を睨みつけた。
「……仕方ない。話そう。俺が奴を殺した動機は2つある。………1つは奴自身だ。」
「奴自身?何言ってるんだよ本代?」
「やっぱり、あの事と関係してるのかしら?」
「舞ちゃん、何か気づいたことがあるの?」
「彼は一度も白暮君を名前で呼んだことはない…。いつも『奴』と呼んでいたの。」
「当然だ。奴の名前を呼ぶ価値などないだろう?」
その言葉を聴いた瞬間、本代から強烈な悪意を感じた。
「価値…だと?」
「奴はただの幸運…。奴が絶対的な存在であるこの俺と同じ環境にいるだけで、吐き気がする!この俺の世界に
ただの幸運だから…?そんな下らない理由の為だけに夕斗は殺されたのか…!?
「…ふざけるな!……お前は、絶対許さねぇ!」
「暁日……憎いか、この俺が?ならこの場で殺してみるか?……その場合クロはお前になるが?」
「うるせぇ!アイツに代わって……テメェを殺す……!」
こんなクズ野郎……俺の手で殺さない限り…俺の恨みが晴れない…!
「待ちなさい。暁日君。」
「宵月…なんで止める!?アイツは俺が殺すんだよ!」
「落ち着きなさい!」
ピシッ…!という乾いた音が響いた。宵月に叩かれたのか、俺は。
「そうやって、自分を殺させる事でクロを押し付けるのが彼の目的よ。冷静になって。」
「………」
「……チッ、お前を殺すべきだったか。」
「根っからの悪人だな、キサマは。」
「まだ、話は終わってないわよ…。2つ目の動機…話しなさい。」
「…………もう一つの動機は……。俺の才能だ。」
「才能だって…?君は自分の才能を忘れてるはずだろ?」
「モノクマが出した動機、覚えてるだろ?『記憶を返す』…。」
あの話、真に受けた奴がいたのか…。
「クロになれば、才能を思い出せる…。そう考えた俺は奴を殺した…。だが、俺は最後まで奴の幸運に踊らされていた。………もしかしたら、本当の
乾いた笑い声を上げながらそう、語った。
すると、
「うぷぷぷぷ…。才能の為だけに殺しをするなんて、そんなに自分の才能が知りたいのー?」
「……やっぱり、お前達は知ってるんだな。」
「さぁ、どうかな?さて、そろそろオシオキしちゃおうかなぁ?」
「ま、待て!知ってるならせめて……せめて教えてくれ!なぁ!頼むよ!それからならオシオキを受ける!だから……………お願いします……お願いします………!」
遂に、本代は土下座を始めた。
…さっきまで周りを見下して傲慢な態度を取っていたあの本代荘士の面影は何処にもなかった。
「みっともないなぁ、土下座までしちゃって。でも、どうしよっかなぁ。そのままオシオキして絶望を味わせるのもいいし…。」
「いいんじゃないか?モノクマよ。今回は最初のクロだ。特別サービスで教えてやっても。」
「と、父さんが言うなら…。分かりました!特別サービスで才能を教えてあげましょう!」
「あ、ありがとうございます!」
本代の才能が遂に語られる…一体何なんだ?
「では、発表します!本代荘士クンの才能は…………
『超高校級の改造人間』です!」
「………は?」
「超高校級の改造人間…?」
モノクマによって語られた才能…それはあまりにも現実離れしすぎた内容だった。
「…………クックックックッ……。」
「も、本代…?」
「…フッハハハハハハハハ…!……ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!ヒャハハハハハハハハ!!!!」
突如、狂ったように本代は笑い出した。
「どうですか?本代クン。納得していただけましたか?」
「……クククク……納得……?…クックックックッ…。
する訳ないだろうが!!!!
改造人間だと…!?馬鹿馬鹿しい!ふざけるのも大概にしろ!!」
「えーでもホントの事を言ってあげたんだけどなぁ?」
モノクマは嘘を言ってるようには見えない。だとしても意味が分からない…。改造人間なんてそんな事があり得るのか…?
「………無効だ。」
「はい?」
「こんな学級裁判は無効だ!最初から俺をハメるために計画したんだろう!?………そうだ!白暮……アイツも生きてるんだ!!」
本代は取り乱して訳の分からない事を言い出した。だが、誰も賛同する者はいなかった。
「本代。」
「皇!なぁお前からも言ってくれ!こんな学級裁判、有り得ない!」
「………見苦しい。消えろ。」
「……………!!!!…………」
冷たい目をした皇はそれまで聞いた事がない程、冷徹な一言を浴びせた。
心を折られたのか、本代はそれ以上何も言わなかった。
「さーて、皆から見捨てられちゃった可哀想な本代クンのオシオキを、そろそろ始めちゃいましょうか!」
「………!!待てよ!俺は誰も殺してない!」
「ダメです!学校生活のルールを破った人間は裁きを受ける!最初にそう説明したよね?」
「い、嫌だ!死にたくない!だ、誰か助けてくれ!」
「それでは『超高校級の改造人間』本代荘士クンのために!スペシャルな!オシオキを!用意しました!!」
「嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない死にたくない!!」
俺は思わず声を発した。
「…本代。もう認めてくれ。」
「………なんだよ、その憐む目は…!見るな………!
そんな目で俺を見るなああああぁぁぁぁぁ!!」
「では!張り切って参りましょう!」
「「オシオキターーーイム!!」」
モノクマはハンマーを取り出して、一緒に出てきた赤いボタンをハンマーで押した。ボタンに付いてる画面にドット絵の本代をモノクマが連れ去る様子が映し出されていた。
ーー
怯え切った表情を浮かべる本代。
助けを求めるかのように周りを見渡すが、誰も助けない…いや助けられなかった。
すると、背後から鎖の付いた首輪が本代を掴み、そのまま裁判所の外へ連れて行った。扉の向こうへ連れられる時、「実験中」という表示が赤く点灯した。
その先はモニターからの映像に切り替わり扉の向こうでは、透明な箱の中で椅子に固定された本代が、そしてその横には白衣を着た博士のような格好をしたモノクマとモノパパがいた。
本代の身体に大量の点滴のチューブが突き刺さった。
チューブが刺さった事を確認すると、モノクマが右腕を切り落としドリルのようなアームを取り付け始めた。麻酔もせず行われる改造の激痛に悶える本代。
そんな事はお構いなしに、モノパパは本代の頭に装置を取り付け電波を送り始める。頭を掻き回されるような苦痛に本代は気絶してしまう。
気絶したのを確認したモノクマは椅子の装置を起動させ電流を流した。
ギャグ漫画のような骸骨が本代の身体に映し出されて意識を取り戻す本代。
点滴からも薬品が身体に次々と入れられたせいか、目が虚ろな状態になっている。
その後も、身体を弄って気絶したら電流を流すという行為を数回繰り返してーー
椅子上には電流で焼け焦げた辛うじて人の形をした物だけが残っていた。
そして、モノクマとモノパパは「失敗作」とみなして、本代の身体を爆発させた。
ーー
「イヤッホオオオオオォォォォォォォウウゥゥゥ!!エクストリィィィィム!!!!やっぱこれだぜぇぇぇぇ!!!」
「ガッハッハッハッハッハッハァッ!!たまらねぇなぁ!!酒が進むぜぇぇ!!」
「…………」
叫ぶモノクマ達を尻目に俺達は目の前の惨劇に言葉を失っていた…。
「……酷い…。」
「うぅっ………えぇん…。荘士くぅん…。」
「うっ……おぇぇっ…。」
「ホント…悪趣味だな…。虫酸が走る。」
「………くっ…。」
皆、反応は様々だった。
吐き気を催し嘔吐する者、泣き出す者、怒りに震える者…。
他人の死をなんども経験してるであろう皇、アレックスの2人でさえ動揺していた。
だが、
「ハイハイ、皆お疲れ様ー。ここにいつまでいてもキリがないからね。さっさと帰ってくださーい。」
「オレ達はこれから祝杯を上げるんだ。時間が勿体ないから早く戻ってくれよ?」
コイツらが感傷に浸る間も与えてくれなかった。
「祝杯ですって…?あなた達は命をなんだと思ってるんですか!」
「なんとも思ってるわけないじゃないか。大体人殺しが裁かれたんだ。オレ達に感謝して貰いたいところなんだがな?」
あまりの暴論に夜桜と獅子谷は怒り、
「……貴様、許さんぞ……!」
「ご学友を殺されて黙ってるわたくしではありません…!この身に代えてもあなた達を倒します!」
モノクマ達に立ち向かおうとした瞬間、
「やめろ。」
皇が制止に入った。
「この場を一度抑える。……戻るぞ。」
「………だ、だが。」
「皇さん…。あなたはご学友をあんな姿にされてなんとも思わないんですか!?」
「………なんとも思っていない訳がない。だが、奴らの前では俺達は無力だ。…………………これ以上、必要のない犠牲を増やさないでくれ。」
皇は帽子を抑え、目元を隠しながら呟いた。…皇にとっては部下では無く初めての友達とも言える存在だった。アイツも辛かったんだな。
その後、俺達はエレベーターに乗り裁判所を後にした。
ーー
個室に戻った俺は1人ベッドで横になっていた。
今日はあまりにも色々ありすぎた。
夕斗が殺され、そして仇の本代も処刑されたーー。
だが、気は一向に晴れなかった。
ーーそこへ、
…ピンポーン…。
チャイムがなった。
…あまり、誰かと顔を合わせたくなかったが俺はドアを開けた。
「はい。」
「暁日君、失礼するわね。」
「お、おい宵月!?」
ドアを開けるや否や、宵月はズカズカと俺の部屋へ入ってきた。
「な、なんだよ急に。」
「これをあなたに渡そうと思ったの。」
そう言ってモノドロイドを渡してきた。
「これは…夕斗のか?」
「そうよ。本代君がオシオキされた後、モノクマから返してもらったの。」
「なんでこれを俺に…?」
「とりあえずモノトークを開いてみて。……あなた宛のメッセージが残ってたの。」
俺宛…?
そこには、俺が最後に送ったメッセージの後に夕斗が送ろうとしてたメッセージがあった。
…内容は「ゴメン。」
「あの日…彼はあなたに謝ろうと思ってたみたいね。でも、それが叶わなかった…。」
「………なんだよ。謝りたかったんなら、わざわざメッセージ送らなくてもいいのによ!直接会ってくれて良かったのに…!」
思わず涙が溢れていた。
「…………俺は絶対に絶望に屈しない!夕斗や本代のためにも絶対に生き延びてやるんだ!」
「…やっぱり、あなたにこれを見せたのは間違ってなかったわね。」
ーー
【同時刻、???の個室】
……あれがオシオキ……。
……うっ!…思い出すだけで吐き気がする…!
でも、いつ自分がああなるかは分からない…。
それに、この編入生活はまだまだ続く…。
いつまで、“ボクの秘密”を守り通せるか…。
最悪、誰かを犠牲にしてでも…守ってみせる…!
ーー
【チャプター1 白とクロの交錯 END】
残り:14名
To Be Continued...
ーー
【アイテム獲得!】ブランド物の指輪
1章を勝ち進んだ証。
本代荘士の遺品。
「Wind Scale」というブランド物。
全てを見下していた勝者が唯一尊敬していた。
これにてチャプター1終了となります。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
ぶっちゃけ次はいつになるか全く見当もついてません。
気長に待っていただけると幸いです。