今回は皆さんお待ちかね(?)宵月視点となります。
宵月の相棒…果たして誰になるかご期待ください。
班を振り分けてもらい、私はモノクマタワーを探索する事になった。
「さて、どこから回ろうかしら…。」
と考えていると、
「宵月さん、ちょっといいかな?」
葛城君が声を掛けてきた。
「何かしら?」
「探索、良かったら俺と回らない?」
「構わないけど…なんで私と?今回は複数人で行動するようには皇君には言われてないわ。」
「それに関しては…理由があるんだ。」
「理由?」
「君は前の学級裁判でも事件を解決するきっかけを作った。だから、君と一緒にいる事は色々有利になると思ったんだ。」
「ふーん…。」
…彼なりに色々と考えている、という事かしら。
「それから、もう一つ理由がある。」
そう言うと、彼はやたら神妙な面持ちになった。
「君みたいな美人さんを放っとく訳にはいかないからね。俺にとっては正直、こっちの方が重要だよ。」
「………ハァ、置いて行くわよ。」
真面目な顔をして何を言うかと思ったら…ただ口説きたかっただけとは。
「ありゃ…フラれちゃったかな。」
ーー
「………で、結局付いてくるのね。」
「断られた訳じゃないからね。それで、何処から回ろうか?」
「そうね…2時間もあれば、十分見て回れると思うから…。」
とりあえず、マップを開いてみる事にした。
「…あら?タワーの外にも施設があるのね。」
「あっ、ホントだ。じゃあ先に外から見て回ってみる?」
「異論はないわ。行きましょう。」
ーー
タワーから少し離れた所は鬱蒼と生い茂った森になっていた。
森の中には道があり、そこを歩いて行くとーー
まるで童話に出てくるようなお菓子で出来た家があった。
このファンシーな見た目の建物が似合う人物…
「……ここは恐らく『絵本作家』柊さんの研究資料室ね。」
ドアを開けて中に入ると部屋のベッドで柊さんが寝ていた。
「すぅ…すぅ…。」
「一応探索中なのに、呑気なものね…。」
「うぅん…。」
彼女が寝返りをうつとスカートが捲れ、太ももが露出した状態になった。
…男の子がいる前でこんな姿晒すのもまずいし、起こしてあげましょうか。
「柊さん…起きなさい。」
「ぅん……ふわぁ…………はぐぅ。」
「え!?……キャッ!!」
一瞬起きたと思ったら、私を凄い力でベッドへ引きずり込み、そのまま抱き枕にしてしまった。
「えへへぇ…。」
「こ、コラ…!離しなさい!」
「へぇ…。女の子同士で仲良くベッドインとは、大胆な事するねぇ。俺はそういうの嫌いじゃないよ。」
葛城君は顎に手を当ててニヤニヤしながら呟いた。他人事だと思って…!
「何バカな事言ってるの!早くなんとかして!」
「冗談だよ、冗談。………ほら柊さん、起きて。」
「………あれぇ?なんでまいちゃんが一緒に寝てるの?それにきょーやくんも……もしかして夜這い?」
なんで夜這いなんて知ってるのよ…。
「……あなたがこの部屋で寝てるのを見かけて、起こしに来たらあなたに抱き枕にされたのよ。」
そう言われて柊さんは何かを考え始めた。
……ボーッとした顔してるから正直、考えてるようには見えないわね。
「…そうだ。この家を見つけて中に入ったら、余りにも居心地が良くてつい寝ちゃったんだ。えへへ、ご迷惑をお掛けしましたー。」
「ホントにご迷惑だったわよ…。それで結局、この家はあなたの研究資料室でいいのかしら?」
「うん。アトリエやわたしの描いた絵本があったし、わたしの研究資料室で間違いないかなー。……ふわぁ。」
このまま放っといたらここに入り浸ってまた寝ちゃいそうね。
「今からタワーの方に行くけどあなたも着いてくる?」
「うーん…そうしよっかな。また寝ちゃいそうだし。」
「よし、じゃあ行こうか柊さん。」
「テレレレーン、柊色羽が仲間に加わった〜。」
「全く…ゲームみたいな事言ってないで行くわよ。」
「舞ちゃんが勇者、狂也くんが戦士、わたしは魔法使い。うん、完璧だね。」
「俺はどっちかっていうと盗賊とかの方がいいかなぁ。」
「………攻撃ばっかりで、回復役がいないじゃない。」
「勇者は回復も出来るよ。」
「突っ込むところ、そこじゃないわ。」
私が勇者って…。一応女なんだし、もうちょっと僧侶とか可愛い職業にして欲しかったんだけど。
「そう言えばずっと気になってたんだけど、この家って食べれるの?」
「まさか、そんなわけ…。」
「食べれるよー。」
「嘘でしょ!?」
ある意味今日一番の衝撃だわ…。
ーー
ようやく、タワーにやって来た私達をエントランスにある大きなアクアリウムが迎え入れてくれた。
「うわぁー…おっきぃ。サカナたちのパーティーだぁ。」
「横幅は10m、高さは8m、奥行きは8mくらいかな…。水族館並みの大きさだ。」
「サメや鰯の大群、熱帯魚…。日本じゃあまり見られない魚もいるわね。それにしてもこの大きさでこれだけ数と種類の魚…。とても1人、2人だけじゃ管理できないわよ。」
「ふっふっふ。どうだこのアクアリウム、凄いだろう?。」
「あっ、クマちゃんのパパ。これクマちゃん達だけで管理してるの?すごいねぇ。」
「ガハハ!そうだろうそうだろう!…と言いたいが実はそうではないんだ。」
「じゃあ、一体どうやって管理してるの?」
「この水槽内は全てコンピューターによって管理されていてAIが魚の生態や体調に応じて、餌や水温を調節してるという訳だ。それからこの水槽、実はそれほど奥行きはないんだぜ?」
「どういうこと?」
「一見巨大に見えるが奥行きだけ鏡で誤魔化してるんだよ。本当の奥行きは半分の4m程度で魚も実際は見えている数より少ないって訳だ。」
「…あ、ホントだー。水槽の奥にわたしたちが映ってるね。」
「なるほど、水と魚で遮られてるから分かりにくくなってるってわけか。」
せ、せこい発想ね…。
「ところで諸君。もし興味があるなら、バックヤードも見ていくか?」
「バックヤードか…。面白そうだね、見に行こう。」
「はいっ、わたしも見たいですっ。」
「別にいいわよ。行きましょう。」
「そうか、また他のメンバーみたいに断られると思ってたが…。よし!行くぞ諸君!」
この様子だと…説明したくてウズウズしてたみたいね。
ーーバックヤード
というわけで、バックヤードに来た私達。
そこでは複数のコンピューターが忙しなく稼働していた。
「このコンピューターは全てアクアリウム専用でな。特注品なんだ。」
「餌撒きシステム、水温調整、魚の体調管理…。随分と大袈裟ね。」
「全部我々で行うには無理があるからな…これがあるとないとでは全然違うぞ。」
「ねぇー。これなにー?」
そう言いながら柊さんはある装置を指差した。
「それはあの鏡を動かす機械だ。」
「え、あの鏡動くの?」
「水槽内の掃除をする時は片方に水と魚を寄せて掃除するんだが、その時の仕切りとして鏡を動かすんだ。」
「掃除はいつするの?」
「3日に1回、諸君が寝てる夜時間中に行ってるぞ。」
「もしかして、ここが開放する前からやってたのかしら?」
「そりゃそうだろう。いつ開放してもいいように準備しておくのは当然だろう?」
真面目なのかよく分からないわ…。
ーー
モノパパからエントランスのアクアリウムの説明を受けた後、私達はエレベーターで5階へ上がってきた。モノパパ曰く、その間の階は色々な機械があるから立ち入り禁止みたい。
「う、うるさいわね…。何よこの騒音。」
「どうやら、ここはゲームセンターみたいだね。ワンフロア丸ごと使ってるのか。」
「あ、幽華ちゃんだー。おーい。」
「む。キミたちか。」
どうやら、ゲームをしていたようね。
「ここのゲームはモノクマメダル一枚でワンプレイ可能だ。遊ぶならモノバンクのメダルをそこの両替機で替えてこい。」
「よし、ちょっと遊んでこうかな。」
「ちょっと、探索はどうするのよ?」
「もちろんここの探索ついでだよ。」
絶対嘘だ。
「葛城。ちょうど暇してたから対戦相手になってもらおうか。」
「お、いいよ。言っとくけど俺、ゲームは結構得意な方だからね?」
「フッ…そう言っていられるのも今のうちだ。ゲームプログラマーの才能がなければeスポーツプレイヤーとしてスカウトされてただろう、この私の華麗なプレイスキルを見るがいい!」
「フハハハハ!!どうしたどうしたぁ!!動きが止まってみえるぞ!?」
「………いや、ちょ!強!嘘だろ!?なんで重量タイプのキャラがそんな動きしてんの!?」
「強靭!無敵!!最強!!!」
「狂也くんがんばれ〜。」
「うわああぁぁぁぁぁ!!」
「粉砕!玉砕!!大喝采!!!ハハハハハハ!!」
「うわぁ〜ボロ負けだぁ。」
葛城君達の対戦には興味が無かったので、ゲームセンター内を1人探索していた。
騒音はあまり好きじゃない。
出来るなら早く離れたいんだけど…。
「ここはクレーンゲームのコーナーみたいね。……あら?」
そこでふと目に入ったのはシマエナガのぬいぐるみだった。
「……可愛い。」
思わず欲しくなったのでメダルを何枚か両替して挑戦してみることにした。
「……よし、………あっ。」
1回目は失敗。ぬいぐるみは意外と大きく、掴むのが難しい。
「次こそは……あぁっ。」
2回目も失敗。
「今後こそお願い………もう!」
3回目も失敗した。
「……ハァ、ダメね。」
もう無理そうだったので諦めようとした所、
「あ、いたいた。ごめんね放置しちゃって。」
「葛城君、もう終わったの?」
「いやーもうダメ。流石に強すぎる。それより、このぬいぐるみが欲しいの?」
「別にいいわよ。取れる気がしないし。」
「じゃ、俺が取るよ。ちょっと変わって。」
「無理に取らなくてもいいわ。メダル無くなっちゃうわよ?」
「大丈夫。言ったでしょ?ゲームは得意なんだ。」
そう言うと躊躇いなくメダルを一枚入れた。
けど、ぬいぐるみは位置がズレただけで掴めなかった。
「ね?そうなっちゃうのよ。」
「このタイプは掴むんじゃなくて、少しずつ動かして穴に落とすタイプなんだ。宵月さんがある程度動かしてるから、多分あと二回くらいやったら…。」
そう言いながら慣れた手つきでクレーンを操作し、ちょうど3回目でぬいぐるみは穴に落ちた。
「はい、どうぞ。」
「あ、ありがとう…。」
「あれ?もしかして、お気に召さなかったかな?」
「そんなことないわ。」
むしろ嬉しい。誰かからプレゼントされる事なんて初めてだからこのぬいぐるみ、大事にしなきゃ。
すると、どこからか視線を感じたのでその方向を見ると、
「…じーーー…。」
柊さんが、物影からこちらを見つめていた。
「……何してるのよ。」
「…お似合いだなぁって。」
「冗談じゃないわ。なんでこんな優男と。」
「ひどっ!?」
「ほら、さっさと次行くわよ。」
プレゼントしてくれたのは嬉しいけど、それとこれは別。
たかが数日過ごしただけの人間に恋愛感情が起きるなんてある訳ないじゃない。
ーー
エレベーターで6階に上がってきて私達。
6階はそれまでの階とは打って変わって木造のフロアになっており目の前に同じく木製の扉があった。
「木造…ログハウスのイメージかしら?だとすると、このフロアは『登山家』獅子谷君の研究資料室という事?」
扉を開けて中に入ると、
「……ふっ……ふっ………ムッ。……お前達か。」
獅子谷君がトレーニングをしていた。
「獅子谷君、ここはあなたの研究資料室かしら?」
「………ここの環境は俺によく馴染む。俺の部屋で間違いないだろうな。」
「トレーニングしてたみたいだけど、どういうトレーニングしてたの?」
「……低酸素運動というものだ。」
「低酸素運動?」
「………標高が高い山は空気が薄いのは知ってるよな?……プロの登山家は意図的に空気を薄くし、山と同じ環境でトレーニングし予め身体を慣らしてから山を登るんだ。」
「でも、ここには山なんてないよね?」
「………山がなくても普段からトレーニングはしてるからな。…………やってないと落ち着かないんだ。」
なるほど、その身体はトレーニングの賜物という訳ね。
「ねぇ、岳くん。この写真なに?」
柊さんが指差したものは、雲海と太陽が写った写真だった。
「…………それは俺が撮ったものだ。……俺はいつも山を制覇した証として山頂から風景を写真に撮るようにしてるんだ。……何故ここにこの写真があるのか疑問だがな。」
「それにしてもすっごく綺麗だねー。絵にしちゃいたいくらいだよー。」
「……山は良いぞ。………苦労を乗り越えた人間にしか見る事の出来ない、自然が作り出した奇跡を見る事が出来る。………芸術と言っても過言ではない……。」
自然が作り出した奇跡…か。多くの山を制覇した彼だから言える事ね。……それにしても意外と詩人なのね、獅子谷君。
「登山…一回くらいは、体験してみたいわね。」
「…何、興味あるのか?なら必要な道具、天候の知識、遭難した時の対処法とか色々教えてあげるぞ。安心しろ、素人向けの山と言うのもごまんと存在するからな。」
「お、落ち着いて。あくまでもここから出ない事には始まらないわ。」
「…す、すまん。…俺とした事が早とちりしてしまった……。」
凄くイキイキとした表情をしてたわね…。あんなによく喋る獅子谷君、初めて見たわ。
「…そう言えば、小鳥遊君から聴いたことだけど暁日君って高所恐怖症らしいよ。彼には登山はちょっと厳しそうだね。」
「………そんな事言っているからアイツはもやしなんだ。………登山とトレーニングは肉体、精神を鍛えるのに最適だ…………そうだ、ここでアイツを鍛えてやるか。」
暁日君…ご愁傷様。
ーー
一方、校舎内を探索している暁日は…
「…へくしっ!」
「どうしたの暁日君?急にくしゃみして。」
「いやなんかいきなり…。風邪か?」
「もしかして、誰か噂してたのかも。」
「まさか、そんなことないだろ。」
ーー
「そういえば今何時かしら?」
時間が気になったので確認すると、11時30分。
「あと30分で集合時間ね。校舎より距離があるし、そろそろ戻った方がいいかもしれないわね。」
「もうそんな時間か。じゃあ食堂へ行くとしようか。」
「はーい。では、食堂へゴー。」
「……御意。」
探索編、宵月視点終了です。
今回初めてもう1人の主人公に焦点を当てたのですが、いかがでしたか?
上手く差別化出来てるといいのですが…。