「幽華ちゃん…それに蒼真も…?う、嘘、だよね…?」
「何故二人も殺されなくてはならないのですか…?もう嫌ですわ…!」
同時に二人も殺されるというあまりにショッキングな状況に飛田は呆然とし、夜桜は泣き崩れていた。
「犠牲者は氷室、そして東雲か。」
「皇クン、これって…。」
「あぁ。分かっている。」
「やっぱり二人とも気づいていたんだね。」
「………非常にマズイ状況だ。」
「マズイって?」
俺は皇に聞き返した。
さっき皇は『恐れていた事が起こった』って言ってたな…。
「これまでのクロは全て狙いが決まっていたから殺すのは一人で済んだ。…だが、もし無差別殺人が起こったとしたら?」
「…あ!まさか…。」
「そうだ。クロが全員を殺す事によって学級裁判は起こらず、問答無用で卒業という可能性が考えられる。」
「その心配はありませーーーん!」
「貴様か。『心配はない』と言ったな。どういう事だ?」
「学級裁判なしでのクロの一人勝ちなんてボクが許さないんだからね!というワケで新しい校則“同一のクロが殺せるのは2人まで”を追加します!」
「重ねてお聞きしたいのですが、“クロが2人の場合”はどのような処置がとられるのでしょうか?」
「その場合は早い物勝ちとします!つまり先に殺したクロだけが得をするというワケだね!新しいルール説明はこのくらいかな。じゃ、あとは父さんに任せるねー!」
モノクマが去り、新しい校則が追加された。
ーー
15.同一のクロが殺せるのは最大2人までとします。
16.クロが複数人いる場合、先に殺したクロの指定を行います。
ーー
そして、入れ替わるようにモノパパが現れた。
「さて、校則の説明も終わったことだし準備は出来ただろうか。今回は2つあるからな。しっかり目を通しておくように。」
「さてこれからどうするか…。2人も死者が出ている以上、これまでのように2人ずつ見張りに人員を割くわけにもいかないな。少々心もとないが、1人ずつ見張りを配置することにしよう。それから検死と言いたいが…東雲が殺された以上、そうは言っていられない状況か。それ以外の手がかりを…。」
皇が指示を飛ばしていると、
「なら私に検死を任せてもらえるかしら?」
宵月が声を上げた。
「できるというなら構わないが、出来るのか?」
「問題ないわ。
「お、覚えた!?どうやって!?」
「もちろんあなたが持ってきてくれた東雲君の部屋にあった医学書を読んだのよ。一通りの知識は頭に入っているわ。」
俺が渡したあの大量の本の内容を全部覚えた…?あの短時間でか?
「といっても、実際の経験はないから本業の彼と比べると彼ほど正確な結果は出せないけど、それでも構わないかしら?」
「四の五の言っている場合ではないな…。分かった、検死は宵月に任せる。異論はないか?」
「俺は異論はないよ。みんなは?」
「ワタシも問題ないわ。」
「ボクも大丈夫だよ。」
「よし、では早く始めよう。」
みんなが解散して捜査を始める。
…すっかり見慣れた光景、いや見慣れてしまった光景だ。
俺も足を止めるわけにはいかない。始めよう。
例によってまずは小鳥遊と一緒にモノクマファイルに目を通すところから始めた。
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モノクマファイル3
被害者は超高校級の監察医、東雲蒼真。
死体はモノクマタワー1階、超高校級の執事の研究資料室で発見された。
死因は落下したシャンデリアに押し潰された事による圧死。
死亡推定時刻は9:30頃。
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「死亡推定時刻は9時半ごろ、か。あの時東雲の死体を見つけたのも丁度それぐらいだったな。…となると、やっぱりあの轟音はシャンデリアが落下してきた音だったのか。」
…ん?なんだこの違和感…。今までの物とは何か違うような…?
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モノクマファイル4
被害者は超高校級のゲームプログラマー、氷室幽華。
死体は校舎4階、超高校級のゲームプログラマーの研究資料室で発見された。
死因は毒殺。
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【コトダマ獲得:モノクマファイル3】
【コトダマ獲得:モノクマファイル4】
「今回は氷室の推定時刻が書かれていないな。」
「前も隠された情報は大事な証拠だった…。となると、時間が重要な手がかりになるのかもね。」
「それに毒…。犯人は一体どこで調達したんだ?」
今回は被害者が2人もいる分、調べるところが多い。とても全て調べて回れる気がしない。
「こっちはまだ結構人がいるしなぁ。先に東雲の死体発見現場から調査のをしておくか。」
「そうだね。1か所に人が集まるのよりいいかもしれない。」
ーー超高校級の執事の研究資料室
「よし、早速調査を…。「あなた達ちょっといいかしら?」
いざ、調査を…と思ったタイミングで宵月が声をかけてきた。
「ん?宵月どうした?」
「あっちの検死が終わったからこっちの検死を済ませたいんだけどいい?」
「え?なんて?」
なんか言ってるけど、パイプオルガンの音がでかすぎてよく聞こえない。
「だから、検死を…。」
「あ!?」
「・・・・・・・あぁ、もう!何なのよこのバカでかい音!全然聞こえないじゃない!!」
…あ、キレた。
「た、確かにうるさいな。先に止めてくるか。」
「うん、こんなにうるさかったら集中出来ないし。そうしよっか。」
「宵月、ちょっとこの音を止めてくる!」
「何て!?」
「先にこの音楽を止めてくる!!!」
「分かったわ!!」
「えーと音源はたぶんこのオルガンだよな。………。」
「ど、どうしたの?」
「これ、なんでひとりで勝手に演奏してるんだ?」
「………あ。」
「このオルガン、確か死体を見つけた時も鳴ってたんだ。あの状況で東雲の死体を見つけたのは俺と剣崎、獅子谷。それから、宵月、夜桜、葛城の6人なんだけど、そっち側で死体を見つけたのはそれ以外の全員だよな?」
「うん、君たち以外の4人…ボクと皇君、シルヴィアさんと飛田さんで誰かが離れるなんてこともなかったよ。」
となると、誰一人として単独行動はとっていないって事か。
あの時、宵月側の3人も同時に来たから単独行動はしていないとは思うけど、後で宵月にも聞いておくか。
………それに例のボールもどこに行ったんだ?
【コトダマ獲得:無くなったボール捜索時の行動】
暁日側、皇側、宵月側の3グループは全員で揃って行動しており、単独行動をしていた人物はいない。
ボールは未だに発見されていない。
「それより今はこっちが問題だな。…マジでなんで動いてるんだ?」
改めてオルガンを見ると誰も座っていないのに鍵盤だけが動いている。
死体を見つけた場所ということもあってなおさら不気味だ。
「こういう時は彼らに聞くのが一番だよね。…おーい、モノクマ!」
「ハイハイ、お呼びでしょうか?」
「…随分、手慣れてるな。」
「まぁ何かとパシ…呼び出してるからね。」
「それはともかくモノクマ、このオルガンはなんで勝手に動いているんだ?」
「これはこのオルガンに搭載された『自動演奏機能』によるものなのです!好きな楽譜を乗せてボタンを押しておけば後は勝手に演奏をしてくれんだよ!」
「見た目以上にハイテクなんだね、これ。」
「イエス!外見は至って普通のパイプオルガンだけど、中身はすんごい技術のカタマリなんだよ!!」
自動演奏か…となるとやっぱりあの時この部屋にいた人間はいなかったってことか。
…そもそも犯人はわざわざ演奏なんかさせたんだ?
目の前の死体に注目させるため?それともただの演出?
【コトダマ獲得:パイプオルガン】
自動演奏機能による無人演奏が可能。
「宵月、演奏を止めておいたぞ。」
「ありがとう。待ってる間にある程度検死を終わらせておいたわ。」
「手が早くて助かるよ。」
「何もしないで待ってるのは好きじゃないからね。まず、ファイルに開いてある通り、彼はここから真上にあったであろうシャンデリアに押し潰された事で内蔵も骨もぐしゃぐしゃになって即死よ。それから死体に動かされた形跡はない。つまり、自分の足でここで来てこの場所に立った瞬間、シャンデリアに押し潰されたんだと思うわ。」
即死か…。きっと東雲は犯人が誰なのかも知らずに死んだんだろうな。
【コトダマ獲得:宵月の検死結果】
東雲はシャンデリアに押しつぶされて即死。
また、死体を動かされた形跡もない。
「暁日君、ちょっといい?」
「なんだ、小鳥遊?」
「考えたんだけどさ…必ずしも東雲君が殺されたとは限らないんじゃないかな?」
「?どういうことだ?」
「だって死体はシャンデリアに潰されてたんだよ。偶然ワイヤーが切れて…って可能性もあるんじゃないかな?」
「なるほど…事故って事か。」
「それはないわ。」
バッサリ切り捨てられた…。
「な、なんでだ?」
「この事件に使われた凶器を調べたらすぐわかることよ。」
そう言って横に動かされたシャンデリアを指さした。
「そういや誰があれ動かしたんだ?」
「獅子谷君よ。あのままだと検死できないから、貴方達がお仕事してる間に動かしてもらったの。」
で、その時に調べたと。
「シャンデリアについては獅子谷君とシルヴィアさんが調べてるわ。詳しいことは彼らに聞いて。」
「お、教えてくれないのか…。」
「こっちで調べる事は一通り済んだからもう用はないわ。その間に向こうは調べといて上げる。それでいいでしょ?」
「あ、あぁ。助かる。」
相変わらず、捜査になるとなんかサバサバになるよな…。
ーーさて、シャンデリアだが…。
「大きさは大体、2メートルくらいか。こんなでかいのが落ちてきたらひとたまりもないよな…。」
「骨も内臓もぐしゃぐしゃ………自分で言ってて気分悪くなってきた。」
「大丈夫か?無理するなよ。」
「う、うん大丈夫。それよりも早くシャンデリア調べよう。」
「重さはどれくらいなんだ?」
ふと、気になって軽く持ち上げてみようとしたところ、
「フン!ウググググ・・・・!!全然動かねぇ…。」
「………………動くわけないだろう。これはかなり重い。」
「獅子谷。お前、よく動かせたな。」
「……俺でもここまで重いものは滅多に持ったことはない。……おそらくだが600キロくらいはある。」
それくらいの重さだと、持ち運ぶのはまず無理か。
【コトダマ獲得:シャンデリア】
東雲を押しつぶしていた凶器。
推定の大きさは2メートル、重さは600キロと非常に大きい。
「それから、ワイヤーの切り口が気になるな。推理小説を読んだ記憶だと確か人工的に切られた場合は切断面が揃っているらしいけど…。これはどうなってるんだ?」
ワイヤーがシャンデリアの1メートルくらい上の位置で切れていた。そして切断面は揃っておらず、バラバラになっている。
「切断面はバラバラ…。ってことは、自然に切れたってことになるな。って事はやっぱりこっちの事件は事故かなんじゃないか?」
「甘いわね、そんな単純な事件じゃないわ。」
「うおっ。……びっくりした、アレックスか。単純じゃないってどういう事だ?」
「なるほどね…。そういう事か。」
いやいや、2人して勝手に納得しないでくれ。
「ワイヤーが自然に切れる事自体がおかしいのよ。普通、ワイヤーってのは吊り下げるものよりもっと重い物に耐えられるように出来てるの。………太さは約20ミリって所ね。この太さなら2トンくらいの重さまでなら余裕で耐えられるわ。」
「……あぁ、なるほど。だから切れるのがおかしいのか。」
「そういう事。となると次の問題はいつ、誰がワイヤーに細工をしたって事になるわ。」
「細工の方法か…。そういやアレックス、お前どこから来たんだ?さっきまでいなかっただろ?」
「ワタシ?ワタシはこの上ーー天井裏からよ。」
「天井裏って、なんでそんな所調べてたんだ?」
「ワイヤーが手掛かりとなると当然、上も調べる必要があるからね。調べようとした時にアナタ達の話し声がしたから降りてきたのよ。これを使ってね。」
そう言ってアレックスが見せたのは普段からつけている腕輪だった。
「?それって確か普段からつけている奴だよね。確か超高性能GPSが内蔵されてるって言う…。」
「ってあれ?なんか形変わってないか?」
「正解。実は改造したのよ。」
「か、改造?」
「どうせここじゃGPSなんか付けてても意味なさそうだからね。中の機械を抜いてちょっといじったの…こんな風にね!」
と言いながら天井へ向かって腕を構えて何やら操作したと思うと突如、腕輪からアンカーの付いたワイヤーが射出され、天井の梁に突き刺さった。
「おぉ……!巻き取り式のワイヤーフックか。つまり、これを使ったって事か。」
「そういう事。じゃ、ワタシはまた上の捜査に戻るけどアナタ達はどうする?ワイヤーの強度は十分だから2人まとめて運んでいけるけど一緒に来る?」
……天井……屋根裏……梁……骨組みだけ……。
「……小鳥遊、頼む。俺はもう少し下を調べてみる。」
「だと思ったよ。じゃ、シルヴィアさんよろしく。」
「了解よ。それじゃ、しっかり掴まってなさい。」
小鳥遊とアレックスはそのまま天井へ上がっていった。
「……さて、あぁ言ってしまったからには新しい手掛かりを探さないとな…。」
とりあえず、さっきアレックスが言ってた事を元にもう一度ワイヤーを調べてみる事にした。
「さっきの話から考えると、ワイヤーに細工がされてる可能性があるって事だから、もう一回切れ目を見直してみるか…。」
さっきは気づかなかった事があるかもしれない。そう思って見直して見ると…。
「うん?この切れ目…なんか変だな。」
切れ目をよく見ると一部分だけが揃っている事に気づいた。
位置は端から大体三分の一くらいの場所だ。
さらに切れ目の周辺が茶色くなっている。
「…鉄臭くて粉状になってる。…って事はこれもしかして錆か?」
【コトダマ獲得:ワイヤー】
切り口は揃っていない為、恐らく自然に切れた物。
切り口周辺に鯖と思われる物が付着。
事件発生時の状況を思い出しながら何か変わった事が無かったか考えてみる。
「……あっ、そう言えばあの時扉にカギが掛かってたな。それを獅子谷が無理矢理突破して開けてたっけ。」
ここでカギの事を思い出し、扉を調べる事にした。…が。
「………あれ?カギが付いてないな。」
扉にカギが掛かっていなかった。それどころか、錠のような物自体が存在しない。
「あの時間違いなく扉は開かなかった。となると、電子ロックとかじゃない限り、絶対何かしらで開かないように細工はしてるはずなんだけど…。ん?」
そう言いつつ、扉の淵に指を這わせていると何かベタベタした物が指に付いた。掬って見るとゼリーのようなスライムのような物体だ。
「臭いは……シンナー系の臭いか。……これはもしや。」
【コトダマ獲得:ゼリー状の物体】
事件現場の扉に付いていた物。ベタ付いており、シンナー系の臭いがする。
…もう一回、扉を開けてからの事を整理しよう。
「…何かが落ちる音。その後、扉を開ける。…で、音楽が聞こえたからその方を見ると、シャンデリアに潰された東雲…。そういや、この席は全く目に入らなかったな。」
流石に手掛かりは見つからないと思いつつも念の為調べる事にした。
すると、1番扉に近い席の裏側に隠すかの様に何かが落ちていた。
「この機械、オーディオプレイヤー?…いや違うな。これは、ボイスレコーダーだな。」
わざわざ席の後ろに置かれている上に向き的には丁度扉側にスピーカーが来るように置かれている。
となると、誰かが落としたものとは考えにくい。
「録音記録は1つだけか。日付は昨日の夜20時からで3時間くらいの録音時間…かなり長いな。それと、音量は最大に設定されているな。」
…なんか嫌な予感がする。念のため音量を半分ほどに下げてから再生してみることにした。
『・・・・・・・・』
「無音だな…。俺の勘違いだったかな…?」
本当に落とし物かもしれない。今聞いてる音声も落とした弾みで録音されてしまったものかもしれない。
半ば諦め気味に少しスキップさせてから再生すると、
『・・・・・・・ズドン!!!!』
突如大きな音が鳴り響いた。かなり音量を下げていたが、それでも凄い音だ。
「………っ‼……びっくりしたな。音量下げててよかった…。この音、例のシャンデリアが落ちた音か?しかもタイマーで再生開始時間が設定されている。時間は………!今日の朝9時半!…これ、もしかしたら今まで考えていた前提がひっくり返るんじゃ……⁉」
【コトダマ獲得:ボイスレコーダー】
扉に一番近い席の裏側に置いてあったもの。
シャンデリアが落ちる音が録音されていた。
タイマーが設定されたおり、時間は朝の9時半。
「ーーあ、いたいた。暁日君、そっちはどうだった?」
「………ん。あぁ、小鳥遊か。そうだな………かなり重要な証拠を見つけた、と思う。そっちはどうだっだ?」
「ボクの方は、そうだね…特に大きなものはシャンデリアを昇降させる装置を見つけたよ。屋根裏に『上昇』と『下降』させるためのボタンがあったんだ。だから、シャンデリアに細工するのは難しいことじゃないと思う。それと屋根裏から下に降りる方法だけど、階段があって降りた先が王室っぽい部屋になっててそこの扉を開けたら、この礼拝堂…って感じ。」
「うん………なるほど。1つ確認したいんだけど、そっち側のワイヤーの切れ目はどうだった?」
「なんか、錆みたいなのが付いてたよ。」
こっち側のと同じか…となると、ワイヤーが切れた要因はこれで間違いないな。
ピーンポーンパーンポーン……。
『え~この世には“時は金なり”という言葉があります。意味は“時間はお金と同じく貴重なものなので大事に使いましょう”という意味だそうです。まぁ、お金以上に大事なものはないとボクは思いますがね!というワケでみんな飽き飽きしてるだろうし、そろそろ捜査を打ち切ります!オマエラ、いつもの場所へお集まりしていただきましょうか!!』
「“時は金なり”…か。この捜査時間、俺は活用できたかな。」
「それは、誰にも分からないよ。…裁判にが始まるまではね。」
そうだ、全ては裁判で決まる。例えどんな結果になっても。
…行こう。
ーー
【宵月サイド】
もう一つの死体発見現場に戻るや否や、葛城君が声を掛けてきた。
「あ、帰ってきた。宵月さん!頼まれていたの調べといたよ。」
「ありがとう、で結果は?」
「『毒殺となると犯人は東雲君の部屋のものを使った可能性が高い』…その通りだったよ。まず、あそこにあったモノナミンの『β』がほぼ全部、『Ω』が2本無くなっていたよ。」
『β』と『Ω』の2種類…。単純に考えたら氷室さんが持ち出した物かも。
でも、それぞれの性質を考えると毒にもなる。
【コトダマ獲得:モノナミン】
『β』『Ω』の2種類が無くなっていた。
『β』は疲労回復効果、『Ω』には大量のカフェインが含まれており、強力な眠気覚まし効果がある。
氷室が持ち出した物だろうか?
「なるほど、他に変わった所はあった?」
「消毒液が何種類かあったんだけど、その内1種類がすごく減ってたんだ。…一応写真撮っておいたけど見る?」
「見に行く手間が省けて助かるわ。見せて。」
…写真には何種類かの消毒液のビンが写っている。
次亜塩素酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、それからエタノール…。
その中でも、次亜塩素酸ナトリウムが特に減っていた。
この薬品の性質は確か…。
【コトダマ獲得:大量に使われた消毒液】
東雲の研究資料室にあった物。
その中でも次亜塩素酸ナトリウムが大量に使用されていた。
「あそこにあったので気になったのはこれくらいだけど、他に何か気になる事ある?」
「他に気になる事…そうね…。皇君たちが氷室さんの死体を見つけた時のことを教えてもらえるかしら?」
「OK。でも、俺も大和から聞いたことだから詳しくないよ。………えぇと、あの時は確か大和たち4人がここへ氷室さんの様子を見に来たんだって。でも、何故か鍵が閉まってたから外から声を掛けたけど、反応がないからアレックスさんがピッキングをして開けたら、氷室さんの死体があった………という事らしいよ。」
鍵が閉まっていた………。ということはあの部屋は密室になっていたのね。
【コトダマ獲得:氷室の死体発見状況】
扉に鍵が掛かっており、開けた時点ではすでに氷室は死亡していた。
「なるほど、事件発生時の状況はよくわかったわ。となるとあとは…。」
「死体発見現場だね。」
「ええ。行きましょう。」
ーー氷室の研究資料室。
「さて、まずやる事は検死かしら。」
「検死は流石に出来ないから君に任せるよ。その間にやっておくとこある?」
「そうね…ゴミ箱を調べといてくれる?」
「ん、了解。」
氷室さんの検死、それからデスク周りの調査を開始した。
「…ファイルの内容通り、目立った外傷はなし。…体液系は…口から血が出てるわね。」
東雲君の研究資料室から持ってきた薄手の手袋を付けて触れる。
「酸っぱい臭い…ということは胃液が混ざってる血ね。多分、胃から吐き出した物か。」
その割にはデスク上や床には嘔吐物のようなものはない。
…ここ最近は食堂にも顔を出してなかったし、あのドリンクしか飲んでなかったようね。
【コトダマ獲得:氷室の検死結果】
口から胃液の混じった血を吐き出しているが嘔吐物はないことから、胃の内容物は恐らく空。
検死はこれくらいにして、デスク周りを調べる事にした。
「氷室さんはずっとここに座って作業してたし、たぶんパソコンの電源はつきっぱなしかしら。…って電源切ってあるわね。」
この部屋をしていた人…誰か知っているかしら?
「……剣崎君、ちょっといい?」
「宵月様、どうされましたか?」
「このパソコンなんだけど、死体を発見した時からこの状態だった?」
「そうですね。僕たちが死体を見つけた時、それから捜査をしている間もこの状態でした。…何か気になることが?」
「そうね。作業中に倒れたんだったら、電源が切れるのもちょっと変かなって思って。もしかしたら、氷室さんが咄嗟に消したのかもしれないけど。」
「僕も電源を点けて確かめたいと思って電源を押したんですけど、全然点かなくって………。壊れたのでしょうか?」
………そう言いながらパソコンの画面側のボタンを延々と押していた。
「画面側のボタンを押しても点かないわよ。テレビじゃないんだから。パソコンの本体はこっちよ。」
「え、そうだったんですか!前押した時もそれを押したら画面が暗くなったから、てっきりこれが電源かと…。」
………冗談抜きで機械音痴ね。
兎も角、電源を点けて確認しようとするも、
「……やっぱり、パスワード画面ね。氷室さんがパスワードを書き換えた可能性もあるけど、この状態じゃ知りようがない…か。」
「氷室様が行っていた作業もこれじゃわかりませんね。」
………いや、これはかなり大きな手掛かりになると思うわ。
【コトダマ獲得:パソコン】
氷室が死ぬ直前まで作業を行っていたもの。
電源を落とされており、パスワードも不明なため、中身の確認は不可能。
「あとは………ん?」
パソコンの本体部分のUSBポートに見覚えのない物が挿さっていた。
「黒いUSB?………こんなものあったかしら?」
何かのデータを保存するもの?………いや、もしかするとこれは……。
【コトダマ獲得:USB】
パソコンのUSBポートにいつの間にか挿さっていたもの。
「…さて、こんなところかしら。葛城君、そっちはどう?」
「うん、こっちも終わったよ。」
「それで中身は?」
「そう焦らないでよ…。モノナミンβの空きビンしか入ってなかったよ。」
「機械の部品みたいなのは入っていなかった?」
「?そんなもの入ってなかったけど…どうして?」
「………別に。気にしないで。」
「?」
【コトダマ獲得:ゴミ箱】
中身は全てモノナミンβの空きビン。
ピーンポーンパーンポーン……。
『え~この世には“時は金なり”という言葉があります。意味は“時間はお金と同じく貴重なものなので大事に使いましょう”という意味だそうです。まぁ、お金以上に大事なものはないとボクは思いますがね!というワケでみんな飽き飽きしてるだろうし、そろそろ捜査を打ち切ります!オマエラ、いつもの場所へお集まりしていただきましょうか!!』
………時間、か。
「…お金か。ここにいても全く必要ないものだね。」
「そういうことを言いたいんじゃないと思うけど、まぁ良いわ。行きましょう。」
ーー
これまでと同じく噴水前に集まる私たち。
そしてこれまでと同じく、エレベーターが姿を現す。
全員が乗ったのを確認したかのように扉は閉まり、またあの忌々しい場所へ運ばれていく。
無言でエレベーターに乗っていると葛城君が小声で話しかけてきた。
「………宵月さん、ちょっといい?」
「何?」
「あの時君は俺に
「…そうね。」
「1つは東雲君の研究資料室の調査。それの意味は分かるんだ。……でも、なんで君はもう1つ『あんな事』をするように頼んだの?」
「簡単よ。『あれ』をすることで犯人の行動を確実に制限できるの。」
「………な…なんだって…。じゃあ、『あの人』が犯人……?」
「あくまで可能性の話よ。でも、可能性は高いわ。」
「・・・・。」
「…真意は裁判で犯人が分かった時にちゃんと話すわ。…そろそろ着くわよ。」
………話し終わるとほぼ同じタイミングでエレベーターの扉が開く。
再び様変わりしていて、まるで西洋のお城のようだ。
「待ちくたびれたぞ諸君!今回はゴシック系にしてみたぞ!どうだ、エレガントだと思わないかぁ⁉」
「時間も押してるし、急いで席に着いてね!」
ーー
今回も新たに遺影が増えている。
大きく〆のマークが描かれた柊。
髑髏マークが描かれた東雲。
そして8ビット風に『DEAD』の文字が書きなぐられた氷室…。
ーー超高校級の監察医、東雲蒼真。
いつも自由なことばかりしてて何考えてるかわからないような奴。
…けど、誰よりも仲間想いな奴だった。
ーー
ーー超高校級のゲームプログラマー、氷室幽華さん。
『神』を自称していて少し近寄りにくい変わった人。
でも、最期までここから出るための手がかりを探してくれていた。
ーー
…そんな2人を同時に悪魔のような方法で殺した真犯人が、この中にいる。
…俺が!
…私が!
絶対に見つける!!