ダンガンロンパ Redemption   作:ナーガ工場長

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色々あっためて来たネタを色々放出できる時が来て、遂にここまで来たって気持ちです。



(非)日常編2

……驚き、関心、疑惑、興味、疑念………。

 

 

そう言った感情を含んだ奇異の視線が一斉に私へ向けられる。

 

 

一方でその元凶とも言える発言した“男”は先程の注意を気にも留めず、また咥えたタバコを口から離して呑気に煙を吐き出している。まるですぐにでも鼻歌を歌いそうな雰囲気だ。

 

『超高校級の蒐集家』……。

“壱条魅弦”と名乗る男は私を指してそう呟いた。

 

 

情報を理解できてない私達と彼との、この温度差の原因はすぐに彼の口から語られた。

「………?どうしたんだ?なんでみんなそんな不思議そうに宵月さんを見てるんだい?」

「『蒐集家』…それが本当に私の才能?」

「あぁ、全員知ってて当然だと思ってたんだけど……そのリアクション、君も含めてどうやら違うみたいだな。…まさか、才能の記憶まで消しているとは。」

どうやら彼も現状を飲み込めたららしく、少し慌てた様子でタバコの一式をポケットにしまいだした。

 

 

 

 

「『蒐集家』とは言ってもただ物を集めるような才能じゃあない。君の才能の本質は異常なまでの“知識欲”、そして読んだり聞いたりした事を一切経験せずとも自分の知識や技術として“吸収”する能力。……自分の知識の一部として情報を“蒐集”する、これが君が『蒐集家』たる所以だ。因みに、一般的な『収集家』と区別するために君の才能の文字は常用漢字ではない方の『蒐集』と書く。……とまぁ、オレが知ってる範囲内で説明したが、どうだい?何か心当たりはあるかな?」

“先生”に私の才能について詳しく説明してもらい、これまでの記憶を遡っていく。他のみんなも同じ事をやってるようだ。

 

 

 

…確かに私が事件の調査を行う理由はただ『“真実”を知りたい』、その一点だけだった。そして、その為に徹底的に調査を行い、さらには東雲君の部屋の資料を読み漁り、検死に関する知識を“覚える”ということもやった。

それらは全て、本来私が持つ才能である『蒐集家』の本能のような物に従っていたのかも。……そう考えると今までの行動にも合点が行き、パズルのピースのように全て繋がった。

 

 

 

「……確かに“先生”の言う通り、かもね。無意識の内に本能に従い、知識を“吸収”していたような気がするわ。お陰で納得もした。どうやら私の才能は『蒐集家』で間違いないようね。」

「…どうやら、お役に立てたようだね。………あぁ〜!良かったぁ〜!これでもし『納得してないわ』とかどうしようかって思ってたんだよなぁ〜!この状況のせいで、ただでさえ信用されてねぇのにさらに疑われてたら、オレの居る場所が完全に無くす事になりそうでマジ怖ぇんだよ〜!」

憑き物が落ちたのか、胸を撫で下ろした様子で脱力してる。

…けど正直な所、まだこの“先生”が信用出来るかどうかは微妙な所。

今のうちに彼が知ってる事を洗いざらい聞き出しておかないと。

 

「…まだ、完全に信用すると決まったわけじゃないわ。あなたが本当に私達のクラス担当なのか、そもそもなんでコロシアイを知っているのか…それをハッキリさせるまで、ね。」

「相変わらず手厳しいなぁ。…つっても、そこはオレとしてもハッキリさせときたい。こちらからも聞かせて貰ってもいいかな?…このコロシアイがどうやって始まったかを。」

「…分かったわ。」

 

 

ーー私達はこれまで起こった事、コロシアイによって仲間たちを喪ってきた思い出したくない残酷な記憶を事細かく説明した。

 

 

「……うん、うん……なるほど。やはり、オレの知ってるコロシアイと一緒だ。モノクマに記憶を“一部”…恐らく過去の学園生活に関する記憶をメインに抜き取った状態にする事で、君たちを初対面と思わせ、クラスメイト同士でコロシアイを行わせる…。反芻するだけでも吐き気を覚えるな。」

「…って事はやっぱり…。」

「あぁ、間違いない。君たちは希望ヶ峰学園93期生、それも2.3年は一緒だったクラスメイトだ。」

「そ、そんな……!」

 

 

“先生”によって伝えられた真実はこれまで感じた絶望より遥かに大きな絶望を感じさせるには十分すぎた。……クラスメイト同士で憎み、恨み合っていた…これほど悍ましい事実はかつてなかった。

 

 

これまで以上の絶望を感じ、みんなが沈黙する中、1人それを破る者がいた。

…壱条先生だ。

「……けど……妙だな。」

「妙……って?」

「君たちはさっきコロシアイの参加者は『16人』と言った。だが、オレの知る限りだと君たちのクラスは…

 

 

 

 

 

全部で『17人』のはずだ。」

…え?

 

 

 

「じ、17人だって?先生!俺達以外にもまだ1人いるって事ですか!?」

「あぁ、元々人数が少ないんだ。それを数え間違えるのは流石にねぇよ。」

「そ、そいつは…誰なんですか?」

 

 

 

 

 

「17人目の生徒の名前は『黒裂影司(くろさきえいじ)』。才能は確か『超高校級の影武者』だったはずだ。」

「黒裂、影司…。」

「『超高校級の影武者』…。ほ、ホントにそんなヤツが?」

 

 

 

みんなが矢継ぎ早に質問しようとした瞬間、横から声が聞こえた。

…フィリウスだ。

『そうだ。壱条センセイが言った通り、キミたちは全部で17人。そして最後の人物の名前も『黒裂影司』で間違いない。裏付ける証拠もある。』

そう言ってフィリウスは自身の画面を切り替えファイルを一つ表示させた。

中身は『集合写真』と言うタイトルの画像、それと『生徒名簿』と言うタイトルのpdfのようだ。

 

『このファイルがさっきも言ってたマスターから見せるよう言われたものの一つだ。『生徒名簿』、ここにはハッキリと黒裂影司を含めた17人の名前と才能が明記されてる。』

そう言ってpdfを表示すると、そこにはしっかりと名前と才能が書かれている。勿論、私の項目には『蒐集家』と書かれてあった。…そして私と同じように才能に関する記憶を消されていた本代君の項目にもちゃんと『改造人間』という才能が記されていた。…やっぱり、モノクマ達の言葉は嘘ではなかったようね。

『そして、こっちの写真だが…黒裂影司は写っていないな。』

「……まぁ、当然といえば当然だろうな。彼が校舎や教室にいる事は滅多になかったし、写真には絶対写ろうとしないちょっと変わった子だったんだ。」

 

表示された写真にはその黒裂影司と思われる人物を除いた先生も含めたコロシアイに参加している全員が写っている。どうやら、集合写真のようだ。写真の中では先生がセンターにいて、暁日君と小鳥遊さんが左右で並んでたり、柊さんと八咫さんが手を繋いでたり、白暮君の左右から飛田さんと本代君が肩を組んでたりと、みんな笑顔でとても仲が良さそうにしている。…因みに私は葛城君との距離が何故か一番近い。

 

「…こんなに仲が良さそうだったのに。」

「ここ数年でもクラス全員がここまで仲良しだったのは結構珍しいみたいでさ、オレもよく先輩や同僚の先生達から羨ましがられてた……よ・・・・・・・っ。」

と、そこまで言いかけた所で突如先生は黙ってしまった。

 

「せ、先生?」

「……もしかしたらこのコロシアイの首謀者は黒裂影司、アイツなのかもしれない。」

「…な、なんですって!?」

「考えても見てくれ。コロシアイに彼だけ参加してないってのも不自然だろ?それにわざわざ記憶を消して16人だけと思わせる意味もない。黒幕の視点で見ると黒裂という存在自体が初めからない方が都合がいいんだ。」

「仮にそうだとしてその行為に一体何の意味があるんだ?何故クラスメイト同士でコロシアイなど…!」

「・・・コロシアイが始まった時、モノクマは『目的は絶望』と言ってたんだよな?黒裂が“絶望”そのもの、もしくはその一派だとしたらオレ達と同じ物差しで考えても無駄だ。奴らにとって“絶望”は手段でもあり目的でもある。コロシアイはその過程でしかないんだ。」

「“過程でしかない”というのは先生、どう言う事ですの?」

 

 

 

「言葉の通りだ。“絶望”は周りに絶望を振り撒きながら自分達も絶望する。破壊、暴行、自傷、自殺…あらゆる手段を使ってな。一言で言えば“異常”、いや“狂気”としか言いようがない行動を取るんだ。そしてその“絶望”の統率者とも言える存在によって昔、大きな事件が発生した。それは天災と呼ぶには悪意に満ち、人災と呼ぶにはあまりにも規模が大きすぎる……。天変地異よりも戦争よりも遥かに恐ろしいとさえ言わしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人はそれを『人類史上最大最悪の絶望的事件』と呼んだ。」

 

 

 

 

 

「じ・・・『人類史上最大最悪の絶望的事件』だと!?」

壱条先生の言葉に誰よりも驚き動揺していたのは皇君だった。

「皇くん、君は当然知ってるはずだ。あの事件の後、世界中で様々な政策や情勢の変化が起こった。他国との交流を完全に断ち、鎖国状態に陥った国もあれば、逆に中世の帝国制度を最新の法に組み込み、国名を帝国に改名し、支配という形で周囲の力の弱い国や民を守る為に取り込んだ国もある。そして、この国も例外ではない。事件の発端になったこの国は防衛能力を上げるために法令や条約は大幅に改訂・整備され、特に国内外からの破壊行為を行う勢力を抑止するために、かつての第二次世界大戦後から初めて本格的な軍隊を導入する事を政府は決定した。それこそが“玄武”“青龍”“白虎”そして“朱雀”の名を関した『四神』、そしてそれらを束ねる総司令部『麒麟』だ。」

「それで、その事件がコロシアイや黒裂影司とどういう関係があるのかしら?確かに“絶望”というワードは共通してるけど。」

 

 

「まぁそう急かしなさんな。ちゃんと順を追って説明するからさ。」

周りが先を急かそうとするのを軽くあしらい、彼は一息ついた。

「…コホン。今から何十年も昔に『人類史上最低最悪の絶望的事件』は起きた。その事件が起きた際、希望ヶ峰学園78期生を学園内に隔離する事を決定した。だが、事件の首謀者である“絶望”の統率者…『超高校級の絶望』と呼ばれるんだが、ソイツがその隔離時に紛れ込み、閉じ込められた学園内という状況でクラスメイト同士での命の奪い合いが起きた。それが歴史上最初の『コロシアイ』とされている。最終的に『希望』に覚醒した一人の人物と何人かの生存者によって『超高校級の絶望』は討たれ、滅びたかに見えた。…だが、死後もその影響力は凄まじく『絶望の残党』としてまだ活動を続けていた。コロシアイの生存者達は特に影響が大きかった彼らの先輩たちを更正させるために『未来機関』と呼ばれる組織に入った。だが、今度は残党達の更生手段を利用した『第二のコロシアイ』、そして未来機関の破滅を目的とした『第三のコロシアイ』が起こったんだ。そしてモノクマは“絶望”の象徴みたいなもんだ。…この辺に関しては“彼女”がよく知ってるかもな。」

そう言って先生はいつの間か取り出して手元で弄っていたタバコで“彼女”、フィリウスを指した。

 

『…あぁ、もう一つマスターから託された物…。それがこの『コロシアイ』の情報だ。少々ショッキングな資料だ。見るなら心しておけよ。』

「…!……こ………これ…は…!」

フィリウスが画面に表示した“資料”、それはゲームマスターとして存在するモノクマ、全身を槍で貫かれた女性の死体、磔にされた状態で硬球を生身で受けた事で、辛うじて人の形を残した男性の死体、隙間から血が溢れ出したプレス機、血の海の中でうつ伏せで倒れる大柄な男性、生きたまま火山の火口に放り込まれた死体…私達が何度も目にしてきた物と変わりない地獄のような光景だった。

 

「そう、それこそが過去に行われてきたコロシアイだ。その後未来機関はこのコロシアイを後世の若い人間達に広く知ってもらい、更に未来の人間に伝える為、ゲームや映像作品として記録を残す事にした。それが『ダンガンロンパ』……つまり、『ダンガンロンパ』と言うのは所謂“負の遺産”なんだ。」

 

 

「『ダンガンロンパ』は“負の遺産”…。」

「うぅん…って、ちょっとセンセー。質問いい?」

「お、何かな飛田さん?」

「『ダンガンロンパ』がそーやって生まれたのは分かったよ。けどさ、じゃなんで53作も続いたの?まさかとは思うけどそれだけの回数、ガチでコロシアイがあったって事?」

言われてみれば確かにそうだ。単純に考えるとコロシアイが53回も続くなんてことはとてもじゃないけどあり得ない。

 

「『ダンガンロンパ』は未来の人間への警鐘で作られた、それは間違いない事実だ。……だが、時が進むにつれてその目的が歪められたとしたら?」

「目的が…歪められた?」

「………!!ま、まさか……まさか…!」

先生の言葉で私の頭に浮かんだある“仮説”。それが事実だとすると悍ましくなり、悪寒が走る。

 

それに気づいてか気づかずか、先生は続ける。

「人というのは愚かだ。未来に希望を託すために作られたゲームだったが、いつしかその目的を忘れさられ、『架空の存在』として作られた希望と絶望がシノギを削り合い、最後に希望が勝つ…。そんなヒーロー番組のようなただの娯楽として扱われる様になったんだ。皆、登場人物の生死に一喜一憂するが心の底から希望や絶望に染まることはない。所詮はただの『フィクション』でしかないからな。」

……最早『狂気』としか言いようがない真実に言葉を失う。

一瞬、呼吸をする事さえ忘れてしまうほどだ。

 

「そんなのが当たり前になって現在、最終作とされている53作目だが、50作目が作られ出した辺りから既に一般公募で選ばれた人間が偽りの才能と記憶を植え付けられ、コロシアイに参加するようになっていた。そして今作では新たな試みとしてロボットをメンバーに加えて視聴者参加型にする方針が取られていた。けど、最早その事や本来の目的に対して異議を唱える持つ者はいなかった。その頃にはこの国だけじゃない、世界中で“愛されるゲーム”になっていたからな。」

皮肉混じりに先生はそう揶揄し、同時に乾いた笑いを上げる。その笑いは歪められた真実に対する呆れなのかそれとも怒りなのか。

 

「だが53作目は運営の想定通りに事が運ばなかった。最初の事件発生段階で無理矢理ゲームを続行するために首謀者自らメンバーの1人に手を掛け、それを別の人間に擦りつける有様。挙句にはメンバーの1人が自身が首謀者だと偽ってゲームの乗っ取りを画策した際には、残りのメンバーに『自分達が希望ヶ峰の人間だった』『乗っ取った人間は“絶望の子孫”だった』というあまりにお粗末な設定を与えて対抗させようともした。そして極め付けにはロボットが暴走し幽閉場所の破壊を開始した際には、かつての裁判のやり直しを通して首謀者自ら『自分達の存在そのものがフィクション』であるという“真実”を伝え、このコロシアイを半ば強引に終了させ、次回作に引き継ごうとする杜撰な対応をしていたんだ。…ったく、嘘の才能だけじゃ飽き足らず生徒という存在すらでっち上げるたぁ、心底腹が立つぜ。」

今度は舌打ちと共に毒付く。希望ヶ峰という存在への思い入れの強さ、そして“真実”を歪められたことによって生まれた『偽りのダンガンロンパ』に対する怒りのような感情なのだろうか。

 

 

「けど、ここで運営側にとっても恐らく全く想定してなかった事態になったんだ。」

「そ、それって?」

「本来、53作目の主人公は最初に濡れ衣を着せられたクロに未来を託され、成長していき、最後に絶望を打ち倒すシナリオを想定していたらしい。…だがその成長が予想を上回っていたのか、運営、そしてコロシアイを見ていた視聴者達に対して謀反を起こしたんだ。」

 

 

 

「『みんなが希望を、絶望を望むから、『ダンガンロンパ』が続くんだ。』

『例え僕達の存在がフィクションでも、この痛みは本物なんだ。』」

 

 

「そう訴えた彼は

“絶望も希望も選ばない選択肢によってクソゲーの烙印を押し、視聴者達から完全に『ダンガンロンパ』への興味を失わせる”

という考えに至り真正面から世界中の視聴者達を相手取ってこう叫んだ。

 

 

『みんなで『ダンガンロンパ 』を終わらせるんだ!!』

 

 

…その言葉が通じたのか、視聴者達は一斉に視聴を止め、残ったメンバーと首謀者はコロシアイのルールに則って投票放棄による罰を受けた。そして、これまで『ダンガンロンパ』を作っていた組織『チームダンガンロンパ』も自然消滅した事で最後まで残っていたメンバー達のその後の消息は現在も分かっていない。こうして『ダンガンロンパ』は完全に終焉を迎えた……とまぁ、これがオレの知るコロシアイ、そして『ダンガンロンパ』の全てだ。」

 

 

先生の語りを聞いても誰も言葉発さない。

…そのあまりに壮絶な事実に言葉が出ないのだろう。

その状況を破ったのは皇君だった。

 

 

「なるほど…。それがコロシアイと『ダンガンロンパ』という訳か。それを踏まえて質問させて貰いたい。…何故、俺達はこの事を知らずに貴方は知っているんだ?こんな大事な話、普通は忘れているはずなど無いと思うが。」

「君たちが知らないのも無理はない。君たちの世代とオレより前の世代の間でとある変化があったんだ。…そう、

 

 

コロシアイと『ダンガンロンパ』の歴史からの抹消だ。」

…え?

 

 

「…な、何故?どうしてそんな事を!?」

「政府の意向があったんだよ。元々政府は事件の記録を残す事に消極的だった。『たった1人の女子高生が発端でこの国だけじゃなく世界中が脅威に晒された』…そうあっちゃ、政府のメンツに関わる問題でもあるからな。オレが小学生くらいの時だったか。それまでは歴史の授業でも習うような事に対して政府は強烈な箝口令を敷いた。一言『ダンガンロンパ』というワードを口に出すだけでも重大な刑罰が与えられるくらいのな。現に見せしめとして多くの一般人や政治家が無差別に投獄されている。酷い時は『国家への反逆だ』と言われ、死刑に課される者もいた。そして、歴史に対しても抹消、改竄を加え、当時の資料はほぼ全て燃やされるか政府の金庫内に保管された。そうする事で不自然に空いた歴史の穴を埋めるべく『人類史上最大最悪の事件』という名前だけ残る形となったんだ。当然だが、事件についても現在の歴史の授業で学ぶことはしない。この事について希望ヶ峰学園も了承済みだった。」

 

「希望ヶ峰学園も…ですって?そんな事、あっていいはずが…!」

 

「学園は政府公認と言うこともあってとても強いパイプがある。それに当事者の殆どが死んでる事もあってお互いにWin-Winの計画だったんだよ。そう、希望ヶ峰も君たちが思うほどクリーンな組織じゃないって事さ。現に人体実験をしてるなんて話もある。…本代荘士くんもその“被験者”だ。」

「…やはり、『改造人間』という才能はそう言う事だったのか。」

 

「そうだ。学園ではかつて『カムクライズル』という人工的にあらゆる才能のエキスパートを作るプロジェクトが行われていた。…だが、そのやり方はロボトミーによる直接的な脳への干渉。その結果、感情が欠如した人間になってしまったんだ。同じようなプロジェクトとして今回は本代くんが被験者になった。彼に対してはまた別の方法で『改造』が行われたみたいだが、どういった手術なのか、その手段をオレは聞かされていない。」

「自分の担当生徒なのに内容を聞かされていないの?」

「なかなかハッキリ言ってくれるなぁ…。君たちの入学時、オレもまだ新任教師だ。ペーペーの人間に知る権利はないって言われて何も教えちゃくれなかったんだよ。」

嫌味を軽くいなし、先生は一呼吸おいてから再び話始めた。

 

 

「オレが教師になったのはかつて世話になった母校への恩返しじゃない。勿論それもあるが、それ以上に政府と学園の腐敗を正す…。これが目的だ。歪んだ真実を伝えてもその代償として、再び同じ悲劇が起きる。そのツケを何も知らねぇ人間が払うことになっても、改竄を行った奴らは自分達のケツを拭く事すらしねぇ。人が人らしい生き方も出来ない“あの”惨劇はもう二度と繰り返してはいけないんだ!」

 

 

今にも叩きつけてしまいそうな程タバコを強く握りしめたその手は震え、目には炎のような怒りの感情が篭っている。さっきまではコロシアイへの怒りや希望ヶ峰学園への敬意で動いてると思っていたけど、それ以上だった。これまで飄々と皮肉混じりに語っていた先生が今までに無いほど直情的になったその姿に彼なりの『正義』を貫く。そんな意志が感じられた。

 

「……ってあー、オホン。すまねぇ、ちょっとばかり感情的になっちまったかな。つまりそう言うわけだ。歴史から抹消された以上、『超高校級の絶望』を知る人間は少ない。それに『ダンガンロンパ』が狂ったのも運営に『絶望の残党』が混ざってたって噂もあるくらいだ。『絶望』がまだ生き残っていてその関係者だとしたら抹消されようが関係ねぇ。これらを考慮した上で黒裂影司が黒幕ってのがオレの仮説だ。」

「なるほど。となると、どうやって黒裂影司の尻尾を掴むか…ですよね。先生的には何かアテはあったりするんですか?」

 

 

「・・・・・・・・・そうだな。服装は結構特徴的だったな。季節に関係なく一年中白い帽子とスーツ、その上から黒いコートを羽織っていた。あと黒いマスクを常に付けてたな。一回暑くないのかって聞いたら“好きでこのカッコしてるんで気にしないでください”って素気なく言われちまったんだよなぁ、ハハ。」

 

 

 


 

 

「……白い帽子と黒いコート、だって…⁉︎」

「あ、暁日君!」

壱条が話した黒裂影司の特徴、それを聞いて思わず息を呑む。

それと同時に小鳥遊が俺の方を見て無言で頷く。…どうやら、考えた事は一緒のようだ。

 

 

ーーこの事を話せば核心に近づけるかもしれない。

 

 

そんな考えが頭をよぎり、首筋に冷や汗が流れるような感覚を受ける。

 

「ど、どうした暁日くん。急に慌てて…。」

「あ、す、すいません先生。みんな、ちょっといいか?……実は俺、既に黒裂影司と会ってるかもしれないんだ。」

「…この状況で何を言ってるのかしら?冗談なら後で聞くわよ。」

「いや……冗談なんかじゃない。少し前に先生が言った特徴と一致する人間に会ったんだ。」

 

俺は一度、呼吸を整えてからあの時の事をゆっくり話した。

 

「ーーつまり、君は黒裂と同じ格好をした人間に会った…という事か。」

「…はい。でもコートの前は閉めてたし、帽子も深く被ってた上に周り暗かったから顔は見えませんでした。」

「なるほどな…。確かに服装なら着替えれば誰でも変装が出来る。しかしモノクマを操るのと同時にそんな事が出来るとは考えにくい。となると考えられるのは…。」

「“協力者”だな。」

「ご名答、皇くん。全ての準備をたった一人で整えるのは難しい。初代の“絶望”も協力者の存在があったうえで計画を進めていた。やはり協力者がいると考えるのが妥当だろうな。」

 

「ちなみに先生はその“協力者”にアテはあるのかしら?」

「いいや、ないな。」

「随分キッパリと言うんだね…。」

「言ったろ?アイツの事はオレもよく分かっちゃいない。交友関係についても全く知らないんだ。もしかしたら、外部の人間かもしれないしこのコロシアイ参加者の中に紛れ込んでるかもしれない。」

 

 

「お、俺達の中に協力者が…!?」

「う、嘘、でしょう?」

「協力者……もしいるなら今すぐ名乗り出ろ。切り捨ててやる。」

先生の突然のカミングアウトによって途端に一触即発状態になる。

 

 

だが、

「はーい、はいはいはい!ストップストップ!冗談だよジョーダン!こんな所で殺し合っちゃそれこそ思う壺だ!……場を和ませるつもりだったんけどなぁ。」

いや、笑えないって。

 

 

 

「とにかく!もう一度言うけど、協力者と黒裂影司の尻尾を掴むまでは無駄にいがみ合うなよ!全員で脱出するためだからな!いいな!」

流石にマズイと思ったのか、少し語気を荒げて指示を飛ばす先生。

「あぁ、分かった。壱条魅弦……いや、壱条“先生”。」

先生に対し、皇は立ち上がり先生の方は向かい態度を改め始めた。

 

 

 

「や、大和?」

「俺はこのコロシアイが始まって一度足りとも事件の阻止を出来なかった。……組織の長としてあるまじき結果だ!俺は自分が情け無い!出来る事なら今、この場で自分の腹を切り裂きたいくらいだ。…だが、この場で命を捨てる事がもっと皆にとって迷惑な事だ。……改めて己を未熟さを知った今、壱条魅弦先生、貴方に頼みたい事がある。」

「…なんだい?」

 

 

 

「俺に代わって皆を導いてもらいたい。俺以上に俺達を知る貴方に、俺達の運命を委ねたい。…どうか、よろしくお願いします。」

そう言って皇は帽子を脱ぎ、深く頭を下げた。

 

 

 

だが、

「大和!冗談はよせよ!こんな得体の知れない人間なんかに頭を下げる必要なんか…!」

 

 

「まぁ、葛城くんの言いたい事も分かるよ。どう見たってオレは怪しいからな。…それでもいいのかい?」

「貴方の話を聞いて確信したんです。ここまで事情に詳しい人間が何者かの入れ知恵を受けたとは考えにくい。やはり、貴方は俺達の教師だと。」

「大和!」

すると、先生は立ち上がって皇の肩を優しくポンと叩いた。

 

 

「皇くん。君は記憶を失う前もこのクラスの学級委員を務めていた。望まない形で友達を失ったのが辛かったんだよな、そんな状況でも気丈に振る舞わなきゃいけないから苦労したんだよな。…よく頑張った。そしてこんなオレを頼ってくれてありがとう。……分かった、オレに任せてくれ。みんなはそれでもいいかな?」

「俺は…皇の判断に任せるよ。皇が決めた事なんだからな。」

「ボクも、皇君がいいって言うならそれでいいよ。」

「面白い話がまだ聞けそうだし、私はどっちでもいいわ。」

「…………同じく。」

みんなも次々と同意していった。

 

 

 

だが、

 

「バカバカしい…。なんでそんな簡単に怪しいヤツを信じられるんだ?君たち異常だよ!」

「全くだわ。この調子だと外に出てもすぐ誘拐されちゃうんじゃないの?」

葛城とアレックスだ。

 

「葛城、これは俺の独断だ。お前達まで従う必要はない。」

「だとしてもだよ!得体の知れない人間をすぐ受け入れる意味が分からないんだよ!敵じゃない保証はあるのか!?」

「敵かどうか俺が判断する。敵だった場合は切り捨てればいいだけだろう?」

「ハァ!?そういう問題じゃねぇだろうが!お前じゃなくてオレらの命が危ねぇって話してんだよ!!テメェの物差しで考えてんじゃねぇよ!」

「な、なぁ葛城どうしたんだ?様子がおかしいぞ。」

明らかに今日は葛城の様子が変だ。今まで落ち着いていたのにここまで冷静さに欠く事になるなんて。

 

 

俺が宥めたためか、葛城はハッとした様子で周りを見る。

「…とにかく、今回ばかりは俺は同意できない。アンタに命令されるのはゴメンだよ。」

そう言い残して葛城は食堂から去っていく。

「か、葛城!」

「まぁ待てよ。無理に去るヤツを追うのは彼にとっても迷惑だ。元々オレが認められるとは思ってなかったから気にしてないさ。」

「……話は終わりかしら?ワタシも葛城クンと意見は一緒。…精々寝首を掻かれないようにね、それじゃ。」

アレックスも去ってしまった。

 

だが、それを気にも留めず先生は

「念の為聞いておくがオレが指示するのに反対するヤツはいるかな?不満ならいつでも離れてくれて構わないからな。」

と言った。この言葉に対して動く人間はもういなかった。

「…よし、わかった。けどオレからは特にあーしろこーしろ言うつもりはない。オレの教育方針は放任主義が基本だからな。生徒達の個性を殺す事はしたくないから、何かあった時だけは指示するがそれ以外はこれまで通りでいい。それから…。」

 

「それから?」

「オレの事は無理に“先生”って呼ばなくてもいいぞ。君たちの呼びやすいように呼んでくれて構わない。」

「ですが、一応先生なんですから…。それはちょっと失礼じゃないでしょうか?」

「そんな難しく考えんなって。便宜上教師ってだけだし、オレも堅苦しいのは好きじゃないってだけよ。飛田さんなんか以前は“ミッちゃん”とか“ミーくん”って呼んでたんだぞ?」

「み、ミッちゃん…!…ね、猫っスか…!……ブフッ!」

妙に可愛らしい呼び方に俺も含めて何人かが思わず吹き出してしまう。

 

 

「ゴホン!と、とにかく!君らが呼びやすいって思う呼び方でいいから!伝えたいのはそれだけ!じゃあ皆、改めてよろしく頼む!」

「はい!よろしくお願いします!壱条せんせ……あっ。」

「ハッハッハッハッハッ!懐かしいなぁこの感覚!入学したての頃を思い出すな!」

 

 

 

 

壱条先生が話してくれた『ダンガンロンパ』の真相、そして黒裂影司の手掛かり。そしてとても心強い人が味方になってくれた。……朝から色々あったけど、きっと黒幕に尻尾を掴むための大きな一歩になったはずだ。

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