ダンガンロンパ Redemption   作:ナーガ工場長

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(非)日常パートのメインディッシュとなります。


(非)日常編6

ーー翌朝

 

「・・・う、うぅぅぅ・・・」

ベッドの上で不快感を誤魔化そうと何度も寝返りを繰り返し、冷たいところを探そうと足を動かしまくっていたが、それも限界に達していた。

「あ・・・暑い!!」

あまりの暑さに耐えかねてついに飛び起きてしまった。

 

着ていた服もベッドのシーツも汗でぐしょぐしょに濡れてしまっている。

このままだと気持ちが悪い、幸いエアコンは動くし水も出るので、急いで冷房を起動させてから服を脱ぎ捨ててシャワールームに直行した。

「・・・ふぅ・・・」

冷えた水によって火照った身体が冷まされて心地がいい。

…にしても、一体なんなんだこの暑さは?まるで真夏じゃないか。

しかもただ暑いだけじゃなく、蒸し暑さがあって不快感が凄まじい。

かなり汗をかいたことで水分が失われたからか、のども乾いていたのでコップに水を入れて一杯飲んでからシャワーから上がる事にした。

 

部屋も涼んできたお陰で頭も少しクールダウンできた。

今は何時なのか時計を確認してみると五時過ぎ。食堂が開くまで、まだ一時間以上ある。

少し散歩をするかと思い、ドアを開けると…。

「う、うぉぉ!?」

先ほどまで部屋全体を覆っていたものと同じ熱波が襲い掛かってきた。

この暑さの中、散歩なんかしてたら絶対に熱中症になってしまう!たまらず、すぐにドアを閉めた。

 

「な、なんか今日はおかしいぞ…」

いや、よく考えたら予兆は昨日からあった。

昨日も何故か少し暑かったけど今日のそれは昨日の比じゃない。一体、何が起こってるんだ?外に出るわけにもいかないのでこのまま七時になるまで待つことにした。

 

 

ーーそれからしばらく経って

『オマエラおはようございます!7時になりました、起床時間ですよー!今日も元気に…と言いたいトコロですが大事な話があるので至急体育館に集合をお願いします!分かってるとは思うけど、全員参加だよ!早く来ないと先に来たヤツらが熱中症になっちゃうからねー!うぷぷぷぷ・・・』

それだけ言い残してモノクマの放送は終了した。

 

あの口ぶり、やっぱりアイツらの仕業だったか…。

ここから出るのは億劫だけど他のみんなの事も考えるとそうも言ってられない。

急いで体育館に向かおう。

 

 

ーー外に出るとやっぱり蒸し暑い。

個室を出て、寮を出て校舎へ向かうためにほんの数歩歩いただけなのにもう汗をかき始めている。

体育館どころか、校舎へ向かうだけでもすごく遠く感じてしまう。

少しでも急ごうと足早に歩き始めたら、前を歩く人影が視界に入った。

あの服は…宵月か。

 

 


 

 

「・・・・はぁ・・・暑い・・・」

距離はそんなに遠くない…はずなのに一向に校舎に近づく気配がない。

夜中から続くまるで真夏のような蒸し暑さ、それに苦しめられていた。

こんな状態で生活を続けたらコロシアイをする以前に死んじゃうわよ…。

一体、何が起きてるっていうの…?

 

「宵月…おはよう」

校舎に向かって歩いていると後ろから声を掛けられた。

声の主は暁日君だった。

「あら、おはよう。今日はヤケに暑いわね」

「そうだな…大丈夫か?」

「大丈夫なわけないじゃない…暑いのは苦手なのよ。シャワー浴びて水も飲んできたのにもう汗をかき始めてるわ」

「わ、悪い。そうだよな…」

心配してくれるのはありがたいけど、今は少し放っておいて欲しいわ。

 

「なぁ宵月。この暑さやっぱりモノクマの仕業だと思うか?」

放っておいてほしいのに…でも彼も同じ意見のようね。

「そうね、私もモノクマの仕業だと考えているわ。ただ…」

「ただ…なんだ?」

「あのモーニングコールの口ぶり…この暑さを利用してマズイことを企んでる可能性もありそう、って思ったのよ」

 

私の言葉で暁日君は察しがついたようだ。

「そ、それってまさか……!」

「あくまで可能性の話よ。本当にただ設備が壊れただけかもしれないし。ただ、覚悟はしておいた方がいいかもしれないわね」

「…あ、あぁ」

暁日君もそれ以上返す事が出来なかったようで黙り込んでしまった。

 

 

ーー体育祭

 

体育祭には既にほぼ全員集まっていた。

館内は建物自体も大きいせいで熱が籠っているのか、一際暑くまるでサウナのようだ。

その為、ここにいる人間全員がぐったりしながら上着を脱いでいたり、袖をまくったりしている。

過酷な環境に耐性がついてるであろう、皇君や獅子谷君、シルヴィアさんも少し苦しげな顔をしていた。

 

「お〜舞ちゃんに悠、おは〜」

飛田さんが床に座りこんだまま挨拶をしてきた。

「飛田さんおはよう。もう全員揃ったのかしら?」

「いいや、まだだ」

そう言って割り込んで来たのは先生だった。

ジャケットを脱ぎシャツだけになっているけど、一番に来たからなのか最早意味をなさないくらい汗で濡れて透けてしまっている。

 

「まだ葛城くんだけが来ていない。しかしこのクソ暑さだと気を紛らわせるためにタバコを咥える気にもならねぇ。早く来てくれないと蒸し焼きになっちまうぜ」

そんな話をしていると噂をすればなんとやらと言わんばかりに、体育館の扉がガララという音を立てて開き、最後の一人葛城君が入ってきた。

その場で彼は私たち…というより先生を敵意のある目で一瞥してそのまま扉の横の壁にもたれかかった。

 

全員揃った事を確認すると先生はこう叫んだ。

「オイ!オレらの事見てんだろ!こちとら暑いんだからさっさと要件を言いに出てきやがれ!」

その呼びかけの直後、待ってましたとばかりにモノクマとモノパパが出現した。

今回は装いを変えて、麦わら帽子に虫かごというまるで小学生の夏休みみたいな格好に身を包み、まるで私たちをバカにするかのようにその手に持ったアイスクリームを舐めている。

 

「うぷぷぷぷ…いやぁ皆様、暑い中お集まりいただきありがとうございます!現在この学園の温度は30度を超えています!」

「うむ、これだけの暑いと大変なコトになってしまうからな!諸君も、熱中症には重々気をつけたまえよ!・・・・最も我々は涼しい部屋でまったりと諸君を見ているんだがな!」

 

「ぷひゃひゃひゃ!!」

「ガハハハハハ!!」

 

・・・・この暑さに加え、奴らの不快極まりない声のせいでさらに気分が悪くなってきた。

それは他のみんなも同じでイラついているかバテて話をまともに聞いている人間はいない。

その状況に耐えきれなくなったためか、また先生が叫んで本題に入るよう急かした。

「オイ、そんなくだらねぇスピーチを聞かせるために呼んだんじゃねぇだろうな?この暑さ…お前達は何か知ってんだろ?」

 

「おっとっと申し訳ない!また関係ない話をして無駄に時間を潰してしまうトコロだったな!…では、改めて説明しよう!お気づきの通り、現在この学園は気温が異常に上がってしまっている。してその原因だが、どうやらこの学園内の電力をまかなう発電機が故障してしまっていたことで空調が機能しなくなったようなのだ。これからメンテナンスを行うのだが、少々時間が掛かると思われる」

発電機の故障…それが原因だったのね。

 

「少々って…それはどれくらいの予定なの?」

「うむ、水力を使って発電する装置なのだが少し確認がしづらい場所にあってな…。それに場所が場所なだけに魚を巻き込んでしまった可能性もある。そこから原因を究明して修理が完全に終わるとなると、そうだな・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次の事件が起こる頃には修理が完了すると思うぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言で全員察しがついた。

“次の事件が起こる頃に修理が完了する“、逆に言えば“事件が起こるまで修理が終わらないかもしれない”という事。

 

つまり、これが次の動機・・・・・!!

 

 

 

私たちが絶句しているのをよそにモノクマが補足説明を始めた。

「うぷぷ…とはいえ全員蒸し焼きでオダブツってのも面白くないしさ、この暑さをしのぐためにオマエラにあるものをプレゼントしようと思います!はい、という訳でドン!!」

そう言って指を鳴らすとモノクマたちがいるステージの床から20本ほどのペットボトルが現れた。

 

「これがボクからのプレゼント、2リットルのお水入りペットボトルです!一人につき2本用意してあるのでこれが終わってからそれぞれ持ち帰ってね!あ、毒とかは入ってないからそこは心配しなくていいよ!」

「み、水…?なんでそんなものを?シャワーは出るし、倉庫にもあるじゃないか!」

暁日君のいう事はもっともだ。なぜわざわざ合計でたった4リットルの水だけ配る必要があるの?

 

その問いに対してモノクマたちは不気味に笑っていた。

「うぷぷ…これが終わったらじきに分かると思うよ…。もしこれだけじゃ心配なら倉庫から水を持ち出したり、シャワーの水を汲んどくのをオススメするよ」

「とにかく、仲よく死にたくないとかみんなを思う気持ちがあるなら早めに誰かを殺したほうがいいと思うぞ。その分だけ修理も早くなるからな」

“仲間を思う気持ちがあるなら、早めに殺せ”ですって?

 

 

これまで以上に倫理感がイカれている・・・そんな滅茶苦茶な話、真に受ける方がどうかしてるわ!!

 

 

常軌を逸した理屈に誰もが言葉を失っている。しかし、そんな状況を気にも留めず突如2体は寸劇を始めた。

「ところで父さん、アイス食べ終わってまた暑くなってきてないっすか?」

「暑いなぁ…」

「ですよねぇ。この辺にぃ、美味いかき氷のお店あるらしいっすよ」

「あっ、そっかぁ…」「行きませんか?」

「おう、行きてぇなぁ」「行きましょうよ!」

「じゃあ今から行きましょうね!」

「お、そうだな」

そして、ペットボトルの山を残して2体は消えてしまった。

 

 

「・・・ふぅ。じゃ、俺は水だけ貰ってくから」

「ワタシも。ここにいる理由はなさそうね」

2体がいなくなったのを確認したらすぐにペットボトルを回収して、葛城君とシルヴィアさんはさっさと出ていってしまった。

それを見届けてから誰かがこう呟いた。

「こ、これからどうする?」

 

とはいっても私たちに出来る事なんかほとんどない。

「どうするも何も、早く修理が終わるのも祈るしか出来ないわね」

私の意見に全員が納得せざるを得なかった。

すると、夜桜さんがある提案をした。

 

「…あの、思ったのですが、わたくし達で発電機を探し出して先に修理するというのはいかがでしょうか?」

「どういう事だ夜桜?」

「以前、八咫さんが殺害された事件の時を覚えています?あの時、犯人である柊さんは水槽裏のバックヤードを使用していたでしょう?同じようにわたくし達が見つけていないだけでどこかに発電機に繋がる道があるかもしれませんわ」

なるほど、確かにその考えは有りね。バックヤードがある以上、どこかにそういった設備がある場所が存在している可能性が高いわ。

 

しかし、その提案は先生によって否定されてしまった。

「確かにどこかに発電機に繋がる道があるという意見にはオレも賛成だ。でも、残念だが発電機を見つけてもオレたちで修理するのは不可能だと思う」

「な、なんでよ!」

「アイツらが言ってたこと覚えているか?”水力を使ってする発電装置”と言っていた。そこが問題なんだ。しかし、その装置がある場所自体がかなり危険な場所にあるかもしれない、最悪命に関わる可能性すらある場所にだ」

先生のこの口ぶり…もしかして。

 

「先生…もしかしてこの場所が何なのか分かったのかしら?」

「あぁ、オレも少しだけどやっと色々思い出せてな。そこに裏付けとなる資料も発見出来たんだ」

「それで、ここは一体何なんですの?」

「単刀直入に言おう。ここ才牢学園は・・・」

 

 

「海底に作られた核シェルターだ」

 

 

「か……核シェルターですって…⁉」

「そうだ。この国に有事があった際、例えば核戦争なんかが起こった時なんかに避難するための設備なんだ。だが、一つ大きな違いがあってな…それが君たち専用のシェルターとして作られたものって所だ」

「俺たち…専用?」

「かつて『人類史上最大最悪の絶望事件』が起こった後、人類が滅亡直前の事態に陥った際に再興するため最低でも優秀な才能を持つ人間だけでも生き延びさせるため、政府によって三基の専用シェルターが作られたんだ。その内の一基がここって事だ。さっき言った通り、それを裏付ける資料もある。小鳥遊さん、フィリウス、あれを見せてくれ」

「うん…フィリウス、あれ表示してくれる?」

『了解した。・・・諸君、画面を見たまえ』

 

そう言ってフィリウスは画面上になにやら資料を表示させた。

それは『才楼学園建設計画』と書かれた計画書だった。そこには建設目的、設計図に費用といったデータが記録されていた。才楼…漢字が違うけど、才牢学園の事ね。

「建設計画の話が持ち上がっていることはオレたち職員たちにも通達されていたけど、もう出来上がっていたんだな。そして、黒裂が黒幕だとしたらここを舞台に選んだのにも納得がいくな」

「で、でも…今いる場所が海底ってガチなの?」

 

そうだ…そこから信じ難い話だ。

それに、ここ核シェルターで今使われているという事は…外ではシェルターを使う必要がある『何か』が起こっているという事?

そのような事を考えて思案を巡らせていると、何かを思い出したのか暁日君がいきなり声を上げた。

 

「…俺は先生が言ってる事は本当だと思う。実は俺、先生が初めて俺たちの前に現れた日に変なものを見たんだ」

「変なモノ…って?」

「モノパパが見つけた直後に現れてすぐに回収されたんだけど、その前にこっそり写真を撮ったんだ。…これ、見てくれ」

「………むっ、こ、これは………」

暁日君が見せた画像には目や内臓が飛び出してグロテスクな状態になった魚が写っていた。

魚がこんな状態になるという事は…。

 

「あの時はなんでこんな状態なのか不思議だったけど、今なら分かる。海底の水圧とここの空気圧の差があるせいでこうなってしまったんだ。それに今まで天気が変わったこともなかっただろ?やっぱり、ここは海底にある建造物で間違いない」

「どうやら…信じるしかなさそうね」

「あぁ。そして海底で水力発電となると、そこにも水圧の影響があってとても危険だ。仕方ないが、修理はヤツらに任せた方がまだ安全だ。しばらくは暑さの中、過ごすことになるだろうがこの水で耐えるしかないな。だが、飲みすぎると必要な時に足りなくなるし水中毒にもなるからそこは気を付けとけよ」

結局私達で出来る対処は耐える事しかなかった。量は少ないが水はある…予備も含めたら何とか3日はしのげるはず。

 

 

 

だが、モノクマが消える前に放った忠告の意味を私達はすぐに思い知る事になるのだった。

 

 

 

あの後、すぐに解散したけど朝も食べてなかったため全員お腹を空かせていた。

そこで、厨房に集まり料理を作ろうとしたら……。

「な・・・・・何よこれ!!」

「宵月さん!一体どうした!」

「こ、これを見て…!」

私が指差した先、そこにあった食料が全てクッキーやパンにイモ類、さらにブロック型のカロリーフードにすり替わっていた。

 

「………こ、これは……口の水分を持っていくものばかりだな………」

「た、卵も全部ゆで玉子になってるぞ………!!」

モノクマが予備の水を用意するよう促していたのはこういう事だったのね。

この暑い中、水分をさらに奪うつもりか…。しかもどれも栄養はある程度摂れる食べ物ばかりある。餓死だけはしないようにしてるという訳ね…。

 

「ど、どうしますの?」

「どうするたって…食わないわけにいかないだろ」

結局その日の食事は全てカロリーフードだけとなり、朝食後は水を取りに行こうと倉庫に人が殺到するハメになった。私も3本ほど確保して念のためシャワールームにバケツを置いて水を貯めておいたけど、これでまだ一日目…この調子で何日耐えられるのかしら。

 

 

ーー異常気象発生から二日目

 

一日経って気温は34℃になっていた。下がる気配は全くなく、依然上がり続けている。二日目で既に動く気を失っていた。しかも、それだけじゃない私にとって絶望的な事態も発生していた。

 

冷房が止まってしまった。寝ている間につけていたはずなのに、起きるころにはうんともすんともいわなくなっていたのだ。もう涼む場所がどこにもない。

動く気を失ってからはシャワールームで水をかけて身体を冷やしてからベッドで横になり、また熱くなったらシャワールームに行ってを繰り返している。そして、少しでも着替える時間を短縮しようと制服はハンガーにかけて下着姿という状態になっていた。

 

「・・・・我ながら・・・・・情けない恰好ね・・・・・」

 

それでもなんとか耐えようと水を飲み、塩分補給用のタブレットを口に入れた。残っているペットボトルは2本、か。動かないと一日がとても長く感じるわ・・・・・でも、これいじょう暑くなるのは・・・・さすがに・・・・む・・・り。

 

 


 

 

ーー異常気象発生から三日目

 

「・・・おい、マジかよ」

冷房も止まり、気温もついに35℃を越えていた。

昨日に引き続き、水を浴びて身体を冷やそうとしたらシャワーが出なくなっている。

とうとうシャワーも止められたか…。

 

仕方がない、使いたくはなかったけど…ペットボトルを一本開けて水を全身にかける事にした。

…これで残りは2本、多めに持ってきてたからギリギリ持ち堪えてるけどこの調子だと今日を乗り越えられるのか?

 

 

ーーそんな事を考えていると、

 

ドンドン!ドンドンドンドン!!

 

すごい勢いでドアをノックされた。

この音と勢い、かなり切羽詰まっているようだ。

「はい!」

急いでドアを開けると、

 

「暁日!!」

そこにいたのは今までにないくらい焦った様子の皇だった。

やはり暑いのか学ランを脱いでシャツだけになっている。

「皇!一体どうしたんだ?」

「説明は後だ…とにかく来てくれ!」

「お、おう。分かった!」

この状況、ただ事ではないぞ!

 

皇に着いて行った先は食堂だった。

そこにいたのは先生、飛田、獅子谷、そしてうめき声を上げて倒れている夜桜だった。

「うぅ…」

「夜桜?…大丈夫か、何があったんだ!」

「熱中症だ…ついに倒れるヤツが出てきてしまった」

先生は夜桜を介抱しながら答えた。

なんて事だ…。それに小鳥遊に宵月もいない、まさかあの2人もか⁉︎

 

「宵月と小鳥遊は?アイツらは大丈夫なんですか!?」

「分からない。姿を見てないし、連絡もないんだ…」

連絡がない…無事を祈るしかないのか、クソ!

 

2人も心配だけど今は夜桜だ、体調はどうなんだ?

「み、水は⁉︎飲ませたんですか!?」

「もう飲ませたよ。…残ってる分はあるだけ使って身体も冷やしてやったし、塩分も摂らせた。…けど、全然足りないんだ」

「そ、倉庫にまだ残ってるでしょ!?それを使えば…!」

「無駄だ。…倉庫に行ってみろ、理由が分かるから」

そう言われて俺は倉庫に走った。

 

 

そこには言葉を失う光景が広がっていた。

 

ーー辛うじて塩分補給のためのタブレットは残っていたが、昨日まであったはずの水が入ったペットボトルが全て消え去っていたのだ。それどころか水分補給の代わりになりそうなものも全て無くなっていた。

「…嘘だ、ろ…」

「分かったろ?このままじゃオレ達もじきに倒れちまう。そうなる前に動かなきゃならねぇ」

「でも、動くたって何を…」

「そこで話し合ったんだが、モノクマたちと直接交渉をしに行こうと思う」

…え?

 

「”このままだとコロシアイなんてやってる場合じゃない、全員くたばっちまったらお前たちにとっても面白くないだろうから先に発電機を直せ”って話をしに行こうって考えてるんだ」

モノクマと…直接交渉だって?アイツらがまとも取り合ってくれるとは思えない、そんなの危険すぎる!

「そんな話、アイツらが聞いてくれるわけないだろ!大体……それじゃ結局コロシアイは続くって事じゃないか!モノクマに殺されるか、別の誰かに殺されるか…それ以外変わらないだろ!」

 

「そんな事は分かっている!!」

 

先生は今までにないくらい大きな声で一喝した。

 

「オレだってそれくらい分かってる。全員が無事に生き延びることが出来るのが最適解だ。…だが、もうそんな事を言って手段を選んでる時間が無い事くらい理解できるだろ?全員くたばっちまったらそれこそ終わりだ。一人の犠牲で大勢が助かるならそれに越したことはない。…どうか分かってくれ」

…そうだ。もう手段なんて選んでる余裕なんかないんだ。先生の必死の説得にうなずくしかなかった。

「…すまん、ありがとう」

 

 

そして、全員に向き直り先生は続けた。

「・・・さっき言った通りだ。これからここにいるヤツから一人を代表にしてモノクマたちと直接交渉をしてもらう。本来ならオレが行くべきなんだが…ヤツらと戦闘になる可能性だって十分にある。戦闘ならそれなりに自信があるが、オレも立っているだけで精一杯だ。そこで、まだ体力に余裕があって腕が立つヤツに行ってもらいたい。…誰か立候補するヤツはいるか?」

先生はこう問いかけてみんなを見渡した。

 

 

・・・・・・当然だが、先生の問いかけは自分の命を捨てろと言ってるのと同じことだ。

問いかけに答える人間は・・・・・

 

 

「…………分かった。俺が行く」

たった一人いた。獅子谷だ。

 

 

「………見ての通り、パワーは俺が一番ある。………それに、これまで培ったサバイバル術のお陰で体力はまだ余裕がある。…………交渉役、俺が引き受けよう」

「獅子谷くん、本当にいいのか?」

「あぁ…………構わない」

獅子谷は快諾してくれている。だが、俺と飛田は反対した。

 

「獅子谷…冗談はよせよ。お前まで死ぬことはないだろ!!」

「そーだよ岳!もう一日くらいアタシも全然耐えれるし!そっから考えなおそうよ!」

「…………いいんだ、暁日、飛田…………。俺は今まで自分の力や風貌を怖がられ、ずっとコンプレックスに思っていた。…だが、ここにいる連中はそんなことも気にせず、友人として接してくれた。友を助けるために命を散らせるなら俺は本望だ!」

獅子谷の意思は固く、なにも言っても心変わりしないという事を悟った。そして、食堂の出口に手を掛けた。

 

「…………では、行ってくる。センセイ、二時間経って帰ってくる様子が無かったらみんなで俺を探してくれ」

「分かった。でも、無理はするなよ。ヤバかったらオレも助けに行く」

「…………ふっ、愚問だな。次に帰ってくるときは凱旋するときだからな」

それだけ言い残して食堂を出て行った。俺はすぐに獅子谷を追いかけて食堂の扉を開けた。その先でまだ廊下を歩いていた。

 

 

 

「獅子谷!」

獅子谷は無言で振り返った。

「・・・絶対、生きて帰ってこいよ!!」

「・・・・・」

一瞬ほほ笑みを浮かべたと思ったら、再度振り返り軽く手を挙げてそのまま歩いて行ってしまった。

 

 

 

獅子谷を見送ってから食堂に戻ると、夜桜が目を覚ましていた。

「うぅん…あれ、わたくし…?」

「夜桜!」

「夜桜さん!目を覚ましたのかい!」

「凛ちゃん!良かった~」

「目を覚ましたのか。心配したぞ、凛…夜桜」

「やまと…さま。それにみなさまも…お集まりになってどうされたのですか?」

どうやら、まだ意識が戻り切ってないようだな。

 

「熱中症で倒れたんだ。なんとか水分なんかは足りたようだな」

「…そうだったんですのね。ご迷惑をおかけしました」

「気にしなくていーって!こんだけ暑いと倒れたってしゃーないよ!」

飛田の言う通りだ。これだけ暑さ、耐えれている方がすごい方だ。

それを理解しているためか、皇は休むよう促していた。

「ともかく今は無理はするな。俺達の事は心配せず、身体を休めておけ」

「そうですね…では失礼して眠らせていただきますわ」

そうして夜桜は再び眠りについた。

 

「……ってちょっと待って!このまま寝てるのって校則違反になるんじゃないの?」

あ!言われてみればそうじゃないか!個室に移動させた方がいいのでは?

だけど、その不安は先生の一言で解消された。

「いや、その点は大丈夫だと思うぞ。校則には”故意の就寝”って書いてある。彼女の場合は気絶みたいなものだから多分大丈夫だ。それにこの暑さだとどこで気絶してもおかしくないから多少は目をつぶってくれると思うぜ」

なるほど、確かにそれならきっと大丈夫か。

 

 

ーー獅子谷が交渉するために食堂を去ってから二時間が経過した。未だに誰も入ってきたり、戻ってくる気配がない。獅子谷が自分を探すよう頼んだ時間になったことで流石に不安を感じるようになっていた。

 

「二時間…経ったな。約束の時間だ、探しに行こう。それともし他のヤツを見かけたら声を掛けておいてくれ」

先生の指示によって眠っている夜桜を置いて一斉に獅子谷を探し始めた。

 

 

ーー寄宿舎

恐らくここに獅子谷はいないだろうが、他に誰かいるかもしれない。念のため、個室を一つずつ確認することにした。……その結果、小鳥遊、アレックス、葛城の三人はいなかったが、宵月を見つける事ができた。

…が、何故か下着姿で応対されたため、めちゃくちゃ怒られた。

 

宵月と合流した後は近くにある才能資料室を片っ端から確認しながらモノクマタワーを目指すことにした。

 

夜桜の才能資料室は・・・いない。俺と本代の才能資料室にも・・・いない。そして柊の才能資料室に・・・アレックスがいた。どうやら、森の中だと暑さが少しマシだったらしく、ここでしばらく過ごしていたようだ。ひとまず事情を説明したら俺についてきてくれることになった。

 

 

ーーモノクマタワー

ようやく、モノクマタワーに到着した。

そこで異様な光景を目にした。何故か葛城の才能資料室の扉が開いている。その扉の隙間から足が覗いていた。

 

ゆっくり近づいて確認すると…小鳥遊が倒れていた。

「おい!小鳥遊、大丈夫か!しっかりしろ!!」

必死に身体を揺すって小鳥遊を起こす。…そしたら、目を覚ましたようだ。

「・・・うん?あれ、なんでボクこんなところに・・・?」

「気が付いたか!なんでこんなところで倒れてたんだ?」

「うぅん…なんでだったかな」

どうやらまだ意識が朦朧としてるようだ。

そこで宵月から持ってくるよう頼んでおいた水を飲ませる事にした。

 

 

水を飲み終えて何とか意識は回復したようだ。

「・・・大丈夫か?」

「うん…なんとかね」

「小鳥遊、お前なんでこんなところに?」

「・・・それが、ボクもよく覚えてないんだ。・・・いつの間にかここに倒れていて・・・」

…まだ記憶がはっきりしてないのか?そんなことを考えていると、先に中を調べていたアレックスが突如声を上げた。

「暁日クン!話は後よ!こっちで葛城クンも倒れているわ!!」

・・・な、何だって!?

 

舞台のようになっている中の座席の間にある通り道、そこで葛城は倒れていた。

座席に座らせてから同じ様に水を飲ませてから身体を揺すって、葛城を起こした。

「・・・んっ。なんか明るいな…ってみんな、一体どうしたんだい?」

「どうしたってそれは私たちの方が聞きたいわよ。なんでこんな所で気絶してたの?」

「・・・暑さのせいかな、ちょっとハッキリ覚えてないな」

…おい、またか?この暑さのせいで奇行にでも走ってたのか?

 

すると今度はこんなことを口走った。

「ところで、少し聞きたいんだけど誰か電気付けたのかな?」

「いや、最初から明るかったぞ」

「変だな…俺が来たときは電気がついてなくて暗かったんだけど」

その言葉で全員が顔を見合わせた。…誰かが電気をつけた?

 

そしたら今度は小鳥遊がこう呟いた。

「…ねぇ、暁日君。ボク達が最初にここ調べた時のこと、覚えてる?」

「あぁ。…急にどうしたんだ?」

「あの時さ…緞帳、どうなってたっけ?」

緞帳…舞台を塞ぐためにあるあの幕のことか。

「確か、開いていたと思うけど」

それを聞いた直後、小鳥遊は声を震わせて、ある場所を指さした。

 

 

 

「だよね。・・・・じゃ・・・じゃあさ・・・・あの緞帳・・・・」

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

その一言で全員が凍りついた。

 

 

「・・・・倒れる前のことは覚えてないけど、起きてからはずっと閉まってたよ。それにあの向こう・・・・()()()()()?」

…俺たちが2人を見つけてから今のところ、誰も座席から立っていない。

 

 

・・・嫌な予感がする。

 

 

俺は葛城に緞帳の上げ方を聞いた。

「葛城!緞帳はどうやって上げるんだ?」

「衣装部屋のすぐ横に舞台装置を動かす制御盤がある!俺が動かしてくるよ!!」

葛城は大急ぎで別の扉の方へ走っていった。

…それからしばらくして、ブーッというブザーが部屋一面に鳴り響き、緞帳が上がり始めた。

 

 

心臓の鼓動が早くなるのを感じていた。

二時間経っても『アイツ』は帰ってこない。

きっとまだモノクマたちとの交渉が難航しているか苦戦しているだけだ。俺達の助けを待っているはずなんだ。

 

 

 

 

 

 

それに『アイツ』は”次に帰る時は凱旋する時だ”って言っていたじゃないか…!

だから、きっと無事だ・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして緞帳が上がり切った。

その向こうにあったのはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下に降ろされた舞台照明装置、そしてーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーその照明のコードによって雁字搦めにされ、黒焦げになった『超高校級の登山家』獅子谷岳の無惨な姿だった。

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