…これはきっと悪い夢だ。そう思いたくなる光景だった。
脳みそが沸騰してしまいそうな暑さのせいで頭が回っていない、勿論それも原因の一つではある。
だが、それ以上に目の前の光景が現実離れしていたせいで事態を受け入れられなかった。
それはこの場にいた人物全員が同じ気持ちだったはずだ。
人の手が届く高さまで下げられた舞台装置、バチバチと乾いた音を立て火花を散らす照明、そのコードに絡められ全身真っ黒になった身体、生気を感じさせずどこを見つめているのか判然としない白く濁った目…。
あの体格に一部焼けてはいるがトレードマークであるライオンの刺繍が背中に施されたジャケット、そして暁日君から話を聞いていなければ、『その人物』が誰か判断することは出来なかっただろう。
『超高校級の登山家』獅子谷岳。…目を背けたくなるような彼の変わり果てた姿は、暑さによって見せられた幻覚だと思いたくなるくらい惨いものだった。
だが、直後に流れたあの忌々しいアナウンスによって嫌でも現実に引き戻されることになった。
ピーンポーンパーンポーン…。
『死体が発見されました!一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!オマエラ、死体発見現場のモノクマタワー一階、”超高校級の演劇部の研究資料室”にお集まりください!」
……また、始まるのね。
アナウンスからほどなくして飛田さん、先生、最後に皇君と彼におぶられた夜桜さんが事件現場に集まってきた。そして、目の前に広がる光景に絶句していた。
「……岳…?ま、マジ……⁉︎」
「こ、これは………む、惨いな…」
「クソ…!やっぱりムリを押してでも一緒に着いていくべきだったか!」
その直後、タイミングを見計らっていたかのようにモノクマたちが現れた。
「あっつぅ〜」「ビールビール!冷えてっか〜?」
「残念だけど、冷え…てないです」
「ウッソだろお前www笑えんなマジ!ってかそもそもこんなコト話に来たんじゃねーだろ息子よ!」
「Oh!そういえばそーでした!」
…この状況のせいでストレスが限界突破しているからか、コイツらの一挙一動、言動全てが今までに以上に気に障って仕方がない。校則さえなければ即蹴飛ばしてしまいそうだ。
それから咳ばらいをしてモノクマは続けた。
「…ゴホン!オマエラ!まずは三日間クソ暑いなか、我慢してくれてまことにありがとうございます!その甲斐もあって無事に発電装置の修理が完了いたしました!もうじき涼しくなるだろうからあと少し我慢しててね~!その上、殺人事件も引き起こしてくれるなんて…優秀な生徒をもってボクは感無量です…よよよ…」
「…フン、最初からそうなるようにテメェらが仕組んでたクセによく言うぜ…!」
先生の悪態を全く気に留めず、モノクマは続けた。
「さて、そんなオマエラの努力に敬意を表してボクからちょっとしたご褒美を用意させていただきました!てなわけで、はい!サンドイッチとお茶~!」
「た…食べ物……!!」
モノクマが用意した食糧と飲み物を目にした途端、その場にいた人間全員の目の色が変わった。
なにせ三日ぶりに摂れるまともな食糧だ。全員が飢えているはずだろう。
「空腹と喉の渇きでまともに議論が出来ないとかになるのは困るからね。これを食べてから学級裁判に臨んでほしいというボクからのささやかなプレゼントです!人数分用意してるから欲張るのはダメだよ!あと、シャワーも水が出るようにしておいたから汗を流したい人は良かったら利用してね!ボクってばどのクマよりも優しいってクマ界と猟友会では有名なんだよ!」
「さらにこのオレからも一つ補足だ。諸君がメシ食ってシャワーを浴びる時間を考慮して、調査時間を少し長めに取ることにした。息子同様に父親が優しいのは当たり前だよなぁ?」
「んでは!今からモノクマファイルも送っておくからご飯の後にでも目を通すのを忘れないでね!じゃ、バイバーイ!」
それだけ言い残してモノクマたちが消えた直後、私たちは目の前に置かれた食べ物を前にして我慢できず、飢えた獣のようになりながら奪い合うようにそれぞれ手に取っていった。
…全員に食べ物が行き渡った事で精神的に余裕が出来たのか、ひとまずどこで食べるか?という話になり、流石に事件現場だと食べる気にはなれないので一度食堂に戻る事にし、その後汗臭くなった身体から汗を洗い流すため温泉に向かうことになった。何人かは別の場所に行こうとしていたが、証拠隠滅をされる可能性が考えられたので無理矢理にでも食堂に引き留め、捜査を本格的に始めるまでは全員で行動を共にするということで話がまとまった。
ーー温泉
「…ふぅ」
こんな状況ではあるが、温泉の湯船に入り一息ついていた。ここに来たのは2度目の事件が起こる前以来ね…。あの時も確か全員で入っていたが、その時と比べて半分近くにまで減ってしまった。それに以前は親睦目的だったが、今は捜査の準備目的。感傷に浸っている場合ではない。やる事をやったらさっさと上がらないと。
…とはいえ、このままのんびりしているわけにもいかないし、頭の回転が戻ってきている今のうちに出来る事として暁日君から聞いた話も踏まえて現状を整理しておくとしよう。
ーー事の発端は『才牢学園内の異常気象』
発電機の故障により、空調が機能しなくなったことで学園内全土の気温が真夏のように暑くなってしまった。設備の修理をモノクマたちが開始したが、その際『次の事件が起こるまで修理が完了しない事』を動機として仄めかす発言をしていた。
それから二日間、食料が口から水分を奪う食べ物にすり替えられたり、気温上昇が続いていたりといった事があった中なんとか耐えていたけど、三日目で遂にシャワーの水が止まり、さらに倉庫から飲み水が全て消えさり、その上私たちの中から熱中症になる人物が出たためモノクマたちと説得する運びになった。
その代表者に選ばれたのが今回の被害者、獅子谷岳君。
獅子谷君以外の数人は食堂で待っていたが彼が出て行ってから二時間経過しても帰ってこなかったので、全員で彼を探すことになって、その際に私は暁日君に呼ばれて合流し、シルヴィアさん、小鳥遊さん、それから葛城君を発見した。
そして、小鳥遊さんと葛城君が倒れていた『超高校級の演劇部の研究資料室』で変わり果てた姿となった獅子谷君を発見した・・・こんなところかしら。
情況を整理すると一番気になるのはやっぱり“獅子谷君の行方”かしら。彼は二時間もどこで何をしていたのか、そして何故あそこで死体となったのか…。ここが大きな謎になるのかしら。
それと、今回事件が起きるまでに私たちがおかれていた状況も覚えておく必要がありそうね。
それからもう一つ、『彼女』から聞いておく必要もある。
「宵月さん、難しい顔してるところ悪いけどちょっと隣失礼するね」
噂をすればなんとやら…『彼女』もとい小鳥遊さんが横に並んできた。
「あら、いいわよ。どうぞ」
「んじゃお言葉に甘えて…。ところで、なんでそんな険しい顔してたの?」
「これから操作をする前段階としてちょっと状況を整理してたのよ。外で何が起こってたのか、全然知らなかったからほとんど暁日君から聞いた話をもとにしてるのだけどね」
「あっそういえば宵月さん、自室からほとんど出てなかったんだっけ?」
「そうよ、暑いの苦手だから出来るだけ動かないようにしてたの」
「ま……まぁあの暑さじゃ動く気にもならないよね」
…さて、世間話はこのくらいにしてそろそろ『本題』に入ろう。
「小鳥遊さん、私からも聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」
「え、何かな?」
「事件が起こった時、なんであそこで倒れていたのかしら?」
「えっと…どういう事?」
「私はほとんど外に出てなかったからよく知らないけど、今朝の一件の時もそうだけど誰もあなたを見ていない、それなのに何故かあなたは葛城君の研究資料室の入り口で倒れていたのを発見された。なぜあんな所にいたのかしら?」
「うーん…それなんだけど…。実は思い出せないんだ」
『思い出せない』…か。さっきもそんなことを言ってたわね。
「本当に?なにも覚えてないの?」
「うん。いつの間にか意識を失ってて、目が覚めたらあそこにいたんだ」
……どうも、はっきりしないわね。でも嘘を言っているとも思えない。彼女から何か話を聞ければ手がかりを得られると思ったんだけど、ここから情報を得るのは難しそうね。…少し質問を変えてみよう。
「じゃあそれよりも前、動機が発表されてからはどこにいたのかしら?」
「ボクの研究資料室にいたんだ。あそこは地下だからか他よりちょっと涼しかったんだ」
「な……なんですって!?」
彼女の研究資料室…現場に近いところじゃない!それにあそこにはモニターがある。獅子谷君の動向を確認していた可能性もある!
「もしかして、モニターで獅子谷君が一人で歩いているのを見たりしていない?それか、犯人と思われる人と会ったりとかしてなかった?」
「うん…確か、昼前くらいだったかな。獅子谷君が一人で歩いているのを見たよ。誰かと会っていたかまではちょっと分からないかな」
「分からない?どうして?」
「そこからの記憶がはっきりしないんだ。多分、そのタイミングで意識を失ったのかも…」
……また『意識を失った』か…。けど、ちょうど犯行のタイミングの記憶が無いっていうのも都合が良すぎる……。本当に意識を失ったのか、あるいは
「ねぇ、小鳥遊さん。あなた何か……「瑞希ちゃん、舞ちゃん!上がるよー!」……っ」
飛田さんが声を掛けてきた。どうやらもう上がる時間になったようだ。彼女から聞けるのはここまでか…。でも、今までの情報から考えるに恐らく犯人は食堂にいなかった人間……!そこに私も含まれている以上、きっと私にも疑いが向けられる事になるはずだ。けど、私が誰も殺していないという事は私自身がよく理解している。
それを何としてでも証明しなければ!
これから検死という仕事があるがその前にさっきのやり取りで分かったことと動機に関する出来事をメモにとっておこう。
【コトダマ獲得:事件発生前後の状況】
二日前に才牢学園全土で気温が真夏並みに上がる異常気象が発生。モノクマたちは『発電装置の修理』を動機として提示し三日間の間に食料のすり替え、シャワーの停止、気温の上昇等の出来事が発生した。
【コトダマ獲得:獅子谷の行動】
生徒全員が命の危機に瀕したため、モノクマとの交渉を行う代表として抜擢。二時間経って戻らないようなら探すように言い残して食堂を後にしたが、時間になっても戻らず全員で探した結果、『超高校級の演劇部の研究資料室』にて死体として発見された。
二時間の間に何をしていたかは不明。
【コトダマ獲得:小鳥遊の行動】
何故か事件現場の入り口で倒れていたが、その理由は不明。
動機発表後から倒れるまでは自身の研究資料室にいた。
…これでいいかしら。小鳥遊さんの情報は暁日君にも共有しておこう。
ーーーー
宵月舞:暁日君、今時間大丈夫?
宵月舞:獅子谷君の死体を見つける直前、小鳥遊さんと葛城君が現場に倒れていたでしょ?
そのことについて彼女から話を聞いてまとめておいたから情報を共有しておくわ
宵月舞:ちなみにそっちは葛城君から何か聞けたの?
宵月舞:全く……事件解決の糸口になるかもしれないのに、しっかりしなさい。
宵月舞:まぁ遅かれ早かれ学級裁判でハッキリする事だから気にしなくていいわ
それより、これからどうする予定?
宵月舞:そうね、どっちも同じ場所に行くのなら現場で落ち合いましょう。
ーーーー
・・・あとはリンク先を貼って、と。
よし、モノクマファイルに目を通しながら現場に向かうとしよう。
「・・・ふぅ、やっとさっぱりしたな」
ようやく学園内も涼しくなり、風呂にも入れたお陰で朝から続いていた凄まじい程の不快感も解消できた。さて、これからは捜査しないとだが……っと、モノドロイドに通知が来た。送り主は宵月か。
・・・なるほど、さっきまでの出来事をまとめておいてくれたのか。確かに気になっていたし助かる…うぐっ、痛いところを突いてきやがる………アイツも現場へ向かうのか、なら向こうで落ち合って情報共有した方がいいな。……お、何やらリンク先が。これが宵月がまとめたデータか。『聞いた内容を元にまとめた物だからあまり過信しすぎないように』って書いてるけどかなり正確だな。……にしても小鳥遊、自分の研究資料室にいたんだな。
【コトダマ獲得:事件発生前後の状況】
【コトダマ獲得:獅子谷の行動】
【コトダマ獲得:小鳥遊の行動】
…次はモノクマファイルのチェックだな。
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モノクマファイル5
被害者は超高校級の登山家、獅子谷岳。
モノクマタワー一階『超高校級の演劇部の研究資料室』にて発見された。
死因は感電死。
死亡推定時刻は午前10時ごろ。
他、首の後ろに火傷の跡有り。
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【コトダマ獲得:モノクマファイル5】
死亡推定時刻は午前10時ごろ…つまり、獅子谷が食堂を去ってから一時間くらい経った後に殺されたって事か。もう少し早く動いていれば助けられたかもしれないと思うと悔しい、クソ…。
それから気になるのはやっぱり首の後ろの火傷だ。あの黒焦げの状態でわざわざ特筆するという事はよほど重要な痕跡のはず。検死は宵月がしてくれるとはいえ、その原因は調べておく必要があるな。…今、得られる情報はこれくらいか。後は現場を調べてみる必要があるな、とにかく急ごう。
ーー超高校級の演劇部の研究資料室
まだ具体的な状況が分かっていない…ひとまず、死体から調べていこう。
発見した時は舞台照明の一部にでもなったかのようにコードで絡め取られた状態で吊るされていたが、今は捜査のために下に死体だけ降ろされている。…ていうか、なんか全体的に暗いな。死体を見つけた時は照明が全て点いていたのに、戻ってきたら何故かそれが切られている。
このままだと捜査しづらいな…周りを見渡すと出入り口の横に電源スイッチを見つけたので電源を入れた。すると、部屋は明るくなると同時にバチン!!という強烈な乾いた音、そして…
「うぎゃあぁぁぁ!!」
凄まじい絶叫が舞台中に響き渡った。
な、ななな何事だ!?
絶叫に驚き、舞台に目をやるとその上で先生で倒れている。
「せ、先生!!」
状況が飲み込めないでいると、今度は宵月が怒号を飛ばしてきた。
「暁日君!照明の電源を切って!!早く!!」
勢いに気押されて、再度電源を切る。そして再び真っ暗になり、しばらくしてから…先生が起き上がった。
「…あっぶねぇ…死ぬかと思った…」
「だ、大丈夫ですか?」
「何とかな…なるほど、彼はこの威力のモノを食らったっつーワケか」
駆け寄って様子を見ると軽口を叩いているが左胸を押さえており、苦しそうだ。
俺が照明のスイッチを入れた瞬間に鳴り響いたあの音…そして先生の口ぶり、もしや…。
「俺が、スイッチを入れたからか…?」
「気づいたか。普通、こういう舞台照明って裏方で操作するモンだろ?だが、今は誰かが配線を弄ったからか出入口のスイッチで電源が入るようになってるみたいなんだ。…にしてもやっぱ舞台上の照明ってだけに電力もつえーな。死ぬかと思ったわ」
「すいません、俺が軽率に電源を触ったばかりに…」
「いや、君は悪くないさ。説明もしてなかったし、あらかじめテープかなんかで塞いでいなかったオレの責任だ。ま、一番近くにいたオレ以外みんな無事だし、自業自得ってヤツだなハハハ」
先生は笑っているが俺があの時、すぐに電源を切っていなければ被害者がもう一人出ていたかもしれなかったってことか…なんて恐ろしい殺人装置なんだ。
【コトダマ獲得:出入口の電源スイッチ】
舞台照明と繋がっており、電源を入れると客席だけでなく舞台照明にも電力が送られる。
「うーん、にしてもこのままだと真っ暗で捜査しづらいんだよなぁ…。つっても、また明かりを点けるとまた感電しちまうし…」
確かにこのままだと捜査がしづらくて仕方がない。そこで俺はある提案をした。
「じゃあ俺、中の配線をちょっと直してきますよ。電気工事士の資格持ってるんで」
「お、マジで?それなら助かるんだが、多分天井裏に張り巡らされているだろうし大丈夫か?」
「まぁ確かに今以上に真っ暗だろうけど、ライトは持ってくし舞台裏の捜査もついでにしたいんで…。それに配線修理自体は何回もやってるんで大丈夫です」
「そうか…なら頼まれてくれるか?ただ、狭くて足元が不安定だろうからケガしないように気を付けてくれ」
「はい!」
ーー配線修理に必要な工具、それからヘルメットと脚立を用意して研究資料室内を調べた結果、舞台袖の衣装や小道具が置いてある控室の天井に扉を見つけた。だが、その真下にクローゼットがあって上に登れなかったので一旦クローゼットを動かしてから脚立を設置して天井裏に侵入し、ライトで照らすと中には配線が張り巡らされている。どうやらここがその場所のようだ。
「先生!ここで合ってるみたいです!」
「そうか!じゃあ後は頼んでもいいか?オレは死体の見張りを頼まれててステージ上にいるから、手伝ってほしい事とか、もしなんかあったら教えてくれ!」
「え、でも…」
「心配すんな!電気工事関係の資格はあるから手伝えるぞ!」
「了解です!その時はモノトークで連絡します!」
「じゃあよろしく頼む!」
それだけ言い残して先生はステージの方へ戻っていった。…よし、行くか!
…予想はしていたが案の定、天井裏はかなり狭い。身長は平均くらいとはいえ俺でも四つん這いじゃないと移動が出来ない。皇や葛城だともっと大変だろうし、獅子谷に関してそもそも入るのすら厳しそうだな。ヘルメットをしてるとはいえ頭をぶつけないように慎重に進んでいく・・・・・さて、そろそろステージの上かな・・・・・・・お、あった、あれだな。
進んだ先のそこには切られたコードの先端が落ちていた。一方、照明を固定する支柱に螺旋状に巻き付いたコードが俺の所まで伸びている。そしてそのコードが天井裏で本来繋がっているはずのものとは別のコードとコネクタで接続されている。さっきの状況から考えるに恐らく客席と繋がっているのだろう。
構造としては一時的な応急処置なんかで使うかなり簡易的な接続方法だ。どうやら犯人はあくまで獅子谷を殺す為だけに細工を施したようだな。
【コトダマ獲得:天井裏の配線】
舞台照明のコードが切られて客席側の照明と繋がれていた。接続方法は簡易的なもの。
とりあえずコネクタで繋げてるだけだし、さっさと直すとするか。
・・・・・・・あとは本来のコードを新しいコネクタで繋いで、と。・・・・・よし、出来た。さて、あとは報告だ。
ーーーー
暁日悠:修理終わったんで照明点けてみてください
何があるか分からないので一応ステージの上にいる人が
離れてから確認お願いします
ーーーー
…少し待っていたら客席にあたる場所が明るくなって、直後に舞台照明にも明かりが灯った。どうやら上手くいったようだ。それを確認すると同時に先生からも『OKAY!!』という文字が書かれたモノクマのスタンプが送られてきた。
よし、これでここでやることは完了したし戻るか。
そう思い、工具類を片づけて降りる準備をしている時にあるものに気づいた。照明に照らされて初めて気づいたのだが、俺が通ってきた天井裏とはまた別にステージの真上にあたる場所に細い通路がある。
・・・確か聞いたことがあるぞ。舞台の真上にはスポットライトを使ったり、役者が通るための道として“キャットウォーク”って通路があるんだったっけ。
【コトダマ獲得:キャットウォーク】
舞台の真上に存在する通路。天井裏にも繋がっている。
「…何だよ。ここと繋がってるんなら、わざわざ狭い所通らなくても良かったな」
軽く毒づきながらもキャットウォークから降りられるかを試してみる事にした。
ーー足元にステージが見えてるのでその様子を見ながら階段を目指して歩き始めた。かなり高めの柵があり落ちる心配がないとはいえ、内心ビビりながら足を進める。狭い通路を歩いていく途中、通路上に設置されたスポットライトの明かりが点いていた。それらを横目にしてさらに歩くと階段を発見し、降りていくと捜査を続ける見覚えがある背中達が見えてきた。どうやら反対側の舞台袖に降りてきたようだ。
「先生」
「…ん、暁日君。戻ってきたのか………ってなんで反対側にいるんだ?」
俺は天井裏から戻ってきたルートを説明した。
「・・・なるほど、キャットウォーク。そこを通って来たのか」
「はい、そこを使えば天井裏に行くのも苦じゃないと思います」
「舞台には必ずあるもんだからな…。知ってさえいれば誰でも天井裏には行けるわけか。…とりあえず修理してくれてありがとう。道具類を片づけて捜査に戻ってくれ」
先生にお礼を言われ、一旦控室に戻る事にした。
・・・・・と、その前に。
「宵月」
今調べた事について宵月と情報共有することにした。
「暁日君、お疲れ様。情報共有かしら?」
「あぁ、天井裏について調べたことを教えるから死体と現場周辺について教えてくれないか?」
「分かったわ、こっちも面白い事が分かったからよーく聞きなさい」
…なんか心なしか機嫌がいい気がする。俺の情報で釣り合うかちょっと不安になってきたな…。
暁日君より一足早く到着し、まずは検死の準備を進めることにした。
現場には既に何人か集まってきて捜査を始めている。その内、皇君と壱条先生は死体の付近に立って辺りを見渡している。どうやら2人が今回の見張り担当のようね。ちょっと話を聞いてみようかしら。…とその前に。
先ほどからやけに事件現場全体が暗いのが気になる。事件発生時に訪れた時は明るかったはずなのにどういう事なんだろう…これじゃ捜査にも支障が出てしまう。入り口に照明のスイッチがあったはずだから押しに行こうとすると、
「あぁ、待て待て。悪いけど明かりを点けるのはちょっと待ってくれないか」
と言われて先生に呼び止められた。
「あら、どうして?」
「どうやら客席の照明と舞台上の照明が同時に点くように細工されているみたいでな。下手に明かりを点けると舞台上の人間が感電してしまう可能性があるんだ」
「そうだったの…。でも、このままじゃ捜査もままならないんじゃないかしら?」
「オレは見張りを頼まれてる以上、下手に離れらなくてな…。あとで修理するつもりだが、今は懐中電灯を渡しておくからこれで我慢してくれ」
そう言って先生から懐中電灯を一つ渡され、先生は死体の方へ戻っていった。
・・・・それより、スイッチがそのままになってるけど、これ知らない人が押したら先生もヤバいんじゃ?
代わりに修理しに行ってもいいけど、検死もやる必要がある。それに見張りの人たちから話を聞きたい。手始めに皇君から話を聞くことにした。
「皇君、見張りご苦労様。少しお話をしてもいいかしら?」
「む、宵月。要件はなんだ?」
「死体が降ろされてるみたいだけど…降ろしたのは皇君と先生?」
「そうだ。あのままだと捜査しづらいと思って降ろしたのだが、アイツは体格が大柄だからな…少々手こずったがなんとか俺達で降ろした」
「その時、何か気づいた事とかない?」
「うむ…確か死体が濡れていたな」
「死体が?」
「あぁ。最初は血かと思っていたのだが、無色で無臭だった…。恐らくあれは水だろう。通電性を良くするために体中を濡らしたと考えるのが妥当だ」
死体が濡れていた…。その理由は皇君も予想している通り、通電性を良くするためと考えて間違いなさそうね。でも普通ならともかく、今私達がおかれている
「他に何か聞きたいことはあるか?」
他に聞きたいことと言えば…やっぱり熱中症になった人物のことかしら。誰が倒れたのか詳しい話を暁日君から聞きそびれていたこともあってその人の安否も気にかかる。
「熱中症になった人が出たのが今回の事件のきっかけのようだけど、その人って誰なのかしら?」
「凛だ。動機発表の翌日から少し体調を崩していたようでな…気がかりだったから互いが眠るに就くまではしばらく行動を共にしていた。そして熱中症にかかった時…つまり今朝だな。今朝も常に一緒にいたぞ」
「なるほどね…ちなみになんだけど、夜桜さんが寝てからはあなたはどうしてたの?」
「暑さのせいで少々記憶が曖昧なのだが、眠るに眠れなくてな。東雲の研究資料室からモノナミンΩを2本ほど持ち出して徹夜で敷地内を歩き回って過ごしていた」
「その時に誰かにあった?」
「いや、誰にも会っていないな」
つまり、個室で就寝を取っていた人物については問題なさそうね。それから夜桜さんの行動についてもお互いにアリバイがあると見て良いわね。
【コトダマ獲得:事件前日からの皇の行動】
事件発生の前日から翌日までは夜桜と共に行動。
昨晩からは敷地内を歩き回っており、その間に誰かに会っていない。
それにしても…皇君の夜桜の呼び方がなんか違和感あるわね。
以前までは苗字だったのにいつの間にか名前に変わっている。本人は気付いてないのかしら?
「皇君、最後に一つ聞きたいんだけど…夜桜さんと随分親しいのかしら?」
「何故そう思う?」
「いつの間にか呼び方が名前になっていたのよ」
「・・・・・!暑さのせいで気が抜けていたか…」
「皇君?」
「・・・・そうだな、この学園に来る前から元々彼女とは親交があってな」
「親交?それって…」
「悪いがそれを話す義務はない。事件と関係が無い事くらいお前なら分かるだろう?」
「・・・そうね、少し踏み込みすぎたわね」
どうやら、彼もあまり話したくないようだ。
・・・さて、そろそろ話も切り上げて検死をすることにしよう。
死体は先に来た人たちによって舞台上の床に降ろされている。…全身は丸焦げになっていてあまり直視はしたくない状態だ。これほどの状態になるくらいの電力ともなると、いくら獅子谷君でもひとたまりもないはず。恐らくこれは即死とみて間違いないだろう。
それから身体はさっきまでの暑さのせいで蒸発しているがわずかに水気を帯びている。特に匂いや味もなく、無色であるため皇君の見立て通り、通電性を上げるためにただの水で濡らされたとみていいだろう。やっぱり水の調達先は重要なカギになりそうね。
そして、モノクマファイルにも記述があった火傷の跡…あった、これだ。確かに首の後ろに黒子のような、とても小さな点状の火傷の跡が3センチほどの間隔を空けて2つ、横並びになっている。身体全体が焼け焦げているため、うっかり見逃してしまいそうだ。
形、大きさ、そして間隔を空けて並んだ2つの痕跡…とてもコードに絡め取られて感電したことによる火傷の跡とは思えない。考えられるとしたら…獅子谷君を吊るすために気絶させるためにスタンガンか何かを当てたことで出来た、といったところかしら。彼は私たちの中でも特に体格が大きい。不意を突いて気絶でもさせない限り、舞台照明に拘束なんてそう簡単に出来ないはずだ。
【コトダマ獲得:宵月の検死結果】
非常に強力な電気を流されたことで全身が焼け焦げており、即死と思われる。
首の後ろに点状の火傷の跡が、3センチくらいの間隔を空けて2つ横並びの状態で存在。
また、全身を濡らした痕跡がある。
他に何か調べられる箇所はないか身体をまさぐっていると、カタンという音を立てて彼のポケットから何かが転がり落ちた。…どうやら、モノドロイドのようだ。
「モノドロイド?もしかしたら誰かと会話をしていたのかも…」
そう思って操作をしてみた。…だが、高電圧によってショートを起こしてしまったのか、どこをどう触ってもうんともすんともいう気配がない。これで最後…と思って祈りながら操作をすると画面がパッと点いた。
その画面にはモノトークのホーム画面が表示されており、そこには通知が来ていることを示すアイコンが表示されていた。・・・・・だが、そこまで読み取った所で画面が真っ暗になってしまい、今度こそ動かなくなってしまった。僅か1秒ほどではあったが、獅子谷君が誰かとやりとりしていたということが分かった。相手の人物はきっと犯人に違いない。
【コトダマ獲得:獅子谷のモノドロイド】
高電圧により故障している。
通知のアイコンが表示されており、生前に誰かとやり取りしていた可能性がある。
他に現場で調べられそうなところと言えば…あの舞台照明の装置かしら。
・・・・近くで見るとかなり大きいわね。これなら確かに獅子谷君を吊るすのも容易に出来そうね。装置は巨大な支柱、そして複数個の大きめのスポットライトで構成されている。それらに電力を送る太いコードが支柱に巻き付く形で天井まで延びている。さらにそのコードの被覆の一部がところどころ剝かれていて中の銅線がむき出しになっているわね…。こんな危険な状態のコードで雁字搦めにされたらそりゃひとたまりもないわ。下手に触れたらさらに犠牲者が出る可能性も考えられるし、早めにどうにかしておきたいわね。
【コトダマ獲得:舞台照明のコード】
被覆が剥かれており、内部の銅線がむき出しになっているとても危険な状態。
さて、こんなところかしら。
そろそろ暁日君も来る頃だろうし、早く合流を・・・・・と思っていたら
バチン!!
という強烈な音が静かな現場内に響いた。その直後、
「うぎゃあぁぁぁ!!」
さらに凄まじい絶叫が現場中に響き渡った。
まさかと思い、振り返った先では先生が倒れていた。…あぁ、次の犠牲者が…。
その後、すぐに電源を切ったことで先生は何とか一命を取り留めることが出来、先生からは『勝手に殺すんじゃねぇ!!』と突っ込まれることになった。
「・・・・なるほど、首の後ろの火傷ってのはそういうワケだったんだな」
「ええ、多分どこかに獅子谷君を気絶させるために使った凶器…具体的にはスタンガンみたいなものがどこかにあるはず。それを探すのに協力してくれる?」
「分かった。ただ工具や脚立なんかを控え室に置いてきたからな、それを取りに行ってくる。それにあそこも気になるからついでに色々調べてくるよ」
「話が早くて助かるわ。だけどその前に…もう一つ手伝ってくれる?」
もう一つ?一体なんだ?
ーー「よし、移動したぞ」
「オッケー。じゃあ、緞帳を降ろすわね」
宵月が言うには事件発生時に降りていた“緞帳”が気になるらしい。
電力が回復したこのタイミングでもう一度降ろして調べたいようだ。そこで宵月がステージ上に、俺は客席に移動して何か変化するかを検証することにした。
しばらく待っていると緞帳がスルスルと降りてきて舞台上の光景は遮られてしまった。それと同時に舞台上の音も遮られたのか、現場全体がしんと静まり返ってしまった。緞帳の向こう側から叩いてるのかたまに緞帳の一部が盛り上がるが小さな音でボフッ…ボフッ…という音がするだけで向こうの様子を窺う事は出来ない。
ーーーー
暁日悠:なぁ、なんかやってる?
暁日悠:緞帳叩いてるっぽい音がうっすら聞こえるくらいで何も分からないぞ
ーーーー
・・・あれ、もう良いのか?思ったより早く終わったな…
ーーしばらくしたら緞帳が上がり、客席の方へ宵月が駆け寄ってきた。
「検証はもう良いのか?」
「ええ、私だけじゃなくて先生も色々音を出してたけどその様子だと何も聞こえなかったみたいだしね。それだけ防音に優れているってことが分かっただけでも大きな収穫よ」
「防音か…となるとあの緞帳が降ろされていたのは目隠しの為だけじゃなさそうだな」
「あなたもそう思うのね。やっぱりあれは演出目的ではないと考えるべきね」
【コトダマ獲得:緞帳】
事件発生時、降ろされていた。防音性に優れており、舞台側と客席側の音が互いに聞くとこが出来ない。
「検証は終わりって事でいいか?」
「そうね、あとはそっちの調べものをしてきていいわ」
「じゃ、お言葉に甘えて…って、ん?なんだこれ」
客席から去ろうとした時、あるものに気づいた。
それは床に落ちていた白い“粉末”だった。
「暁日君、どうしたの?」
「いやこれ…そこにこんなのが落ちてたんだ」
「…粉?なんでこんなものが…」
臭いは特にしない。少し舐めてみたらしょっぱい味がする。…体に異常はみられないし、ヤバい薬とかではなさそうだ。大したものではなさそうだが…なんか気になるな。
【コトダマ獲得:白い粉末】
客席の床に落ちていた粉末状の物体。しょっぱい味がする。
ーー控室
色々あったがようやく控室に戻ってきた。・・・改めて考えるとやっぱりおかしい。
普通、天井裏に向かう扉の真下にクローゼットが置いてあるなんてまずあり得ない。まるで天井裏に行くのを遮っているかのようだ。…多分、本来はもっと別の場所に…あった、床に四角くなったホコリの跡がある。大きさを見るに恐らくここが元々クローゼットがあった場所だ。やっぱり、誰かが天井裏に行くのを遮る目的で動かしたのだろう。
【コトダマ獲得:クローゼット】
天井裏に行く扉の真下に設置されていたが、本来の場所とは異なる場所である。
クローゼットを本来あったであろう場所に戻してから捜査を再開し始めたら、例の扉とは別に床にももう一つ扉があるのを見つけた。これはさっき来た時気づかなかったな…。
場所的に地下に繋がる扉だろうけど、もう少しこの場所を調べてからにしよう。
その後も控室内を調べていたらゴミ箱に幾つかのゴミが入っていることに気づいた。
中身は…空のペットボトル数本、それから分解された何かの機械か。犯人が正体を突き止められないようにバラしたのだろうか。見つかった部品には電極のようなものがあるな。
【コトダマ獲得:空のペットボトル】
控室のゴミ箱に入っていた2リットルサイズの物。中身は入っていない。
【コトダマ獲得:分解された機械】
控室のゴミ箱に入っていた物。犯人が分解したと思われ、部品の中に電極のような物がある。
さて、ここで調べられるのはこれくらいかな。そろそろあの床の扉を調べる事にしよう。
ーー床の扉を開いてみると、案の定そこは地下と思われる場所に繋がっていた。だが、そこに進むための手段はハシゴしかなくその先も闇に包まれていて見ることが出来ない。どれほど深いのか、暗闇の先に何があるか、それを調べるには降りるしかなさそうだ。俺は頭にライト付きのヘルメットを装着し、足が震えるのをなんとか抑え、意を決してハシゴに足を掛けた。
・・・一体何メートル降りたのかも分からないくらいハシゴを降り続けているが、それでも一向に終わりが見えてこない。その上、俺が降りてきた扉から漏れる光もかなりの高さまで遠ざかっている。このまま上にも戻る事が出来なくなるんじゃ…そんな気持ちになり不安になりかけたその時、ようやく足元に光が灯った。そして…ハシゴもついに終わりを迎え、ちゃんとした足場に立つことができた。
「ふぅっ、やっと着いたか……さて、一体何が・・・・・・」
到着した先で目にしたもの、“それ”によって言葉を失ってしまった。
地下に繋がるハシゴ…それを降りて行った末に行きついた場所は・・・・
ピーンポーンパーンポーン……。
『え~そろそろ長くなって待ちくたびれてる頃だと思いますので…ここらが潮時でしょうかね!というワケでみんな飽き飽きしてるだろうし、そろそろ捜査時間終了とします!オマエラ、いつもの場所へお集まりしていただきましょうか!!』
・・・クソっ、もうそんな時間になったのか。“この場所”を調べるヒマはもうないみたいだ。だが、葛城の研究資料室が“ここ”と繋がっているってのはどういうことなんだ?
・・・これ以上考えている時間はない。噴水へ急ごう。
【コトダマ獲得:控室床の扉】
扉を開けると地下へ降りるハシゴが掛かっており、降りた先は“ある場所”に繋がっている。
ーー噴水へ行くともう全員集まっていた。どうやら、俺が一番最後のようだった。
そして待ってましたと言わんばかりに、俺が到着するのと同じタイミングで噴水がせり上がって裁判所へ通じるエレベーターが姿を再び現した。
先生はその光景に驚いていたが、4度目ともなると見慣れた光景と化していて誰もリアクションを取らなくなっていた。驚く先生をよそに一人づつ淡々とエレベーターに乗っていき、全員が乗り終わるのを確認したかのように再び、下へ向かって動きだした。
…すっかり広くなってしまったエレベーター内。誰一人として口を開かず、重苦しい空気が漂っている。その空気を乗せたまま、奈落の底へ向かうかのようにエレベーターはひたすら下へ降り続けていた。・・・・そして、突如としてその動きは終わり扉が開いた。
「着いたか…なるほどな。話に聞いたことはあるがコイツが噂の『学級裁判所』ってヤツか」
今回も裁判所のデザインは様変わりしている。形容しづらいが…まるで電脳空間のような光景が広がっている。そして、その中心で『ヤツら』は椅子の上でふんぞり返りながら待ち構えていた。
「やぁやぁ諸君、そして新顔の壱条センセー!待っていたぞ!今回は内装のテイストをガラッと変えてみたんだがどうだ?コンセプトはズバリ『サイバー&フューチャー』ってトコロだが、気に入っていただけたかな?」
「気に入るっつーか、全体的にチカチカしてて目が痛くなるんだが…。もうちょっと目に優しいデザインにしろよ」
「ほうそうか!目移りするほど好みってワケだな!」
「・・・なぁアイツの回路、ぶっ壊れてんじゃねぇの?」
「先生、相手にするだけ無駄だと思います…」
「んじゃ、そろそろ本格的に始めたいしみんな各自の席に着いてもらえるかな?あ、センセーの席も新しく用意してるからそこは心配しないでね~」
「へいへい」
モノクマが指差した先、本代と東雲の席の間に新たな席が設けられていた。
そこに先生が着いたことで全員の準備が整った。
…あたりを見渡すとまた新たに遺影が増えている。
逆さ十字架を模したバツを付けられた剣崎、登山のストックをバツとしてクロスさせた獅子谷。
ーー『超高校級の登山家』、獅子谷岳。
身体が大きく、強面な顔立ちでありながらとても繊細で誰よりも優しい心の持ち主だった。
それは事件が起こるきっかけとなった極限状態の中でも最期まで変わる事はなかった。
俺たちの為に『絶対に生きて帰る』という誓いも果たされずじまいとなってしまった。
その優しい心を踏み躙り、利用して命を奪った悍ましい真犯人が俺達の中にいる。
獅子谷に生かされた命を無駄にしない為にも俺は…真犯人を見つけ出してみせる!
その誓いを胸に再び幕が開く。
4度目の騙し合い、裏切り、謎解き、信頼…
命がけの、
学級裁判!!