活動報告に希望が来たことに、驚きました。
今回は、元々自分がやりたかった話で、読者の皆さんには、こんな感じなんだなと知ってもらえれば助かります。
荒はあると思いますが、多目に見てください。
銃工房の朝は早い。
金属の仕入れ。釜を熱したり、設計図の調整確認。
早朝なので鉄を打ったり、騒音こそ無いものの忙しいことに変わりはない。
そんなとある銃工房の近くにある民家の一室で、未だにベッドで夢の中に浸っている少年がいた。
彼の服は壁のハンガーにかかっている。二丁の銃がナイトテーブルに置かれていた。
彼の名はグラン。15になったばかりの少年だ。そんなグランの部屋の扉がノックもなしに開けられる。
「おっはよー!朝だよ!」
「うぅ、おはよう」
「ほら、起きて起きて」
グランの布団をひっぺ返して、大声で挨拶するのは銃工房の次女ククルであった。
ククルは何時ものように寝坊助グランを起こしにくる。注意しても、起きないグランを起こしにくるククルにとっては、もはや習慣の一つだった。
「ほらほら、早く着替えて。ご飯できてるんだよ」
「はいはい」
ククルはグランの部屋を出る。目を擦って、壁にかけられた服に着替えて、ホルスターに二丁の銃を納める。
一・二分で済ませられた支度を終えると、部屋の外にはククルが立っていた。
「お待たせ。ククル姉ちゃん」
「そんなに待ってないけど、お姉ちゃんがいないと遅刻だよ遅刻。ほら、寝癖だってついてる」
「はは、ククル姉ちゃんには感謝してるって」
「うんうん。グランは姉ちゃんがいないとだめだなあ」
困ったように笑うと、ククルはふふんとグランの世話を焼くことに喜びを感じていた。
グラン宅から出て、歩きながら世間話をしていると、隣家の居間のテーブルには、長身の女性が座っていた。
「おはよう。ククル、グラン」
「おはよう。シルヴァ姉」
「おはよう。シルヴァ姉さん」
窓の日光に当てられて煌めく銀髪、長い狙撃銃と一目見ただけで忘れられそうにない女性はシルヴァと呼び、グランと共に仕事をする間柄だった。
「今日はなんの依頼だったか?」
「鉱物運搬の護衛だよ。往復で2日はかかる依頼」
「そうだったな。寝坊助以外はしっかりしているな」
「そこはつつかないでよ」
弟分の困った姿にシルヴァは口元をゆるめてしまう。そこに、新たな人物がやってくる。
「兄ちゃん。おはようごぜーます」
「おはよ、クムユ」
グランはクムユに挨拶を返して、少女が持つトレーをグランが受け取る。トレーの上には山積みされたパンだった。おおよそ6人分のもの。
居間のテーブルには、野菜スープが入った鍋が置かれている。ククルがグランを起こす前に作ったものだ。
「おっ、ようやく起きたかい。我が家のガンマンは」
「放っておいたら、目を覚まさないんじゃないか」
最後に居間にやってきたのは、夫婦だった。ククルの実の父母にあたる人物達だ。姉のシルヴァと妹のクムユは血こそ繋がっていないもの、夫婦は二人を実の娘のように可愛がっていた。
ククルも二人を本当の姉妹だと思っているし、サンタからの贈り物だと信じている。
グランはグランで、特殊な立ち位置にいるが、今は説明を省く。
「なんか、今日はやたらイジメてくるんですけど」
起きれない分強く否定できないので、少し肩身が狭い。
「兄ちゃんの寝坊助さんは、もはや不治の病でいやがるです。無駄に罪悪感なんて感じる必要ねーです」
「クムユクムユ。クムユの言葉が兄ちゃんを傷つけたんだけど」
悪意のないクムユのフォローは、グランを涙目にするのに十分だった。
朝食を食べ終えると、グランとシルヴァはクムユから弾丸を受け取る。
グランとシルヴァの銃はククルの特注品であり、クムユがそれに合わせた弾を製作する。その二つを使い、難易度の高い依頼をこなすのが、グランとシルヴァの役目だった。
「いってらっしゃい。グラン、シルヴァ姉」
「いってらっしゃいです」
「怪我すんじゃねえぞ」
「無茶するんじゃないよ。特にグラン」
一家に送り出されるのも日課だ。グランとシルヴァがいざ出発しようとした時、唐突にグランはおかみさん、ククルの母に呼び止められる。
「そうだ、グラン。依頼が終わったら、大事な話があるんだ」
「え、お説教?」
「違うよ。なんかやったのかい?」
「そうじゃないけど、大事な話って言われて。依頼があるからモヤモヤするから、出来れば今聞きたいな」
「そんなんじゃないよ。大事には大事だけど、あんたが悪いとかそういんじゃないから」
「ん?なら、今からでも」
「あーもう。説明が長くなるんだよ。さっ、行っといで」
グランの背中をパンと叩き、グランは急いで出ていく。銃工房の三姉妹は、訳のわからない母の言動に疑問を思うもの、各々の仕事があるので各自移動を開始する。
父親は妻の行動に、戸惑いを見せていた。彼だけは、察していたのだ。
「い、いいのか?」
たった一言だが、妻は理解した。
「いいんだよ。大事なのグランの意思さね」
「でもよぉ、シルヴァもクク助もクム坊も「だからグランの意思なんでしょうが!グランは15だけども、何時までも子供じゃないんだよ、まったく」」
夫は妻の言葉に黙り込んでしまう。彼女の迫力もあるが、言いたいこともわかるのだ。
「それに、こんなもん切っ掛けにしか過ぎないさ」
三姉妹の母は、グランの向かった先を眺めていた。
太陽が真上を向いた頃、グランとシルヴァは馬が引く荷台の上に座り、周囲を見渡していた。
「平和だね」
「今のところ怪しい者はいないが、気を抜くなよ」
のんびりと歩く馬に合わせて、護衛を依頼した業者も緊張感がなく、周囲の景色を眺めていた。
「こんな日はお昼寝日和だよね」
「まだ寝るのか」
グランの睡眠欲に呆れを通り越して、感心を覚える。
もっとも、この睡眠欲がなければグランはおろか、銃工房の一家と出会うこともなかったのだろうが。
グランとシルヴァが出会ったのは、ここではない別の島だった。そこは騎空挺が定期的に回る島なので、決して未開拓というわけではない。
そんな島の端にある森林でシルヴァは苦戦を強いられていた。敵は決して、弱くはないが事前の情報よりも遥かに数が多かった。
依頼で討伐にやって来て、狙撃銃で目標を撃破するも他の魔物に気付かれ、追われてしまう。撃っても撃っても減らない魔物に、冷や汗を流す。
(ここまでか)
魔物に取り囲まれた上に、狙撃銃は魔物に破壊されてしまう始末。
命を諦めた瞬間、銃声が森に轟く。
シルヴァの目の前にいた魔物の頭が撃ち抜かれる。横からではなく、真上からだ。
一人の少年が降り立つ。両手には、二丁の拳銃。黒のコートに袖を通している。
シルヴァが驚いているのも束の間、少年は二丁の拳銃を左右に向けて、引き金を引く。発砲音をなっている頃には、二つの銃口は別の方角へ向いている。
縦横斜め、前後左右。
一射一殺。
一斉に襲いかかる魔物をものともせず、ピンポイントに急所に当てていくその技術は目を見張るものだった。
(十代になったばかりくらいか?)
シルヴァは驚きの中の冷静さで少年を分析していた。
気づけば、辺りは魔物の死体が転がっていた。血の匂い、硝煙の匂いはキツイものである。
残り、一匹となったところで銃声は止んだ。
「あ、弾切れた」
魔物はゴブリンモンク。筋骨粒々の姿は決して見せ掛けなどではなく、素手で大の大人を殺すことも用意だ。
そんな中、間の抜けた声にシルヴァはハッとした。
「君、逃「まあ、いいか」」
少年の子供はシルヴァの言葉を遮った。
ゴブリンモンクの脚にローキックを入れる。肉を叩く乾いた音と骨を折る音はシルヴァの耳にも届き、ゴブリンモンクは凄まじい速度で接近していた少年の蹴りに、膝をついて、悲鳴を上げていた。
少年は飛び上がって体を一回転させると、遠心力の加わった踵がゴブリンモンクの顎に入る。そこでゴブリンモンクの意識が途絶える。
倒れたゴブリンモンクに少年はこめかみ部分を踏みつける。シルヴァの目には、少年が一瞬全身に力をいれたようにしか見えなかったが、ゴブリンモンクの息は途絶えていた。
「それ、大丈夫ですか?」
少年がシルヴァにかけた最初の一言がこれだった。
指差したのは、ひしゃげた狙撃銃。
「ああ。買い直さねばならぬな」
虚を疲れた質問に戸惑いつつも答える。
「なら、僕がお世話になってる銃工房に行きませんか?腕のいい銃設計士がいるんですよ」
「そうか。この後は依頼完了に報告をするだけだし、そうさせて貰おう。礼が遅くなってすまない。君のお陰で助かった。私の名前はシルヴァ。君は?」
「僕はグラン。よろしく、シルヴァさん」
後で聞いた話だが、グランは定期便の騎空挺を乗り損ねてしまい、シルヴァが背中を預けていた木で寝こけていたら、魔物の群れが視界に映ったとのこと。
最初はシルヴァではなく、自分を狙っていたと思っていたとグランは笑っていた。
そこからはグランの幼なじみであるククルとクムユに新たな銃と弾を作って貰い、いつの間にか今日まで時が過ぎていた。
グランには家族がいない。母親はともかく、父親は今より幼い頃に消えていた。育児放棄この上ない、とグランが愚痴っていたのは、記憶に新しい。
父親がいなくなってから、グランは幼馴染のククルの両親に世話になる。グランは恩を返すべく、ククル作の二丁拳銃で払いのいい依頼をこなし、6割を銃工房に納めていた。
夫婦は拒否していたが、結局ククルが預かる形で落ち着く。それでもグランは散財することもないので、貯金は貯まっていく。
依頼のない日は、銃工房の手伝いや鍛練に励んでいる。以前、グランの鍛練を覗いたシルヴァは、グランの格闘術に目をつけ、蹴り技を真似るようになった。
「シルヴァ姉さん。敵影捕捉」
グランの声に、現実に引き戻され銃を構える。
「了解。パターンA開始する」
「了解」
パターンAとは、グランが魔物に中距離、近距離から攻撃して、シルヴァが長距離から狙撃する戦い方だ。長く共にいれば、必然的に役割が出てくる。
そこには、ククルとクムユも持っていない絆があるのだと優越感を感じていた。
護衛の依頼が無事完了すると、魔物から剥ぎ取った角や爪を商人に売って金にする。それが終わってようやく、銃工房へ帰宅するのだった。
グランとシルヴァは銃工房一家へ帰宅すると、晩御飯の用意がされていたので、そのまま食べることになる。
「前に言っていた大事な話なんだけど、いいかい?」
圧のかかった話し方にグランは圧されながらも、頭はクリアに働いているので問題なく頷く。
テーブルには、一家全員が座らせている。父親を尻にしいている母の言葉に従ったのだ。それだけに、自分たちにも関わりのある話なのだと知る。
「何時だったか、金持ちのお嬢様を護衛する依頼あったわよね」
「忘れられないよ。暗殺者が一斉に襲いかかってきたんだから」
グランには、報酬が良かったことと敵が強かったことくらいにしか記憶がない。
金持ちのお嬢様。このキーワードがなければ、思い出せなかった。
「その時のお嬢様がグランをいたく気に入っちまったらしくてね。お見合いが来てるのよ」
「え?」
事も無げに出されたは一言に、誰かの声が漏れる。
「お見合い?」
「お見合い」
「僕に?」
「グランに」
この一件は、銃工房の三姉妹とグランの関係を変化させる切っ掛けとなった。
銃工房の三姉妹編は、こんな感じです。
もっと上手くまとめられたらなあ。続きをやるかは分からんです。
そう言えば、センちゃん来ました。滅茶苦茶嬉しかった。
センちゃんの話も作りたいけど、可愛がってる話しか出来そうにない。