NARUTOー蛇眼の忍ー   作:ニラ

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04話

 

 記憶が戻って最初に俺が行ったことは、報告書の作成―――ではなく、自身の身体に仕込まれていた封印術の調整である。

 肉体への負荷を増やし、チャクラを乱す効果のある封印術式と言えば理解してくれるだろうか?

 俺が普段から実技に於いて、然程優秀ではなかった理由が其処にある訳だ。

 俺は目立ってはいけないのだから。

 

 潜入任務で一番に大切なことはなにか? それは『洗浄』だ。

 つまり、自分の所属を見えなくさせて潜入地に溶け込む必要が有るのだ。

 だからこそ、自身の動きを制限するための枷が必要だったのである。

 当然、記憶が有れば其のあたりの調整も上手くやれただろうが、その場合は記憶を読む術を使われれば、俺が大蛇丸の配下だとバレてしまう。

 

 『記憶が無い、身元不明な子供』だからこそ、木ノ葉の里に在籍が許されているのだ。

 

 もっとも、封印術式を解除して動けるように成ったからと言って調子に乗ってしまってはソレこそ意味がないものと成る。

 俺は、目立ってはいけないのだから。

 

 しかし、誤解をしないでいただきたい。

 修行を疎かにする訳でもないし、封印術式で縛られていたことが全くの無駄というわけでもない。

 

 そもそもだ。この身体に施されていた封印術は、チャクラの強さに合わせて発動するモノだった。

 チャクラの強さに合わせて対象の筋肉へと付加を掛け、そしてチャクラの合成を阻害する様に働く仕組みだったのである。

 写輪眼や白眼などで常時見張られていればバレる可能性もあっただろうが、基本的にそういった血継限界持ちは貴重だ。

 俺を監視するためとは言え、そういった優秀な忍びは使わないだろう。

 

 つまりだ。

 余程に変な行動さえ取らなければ、俺に与えられた忍務はさして問題のない簡単なモノとなるはずだ。

 

 ―――いや、だった。

 

 アカデミーの教室へ到着し周囲を見渡すと、同学年の者達が既に何人か到着していた。

 流石に全員が既に登校済みとは言わないが、俺が心の奥で溜め息を吐きたくなる『理由』は登校していた。

 

 それは木ノ葉の里に存在する名家と呼ばれるモノが理由である。

 初代、二代目と火影を生んだ千手一族を筆頭に、うちは、志村、鎌土、日向、犬塚、油女、奈良、山中、秋道と、これ以外にも数多くの一族が木ノ葉には存在している。

 

 だが、この中で問題となっているのは日向と呼ばれる、血継限界『白眼』という瞳術を伝えている一族のことだ。

 俺の視界の中には、色白の肌と特徴的な瞳をした日向一族の人間が二人居る。

 一人は大人しい印象を与えてくる、オドオドとした様子のオカッパ頭の日向ヒナタ。

 対して、目付きが強く見る者に活発な印象を与える、短い髪の毛を頭の後ろで軽く縛っている日向ハナビ。

 

 どういう訳か、俺の視界には日向一族宗家の姉妹が一緒に居る。

 しかも同じ年齢として。

 本来ならば、確か4つか5つは年の差が有るはずの二人が、何故か双子としてこの場に居る。

 

 なんでだ?

 

 コレが俺が起こしたバタフライ・エフェクトだと言うならば理解も出来る。だが俺自身が何かをした結果として双子が生まれたなんて、どうすれば想像が出来る?

 

 コレは、まぁ、そういう世界なのだろうと判断するしか無いだろう。

 実際問題として、大蛇丸の陣営に俺のような人間が居ること事態、十分におかしな話なのだから。

 

「―――おはよう、夜刀」

 

 眼の前の二人をどうやって躱すかを悩んでいると、背後から見知った声に挨拶をされた。

 これ幸いと後ろを向くと、はて?

 

「ふむ。声はすれども姿は見えず……か」

「ベタなことするなよっ! 下だよ!下!」

 

 言われて視線を下方向へとずらすと、そこには顔に掛かったメガネが一つ。

 

「眼鏡がメインみたいに言うの止めてくれない……っ! 朝から不愉快な思いにさせるの、本気で止めてくれないっ!?」

 

 頭2つ分ほど小さな体躯をしたメガネくんが、此方に向かって睨みを効かせてくる。

 おぉ、怖っ。

 

「おはよう、鎌土君。君は、相変わらず元気でちんまいね」

「ちんまいは余計だろうが! 妙な言葉を挟むな!」

 

 笑顔でかけた挨拶に対し、頭2つ分ほど背の小さい同級生―――鎌土ナツネが吠えるように声を上げた。

 俺はそんな鎌土くんに、思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「だってさ、俺は確かに年上の人間だから多少は皆んなよりも背が高いよ? けども、頭2つ分も背の低い相手を年相応に背が高いね―――なんて、そんな嘘はつけないよ。もしもそんな事を言う奴が居たら、俺はそいつに視力検査を進めなくちゃならない」

「そうじゃない! 礼儀の問題だろ!」

「礼儀……か。礼儀ってのは社会の決まりにかなう、人の行動・作法のことだ。

 だから、小さい子を大巨人と表現できないって事の方が、そういう意味では礼儀にかなった行動じゃないのかな?」

「いちいち僕の心を抉るのは、礼儀正しいって言えないだろうがっ!」

 

 成る程。どうやら思いの外に知恵をつけたようだ。

 しかし、声を掛けてくれたことに関しては感謝をしたい。

 お蔭で、日向姉妹を見ないでおくことが出来る。

 

「―――まぁ、確かに俺が悪かったよ。おはよう、ナツネ」

「お、おぅ。なんだか、急にそう返されると調子が崩れるな」

「そうか? 寧ろ、普段の俺はこんな感じじゃないかな?」

「いや、まぁ、そうなんだけどさ」

 

 ブツブツと言葉を小さくさせる鎌土君に、俺は小さく笑みを浮かべた。

 この鎌土君という人物が何者なのか? と言うと、里の中で一定の忍を排出している一族の人間らしい。

 得意な戦闘方法は暗器術。

 ……何処か一学年上のテンテンを思わせるが、それほどに警戒する相手でもない。

 

 少なくとも、秘伝忍術や血継限界を受け継ぐような連中程には見る必要もないだろう。

 それに俺は元々『話をする相手』程度には、この鎌土君と接点を持っていたようだからな。

 と、脳内で勝手な一人語りを展開していると、ドタドタと騒がしい足音が廊下から聞こえてくる。

 

 あぁ、どうやら奴が来たらしい。

 

「―――ギリギリっセーフだってばよ!」

 

 ガーンと音を立てて扉を開き、金色の髪をした喧しい少年が教室へと入ってくる。

 ソレを眼にした者達の反応は様々で、表情を顰める者、面倒臭そうにする者、興味なさそうにチラリと視線を向けただけの者、嬉しそうに笑顔を向ける者とそれぞれだ。

 

 俺は、何方かと言えば興味のない側になる。

 

 理由としては、今の俺が率先して関わるべき相手ではないからだ。

 

「ナルト君。相変わらず元気だね」

「ソレしか取り柄がないからだろ。今のアイツには。俺も見習わなくちゃ成らないとは思う」

 

 なにせナルトは、実技も座学もドベという落ちこぼれ。

 しかし持ち前の明るさも手伝って、馬鹿にする奴はいても嫌う奴は居ない。

 処世術なのかどうかは兎も角として、ナルトのお蔭で俺は成績最下位等という事に成っていないのだ。

 有り難いことである。

 

(うずまきナルト……九尾の人柱力)

 

 これからも関わるべきではない人物なのだろうが、注意をする必要も有るだろう。なにせ、コイツは意外性№1というのが売りだったのだから。

 何処で接点を持つことになるか、解ったものではない。

 

「どうしたの、夜刀?」

「……なにが?」

 

 不意に鎌土君から妙な質問をされてしまった。意味の分からない内容に、俺は素で返答をする。

 

「いや、なんだか少しだけ、()()感じがしたからさ」

 

 眼をパチクリとさせて驚いてしまう。

 まさか、そんな事を言われるとは思わなかった。

 表情に出ていたのだろうか? だとしたら気をつけなければならない。

 

「怖い、か。また少し、目付きが悪くなったのかもしれないな」

 

 と、俺はそう言いながら眉間に手を当ててグイグイと揉み解すような仕草をした。

 

「いや、ま、確かに目付きは悪いよね」

 

 大きなお世話だ。クソッ。

 

「―――おーい、全員揃ってるか!」

 

 と、鎌土君と話をしている間に良い時間になったようだ。

 担任教諭の、うみのイルカが扉を開けて入ってきた。

 

 俺は鎌土君に軽く声を掛けてから指定の席へと移動する。

 今日も何事もなく、上手く里での生活をしたいものだ。

 

 ちなみに、この日の実技訓練は手裏剣術。

 当然のように、うちはサスケがトップの成績を叩き出して鎌土君が二位。

 俺はナルトよりもマシだが、自慢できるような成績ではなかった。

 

 ……鎌土君、君って普通にモブキャラだよな?

 

 

 


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