追記
名前を間違えていることに今気づきました。相澤先生はへらへら笑わねえよ
緑谷は恐怖していた。彼の前には、無精髭の男性ーー本名は相澤消太ーーとへらへら笑っている狩間が教壇に立っている。
緑谷の視線が狩間へと向く。彼の脳裏に、狩間が呼び出してきたモンスターたちの咆哮が轟く。
顎が自然と震え出し、まともに人の顔を見ることもできなくなる。
緑谷出久は教室に来て早々に、半分心を折られていた。彼は心の中で悲鳴をあげる。
「やあ、皆。狩間龍蔵だよ。とりあえず、下位、上位、G級の三つのコースがあるけど、どれにする?」
(万年最下位だけど、全プロヒーロー中、ヴィラン逮捕数最多! あらゆるヴィランをその“友達”の手によって蹂躙していった狩間龍蔵がなんで!?)
生徒たちが狩間の自己紹介に頭に疑問符を浮かべる中、緑谷は狩間の経歴を思い起こす。彼は実際に、狩間の戦いを見たことはない。だが、録画映像で彼が個性を使って暴れまわる光景を見ている。
そして、そこで彼は悟ったのだ。あれは人間の手に負えるものではないと。以来、彼は龍を自然と恐れるようになった。洪水や嵐を畏れ、崇め奉る村人たちのように、大自然の象徴であるモンスターたちに平伏したのだ。
緑谷は狩間を怯えながら見つめ続ける。
「じゃあ、挨拶もそこそこに身体能力テスト、行ってみようか!」
「体操服を着てグラウンドに集合だ」
困惑する生徒たちを置いて、狩間たちは教室をそそくさと出て行く。緑谷はこれから何をされるのかを想像し、まるで追い詰められた小動物のように震え上がっていた。
爆豪はマナーモードになっていた。
「よし、集まったな。じゃあ、テストを始めるぞ」
「ルールは簡単。身体能力テストを完遂させることだ。個性使用していいよ」
グラウンドにて、体操服に着替えた生徒たちは来て早々に置いてけぼりにされていた。
先生たちの背後には、計測用のコースなどが張り巡らされている。
一人の女子生徒が手を挙げた。
「あの、狩間先生。話の内容がよく見えません」
「いいからテストをするんだ。理解は後でいい、考えるな感じろ。クック先生もそう言ってる」
「グォグォグォグォ」
「キャッ!?」
まるでフィルムのコマに突然追加されたかのように、現れるイャンクック。クックは生徒たちを一瞥すると、地面を漁り始めた。
「狩間先生」
「わかってますよ、相澤先生。ほーら、クック先生。ご飯ならここですよ」
狩間の手元に現れる生肉。狩間はそれを手に持つと、クック目掛けて投げつけた。クックがまるでフリスビーをキャッチする犬のように飛び上がり、食べる。
相澤先生は寝袋に包まっている。
「紹介しよう、彼はクック先生だ。君たちのコーチを務めているから、挨拶するように」
「グォグォグォグォ」
『よ、よろしくお願いします』(なんなんだよ、その鳥みたいなの!)
謎の怪鳥に一礼する生徒たち。爆豪すらも状況が飲み込めず、ただ言われるままになっていた。
「じゃあ、やろうか。最下位の人はコーチに追い回されるから頑張ってね!」
「グォギィィィィッッッ!」
『え〝……!?』
その場で飛び上がりバタバタと足を振り乱すクック先生に、生徒たちの視線が集中する。爆豪がまたマナーモードへと入り、緑谷の顔が一気に青くなった。
「まずは砲丸投げだ。狩間は言ったことは全部やる男だ。追い回させると行った以上、本気で追い回させるぞ」
『え〝……!?』
相澤が早くしろと生徒たちを睨みつける。他のクラスより遥かに厳しい洗礼を受けながらも、A組の生徒たちはそれに対応を始めた。狩間に苦手意識を抱きながら。
この数十分後に生徒の一人の悲鳴が、グラウンド中に響き渡った。
身体能力テストが終わり、職員室。相澤と狩間の二人は、金髪の男性ーーオールマイトーーを交えて会話を行っていた。
「初日が終わったわけだが、調子はどうかな?」
「いい感じですよ」
(どこが?)
狩間とオールマイトは笑顔で応酬を行い、相澤が理解に苦しむように眉をひそめる。
彼らの周りには、同じように職務を終えた職員たちがだべっており、多種多様な話題が飛び出していた。
「俺、人にものを教えるの初めてなんですよ。おかげで、先達者であるクック先生に頼ってしまいました」
「ははは、何事も初めてはあるものさ。しかし、他の職員さんに手伝ってもらうのは感心しないね。次は君自身の力でやってみよう」
「努力しますね」
「そもそも、あれは先生なのか」
天然じみた会話を繰り広げる二人に対し、相澤が冷静にツッコミを入れる。相澤の脳内には火を吐き、走り回る怪鳥が暴れまわっていた。
このままじゃまた同じことをするなと相澤は判断し、口を挟む。
「狩間、あまり脅す目的でモンスターたちを呼び出すな。お前に人気がないのは、簡単にモンスターたちを放すからだぞ」
「マジで?」
「ああ」
頷く相澤に狩間が天を仰ぐ。オールマイトも言ってしまったかと目元を抑えた。
これで少しは大人しくなるといいのだが、と相澤は一人思う。だが、その思いはすぐに裏切られた。何かに気づいた狩間が、相澤へと顔を向ける。
「じゃあ、ずっと俺が手綱を握っていればいいんですね」
「おお、それはいいな。名案だ」
「おい、何を呼び出すつもりだ。やめろ」
我が意を得たりとドヤ顔で嫌な予感しかしない発言をかます狩間に、相澤が冷や汗を流し始める。オールマイトは狩間の善性を信じているのか、特に止める様子は見えない。
相澤の問いに、狩間はフッと笑う。相澤は自分の胃が軋み始めたのを感じた。
「アトラル・カ」
「街中でそいつを呼ぶのは、や・め・ろ」
「相澤先生、何事も挑戦あってこそさ!ここは彼を信じてみよう!」
「止・め・て・く・だ・さ・い」
腹痛に襲われ始めたのを、相澤は感じる。常識という言葉をどこかに置いてきた二名を前に、相澤は四面楚歌の状況へと追い込まれたのであった。
読んでいただきありがとうございました。ノリと勢いで書いているので、次の展開とかは考えていません。多分、いろいろとおかしなことにはなるでしょう。
では、またいつか。