では、どうぞ。
どうして、俺はこいつと関わりを持ったのだろう。悪夢にうなされる中、相澤はポツリとそう思った。
相澤が狩間と出会ったのは、雄英高校ヒーロー科に入学した初日からだった。当時の狩間は小さなモンスターしか出せず、よくアイルーという猫と遊ばせてもらったことを覚えている。
あの頃の二人は本当に弱くて、いつも二人でどこが問題だったのか反省点を出し合っていた。今思えば、あの頃が一番楽しかったのかもしれないと相澤はひとりごちる。
狩間が初めて問題を起こしたのは、三年の学園祭のころだった。ある程度の大きさのモンスターも呼び出せるようになってきた狩間が、当時出せる最大サイズのモンスターを呼び出そうとしたのだ。
その結果として現れたのが、オディバトラスとかいう巨大な竜だった。そいつは学園祭をものの見事にめちゃくちゃにし、狩間は激しく怒られていたのを覚えている。
あの頃はもうやんちゃなんてしないだろうと軽く物事を見ていたのを覚えている。全力で殴りたい。あの時に本気で止めていれば、今この夢を見ないで済んだのに。
ヒーロー活動を始めだした頃、ヴィランたちのアジトを攻略したはいいものの、秘蔵の兵器だったのだろう巨大ロボの発進を二人は許してしまっていた。
ロボは既に地上でヒーローたちと交戦しており、自分たちは大急ぎで脱出しなければならなかったと相澤は状況を整理する。
走ろうとする当時の相澤に、狩間が一つ声をかける。
「もうすぐ発進されるから、大丈夫だよ」
と。何を呼んだ、とあの時は本気で思ったものだ。まさか、同じ大きさのロボが出てくるとは思いもしなかったのだ。
狩間を殴ろうかと一瞬足を止めたと同時に、足場が著しく揺れる。揺れは収まるどころかさらに大きくなり、ついには床を突き破って出てきたのだ。
「アトラルロボ、発進!」
崩落を始めるアジトの中、狩間がそんな妄言を吐いていたような気がする。
現れたのは、四脚のロボだった。瓦礫の山と錯覚しそうなそれは、糸で全身を支えられているのか崩れる様子は見えず、あろうことか自壊しそうな勢いでヴィランのロボに突進をした。
当時の相澤がぼそりと呟く。
「なんだあれ」
「ロボだよ。俺の友達が作った」
周囲を破壊しながら戦闘を行うロボとロボを観戦しながら、狩間が答えた。彼の手には見たこともない果実が握られており、彼はそれをもしゃもしゃと食べていた。
アトラルロボなるものがヴィランのロボにマウンティングを取る。そしてそこから大量の糸が噴出され、ロボそのものが解体され始めた。
どんどんボロボロになっていくヴィランロボ、逆にその巨体を更に補強していくアトラルロボ。ロボで行われる食物連鎖の光景に、当時の相澤は理解を放棄した。
最終的に、ヴィランたちは全員逮捕。アトラルロボはその城塞を更に巨大化させることに成功し、満足げに狩間の体内に戻っていったらしい。ついでに、その後に狩間からあのロボの正式名を教えられた。
アトラル・ネセトという名で、それを操るモンスターがアトラル・カらしい。知りたくなかったと当時はよく吠えたものだ。まだ上がいると聞いた今では、もう驚くほどのものではないが。
プロヒーローとして名乗りを上げた頃、狩間と相澤はオールマイトも交えて飲み会から帰っていた。
三人は見事に酔っ払っており、まっすぐ歩くこともできなかった状態だと相澤は状況を思い起こす。そして、そこから何が産出されるのかを彼は苦虫を噛み潰したような顔をしながら想起した。
好機と見定め襲撃をしかけるヴィランたち。まともに動くことができない相澤たちはまさしく絶体絶命の窮地であり、本当ならあの場で死んでいる状況だった。
個性を使うのに意識があればOKな狩間がいたから、そのような状況には陥らなかったが。
全体的に黒いヴィランたちを見て何を思ったのか、狩間が叫びをあげる。そこからひどいものが発生しだした。
「いや、ゴキブリ!掃除しなきゃ!」
途端現れる背中に鉱石を多数載せた、顎が大きく発達した二足の竜。ヴィランたちが動揺する中、竜はまるで命令を求めるかのように、狩間に視線を送る。
「やっちゃえ、ウラガンキン!」
裏声で狩間が命令を下すと同時に、ウラガンキンと呼ばれた竜は高く飛び上がり、その身をコンクリートに深く沈めた。なんだと注視するヴィランたちと、逃げ出す人々。
当時の相澤たちも何が起こるのかを静観していたのを、相澤は覚えている。そして、これから何が起きたのかも。
竜がその場で潜るかのように回転を始める。途端、周りに現れる謎の吸引力。予想外の展開に対処ができていないヴィランたちは次々に吸い込まれ、回転する竜の下へと引きずり込まれていった。
眼の前で繰り広げられるグロ映画。血が飛び散る様子は影も形も見えないが、工場の機材のように激しく回り続けるその下で何が起きているのかを二人は想像し、その場で吐いた。
竜が回転をやめ、立ち上がる。竜は自らの下で気絶するヴィランたちを一瞥すると、狩間の体内に戻っていった。
結局、その場にいたヴィランたちは全員が逮捕。なぜ死なないとオールマイトと一緒に頭を悩ませることとなった。
「あ……先生……!相澤……い!」
ああ、そういえばまだひどいものがあったなと相澤は思う。
思い出されるは、つい最近の竜たちのダービーレース。海の中での戦いだったのだが、ただの蹂躙劇でしかなかった。確か、優勝者はガノトトス辿異種とかいう怪物だったか。砂の上でのゲルを撒き散らしながらの猛ダッシュはまさしく悪夢だった。あれのせいでスピンを起こした竜たちがボーリングのピンのごとくヴィランたちを轢いていったのだから。
あれもまた、狩間が妙な発言とともに始まったやつだったと相澤は思う。
「相澤先生!」
「はっ!?」
別の教師の声で目が覚める。どうも眠っていたらしい。相澤は頭を横に振り、眠気を振り払う。
己の名を呼んだ人の顔を見れば、そこには宇宙服を着込んだ教師が一人。
「どうされたのですか、とてもうなされていましたが」
「ああ、気にしないでください。旧友の問題行動を思い返していただけです」
不安げに見つめてくる教師ーー13号ーーに簡潔に答える。すると、彼は不思議そうに首を傾げた後に、ああと手を叩いた。
「それは、大変でしたね」
「いつものことです。それに、あの程度のことを受け入れることができなければ、あいつの行動を止めるなんてできませんよ」
「……慣れてますね」
「ええ、慣れざるを得ませんでした」
ドン引きしている13号を前に、息をついた。もうあいつの行動には慣れたと、そう伝えるために。
そう言えば今は何時だろう。ふと相澤はそう思い、時計に目をかけた。
時刻は12時50分。とても昼飯を食べている時間ではない。相澤は13号に対して適当に話を終わらせると、次の授業の準備を始めた。
シリアスを目指している灰の少年のほうより、こっちの方が人気あるのはどういうことか。やはり、みんな特に何も考えることなく楽しめる作品が欲しいのか。
社会がいかに厳しいかが見えるな。とりあえず、明日からは投稿できるかは怪しいです。だって、学校があるんだもの。仕方ないじゃないですか。
では、また。