僕たちが進軍すること数分。森の中から気配がする。
と、森の闇から八名の女性が出てくる。こいつらのことだろう。
と、イッセー君が前へ出る。
「……ここで消耗するのは得策ではないです。ここは俺がやります」
「……なにか秘策があるのね?」
部長がそう問うと、イッセー君は首を横に振る。
「いえ、ただ『威嚇』するだけです」
「……えっ?」
えっ? 威嚇?
イッセー君はそういうと、ぎろり、といった風に相手をにらむ。敵の兵士達が身構えた瞬間、それは起こった。
イッセー君のからだから血のように真っ赤なオーラが溢れだす!
これは……赤龍帝のオーラ!?
「『死にたくなければ、ここから失せろ』」
イッセーくんはドスの効いた低い声でそう告げる。
っ……こっちまでビリビリする。すごい威圧感だ。
その兵士八名は、座り込んで泣き出してしまったり、腰が抜けて漏らしてしまったりと、戦意が完全に削がれていた。
「……ふぅ。さぁ、神殿を目指しましょう」
イッセー君が息を吐くと、先程の赤く危険なオーラは収まっていた。
……イッセー君の、赤龍帝のスペックはいったいどれ程なんだ!?
僕は少し赤龍帝に恐怖しつつも進軍を開始した。
―/・ω・/―
「次は……映像の情報からすれば戦車2、騎士2だな」
神殿のなかにはいると、ゼノヴィアの言葉通りその四人が待ち構えていた。
「ここは祐斗とゼノヴィアにお願いするわ」
「了解」
「了解!」
僕とゼノヴィアは剣を構え、走る。
走るというよりは前方に跳ぶ、に近い形だが。
そしてすれ違い様に一閃!
「っ!?」
「ぁぁぁあっ!?」
騎士二人を一撃で倒した! ゼノヴィアもデュランダルを静かに構えている。
残りの戦車二人は一瞬で騎士二人が塵と化したことに狼狽えている。よし、もう一度――
「ごふっ……」
「あぐっ!?」
すると突如、光の槍――いや、杭か? とにかく円錐上の光の塊が戦車二人を容赦なく貫いていた。
「ん? なんだオマエラか」
「フリード!?」
部長の驚きの声に、僕たちは部長の視線の先を見る。
そこには拳銃でジャグリングをしているフリード・セルゼンの姿だった。
「どうしてここへ?」
「アザゼルの命令だ。まァなんだ、ディオドラにも用があるがなァ……」
「さっきの光の攻撃は?」
「あァ? 最近発現した
トワイライト・スター……聞かない名だな。それだけレアってことか。
「……わかったわ」
「んじゃ、さっさとディオドラのいる辺りまで案内しますかねェ……その代わり、『女王』との戦いは俺に譲ってくれよォ」
「いいわ」
僕たちは足を進める。
―>ω<―
「……あそこね。三人……いるわね」
「俺に任せなァ」
神殿の入り口には門番のように三人のフードの男女が立っている。僕たちは入り口付近の森で様子をうかがっている。
「……金髪と赤髪、あとは男かァ……まずは!」
フリードは光の塊を二つ手元に作ると、地面に叩きつける。
するとその光は地を這うように延びて行き――
フードのスキマから赤い髪のみえている女性と、男性を貫く!
「がぁっ!?」
「あ゛ぁぁぁあ゛っ!?」
悲鳴をあげた二人は塵芥とかす!
「っ、敵か!?」
残った一人――女王が狼狽える。
その声を聞くと――フリードは顔を哀しそうに歪めた。
「……やっぱり、アイツか……」
フリードは懐から剣の柄を取り出すと、自らの光を込めて光の剣を創る!
すると、女王の前に素早く飛び出した!
なぜ態々飛び出す!? かくれていたのに!
「私達も森から出るわよ!」
部長の号により僕たちも神殿の前へ移動する。
すると、そこでは――
「ああ、ああ……フリー、ド……」
涙声の女性と、
「……アリー……ッ!」
哀しみの感情を押し付けて吠えるフリードが、いた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
出会うわけがないと思っていた。
会いたい、しかし逢いたくないと思っていた。
こんな醜い姿を彼に見られたくないから……。
しかし、私達は出会ってしまった……。
「あぁ……」
嬉しいのに、哀しい。悲しいのに、嬉しい。
矛盾した感情がぐるぐると頭の中をかき混ぜて吐きそうになる。
言葉すら出せない。出したくても、出したくなくて。ただ、彼の名前を呼ぶだけ。
「ああ……フリー、ド……ッ」
涙が溢れる。……何の涙だ? 悲しみ? 嬉しさ?
わからない。
わからない。わからなくて、気持ち悪い。
頭の中がぐちゃぐちゃで、わからなくなる。
突如、あいつから通信が入る。
『……ふぅん、なるほど。なら彼を今から殺しにでもいこうかな?』
……ッッ!!
ディオドラ……ディオドラァァァァ!
お前はぁッ!!
『……いい。私がやる』
『ふふ、愛する彼を手にかけるのかい?』
『貴様に殺されるより何倍もマシだ……ッ!』
私は感情を押し止める。激情の奔流を無理矢理、私の心の奥底に詰め込む。
彼に、刃を振るう覚悟を持つためにっ!
「……………ッぁ!!」
思い切り殺気を飛ばす。
「ッ!? アリー……! クソがっ! おいてめえら、こいつは俺が抑えとくからさっさと神殿に行けェ!」
フリードは誰かに声をかける。……グレモリー眷属か?
「……! 任せたわ」
グレモリー眷属が神殿に入っていく。……そうか、これは……ふふっ。そうすればいいんだ。
心に少し、余裕が出来た。
後は――フリードと、やりあうだけ。
「フリードォォォォっ!!」
「アリシアァァァァァァァァアア!!!!!!!」
私の創った聖剣と、彼の光の剣が交わる。
長く厳しい、闘いのために。
――彼を死なせはしない。私ももう死にはしない。彼に同じ思いをさせたりしない。
長い長い、
あなたは、そこにいますか――――?