二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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英雄誕生

僕たちは神殿から抜け出す。

すると……

「ええい、邪魔だ!」

「ぐうっ!」

「っつう!」

魔力の波動のようなもので吹き飛ばされる二人の姿。金髪の女性……アリシアさんと、フリードだ。

そして轟音と共に神殿が崩れはじめる。

「ふん、その程度か……」

嘲笑うかのように崩れた神殿から出てくるシャルバ。

今なら、イッセー君がどれだけこの眷属の中心だったかよくわかるよ。塔城さんも少なからず精神的にダメージを受けているのか、時おり「先輩……」と呟いては涙を溢している。ギャスパー君も似たような状態だ。

部長達はもっとひどい。まるで、魂が抜けたような状態だ。この二人を連れてくるのは骨がおれた。

僕だって悲しいし、許されるのなら泣きたい。でも……ゼノヴィアは泣いてない。なら、僕だってまだ泣けない。戦場で主を、仲間を守るために。

ゼノヴィアも厳しい表情でシャルバを視ていた。

「……あの二人が手も足もでていないのか」

そう。

彼らははじめ、凄まじいまでのコンビネーションでシャルバを追い詰めていた。反撃すら許さぬ怒濤の連撃と、反撃しようにも上手く攻守交代をするために攻めあぐねていたシャルバ。しかし――シャルバが何かを飲んでからは、戦況が一変した。シャルバの圧倒的な魔力で徐々に攻撃が通らなくなってきたのだ。

「クソッタレ! これだから支給品は!」

「文句を言っている場合か。通信阻害が起きているせいで援軍も呼べんのだ」

「通信阻害が? ……チッ、こっちもダメだ。どォするアリー」

「フ……おい、そこのデュランダル使い!」

余裕の表情で笑っているシャルバを無視してゼノヴィアを指差すアリシアさん。

「わ、私か!?」

「そうだ、お前だ。デュランダルを貸してくれ」

「……それでシャルバが、やつが倒せるのか?」

「さぁな。五分五分、と言ったところか。どうするんだ? 貸すか、貸さないか」

ゼノヴィアは数瞬思考し、答えた。

「……返してくれよ、シスター・アリシア」

「ありがとう、シスター」

「ゼノヴィアだ」

「じゃあ、ありがとうシスター・ゼノヴィア! この借りは返す!」

ゼノヴィアは無造作にデュランダルを投げる。それを器用にキャッチしたアリシアさん。すると……デュランダルが鋭いオーラを放ちはじめる! くっ、離れていてもこちらが切り裂かれそうだ……!

「随分と今の主を気に入ってるな、デュランダル。その主とまだ共に歩みたいのなら、私に力を貸せ!」

その言葉にデュランダルも応呼するかのように輝く!

「フン、デュランダルごときで真なる魔王を相手に出来ると思わないことだ」

「さてね。戦いは……時の運だ。フリード、援護しな」

「アイアイマム、っと」

フリードは2丁拳銃を捨てると、指を鉄砲の形にする。

「貴様らもろとも地獄へ逝くがいい!」

「そんな心配はしなくていい。そうだろう? フリード!」

「勿論だアリー、なんてったって、俺達が地獄だからなァ!」

刹那、聖と魔が再びぶつかった――。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

「誰だお前……?」

「?」

今、俺の前には赤い髪の女性がいた。首をかしげている。勿論、リアスではない。

アーシアに赤龍帝のオーラを少し纏わせることで『無』から防いでいる。

「ボク? ボクは……そうだね、うん。カーレ、となのっておこう。我ながら安直な名前だよ」

カーレ……? なんか、胡散臭いな。

『……うーむ、俺にもこいつが誰なのかわからん』

《右に同じく》

この二人にも分からないのか……。

「そうそう、そういえば。君達のいたフィールドはあそこだよ」

カーレが指差す方向には……成る程、たしかに四角い結界の形のものがあった。

「あそこで君の仲間が、シャルバと闘っている。戦況は芳しくない」

……っ!

「なら――」

「今すぐ行くのかい? あの結界は破れるようなシロモノじゃないよ?」

そうだ、あれはオーディン様でも通過するのが精一杯なほどの強固な結界。一体どうすれば……?

「ふむふむ、成る程。折角だからボクからアドバイス。特別だよ? 理屈で考えてたらキリがないよ。重要なのは、『キミがどうしたいか』さ。そろそろおいとましないとストーカーにつけられてるんでね! さいなら」

それだけ言い残すと、赤い女性、カーレは何処かへ去っていった。

自分がどうしたいか、か……。

 

俺は今――仲間を助けたい。

 

……そうだ、何をまごまごしている?

方向は分かってる。位置も……不思議と、わかる。

問題なんて、ない。理屈なんて、ねじ曲げてやれ!

 

さぁ……往こう!

「『《仲間(みんな)の、(もと)へ――!!》』」

 

 

 

『WelshDragonOverBraker!!!!!!!!!!!!!!』

 

 

 

「ふふ……頑張って、赤龍帝。ボクがちょろっと後押ししてるんだから。……ふぅ、やはり慣れない言葉遣いをするものではないな」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

「ぐっ! ぬぅぉぉお!!」

「っぁ!」

「まだまだァァァ!!」

「五月蝿い雑魚共め! 失せろ!」

状況は最悪だ。ボクは仲間を流れ弾から守るのに尽力した。

フリード達も消耗が激しい。これ以上は、もたない。

「はぁ、はぁ……フリード……すまない。負けるかもしれん」

「諦めるなよアリー……! まだ、俺達は生きてる」

「ああ、そうだな」

もう体もズタボロ、見てられないほどだ。心神喪失寸前の部長達はへたりこんで静かに涙を流している。

ぽたり、と部長の涙が地面を濡らす。

――ドンッ

突如、虚空からなにかを叩く音がする。

――ドンッ

すぐ近くからだ! どこから!?

――ドンドンッ!

音源を見つけた。――空間が、歪んでいる!?

なにかを叩く音はどんどん激しく大きくなり、シャルバすらその歪みに一瞬注目していた。

「……? まあいい。そろそろ飽きてきた頃だ。うざったらしいコンビ共から潰して、それからゆっくり魔王の妹を嬲り殺しに――」

すると、聞こえるはずのない声が聞こえる。

「誰を、何だって?」

――バキッ!

普通ならあり得ない現象――『空間にヒビが入る』。

――バキバキバキバキィッ!!

そのひび割れは次第に広がっていき、その声に部長達も反応する!

……ヒーローは遅れてやってくる、かい? 全く、遅いよ――イッセー君!

バキャン、と空間が一部だけ砕けて異空間が顔を除かせる。

そこから――赤い鎧と、金髪の美少女が現れた。

「なぜ、なぜ貴様がここにいる――赤龍帝ッ!!」

「そんなの……俺がリアス・グレモリーの誇る兵士だからに決まってるだろ!」

その赤い鎧はシャルバを一度睨むと、ボクの方へ来る。

「アーシアを任せたぞ、親友」

「! 勿論だとも、親友」

イッセーくんからアーシアさんを受けとる。

「よし、行ってくる」

イッセーくんがシャルバの方へ向くと――シャルバを殴り飛ばしていた。

「ごがはぁっ!?」

は、速い! 僕でも目で追うのが精一杯だなんて……。

イッセーくんの風貌は、(ブース)(テッド)(・ギア)(・ソウ)(ル・ソ)(リッド)よりも一風変わっていた。

翼は前と同じだが、杭はなく、その代わりに剣――恐らく、ガラティーンとアスカロンが、腕の下――袖下に取り付けられているのが特徴的だった。

「バ、バカな、貴様は確かに次元の狭間に――」

「想像力が足りないんじゃねぇのか? 俺が戻ってくる可能性をかんがえられなかったんだからなぁ!」

「ッ!! 私をバカにしてぇぇ!!」

腕輪の装置から光の一撃を繰り出すシャルバ! あれは不味い!

しかし、イッセー君はそれを落ち着いて対処した。

袖下のガラティーンを抜くと、その光を弾いた!

弾けるものなのか!?

「なにっ!? 弾くだと!? クッ、明らかに報告されたデータとは大違いではないか!」

「貴様はたった一つ、間違いを犯した」

イッセーくんは剣を鞘に納めると、オーラを右腕に集中させていく! あのオーラ……凄い。

「『テメーは俺を怒らせた』。リアスを嬲り殺しにする? 仲間を殺す? そんなの、俺が許すわけねぇだろ」

「おのれ、下賤なドラゴンごときに真なる魔王たる私がァァ!」

「ドラゴンを舐めるなよ、旧き魔王」

イッセーくんは左手で地面にシャルバの頭を叩きつけると、右手をシャルバの腹に当てる。

「グァ!?」

「お前はいなくなれ」

ゴォォッ! という轟音と共にイッセーくんの右手から極大のオーラが放出される。その反動でイッセー君の体が少し浮遊する。

そして、オーラの奔流がおさまると、イッセーくんはゆっくりと羽ばたいて降りてくる。シャルバは……一応、生きていたが、気絶していた。どうやら防衛本能で全力で魔力障壁をはったのだろう。しかし、シャルバはどう見てもボロボロだった。

「……せんぱぁい」

「イッセー!」

「あぁ、イッセー君……!」

部長たちがイッセー君に駆け寄る。

「お前は行かなくていいのか? 木場」

「ゼノヴィア……あの中に僕は入る勇気はないよ。キミこそ行くといい」

「いや……まだアーシアが目を覚ましてないからな」

と、僕の腕の中でもぞもぞと動き始めるアーシアさん。

「ほら、ゼノヴィア。君が彼女を抱えていなよ」

「う、うん」

アーシアをゼノヴィアに渡すと、彼女は瞼を開く。

「ふぁ~。おはようございますぅ……あ、ゼノヴィアさん……今何時ですかぁ?」

彼女の寝ぼけた発言に、僕とゼノヴィアは笑みをこぼした。

 

「さて、俺達はさっさと帰りますかねェ……っと、アリー、無茶すんなよ」

「すまないな」

「なァに、あの頃と同じだろォが」

「……あぁ、そうだな。……なぁフリード」

「ん?」

「なんだ、その……お前は私の事が、好きか?」

「……バァーカ。好きだよクソッタレ」

「なんだそのムードもへったくれもない返事は。期待して損した」

「恥ずかしィンだよ察しろ!」

「フ……そうだな。私も好きだぞ、フリード」

「……顔真っ赤だな」

「お前も、な」

 

……あの、僕の真後ろでそんな話しないで下さい……独り身って悲しいんですから……。

兎も角、僕達は勝利を納めた。

 

「あ、シスター・ゼノヴィア。ほれ、デュランダル返すぞ。ありがとうな」

「どういたしまして、シスター・アリシア」






ヴァーリ「……私、今回空気?」
大丈夫、今後は元エクソシストな夫婦が空気になるから
夫婦「「!?」」
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