二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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痛み

青光矢(スターリング・ブルー)』、『緑光矢(スターリング・グリーン)』。

どちらも『夜明けの星光(トワイライト・スター)』の下位神器にあたる。

光操作系や光矢発生系の神器の上位互換が夜明けの星光ともいえよう。そういう意味では『闇の大盾(ナイト・リフレクション)』はこの神器合戦では異色と言えよう。

俺がなんでこんなことを心の中で呟いているのかというと、例のエロジジィが襲来した、翌日のことだ。なんと英雄派が攻めてきたのだ。攻めてきたのだが……。

「邪魔だ雑魚共ォ!」

「さぁ何処から切り裂かれたい? 一応聞いておこう」

元エクソシスト夫婦が暴れまわってて俺達の戦う暇がない。こいつらコンビネーションと前衛後衛の交代が上手すぎる! まるで呼吸するかのように、自然な動きで動き回る。

……エクソシスト新人最強と言われただけのことはある!

そして――。

「いやァ、闇の大盾は強敵でしたねェ」

「数分で俺を捕縛しておいてなにが強敵だ! ……糞ッ! 俺は……!」

「黙ってろォ。テメェ今自分がどんな状況か理解してねェようだなァ、あァ?」

「ぐっ……」

「テメェになにがあったかは知らねェし興味の欠片もねェし、なんで英雄派なんぞに堕ちたのかも知らねェ。だがよォ……テメェが好き勝手するだけで、迷惑かけてるってことを自覚しろ。勝手に逃げてんじゃねェよ」

「お前に、なにが――」

「なにも裏切られるのはテメェだけじゃねェってこった。本当にお前はボッチだったのか? 一人くらい居ただろうがよ、テメェに寄り添う変な奴が。逃げた時点でそいつを裏切ってんだよ」

フリードの言葉に俯いてしまう闇の大盾使い。

逃げたら裏切り、か。フリードの言葉には妙に重みがあった。

ヴァーリは……逃げなかった。己の運命に立ち向かって、文字通り女の子を受け入れた。

だが、俺は?

……俺もそろそろ、逃げるのをやめなきゃいけないな。いい加減、踏ん切りつけろよ。俺。

ふと、脳裏に紅い少女が浮かんだ。

 

『イッセー!』

 

少女は、微笑んでいた。

そう……過去には、戻れない……。

 

―◎☆◎―

 

「……」

朱乃さんと、バラキエルさんは先程から神妙な顔もちだ。

あの後、部室にバラキエルさんとオーディン様が来たんだ。今は旧校舎の会議室でアザゼル先生とサーゼクス様と話し合っている。

ちなみにセルゼン夫婦はいない。正式に堕天使陣営所属になったので書類整理してるんだとか。

「……」

この険悪な空気、居辛い……。

『嫌な空気だな。バラキエルと娘の間には……そういえば、壁があったな』

《なんでいがみ合ってるんですか?》

かなり深い訳があるんだよ。あの二人の溝は深い。

『イッセーはたしかあのとき乳神の精霊が出てきて……うっ、頭が痛い』

《嫌な記憶だったんだろうね、わかるよ》

……よくよく考えてみたんだが、乳神様の加護が無いのに俺、どうやってロキに勝つんだろうか……

『勝てないだろうな。どんなに頑張っても精々魔王級三歩手前程度でしかないからな』

なるようにしかならない、か。

……あー、もうじれったい!

「……バラキエルさん、ちょっといいですか?」

「なんだ?」

「あなたは、そこにいますか?」

「……っ」

この人はさっきから心ここにあらず。朱乃さんは憎しみで染まってるだけ。こんなんじゃ……。

「何があったかは、俺は知りません。知ったところでどうこうという話ではないですが……せめて有事のときくらいは『ここにいて』くださいよ」

それから、と朱乃さんの方を向く。

「朱乃さん。憎むのは構いませんし、俺からはなにも言えません。でも、覚えておいてください。貴女の憎む父親は……家族なんですから」

……俺はそれだけ言うと返事を聞かず退室する。種は蒔いた。種子が芽吹くのは……。狡いよな、俺。俺は……知ってるから、こんなこと言えるんだ。

……それでも、自分と向き合わなきゃダメだ。

俺が俺でいるための、たった一つの真実。それは……。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

「……往くのか、御剣斬」

「ああ……今日でお別れだ、曹操」

「……残念だよ。君ほどの強者が、あと一月も持たないだなんて。武人として純粋に惜しい」

「はっ、活きることを止めた貴様らと、生きられない俺。最後の問題だ。どっちが楽だと思う?」

「……俺たち、だろうね」

「そうさ。俺は……私は、生きることを諦めちゃいないんだ。あぁ――叶うなら、陽のあたるあの眩しい世界で……戦いもせず、のんびりと暮らして、恋して、老いて……あぁ、普通になりたかった、と何度も思った。……でも。私は、この人生も悪くないと思う。黒歌に、ルフェイに、アーサーに、美猴、ついでに曹操……もちろん、リントヴルムとも逢えた」

『斬……』

「……」

「……厳島の、大和心を人問わば、朝日に匂う、山桜花」

「――――!」

「いつか、先に散った桜たちと、春のこずえで……」

「お前は……」

「なーんてな。俺っちにシリアスはやっぱ似合わないぜぃ。アバヨ、童貞君!」

「……ハァ!?」

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