「……さて、そろそろ次の店へ行くかのう? ロスヴァイセや」
「はいはい……」
ため息をつきながらロスヴァイセさんがそう答える。
「えー、もう帰っちゃうの?」
と、これは店員さん。
「ほほ、お主らともっと遊んではいたいんじゃが、儂も多忙でな」
――ちなみにここ、キャバクラの前である。
「「はぁ……」」
俺とバラキエルさんのため息が重なり、思わず顔をみあわせてしまった。
「……神にしろ悪魔にしろ天使にしろ、実力者は変なのが多いね」
俺はヴァーリのこぼした言葉に妙な説得力を感じていた。ミドガルズオルムなんてその筆頭だしな。
『俺も変か?』
《黙ってなさい幼女蜥蜴》
『煩ぇな脳筋太陽』
『《……あ゛ぁん!?》』
……うちの強者もその法則に当てはまるらしいです。またしりとりはじめたよ……
俺は天を仰いだ。
―☆▲☆―
アレから一週間ほど。またピンク街へと赴き、散々遊び尽くした主神様。
スレイプニルの引く空飛ぶ馬車に俺たちグレモリー眷属、アザゼル先生、ロスヴァイセさん、主神様が乗っている。
木場とバラキエルさん、ヴァーリと夕麻ちゃんとイリナは馬車の外で警戒中だ。
「ゲイシャガール最高じゃったのう」
「オーディン様。これから日本神話と会談なのですから……もうすこし気を引きしめてくださいよ!」
「固いのぅ。そんなんでは蒼に嫌われてしまうぞ?」
「だからいちいち蒼さんを引き合いに出さないでくださいっ!」
「んー、聞こえんのー」
「はぁ……」
……ロスヴァイセさん、御苦労様です。
突如、スレイプニルが嘶く! 馬車も急に止まっちまった!
……ついに来たか、ロキ!
「ふむぅ、思ったよりか早かったのう……」
部長たちが馬車から出る。よし、俺も……往くぞドライグ、ガウェイン!
『応っ!』
《ああ!》
『Welsh Dragon Balance Braker!!!!!!』
よし、バランスブレイクだ。うん、展開時間も安定してきたな。一週間くらいなら展開できそうだ。
俺も馬車から飛び出る。飛行は……相変わらず、ドライグ任せだけど。俺でも浮くくらいは出来るんだけどな……飛ぶことに集中してると他の事が疎かになりがちなんだよな……。だから飛行は、今はドライグに任せる事にする。
「はっじめまして、諸君! 我は北欧が悪神ロキ!」
……さて、フェンリルの対策をしないとな。
「ロキ殿。この旅はどういったご用件でここに?」
「なに、オーディンが他の神話体系と接触をはかっていること、それが受け入れ難い。故に邪魔しに来た」
「クソッタレめ」
アザゼル先生は光の剣を二本構える。木場も聖魔剣を、イリナも光の剣を構えていて、夕麻ちゃんは光の槍、ヴァーリはすでに鎧に包まれていた。
「堕天使二匹、天使一匹、悪魔がたくさん、それに……白龍皇と赤龍帝が……これは珍妙な。今回の赤白が争わないのか!」
「ええ。私、イッセー君にベタ惚れだもの」
……どうやら吹っ切れているな。俺も、以前よりは気がらくだ。だが、こうも目の前で好意をぶつけられるとこう……恥ずかしいな。
「ほう! そうか、今回の赤白はアベックか! 面白い!」
アベックって死語だろ……。
「全く、お主はいつまでたっても頭が固いのう、ロキ」
馬車からオーディンのじいさんとロスヴァイセさんが出てくる。
「これはこれは我らの主神殿、こんな僻地で出逢えるとは運命とは数奇なもの――などという前振りは要らぬだろう?」
「そうじゃな」
「では聞くが。態々北欧の神話体系を抜け出してこのような地まで来て、なにをするつもりだ?」
ロキの言葉に髭をさすりながらオーディンのじいさんは答える。
「なに、日本の神話に興味があっての。向こうもこちらの文化に興味があるらしくてな、異文化交流というやつじゃ」
「おお、なんということだ」
オーディンのじいさんの言葉に大袈裟に反応するロキ。
「我々が求めるのは
「だからお主はアホなのじゃ。――終焉には未だ早い。だから、儂らは若いもんの道を作ってやるべきだと今さら気がついての。全く、歳はとりたくないのう」
「なんと、なんと愚かなことか。ならば――ここで黄昏を行おうではないか」
そういうと、ロキは魔術を展開しはじめる!
……一先ず、は。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!!!!!!』
「焼き尽くせ、ガラティーン!」
「撃ち貫け、アロンダイトッ!」
俺はガラティーンを抜くと、橙のオーラの斬撃を放つ!
橙と青の一撃がロキを襲う! って、青?
「……生半可では利かないか」
ヴァーリがそう呟く。ヴァーリの手元には、剣と呼ぶにはあまりにも異質なものが握られていた。長身の銃だ。あれがアロンダイト?
「面白い! ケルトの剣を使うか、流石は二天龍だ! だが――威力が足りないな」
そうか――ドライグとアルビオンも、アロンダイトもガラティーンも、ケルト神話の剣だったっけ。
当のロキはローブこそボロボロだが、本人は全くの無傷。流石は神だ。
「部長、プロモーションします!」
よし、『
「ロキィィィ!!」
「ふははは! 堕天使二匹程度で我を止められるなどと思うな!」
アザゼル先生とバラキエルさんの光と雷光! でも足止めにしかなってない! 北欧の術式で防がれる。
「だったら、同じ術式でっ!」
「術の構成はヴァルキリーにして見事! だが所詮はヴァルキリー。効かんぞ」
ロスヴァイセさんの魔術バーストだ! でも防御術式で防がれてる!
……なら、こいつでっ!
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!!!!!!』
俺は手のひらに魔力を出現させる。それを――撃つ!
「っらぁ!」
『Explosion!!』
魔力バーストで動いていないロキへ俺の魔砲が飛ぶ! しかし、ロキは右手をその魔砲へ向けると、受け止め――反らす!
くそ、だめか。
「うーん、手が痺れた。やはり想いの籠った一撃というのは強いな――ならば、呼ぼう! 出でよ、我が愛しき息子よッ!」
――不味い!
マントの影から、銀色の体毛の美しい狼が現れる。
――ウォォォォォォォーンッ!!!
美しい遠吠え。くっ……。
「
アザゼル先生の号により
「紅い髪――魔王の血筋、グレモリーだったか。ふむ、北欧の者以外の味を覚えさせるのも悪くない」
……。ふざけんな。ふざけんじゃねぇぞ!!
『Jet!』
「ふざけんじゃねぇぞぉぉぉ!!! ロキィィィィィィィ!!!!」
フェンリルが行動する前に、奴にブーストを吹かして接近し。
『Max Booster!!!!!!!!!!!!』
『
『MaximumExplosion!!!!!!!!!』
『Banker Stand By』
アスカロンとガラティーンの聖なるオーラを杭に宿して。
「ぶち抜けぇぇぇ!!」
『Banker Full Throttle!!!!!!!!』
奴の腹に杭を突き刺す!
『BaBaBaBaBaBang!!!!!!』
――ぐっ。
「……駄目か」
俺の攻撃は奴に結構な傷を負わせる程度に終わった。流石は神喰狼だ……。
「ほう、フェンリルの速度に一瞬とはいえ反応するか。これは厄介だな。先ずは貴様から――」
俺を鬱陶しそうに振り払ったフェンリルが俺に狙いを定めた瞬間。
『Harf Dimension!!』
「――させないよ」
ヴァーリによって空間に囚われるフェンリルとロキ。その隙を見てフェンリルの側から脱出し、ヴァーリの隣へ。
「いくよ」
「ああ」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』
『DivideDivideDivideDivideDivideDivideDivide!!!!!!』
よし……!
俺は杭をしまうと、素早くガラティーンを掲げる。
ヴァーリも同時にアロンダイトを構える!
「塵も残すなよ、ガラティーンッ!!」
「全て撃ち抜けッ、アロンダイト!!」
俺たちの思いに応呼して刀身に焔が宿り、銃身に光が宿る!
「「くたばれぇぇぇ!!」」
忌々しそうに歪んだ空間を振りほどいたフェンリルへ、炎と光の一撃を食らわす!
「まぁ、そう簡単にくたばっちゃくれねぇか……」
フェンリルは傷を負ったが、平然としていた。
「……二天龍が組むとこうも危険か」
ロキは歪んだ空間を振り払うと、手のひらに魔術式を一瞬で構築する!
「今、消しておこ――む?」
突如、ロキの体に異変が起きる。
――動いてない?
「にゃはは、一発必中ってな!」
声がする方を見れば、そこには――斬!
「いいねいいね、赤と白の共演! 黒の俺も混ぜるんだにゃー」
笑いながらも長刀をロキに向ける。俺達は突然の乱入者に驚いて身動きが出来ていない。
「悪薙剣使いか……仕方ない。一旦引くとしよう。しかし、また邪魔をしに来るぞ!」
ロキはそういうと、無理矢理力む。すると、空中の影に刺さっていた五十本ほどの
そして、マントを広げると、フェンリルと共に影に沈んでいった。
「……面倒なことになったな」
アザゼル先生はそうこぼすと、深くため息をついた。