二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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悪ノ神

「……」

「ん、ふぁ……あ、このお菓子おいし」

「乳神。貴様にはここに来るなと何度も忠告した筈だが? 我等がどれだけ同じことを繰り返してきたと思っておる……」

「別にいいじゃ~ん。ただ、あの子はおっぱい狂いでは無くなってるのね、今回は。んー、チョコ美味しい~♪」

「……あれ(リゼヴィム)に見つかる前に狭間へ帰れ。我はこれから赤龍帝の戦いを観察せねばならん」

「ふぅーん、へぇー。心配してるんだ?」

「この世界をな」

「酷いよぉ~カーレちん」

「フン、呑気なものだな。終焉(おわり)はすぐそこまでやってきているというのに」

「ふふ、そうだね。私たちは何時だって何度もいたぶられ、しいたげられ、もてあそばれてきた……」

「そうだな。それに、次元(セカイ)の守護者なんてものをやってると知りたくもないことを()ってしまう。時々嫌になるな」

「でも、だからこそ貴方は彼に賭けたのでしょう?」

「まぁな。もしかしたら我等の行動すら、決められた運命(シナリオ)なのかもしれんが」

「そんなIF(もしも)の話は止そうよぉ。ね、早くお菓子たべよ?」

「……それもそうだな」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

夕暮れ。太陽が赤く染まる頃。

「……始まるぞ」

アザゼル先生の言葉と共に強い光が、会談の会場であるホテルから溢れる。ものすごく強いオーラだ。

『このオーラは……太陽か。太陽の権化、天照大神……よくもまぁ日暮れで出てきたものだ。そこまでして会談を成功させたいのか』

《でしょうね》

当然、ロキもそれをよしとしないわけで。

バチバチと音をたてて空間が歪み始め、そこから銀色の狼とローブの男――フェンリルとロキが現れる。

「小細工なしか、恐れ入るわ」

やれやれだぜ、とでも言わんばかりに肩をすくめるヴァーリ。

……俺に目配せしてきたってことは……あいつ、わざとだな。ったく……。

「来たな! 予定通り飛ばすぞ!」

アザゼル先生の号で、ロキと俺たちごと無人の鉱山へ飛ばす!

転移の光に包まれている間に、っと。

『WelshDragonBalanceBraker!!!!!!!!!!』

『VanishingDragonBalanceBraker!!!!!!!!!!』

よし、バランスブレイク完了。

光が晴れれば、鉱山にいた。まぁ当然だが。

すぐさまリアスが黒歌に指示を出す。

「にゃん♪」

空間系の仙術で保存しておいたグレイプニルがフェンリルをすぐさま捕らえる。

「――フェンリル、捕縛完了だ」

バラキエルさんがそう呟く。

フェンリルは苦しそうに遠吠えをしていた。

だが、ロキはまだ余裕の笑みを浮かべたままで――って、ああっ! そうだ、スコルとハティ……ッ!

子フェンリルだ子フェンリル! ああ糞ッ、色々あって忘れてた!

「多少スペックは劣るが――」

……あれは魔方陣か?

と、そこへ飛び出す影。

「む?」

「おらよッ!」

身の長ほどのそれを振り回し、なにかが出てこようとした魔方陣を切り裂く!

――(きり)

「悪神様よぉ、俺っちと遊んでくれよなぁ!」

「チッ、悪薙剣使いか! ええい、分が悪い……」

いまいましそうに魔術を放つロキ。

が、斬はそれをいとも容易く切り裂く。

「悪の放つものは悪ってな」

「ならこれはどうだ?」

今度はロキがマントを広げると、影から蛇――ミドガルズオルムの量産体が五体現れる!

「諸君らも暇だろう。こいつらと遊んでいるといい」

デカイな。ミドガルズオルム本人よりはずっと小さいが。アレにグレイプニルをやられたら……不味いな。

「ミドガルズオルムの量産体を倒すぞ! 防衛戦に長けているものはフェンリルの鎖を守れ!」

アザゼル先生の号により皆が飛び出す。

鎖を守っているのはアザゼル先生とイリナ、リアスとロスヴァイセさん、チームXAN。

他の皆はオフェンスだ。

「ウィザードタイプは後退しつつ支援! ヴァーリとイッセー、タンニーンはタンカー(盾役)として前へ! 敵の攻撃を引き付けつつ攻撃! 小猫はソナーとして行動予測を! ゼノヴィアと祐斗は聖剣を使ってアタッカーを勤めて! ギャスパー、あれを停められるかしら?」

リアスの指示に合わせて行動を開始する皆。

「一体なら少しは大丈夫ですぅ!」

「なら私の指示に合わせて停めなさい! アーシアは傷ついた味方を癒して! レイにラッセー、きっちりアーシアを守るのよ!」

「了解!」

「了解です!」

「おー! いくよラッセー」

「きゅおー!」

……すげぇな、確的だ。それぞれがそれぞれの持ち場で頑張る。そう、それがベスト。

「オラこっちだ蛇公!」

「グォォォ!!」

……こんな簡単な挑発に乗るなよ……

「っし! アスカロン、ガラティーン!」

『Twin Blade!!』

今回はシャコン、と籠手から生やしたバージョンだ。うん、こっちの方がやり易い。

「当たらない」

ヴァーリの方に意識を向ければ、量産蛇二匹を相手に翻弄しつつ狙撃をしていた。

『別に、倒してしまっても構わんのだろう?』

「グギャァァァア!?」

おっさんはおっさんでブレスで量産蛇を燃やしていた。さすが本家竜王は違うな。

「ぐるるるる……」

俺に威嚇をする。俺は……人差し指をくいくい、と動かしかかってこいと言わんばかりに挑発する。「グォォォっ!!」

「甘いんだよッ!」

俺が避けた瞬間、なにかが通りすぎミドガルズオルム量産タイプは斬首されていた。

「ふぅ」

ゼノヴィアか! また速くなったな。

「サンキューゼノヴィア」

「ん? 気にするな。さて、次の量産でも狩ろうか。見ろ」

ゼノヴィアがデュランダルである方向を指す。すると、また量産タイプのミドガルズオルムが出てきた。今度も五体だ。

斬はロキに張り合っているけど、少々焦りの色が見える。ロキも余裕は無さそうだが……なんだ、このえもいわれぬような感じは。

すると、上空に魔方陣が!

「フハハハ! さあこい、我が愛しき孫達よッ!!」

「ッ! チッ、()()ったか」

フェンリルよりも二回り小さい銀狼――スコルとハティ!

「ッ!」

リアスはそれが遠吠えするのを見た瞬間、顔色を悪くするがすぐに毅然とする。

「全員すぐ戻って! グレイプニルからフェンリルを解放させるわけにはいかないわ!」

『了解!』

リアスの指示により早いものからフェンリルに到着しグレイプニルを守る。

「フハハ、行け、スコル、ハティ! 父をとらえたのはあのもの達だ!」

グレイプニルがゴルディオスの結び目のようにほどけなかったら楽なんだけど、そうもいってられない。

無論、ただではやられない。

「ッ、タンニーン、それからロスヴァイセさんは量産タイプのミドガルズオルムを!」

「了解です!」

『俺はあの雑魚を焼けばいいんだな?』

リアスが指示をすかさず飛ばす。

おおっ、タンニーンのおっさんは頼もしいっ!

「残りのメンバーで子フェンリル二頭をやるわ! 引き続きヴァーリとイッセーで前衛、私と朱乃で後衛、アーシアは回復を! ギャスパー、アレは停められそう?」

「えい! えい! ……すいません部長、とまりません」

「仕方ないわ。コウモリになって足止めをお願い。小猫、ゼノヴィア、祐斗は隙を見て攻撃を。みんな、一撃だって食らっちゃダメよ!」

『はい!』

眷属がフォーメーションを組む!

斬はロキとやりあってるみたいだけど、防戦一方って感じだな。

「リアス嬢。片方は私と猿でやります」

「……アーサーだったわね。頼めるかしら?」

「ええ」

アーサーと美猴が飛び出し、黒歌もそれに続く。

自然と左右に戦力が分断された。ちらりとフェンリルを横目でみると、もがいても仕方ないと感じたのか眠そうな目をしていた。

ぐるるる、と威嚇する子フェンリル。俺たちが相手する方をスコル、あっちをハティと仮定しよう。

「おらこっちだワン公! しつけ直してやる!」

俺がそう叫ぶと威嚇するように殺気を俺へぶつけるスコル。濃密だな殺気だ、だが――ドライグほどじゃない。これは殺気であって殺意じゃない。

ぐぐ、と身を屈めるとこちらに跳んでくる。

速い――だがそれもッ!

「フェンリルよりは遅いッ!」

位置予測をして。

「ヴァーリッ!」

俺はスコルが攻撃される前に叫ぶ。

スコルが予想通りの位置に来た瞬間、そのままガラティーンで殴り刺す。ガラティーンのやいばが目に突き刺さる。

「はずさない」

刹那、ヴァーリのアロンダイトによる狙撃で反対側の目玉が撃ち抜かれる。

痛みで硬直した隙を、うちの眷属が見逃すはずはない!

「それあしどめ!」

木場が杭のような形をした()()で足を刺し貫き、そして。

「デュランダルの破壊力はエクスカリバーをも上回る。なら切れ味はどうだろうな」

キィィィ、と耳鳴りがする程輝いたデュランダルを振る。即座に俺は離れる!

『Jet!!』

「そういえばフェンリルは牙が危険だったな。デュランダル、奴の牙を削ぐぞ」

ゼノヴィアの静かな言葉にデュランダルは呼応して更に輝く。まるで光を圧縮して無理矢理剣にしたようだ!

ひゅん、と空気を蹴るように進んだゼノヴィアはスコルの口元で二度、剣を振る。

そして直ぐに離れた。デュランダルはゼノヴィアの要望通り――牙を削いだ。

牙と視界を奪われたスコルは悲しげに吠える。

――ッ!

「避けろ!」

皆が俺の声に反応して動くと、ロキの魔術がフェンリルへと飛んでいく。

フェンリルやグレイプニルには直撃せず、フェンリルの周囲を抉っただけだ。あぶねー。

闇のなかでパニックになっているスコルは臭いを嗅ぎ始めるが――

「……ッせい!」

土手っ腹へ小猫ちゃんの全力の一撃。体の中の気を乱す一撃で、少し動きが鈍くなる。

ヴァーリは懐からなにかを大量に取り出すと、それをアロンダイトに装填する。いや、何をするつもりだ?

アロンダイトの引き金を引くと灰色のなにかが二発、スコル――鼻の穴と口のなかへめがけて飛び、当たる。そして――

「はじけろ」

ヴァーリの言葉に合わせてパンッ、と軽い音がしてそれは弾けた。

そしてスコルは――苦しそうに涙を流してくしゃみと咳き込みを始めた。

「……先輩、これ胡椒です……はくちゅっ」

小猫ちゃんのくしゃみかわいい。

ってそうじゃなくて、胡椒!?

ヴァーリの足元を見れば、まるで薬莢のように胡椒の瓶がたくさん転がっていた。

……なんというか、その……うん。一気に肩から力抜けた。

一方、ハティはというと、聖王剣使いのアーサーによって四肢と牙切り落とされて達磨にされてました。

「フハハハ!」

「どこ狙って……おいおい嘘だろ」

そう呟きながら剣で魔術を斬る御剣。斬の視線の先は、フェンリルの、前。

「なっ、魔方陣……」

「直ぐ壊して、今すぐっ!」

「もう遅い!」

フェンリルの目の前には地面に刻まれた魔方陣があった。まさか……!?

その魔方陣が輝き――

「フハハハハハハハーーッッ!! フェンリルを解放したぞ!」

グレイプニルから解き放たれたフェンリルが、歓喜の咆哮をあげた。





斬がロキと互角に戦えてる理由をここで言い訳しときます。
悪薙剣は文字通り『悪』を薙ぐ剣なので、悪神であるロキのやることなすことすべてを『悪』と認定して斬ることができるんですね。だから魔方陣やら魔術やら何もかもを切り裂ける。
逆に、悪でない存在には普通の切れ味のいい大業物程度。
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