「はぁ……」
俺って、会長に釣り合わないよな……。
つくづくそう思う。
……それに、会長とデキ婚するなんて言っちまったけどよ……俺、ホントに会長のこと好きなのか自信がなくなってきた……その理由は、俺自身に自信がなくなってきたからなんだろうな……。
兵藤なら……どうだろう。
あいつ、時たま悲しそうな嬉しそうなよくわかんねぇ顔してるけど……。
『わっ!?』
「ん?」
考え事をしていたら誰かとぶつかってしまったらしい。考え事をしながら歩くもんじゃねぇな。
『おっと失礼。考え事をしていたからボーッとしていたようだ。すまない……』
「いや、俺もボーッとしてた」
『ふふ、そうか』
少女……幼女と表現しても差し支えない姿をした少女は、大きめの白衣を着ている。……綺麗な、翠の瞳に吸い込まれそうになった。
いやいや、この娘相手じゃ犯罪だ犯罪! なにやってんだよ、俺……。それに、会長と結婚するんじゃなかったのかよ!
『日本には袖触れあうも他生の縁という言葉がある。折角だから友達にならないかい?』
……そう、だな。
「そうだな。それもいいかもしれない。俺は匙元士郎だ。君は?」
『僕? 僕は最賢翠。遠慮なく翠さんと呼んでくれ、匙君』
ふんす、と胸を張る少女に少しときめいた。くそ、俺には会長が……!
「あ、ああ。よろしく、翠さん」
『宜しく。せっかく友達になったんだから遊ぼう!』
「えっ、ちょ!?」
俺と翠さんの一日が始まった。
―☆○☆―
『匙君! 次はあそこに行こう!』
俺たちはさんざん遊び尽くした。
ブティックで、服を選んだり、ハンバーガーを食べたりした。携帯電話の連絡先を交換したり、翠さんが見た目によらず歳上なのにもびっくりした。あの見た目で25歳……詐欺だろ……
……なんか、悩んでるのがバカらしくなるくらい、沢山遊んだ。
『ふふ、楽しかったね』
そして今……何故か観覧車で二人きりという状況になっている。遊園地なんて何年ぶりだろう。
「ええ、楽しかったです」
『なにか悩んでいたみたいだけど……お姉さんに話してみたまえ』
……この人になら、相談しても、いいかな。
「俺、憧れの人がいて。その人と結婚したいな、って思ってたんですよ。でも、最近その想いにもその人と釣り合うのかも自信がなくなって不安で……」
『……好きな、人かい?』
少し声のトーンが落ちている翠さんはそう問う。
「……はい。でも、本当に好きなのか、わかんなくなっ……」
俺がそこまでいいかけて、止まる。
ぶすー、と頬を膨らませて不機嫌な翠さん。
『ふーん。そう』
心底つまらなさそうに告げる翠さん。……拗ねてる?
ぴょん、と膝上に乗ってくる翠さん。うお、やわらけー……。
『自信がないのか。ならば、僕にもチャンスがあるわけだね』
俺がしどろもどろしている間にいつの間にか距離が縮まっていた。
「あの、翠、さん?」
『ふふ。僕はね。君のこと、出会う少し前から知ってたよ。時々この辺で買い出しとか来てるだろう?』
「え、あ、そうですけど……」
『僕も近所に住んでてね。よく見かけるから、顔は覚えてたんだ』
そ、そうなのか? 全然知らなかった。
『それでね。気がつけば君を目でおう毎日だったよ。いつの間にか君に惹かれていたらしい』
惹かれていたらしい……って、それってまさか……
『単刀直入に告げよう、僕は君が好きだ。一目惚れといっても構わないね』
まっすぐに、翠の瞳で見つめられた。
不安と期待の入り交じったえもいわれぬ美しい輝きを宿したその瞳に吸い込まれそうな感覚に陥る。
「お、俺は……」
『別に、そんなに焦って答えを出す必要はない。僕は気が長い方だからね。ただ……』
少女の顔が近づく。すると……唇に柔らかい感触が訪れた。
『んっ……君を好いている女の子が一人、ここにもいるってことを忘れないでくれよ、匙君』
……キスされた?
翠さんは顔が真っ赤に染まって照れている。その姿はひどくいとおしく感じるし、心臓がばくばくと警鐘を鳴らす。
でも、会長も好きだし……それに、悪魔だし……俺ってばどうすればいいの!?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『おっ! 翠のやつあんなに真っ赤になりやがって……初々しいねぇ』
『早く双眼鏡を貸せ。見えないではないか』
『ほらよ』
『む……ああ、若い頃を思い出すな……』
『ほら、早く返せよ』
『うむ』
『お前にしてはあっさり返したな』
『人の恋路を覗くんじゃない。そうら、塩酸をプレゼントだ』
『やっぱりこのオチ……ギャァァァァァアア!?』
『……ふっ』
『ぬぐぉぉおおお!? ビー、テメェ今鼻で笑ったろ、鼻で!』
『ああそうだな。それがどうかしたか?』
『ぐぅぅ、目が、目が……碌な死に方しねぇぞ……』
『そんなの分かりきったことだ』
・最賢翠
大きなお友だちにも人気が出そうな感じの女の子。どこぞの黒いのに惚の字。
なお、作者は彼女の事を心のなかで魔法幼女とよんでいr『懲りないね君は』ああ、窓に、窓n(後書きはここでおわっている……)