快音と共に白球が青い空を駆ける。
そう、オカ研の皆で球技大会の練習だ。
そして、白球はぐんぐんと伸びて行き、フェンスを飛び越えて入る。ホームランだ。
「ソフトボールなら小猫は四番ね」
「はい」
本当、リアスが楽しそうで何よりです。
「次はわたしが打つから捕るのよ! さあ、皆散らばって!」
本当、楽しそうで何よりです。
「はぅ! あぅ!」
アーシアは後一歩というところで捕れないんだよなぁ。不運なのか計算され尽くされた偶然の身体能力なのか。まぁ、リアスの打球案外早いし。
俺はというと、シールドビットで培った空間認識能力を駆使して捕っている。
木場の方に打球が飛ぶが、木場の奴は上の空。
ボールが頭にぶつかる始末。……はぁ。
「……あ、すいません。ボーッとしてました」
これでも「物憂げに悩む王子」とか言われてまた騒がれている。……木場の過去を知っている俺から見ると、なんというか……なぁ。
俺は木場に駆け寄る。
「木場……大丈夫か?」
「イッセーくん? 大丈夫だよ、僕は」
「……お前がそれほど聖剣を憎む理由は分からない。けど、言いたくないんだろ? なら、俺からは何も言わねーし、聞かねーよ。ただ……球技大会位は集中しろよ」
俺はそれだけいうと木場の元を去る。
「イッセーくん。……君は」
「次の練習いくわよー!」
木場の呟きは、リアスの声でかきけされた。
―○●○―
次の日の昼休み。
アーシアと談笑しながら弁当を食っている。無論、変態二人もいる。
「今日も部活か?」
松田が弁当を食いながら言う。松田のお母さんが作った弁当なんだってさ。内容も中々充実している。
「ああ、俺らは球技大会にむけて練習中ですよ」
「はー、オカ研がボールをねぇ……」
「部長ってば、この手の奴には凄い熱心でさ。目指せ優勝ーってね」
「ふーん……リアスお姉さまは以外と熱血なのか……あむ」
と、ここで元浜がカレーパンを片手に話しかける。ちなみにこのカレーパン、『爆熱ゴットカレーパン』という、一週間に五個しかない超レア物である。こいつ、よく手に入れられたな。
「ところで、最近変な噂聞かないか?」
「んだ? 『物思いに耽る王子』の話か?」
「違う違う。お前の噂だ」
俺かよ……ってことは。
とりあえず俺は元浜の首に手を掛ける。
「イ、イッセー?」
「とりあえず先に聞いておくが、『美少女をとっかえひっかえしている野獣イッセー。リアス先輩と姫島先輩の秘密を握り、裏で鬼畜三昧のエロプレイをどうのこうの』だとか『ついには学園のマスコットの塔城小猫ちゃんのロリロリボディにまであれこれ』とか、『そしてその貪欲なまでの性衝動は転校したての一人の天使にまで云々』とかじゃあ、ないよな? ん?」
「……」
ガタガタと震え出した元浜。松田に目をやると、あいつも震えていた。
「さて、小便はすませたか? 神様にお祈りは? 教室の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK?」
キリキリと俺は元浜の首の筋肉部を掴む。無論、気道を圧迫しないようにだ。
「いででででで! くそ、お前だけなんでモテるんだよ!」
「そうだそうだ!」
……はぁ。俺は元浜の首から手を離す。
「俺がモテる理由なんて知らねぇよ。モテる努力なんてしようとして出来るようなもんじゃねぇだろ……そうだな。強いて言うならば……節度あるエロス」
俺がそういうと、がくり、と元浜と松田が崩れ落ちる。
「……くそう、僕には無理だ……」
「その強い精神力こそがモテる秘訣なのか……!?」
よし、バカ二人轟沈。
これでもいいやつらなんです。これでも。
さて、今日の昼休みは部活がある。アーシアは……ふむ、あそこか。
「悪いな、松田に元浜。昼に部活の集まりがあるんだ」
「おー、精が出るこった」
「そんなスポーツマンだったか?」
「仕方ないさ。美人で素敵な部長にお願いされちゃあな」
「いよっ、熱血君!」
「お前はいろんな意味で熱血だからなぁ。無論、エロにも。生乳見れば僕も変われるか?」
「生乳とはかくもすばらしいものだ」
「「死ね」」
恨め恨め。痛くも痒くもないわ。フゥハハハ!
「おーい、アーシア、ごはん食べたかー?」
俺はアーシアの方へ声を掛ける。
「アーシア、彼氏が呼んでるよ」
「か、彼氏だなんて、そんな、はぅ……」
いやらしい笑みを浮かべる眼鏡女子――桐生藍華。
ああ、初々しいアーシアかわいい。
「え? 違うの? あんたらいつも二人でいるから、てっきり付き合ってるのかと」
「そんなこと……ぁぅ……」
羞恥で真っ赤に染まるアーシア。かわええのう。
「ふーん……へぇ……」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる眼鏡二号。
「私はてっきり毎晩合体してベッドの上で夜の大運動会でもやってるのかとつい」
この確信犯め。
「んな、合体だなんてするわけないだろ。俺は生身だぞ……AパーツBパーツCパーツが投下されて合体する訳じゃああるまいし。アーシアにそんな事したら天罰くらっちまうよ」
主にリアスと朱乃さんから。
「そうかー、そーなのかー……ふぅーん……」
このエロメガネ二号め、同級生とはいえ、精神年齢はおっさんの俺をからかいやがって。
「ったく……お前は見てくれは結構可愛いんだからそういう言動やめたらいいんじゃないか? 結構モテるかもよ?」
「……えっ?」
「そうすればお前の言う通りお前が合体して夜の大運動会を体験できるぜ。やったね」
「……っ!? 馬鹿なこと言うんじゃないの!」
……ふっ。
匠、敗北。
俺は謎の達成感に包まれながら、真っ赤に染まっているアーシアと共に教室を後にした。
爆熱ゴットカレーパンとは、口の中で広がる爆熱のような辛さと旨味が人気のカレーパンである。値段は500円(税込)。