パンッ。
雨が煩く叩きつける。そんな中で、乾いた音がひとつした。
僕の頬が叩かれた音だ。
「……叩かれた理由はわかるわね?」
「……はい」
あの日、イッセー君の家で見た、あの一枚の写真が、燻っていた僕の復讐心を蘇らせた。
――ドラゴンは無自覚に力を呼び寄せる。
それはイッセー君も例外ではなかったようだ。
「……木場」
イッセー君が僕の方を見る……いや、僕の眼を視ている。
「……俺からはなにもしねぇ。部長からきっちり御叱りを受けただろう」
イッセー君の瞳を見ると、黒曜石のように黒い筈の瞳は酷く色褪せているように感じる。その瞳がゆるゆると揺れるようにうごめく。
「……なぁ、木場……」
彼の瞳が暗く落ちて行く。
……ふと、彼の闇を見た気がした。
明るげに振る舞う彼の瞳の奥に宿る、禍根の闇を。
「……いや、なんでもない。……ちょっと、頭ァ、冷やしてこいよ。木場祐斗らしくない」
……はは、イッセー君には見抜かれてるかな? 僕は、木場祐斗を演じていると。闇のない僕を偽っていると。
「……うん。ありがとうイッセー君」
僕は名も無き……いや。名前すら元々ない。
あのまま闇の中で死ぬはずだった僕を助けてくれたお姉ちゃん……部長には感謝している。
でも、それでも。僕は聖剣を、エクスカリバーを憎む。
僕は部室から飛び出し、傘もささずに雨の中、町へ飛び出した。
町をさ迷い歩く。まるで帰るべき場所を失い、棄てられた仔犬のようだ、と自傷する。
ふと足元に視線を落とせば、雨に濡れて震えている子猫がいた。
僕はその子猫を雨の当たらない場所へと移してやる。
「みー」
子猫は楽しげな声をあげると、その場にうずくまって寝てしまう。
僕はその子猫を一瞥してから、その場を離れる。
僕は、何をしてるんだろうか。
僕が、仲間に囲まれて、楽しそうに、幸せそうにするなんて。死んでいった、僕を助けてくれた彼らに、顔向けできないじゃないか。
視界の中に神父がうつる。なんだ?
その神父は背中から剣の刀身を生やして、純白のローブを紅い血で染める。
僕は警戒して魔剣を呼びだす。あの刀身から放たれる異常なほどの聖なるオーラ……まさか!?
「んー、なんか最近神父が多いのよねー……おろ?」
聞き覚えのある声。堕天使側に所属する、はぐれ悪魔祓いの……
「これはこれは、あーくまくんじゃあーりませんか」
フリード・ゼルセン。あのイカれ神父か。
「僕は今機嫌が悪いんだ……」
「んー、僕ちゃんとしては願ったりかなったり? やーっぱ切れ味試したくなっちゃうのよねー、伝説の聖剣のさ!」
聖剣特有の聖なるオーラが刀身に宿っていく。やはり、あれは。
「このExcalibur凄いよー、さすが伝説の聖剣さまだね」
「……言ったろ、僕は機嫌が悪いと。聖剣なんか見せられちゃあ、砕きたくなるじゃないか」
僕は、魔剣を構えた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あの戦争イカれめ、また戦争がしたいのか?」
「そうでしょうね……どうするの? アザゼル」
「……さっさと連れ帰りたいところだが……場所が悪すぎる。よりによって魔王の妹共のところに……ッ!」
「……私が行こうか?」
「ダメだ、手札を切るわけにはいかん――と、言いたいところだが……如何せん、お前くらいしか動けん。頼めるか? ヴァーリ」
「任せて」
「ただし。基本不干渉を貫き、誰にも気がつかれないようにしろよ。手を出すのは魔王の妹がヤバくなったらでいい。死なれたらろくに和平も結べねぇ」
「……わかったよ。はぁ、イッセーくんはピンチまではお預けかぁ」
「ところで、夕麻も時々呟いてるが……イッセーって確か……」
「本名、兵藤一誠。リアス・グレモリー眷属の兵士。男。父親はサラリーマン、母親は専業主婦、特に英雄や魔術師の血を引いている訳でもない。今代の、戦闘才能最低の、しかし最高の赤龍帝」
「戦争才能最低は分かる……だが、最高とは?」
「分からない? イッセーくんにはね……色んなモノを惹き付ける不思議な力があるのさ。私も彼女も惹かれた一人だし、リアス・グレモリーもそれ」
「……コカビエルも、その一人だと言いたいのか?」
「そうかもね。でも――――イッセーくんに寄ってくる男なんて消し飛べばいい。悪い虫がついちゃうから……ふふ」
「顔も知らねぇが……随分と女難なヤローだ」
「遊びで女千人斬りして後ろから刺されそうになった総督にはきっと言われたくないよ」
「黙れ」
「おとうさんのえっちー」
「はぁ……兎に角頼んだぞ」
「はぁい。うふふ、まっててね、イッセーくん!」
ヴァーリがソフトヤンデレに進化しました。
ヴァーリ「イッセーくんは格好いいから女の子を囲うのは普通だね。でも、男は要らないよ。ホモ野郎は死んじゃえばいいんだ」(ハイライトオフ)
木場祐斗に最大の危機が訪れる。