二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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第三者視点からはじまり、裕斗くん視線に移ります。
そして、イッセーくん初期覚醒。


フリード/聖剣/真実

――エクスカリバーの破壊。

 

それはフリード・ゼルセンが生きてきた十数年間に投げかけられた救いであり、変革であった。

フリードは元々聖剣計画で集められた子供の一人だった。

今木場祐斗と名乗っている彼と同じように入れられたのだ。

しかし、ある日。

「おまえは教会の戦士育成施設に入れる」

バルパー・ガリレイがそう言った。

元々剣士としての素養が高かった彼は教会の戦士育成施設へと入れられる。まだ因子の秘密に気づいていないバルパーは、あっさりフリードを手放した。たまたまフリードを目にした教会の悪魔祓い(エクソシスト)が、彼を見初めたのだった。

この時のフリードはまだ歪んでなどいなかった。

「みんなと離ればなれになるの、寂しい」

そんな、子供心から来る寂しさを胸が占めていた。

 

それから、数年日のことだ。

フリードは強く成長し、天才と呼ばれる程。そんな彼にとんでもない報が届く。

「聖剣計画の責任者が子供達を皆殺しにした」

そんな話を聞いた。彼は嘘だと思いたかった。

(クソ、冗談じゃねぇぞ!?)

生存者はゼロ。バルパーは『皆殺しの大司教』と呼ばれ、教会から追放、そんな事件だ。

 

その後、彼は悪魔や堕天使、魔物をひたすら狩る日々を続けていた。

若冠13才という異例の若さで彼は暴れ続けた。

ほとんど、何もできない自分へのイライラを払拭するための、憂さ晴らしに近いものだった。

 

そんな、ある日のことだ。

彼にも戦闘におけるパートナーがいた。背中を預けられる相棒であり、憧れの先輩でもあった。

 

しかし、その先輩は悪魔にとり憑かれてしまう。

その日もふたりで難なく悪魔を狩った。呆気なかった。

彼女が止めとして聖剣―もはや名前すら忘れたが―を刺したとき、悪魔から噴き出した霧を吸ってしまった。

 

それがいけなかった。その霧は悪魔の本体で、肉体を捨て新たな肉体として彼女の体を選び、宿ろうとしていた。彼女はその悪魔に乗っ取られる寸前だった。

彼女は頼れる相棒に言う。

 

私はもう間に合わないから、シスターであるうちに殺してくれ、と。

悪魔祓いはもう間に合わないから、と。

 

彼は躊躇いながら、涙を流しながら彼女の胸に聖剣を刺した。

 

そして、彼は『同胞殺し』の罪を着せられ、追放された。彼はそれを甘んじて受けた。自身の未熟さ故だから、と。

 

堕天使側についてからというもの、彼は『不幸』というべき状態だった。

 

はじめの上司はおなじ『はぐれ悪魔祓い』。なまじ当時のフリードより強いため、フリードは言いなりにしかなれなかった。意見しようものなら殺されかけた。

その次も、その次も、その次もその次もそうだった。

ミッテルトの配下についたときには、彼は既に半分狂っていた。

悪魔を殺し。

悪魔に頼る人間を犯し、殺し。

そんな日々を無作為に続けていて。

そこを救った、といっても過言ではないのは、木場祐斗の存在だった。

 

はじめは、だれかわからなかったが、よくみると泣き黒子がある。

 

後々彼は思い出す。

二つか三つ上の、施設にいた兄貴分だ、と。狂い始めていた頭でそう認識した。

悪魔になって生き永らえていたのだ。

 

バルパー・ガリレイの元についたときは、彼はもう狂っていなかった。

(エクスカリバー、か)

エクスカリバーを持たされ、道化を演じた。大根役者もいいところだと自嘲する。彼は本職の役者ではない。

しかし、もう心は折れなかった。一度折れた心を屈強に修復するには、強い覚悟が必要だ。

壊れた心をすぐ直したければ拠り所を作ればいい。

フリードはどうせバルパーとコカビエルの計画は潰されるだろうと踏んでいた。

魔王の妹のところで暴れるのだ。魔王相手にコカビエルが勝てるとは思っていなかった。それに、トップ陣は戦争を望まない。誰かしら止めに来るはずだし、純粋な戦闘能力ならば、あの惚けてばかりの白龍皇のほうがずっと強いと、フリードは知っているからだ。

 

かつての同胞から殺して奪った因子を体に入れられたとき、彼は複雑な心持ちだった。

(俺だけ生き長らえちまって、よかったのか?)

 

しかしそれは、木場祐斗により解放された魂たちに肯定された。

 

ただ、生きてほしかったと。

 

その後の木場祐斗との斬り合いはとても心が踊った。すべてを忘れ、ただ一剣士として斬り合えた。

最後こそ負けてしまったが、それでも彼は楽しかった。楽しすぎ殺気の飛ばし方がついつい単調になってしまったのはご愛嬌というやつだ。尤も、殺気の飛ばし方が変わってしまうほど楽しい斬り合いなど今後ないだろうと思った。

 

心が救われたゆえの楽しさだった。

 

あとは任せた、同志。

そう言いたかったが、素直でないフリードは口を閉じる。

心の中で、こう呟いた。

 

――バルパーのクソジジィを殺って、俺達の負の連鎖を、断ってくれ。

なぁ、木場くんよぉ。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

勝った。

なんというか、胸にぽっかりと穴が開いたような気分だ。目標の一つが無くなったからだろうか?

でも、まだ終わった訳じゃない。

「聖と魔の融合だと!? ありえない! 本来ならば反発しあうものが何故!?」

ブツブツとなにかをつぶやくバルパーへ僕は近づく。

「……ッ! そうか! これなら辻褄があう! つまりは、四大魔王だけでなく、神も――」

最後の言葉を紡ぐ前に、光の槍に貫かれた。

バルパーは呆気なく事切れた。

これがバルパー・ガリレイの最後だった。

「バルパー。お前は優秀だった。優秀だった故にその点までたどり着いたのだろうな。だが、初めからお前が居なくても俺一人でやれる」

この時点で光の槍を投げることができるのは、コカビエル一人だ。

仲間をやったのか!?

「おい、赤龍帝の力を最大まで高めてだれかに譲渡しろ」

……ッ。コカビエルは、本気で言っている。恐らく、イッセーくんが最大まで高めても、コカビエルは防ぎきれる自信がある。だからこそだ。

「……」

部長は瞑目した。最近、よく瞑目している。

『Boost!!』

籠手の音声が延々と鳴り響く。

「皆、この間に少しでも魔力をためておきなさい」

部長の言葉に僕たちは頷き、魔力を溜めておく。

そして――

「部長、溜まりました!」

彼の左手が力強く輝く!

籠手をよくよくみると、「F」の文字が浮かんでいる。Full、つまりマックスってことか。

「で、誰に譲渡する?」

コカビエルが楽しそうに言う。

コカビエルに手を向けるのは――部長だ!

「私よ。イッセーッ!」

「はいっ!」

イッセーくんと部長が手を繋ぐ。信頼の深さが見てとれる。

「行きます、部長! 譲渡っ!」

『Transfer!!』

力強い音声と共に、部長へとドラゴンの力が流れ込む!

「ふははは、もう一歩で魔王級の力を感じるぞ! 面白い、実に面白いっ!」

凄い――

その一言につきた。

「部長っ、俺とオーラを同調させてください! なんとなくでいいんです! あとはこっちで調整します!」

「……! わかったわ」

部長の紅のオーラ。

それによくにた、赤龍帝の赤いオーラ。

それを優しく包み込むようにイッセーくんからオレンジ色の、太陽のようなオーラが包み込む。

Harmonics(ハーモニクス)……』

和音を意味するその音声が発せられる。

赤龍帝の籠手が発するものとは違う音だ。

赤龍帝の力強い音声とは違い、語りかけるように。優しい、中性的な音声だ。

オレンジ色のオーラが、部長の紅とイッセーくんの赤を混ぜる。

同調し、調和する。

「「消しとべぇぇぇぇぇぇ!!!」」

龍のような消滅の魔砲が、部長の手を離れ、コカビエルへと飛ぶ!

普段の部長よりも魔力砲のサイズは小さい。だが、その『消滅』の力が強い!

名付けるならば、消滅の龍砲(バニティ・ドラゴンショット)だろうか。

ここにいても消滅のオーラを感じる!

これは、イッセーくんの力!?

Absorb(アブソーブ)……』

音声の源はイッセーくんの胸元からだ。みれば、そこには剣を模した首飾りがあった。

その音声と共に、同調していた部長とイッセーくんのオーラが、きっちりと、混ざることなく別れた。

これなら行けるか!?

「面白い!! 俺も全力で止めて見せようぞ!! ぬぅぅぅおおお!!」

コカビエルの顔は気迫迫るものだ。

光の防壁を何重にも張るコカビエル。

それを喰い千切らんと、消滅の龍は光の防壁にぶつかる。しかし――

「ふぬぅぅおぁぁぁぁ!!!!」

コカビエルの放った光の防壁に、徐々にだか、龍が小さくなっていく。

――あれでもダメか!

「雷よっ!」

朱乃さんが雷をコカビエルに落とす! しかし、コカビエルの羽ばたきひとつでかきけされてしまう。

「邪魔をするか、バラキエルの娘!」

「……私とアレを一緒にするなッ!」

激昂する朱乃さん。そして――コカビエルは肩で息をしながらも、それを止めてしまった。

「……ふぅ。中々楽しめたぞ。この俺に本気を出させるとはな! 赤龍帝のスペックは凄まじい! これは殺し甲斐があると言うものだ!」

――強い。

ノーダメージって訳じゃない。所々から血が出ていて、ローブはボロボロた。殆んど無いに等しい。

だからこそ、僕たちは歩みを止めるわけには行かないんだ。

「聖魔剣よっっ!」

「中々の練度だ。しかぁし!」

コカビエルを聖魔剣で囲むが、呆気なく破壊される。

くっ、強すぎる!

「同時に仕掛けるぞ!」

「……ああ!」

ゼノヴィアの声に応じて、僕は斬りかかる。

まだ、イッセーくんが回復できていないんだ。

今はアーシアが、イッセーくんの反動のダメージを回復させている。

「聖剣と聖魔剣の同時攻撃か! しかし、集中が足りんぞ!」

僕の一撃は止められ、ゼノヴィアは呆気なく吹き飛ばされる。

「その程度かデュランダル使いッ! これでは俺は止められんぞ!」

くっ、と苦しそうな声を出すゼノヴィア。と、ここでイッセーくんが声をあげる。

「ゼノヴィアッ! 聖剣を無理に扱おうとするなッ! 聖剣と同調しろっ!」

「無茶を言うな! 同調しろと言われても!」

「とにかくデュランダルに合わせろ! なんとなくでいい! デュランダルに宿るオーラを感じて、聖なる因子と混ぜろ!」

イッセーくんのアドバイス。

そのアドバイスは、非常に的確で――

「こう、かっ?」

デュランダルが穏やかな光を放つ。

デュランダルはゼノヴィアの言うことを聞かない、なんでも切り刻む暴れ聖剣だ。しかし、含まれている聖人のものは、慈愛に富んでいる。なら――この優しい、穏やかなオーラは納得だ。

「……! そうか、こうだな!」

要領を得たゼノヴィアは、デュランダルを振る――いや、デュランダルに合わせて動いている!

そして、吸い込まれるようにコカビエルを切り裂く!

「ぬぅぅ!! 動きがよくなったな小娘! 今代の赤い龍は異色だな! 才能はゼロに等しい。しかぁし! その脳みその回転と面白い発想は誉めてやるッ!」

コカビエルは光の波動でゼノヴィアを弾き飛ばしてしまう。小猫ちゃんと僕は攻めあぐねていた。隙が僕らではわからない。

「しかし、貴様らはよくもまぁ戦うな。信ずるものがいないというのに」

その言葉に首をかしげる僕たち。

イッセーくんは苦虫を噛み潰したような顔をしていて、部長はそんな馬鹿なという顔をした。

「まさか……本当に、そうなの?」

「ほう、今の言葉で理解できたのはグレモリーの娘と赤い龍だけか。そうか、下々の連中には知られてなかったな! ついでだ、教えてやるよ」

イッセーくんは苦々しい表情で言う。

「……おい、それ以上は言うな。それ以上は――駄目だ。何のために各陣営のトップはそれをひた隠しにしてたと思ってんだよ」

「べつにこの少数が知ったとしても俺にはなにも実害はないが? まぁ、確かに言えんことだな」

イッセーくんとコカビエルの会話。訳がわからない――

 

 

「魔王だけでなく、神も死んだなど、誰も言えたものではないだろう。我々の存在意義がなくなる」

 

それは、衝撃の真実だった。

 

 




・解説

『Harmonics……』
オーラなどの非実体のものを太陽のようなオーラで同調させ、調和する。効果時間は1分ほどだが、重ね掛けすれば効果時間は伸びる。ブーステッド・ギアでいうところの『Boost』と『Explosion』。

『Absorb……』
同調していたオーラを太陽のようなオーラで分別する。きっちりと分けるため、オーラや何かが混ざりきることはない。
時間切れによる自動発動か、任意発動が可能。

・機械音声のCV
アブソーブとハーモニクスで理解できたらお友達になりましょう。
ところで、アスカロンってハンドソニックみたいですよね。
ちなみに例の『何か』とCVの関連性はゼロですのであしからず。
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