「珍しいな。お前が俺に相談なんて」
『うむ。私も遺憾だがな、こういうことなら貴様がもってこいだろう』
「で、なんの相談だ?」
『うむ……【堕天使エロメイド】と【大妖精ロリメイド】ならどちらの方がダーリンにうけるかという話だ』
「お前に【大妖精ロリメイド】は似合わん。つうか惚気話なら通信切るぞ」
『そうか。そういえば【小悪魔サキュバスたんキット】というのも迷っていてな』
「……お前、変わったな。本当に」
『人は変わっていくものだろ?
「人じゃねぇだろ?
『ああ、そういえばどうでもいい話なんだが』
「いきなり話をぶった斬るな。……なんだ?」
『私の分霊の一つで、アルマゲドンの任を任せていたベヒーモスがな、魔法少女になるとか言って300年ほど前に巣穴を飛び出したのだが』
「堕天使エロメイドのくだりよりはよっぽど建設的で重要だ」
『何を言うか。私にとっては死活問題だ。どこぞの
「最狂が聞いてあきれるぜ全く」
『わ、私に面と向かって可愛いと言ってくれるんだ、いいじゃないか別に! それに自分の事を棚にあげて何を言うか。聞いたぞ? どこぞの戦乙女に一目惚れしたと』
「なっ!? テ、テメェどこからそんな情報仕入れやがった!」
『
「あいつかよ……なにしてんだよ」
『で、どこまで行った? ん? Cか?』
「……キスもまだだよコンチクショー!」
『ハッハッハ! 初い奴め!』
「くそったれ! もう切る!」
『ちょ』
「……さてと。残りは日本神話と北欧神話に聖書か……どのくらい頭下げりゃあいいかね? 最悪焼き土下座か? 天照にはアレを返せばいいか。多分」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ギャスパーと俺は早朝訓練をしている。
「……えい!」
ボールが停まる。
「よしよし、補助なしでも1割の確率で停められるな」
「はぁ、はぁ……」
疲労でぐったりとして、肩で息をしているギャスパー。……見ているとなにか新しい扉を開きそうなので意識しないようにする。主に腐的意味で。
木場×兵藤がどうのって女子が話してる度にケツに寒気がするんだ……。
ううっ。
「中々出来てきたな」
「ぼ、僕なんか、まだまだ、ですぅ……」
「謙遜すんなって。頑張れよ?」
「は、はいっ!」
……やはり、俺たちには『先生』が必要だ。
―○●○―
「――さて、いくわよ」
グレモリー眷属の面々(ギャスパーは言うまでもなくお留守番)が揃う。
リアスの言葉に皆が頷く。会場である職員会議室の前だ。
「失礼します」
コンコンコン、と会議室の扉をノックする。
ちなみにだが、トイレのノックは二回だからな。
扉を開くと、既に各陣営のトップが揃っていた。
天使側、ミカエルちゃんと上級天使らしき人物。
堕天使側、アザゼル先生とヴァーリと夕麻ちゃん。
悪魔側、サーゼクスさまとセラフォルーさま、グレイフィアさん。
そして――――トップ用の席は、もうひとつ空いている。誰だ?
「私の妹とその眷属だ。先日のコカビエルの件では彼女たちが活躍してくれた」
「報告は受けています。改めてお礼をもうしあげましゅっ! あぅ」
ミカエルちゃんが噛みながらもそう言う。リアスはあくまで冷静に振るまい、会釈をする。
「悪かったな、うちのコカビエルが迷惑をかけた……いたひ、いたひぞゆーま」
「このバカ総督が……誠に申し訳ありません」
アザゼル先生の頬を容赦なくつねる夕麻ちゃん。俺の方を見ると熱っぽい笑みを浮かべた。俺はそれに応じるように笑みを返す。
「そこの席に座りなさい」
サーゼクスさまに促され、壁側に設置された椅子に眷属の皆が座る。
そして、空いてる席は?
唐突に扉が開かれる。
そこには、水色のロングヘアーの少女――
「霧咲さん?」
そう、霧咲さんがいた。
「“人間側代表”龍咲白夜。遅くなってすまないな」
悪びれもせず少女はつかつかと歩くと、唯一空いていた席に座る。人間側? なんだそれ。
全員が揃ったのを確認したサーゼクスさまが言う。
「全員が揃ったところで、階段の前提条件だが、龍咲氏、あなたは満たしていますか?」
「神の不在だろう? 認知している」
「わかりました、では全員がそれを認知しているとして、話を進める」
こうして、サーゼクスさまのその一言で三大勢力と人間の階段が始まった。
「というように我々天使は――」
ミカエルちゃんが言えば、
「まて、それでは我ら人間側に害が――」
霧咲さん……いや、龍咲さんが反論し、
「なら、このようにした方が――」
サーゼクスさまが折衷案を出す。
「ま、俺らはとくにこだわるひつよっ!?」
「おだまり下さい総督」
アザゼル先生はたまに喋るかと思えばそばに控えている夕麻ちゃんが止めるため問題発言もなく進んでいく。
リアスは緊張しているのか俺の手を握る。ヴァーリと夕麻ちゃんの目が一瞬細まった。何故だ。
「さて、リアス。そろそろ先日の件について話してもらおうかな」
「はい、ルシファーさま」
サーゼクスさまに促され、リアスと朱乃さん、会長が立ち上がってコカビエルの件を話す。
リアスは緊張しながらも冷静に淡々と続けている。
報告を受けた各陣営のトップは、ため息をつく者、顔をしかめる者、笑おうとしてつねられる者、表情をうごかさぬ者、と、反応は個々に違った。
「――以上が、私、リアス・グレモリーとその眷属が関与した事件の報告です」
お疲れさまです、リアス。
「ありがとう、リアスちゃん☆」
レヴィアタンさまもウインクをリアスに送っていた。
「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」
「先日の事件は我が堕天使中枢組織『
ミカエルちゃんが嘆息しながら言う。
「説明としては最低限、ですがね――あなたは、戦争に興味など無いのでしょう?」
「ああ、俺は戦争に興味ねぇよ。コカビエルも俺の事をこきおろしていたと、そちらの報告でもあったじゃないか」
戦争に消極的で、神器にしか興味の無いもの。
サーゼクスさまがアザゼル先生に問う。
「アザゼル、ひとつ訊きたいのだが……どうしてここ数十年神器の所有者を集めていた?」
「戦争を仕掛けてくるばかり思ってこちらも戦力を固めていたのですが……あなたはいつまでたっても攻めてこない」
サーゼクスさまの言葉を継ぐように言うミカエルちゃん。
「神器研究の為さ。なんなら、一部資料もお前たちに送る。研究こそすれど、戦争なんざしねぇよ。興味ねぇし。部下に『人間界の政治にまで手を出すな』って釘刺してる位だしな。宗教に介入もしねぇ、悪魔の業界にも邪魔はしねぇ。――ったく、俺の信用は三竦みのなかでも最低かよ」
「それはそうだ」
「そうですね」
「その通りね☆」
「何を今更(笑)」
サーゼクスさまとミカエルちゃん、レヴィアタンさまの意見が一致し、龍咲さんが追い討ちをかける。
「チッ、神や先代ルシファー共よりかはましかと思ったが、お前らはお前らで面倒だな。これ以上こそこそするのも性に合わねぇ。あー、わかったよ。なら、和平だ和平。お前らもそのつもりだろ?」
アザゼル先生の言葉に驚愕に包まれる。
「ええ。私も悪魔とグリゴリ、ならびに人間側に和平を持ちかける予定でした。このままではどの道、我らの神話体系が崩れる可能性があります。――戦争の大本である神と魔王は消滅したのでしゅから」
ミカエルちゃん、締まらないよ……。
「ハッ、堅物ミカたんか言うようになったな。あれほど神、神、神様だったのにな」
「喪ったものは大きいですが、無い物ねだりはできませんからね。神のご意志を引き継ぎ、人々を見守る、という大義名分もありますし」
「おいおい、いまのは『堕ちる』ぜ? ――と思ったが、お前らが『システム』運用してるんだったな。いい世界になったもんだ――俺らが堕ちた頃とはまるで違う」
サーゼクスさまも同意見を口に出す。
「我らも同じだ。魔王が居ない今、戦争を起こす理由はない。それに今度戦争をしたら今度こそ三竦みは共倒れになる。そして、人間界にも大きな影響を及ぼす」
それに続くように龍咲さんが口を開く。
「そうすれば人間界は崩壊し、世界は滅亡する」
その言葉を聞いたアザゼル先生は満足げに頷くと、腕を広げる。
「神が居ない世界は間違いだと思うか? 神が居なければ衰退すると思うか? 神が居なければ人間は成長しないと思うか? 残念ながらそうじゃなかった。俺もお前らもこうして元気に生きている」
そしてアザゼル先生は高々と叫んだ。
「――神がいなくても、世界は回るのさ!」