二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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嵐の前の

「……あのなぁ翠」

『なんだい?』

「『恋を科学や魔術で証明して見せる』って飛び出して早500年。……なんでお前が恋に落ちてるんだよ」

『それほどでもない』

「誉めてねーよ! というか変に謙虚だな!」

『あぁ、あの子を是非解剖して内蔵の一つ一つまで知り尽くしたい』

「もはや狂気の域だなおい」

『やだなぁ、褒めないでよ。誉めても僕からはなにも出せないよ? 精々師団殲滅級魔術がポンと照れ隠しでとんでくるくらいだから』

「お前は照れ隠しで師団級を滅ぼすのかよ」

『やだなぁ、褒めないでよ』

「褒めてねーよ。で、誰なんだ?」

『ああ、僕が恋した相手かい? 名前はまだ知らないよ。でも……ヴリトラの神器を宿していたよ』

神器(セイクリッド・ギア)か、懐かしい響きだ」

『『終末を回避するために人に無限の可能性を孕む矛を与えた。終末に備えるために怪物に多岐の力を与えた』……笑っちゃうよね』

「……まぁ、俺達は今は人形じゃない。ならそれでいいじゃねーか」

『まぁね。じゃあ僕は、僕らにも効く媚薬研究に戻るよ』

「なんてもんを作ってんだテメェ!」

『だって、大抵の薬品って僕らには効かないし。需要あるよ?』

「はぁ……」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

「……ふぅ、これで一先ず大丈夫だな」

会議室には安堵の溜め息が多数漏れる。

ついに今、三大勢力の和平の調印がなされたのだ。

「……さて、じゃあ今から意見タイムといこうか」

アザゼル先生の提案に皆が同意する。俺は挙手をする。

「んじゃ、赤龍帝」

「はい。ミカエルさん、よろしいですか?」

「はい、いいですよ」

俺の言葉ににっこりと笑みを浮かべて答えるミカエルちゃん。

「では……私からの意見をのべさせていただきます。その前に確認ですが、現在は『熾天使(セラフ)』が『神の奇跡』であるシステムを運用しているということですが、ある程度の設定の変更はできますか?」

「はい、大丈夫ですが……」

「では、私からの意見……というよりはお願いになりますが、リアス・グレモリーの眷属『アーシア・アルジェント』ならび『ゼノヴィア』の『悪魔が神へ祈るときのダメージ』を軽減、もしくはなくすことができないでしょうか?」

驚くシスターズをよそにミカエルちゃんが思考顔になる。

「……一応、聞いておきますが。何のためにですか?」

「信仰深い彼女達は時折、自分が悪魔であるということを忘れ、神に祈ることがしばしばあります。神に祈っているのに『システム』に阻まれていては、とてもかわいそうですから」

「……なるほど。今代の赤は優しいのですね。分かりました。二人くらいなら運用に左右はしないでしょう」

そう言うと、またにっこりと笑みを浮かべた。

よし。

「ありがとう、ございます」

そう言って俺は席につく。

「……イッセーさん、ありがとうございます」

「イッセー、ありがとう」

席につくと二人にお礼を言われた。

ヴァーリが『あ、こいつら堕ちたな』とても言いそうな顔でこちらを見ていた。

夕麻ちゃんは……あれ? 居ない……?

キョロキョロと見回すと……いた。

「では私が質問します」

「はい、どうぞ」

「なんで私がミカエルさまをお膝だっこしなければならないんですか?」

「それは貴方が私の姉の娘だからなのです」

――ミカエルちゃんにおひざだっこさせられている夕麻ちゃん。

「んー、いいにおいです」

「お言葉ですがミカエルさま。ここは会談の場であると言うことを理解しておられるのですか?」

「うにゅ? わかってるよー」

「……もういや」

涙目になる夕麻ちゃん。……ん?

ミカエルちゃんの姉? そんなのいたのか?

「……さて、じゃあ今度は偉大なるドラゴン様に聞いてみるか。和平についてどう思う?」

突然そう聞いてきたアザゼル先生。ヴァーリが俺より先に口を開く。

「賛成。三大勢力が戦い始めたらイッセーくんといちゃいちゃ出来なくなるもん」

そ、そんな理由で……いや、そんな理由なんだろうな。

「なるほど。で、赤龍帝……兵藤一誠は?」

俺はもちろん……

「俺も無論賛成だ。仲間を護れない」

バカだったあの頃とは違うんだ。

「なるほど。白は赤を、赤は仲間を。今代の二天龍は異色だな」

その言葉に一同がうんうんと頷く。

「では私から質問しても?」

「なんだサーゼクス」

「アザゼル、君は何故神器所有者を集めていた?」

「備えているのさ」

禍の団――オーフィスを筆頭とするテロ組織にだったな。

「備えている……そういうことか」

「そういうことさ」

アザゼル先生の言葉に納得するサーゼクスさま。

「……『禍の団(カオス・ブリゲード)』。ついに来ますか」

「ああ、来るさ、こういう会談の場には特に――」

アザゼル先生がミカエルちゃんにそういいかけたとき――

 

時が、止まった。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

「本当にやるのか?」

「やるさ、顔見せってやつは必要だろぉ?」

「しかしだな」

「しかしも案山子もネェんだよ。白は赤に首ったけ、これじゃあつまらん。ああそうさ、大いにつまらん!」

「……」

「待ってなよぉ、二天龍! この俺が、お前ら、を……ゲホッ、ゲホッ!」

「!? 大丈夫か!?」

「アァ……すまねぇ。後で薬を飲む」

「……気にすることはない」

「……あぁ、俺の命もあと数年、か。感慨深いねぇ」

「戦闘を重ねれば、お前の命はどんどん削れていくのだぞ?」

「自分のこたぁ自分で理解してるつもりさ。どうせ毎日激しい戦闘を重ねれば最悪、あと二年ほどの命。だいたいわかる」

「……お前は、戦いで死ぬつもりか?」

「死ぬ? おいおい、俺を殺すのはこの持病だけで十分だぜ、アーサーよぅ」

「……」

 

「ひひっ、赤と白か。いいねいいねぇ! 俺の『黒』も混ぜてくれよ!」

 

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