二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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最後の一人

「……さて。一人遅れているが……」

そうサイラオーグさんが呟く。

若手悪魔は全部で七組らしい。

サイラオーグさん、リアスと会長、アガレスのお姉さんとヤンキー悪魔、クソ悪魔のディオドラとあと一人だ。そのあと一人は俺も知らない。

扉が開かれ、そこから現れたのは――

「失礼、遅れたわ」

凛とした声の女性だった。スレンダーな体型に巫女服を着て、大幣(おおぬさ)を持ち、黒塗りの鞘の太刀を差している。艶やかな黒髪はキューティクルで光がほんのり反射するほどだ。その髪を赤いリボンで結んでいる。全体的に控え目ともとれる姿で、たおやかな印象を持たせた。その背後には緑髪のメイド少女が付き人としているようだ。

「遅いぞ」

サイラオーグさんがそう呟く。他のメンバーは既に自己紹介を終えている。

「すみません、ちょーっと魔獣に絡まれていたので。処理に少々手間取っただけよ。では改めて自己紹介。私、万 七海(よろず ななみ)。フリーの転生上級悪魔にして七代目日巫女(ヒミコ)です。よしなに」

日本最古の巫女、ヒミコ。とんでもない大物だった……。

 

―・д・―

 

話によると、二代目以降の卑弥呼というのは血筋ではなく、その手の能力が高い全国の少女から一名を選び、政府の依頼する日本の怪異を相手取る政府直属の裏の解決屋だったという。それの役職の名前が、「日巫女」。アマテラスを含む様々な神を宿らせたり、声を聞いたりできるらしい。

日本神話の神々は一部を除き総じて高天ヶ原に閉じ籠っているらしい。それらは分霊という神の代理となる神器(じんぎ)や神霊を置いたり、巫女やかんなぎが神降ろしをすることにより奇跡を起こすのだとか。

日本人で宗教を信じるものは少ない。故か日本の統治等にはもはや興味の欠片もなく、たまたま巣食おうとしていた悪魔……というか聖書の勢力に丸投げしたらしい。ただし争うなという停戦協定と、悪魔に一部特例を除き神社の管理をさせるなということだ。これはリアス談。だから悪魔が土地がどうのってやってるのか。

じーっ、と擬音がつきそうなくらい俺を見つめるよろずさん。

「ふーん、あんたが赤龍帝ね。面白い色をしてるわね」

「色ですか?」

「気質よ。オーラ、であってるかしら? 赤と紅と太陽の橙。メインの色は橙かしら? 兎に角三色もあるやつなんて中々いないわ。せいぜい多くて二色程度だもの」

「そう、なんですか」

うーむ。そういう話はよくわからんなー。たぶん、メインの色が橙なのはガウェインに肉体を六割貸してるからだろ。

ディオドラ? 終始ニコニコしながらアーシアに悟られないようにチラ見してるぞ。マジウゼェ。

「なんか、変な色ね……バアルは……これは闘気ね。アガレスとグラシャラボラスとグレモリーとシトリーは予想通りね……ただ、アスタロトのオーラ……気持ち悪いわ……」

ぶつぶつとよろずさんは独り言を言っているがよく聞き取れない。

使用人が唐突に部屋に入ってくる。

「皆様、大変長らくお待たせいたしました。皆様がお待ちでございます」

行事が始まった。

 

―###―

 

「よく集まってくれた――」

ここら辺の文句はつまらないのでよろずさんの眷属を見ておく。元人間――というよりは日本人が多いな。もちろん、人間以外もいる。

「君たち七名は実力、家柄ともに申し分ない。特に転生悪魔でありながらも上級まで上り詰めた万七海は見事と言えるだろう。だからこそ、デビュー前にお互い競い会い、互いを高めてもらってほしい」

一番上段にいるサーゼクスさまがそう言う。

禍の団のゴタゴタもあるしな。リアスのように地上の管理をしている悪魔もいる以上、最低限自衛できる実力を着けさせるためだろう。

「……」

サイラオーグさんは微妙な表情をしている。正義感の強い人だが、聡い人でもある。きちんとサーゼクスさまの意図を読み取り、それでも自分は禍の団を……。

それから、お偉方の長々とした話が続いた。やれ悪魔の歴史がどうの血筋がどうのという話や、魔王様たちの今後のゲームについてなど様々だ。

「さて、長い話に付き合わせてしまって申し訳なかった。私は未来の宝である君達の夢や希望を尊重したいのだよ」

うんうん、さすがサーゼクスさまだ、いいこと言うなぁ。

「では最後に、君達の目標を聞かせてくれ」

サーゼクスさまの問いに答えたのはサイラオーグさん。

「俺は魔王になるのが夢です」

ほんと真っ直ぐだよなぁこの人。お偉方も感嘆してほぅとかいってるよ。

「大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」

「冥界の民が俺が魔王になるしかないと感じれば、そうなるでしょう」

次は……リアスだ。目標は変わらずレーティングゲームでの各大会の優勝だ。

アガレスのお姉さんとヤンキーも目標を語る。

そして、ソーナ会長……の前によろずさんだ。

「私は日本の神々がまだまだ現役である事を知らしめる」

よろずさんの言葉にざわざわとお偉方が騒ぐのをよそに彼女は続ける。

「私は転生悪魔だけど、以前に巫女。神々の代弁者よ。――倭の神々をこれ以上舐めてもらっては困るわ」

「それは悪魔に対する宣戦布告かね?」

初老の男性の姿をした悪魔がそう問う。

「違うわ。あくまで私は悪魔。だから倭の神々が失墜なんてしてないと、レーティングゲームや魔獣討伐なんかで見せつけるという意味で言ってるわ。そうね、悪魔が聖なる気を魔力で押し退けてでも参拝したくなる位には有名にしたいわ。私からは以上」

その言葉に押し黙るお偉方。サーゼクスさまは微妙な表情で苦笑いしていた。

最後はソーナ会長か。

「私の夢はレーティングゲームの学校を作ることです」

「ふむ、レーティングゲームの学舎は既にあるが?」

「それは生まれながらの上級悪魔向けです。私は下級悪魔や転生悪魔向けのレーティングゲームの学校を作りたいです」

その言葉にしん、と黙る。

誰かが笑おうとしたとき、パチパチと拍手したものがいた。――サーゼクスさまだ。

「素晴らしい。私が考えもしなかった事だ。下級悪魔や転生悪魔向けのレーティングゲームの学校、できればなおレーティングゲームの質が上がり楽しくなるだろう。そうすれば他の上級悪魔達は下級悪魔や転生悪魔なんかに負けられないとより精を出す。素晴らしい考えだよソーナ・シトリー。私も微力ながらそれに貢献しよう」

その言葉に反論の余地はない。サーゼクスさまの言うことはもっともだし、俺も的を射ていると思う。下級悪魔や転生悪魔に学ばせるものはない、という反論などすぐに潰されるのは明らかだ。

それに、仕事の多いお偉方の悪魔達は息抜きや娯楽としてレーティングゲーム鑑賞を楽しむものも多い。

反対する要素など、ないのだ。だからお偉方の悪魔たちは押し黙っていた。

「ありがとう、ございます!」

こうして、ソーナ会長が笑い者にされることなく行事は幕を閉じた。

数日後にパーティーが開かれ、その時に若手の対戦カードが発表されるらしい。うーん、楽しみだ。




用語解説

・日巫女
代々日本の怪異を解決する巫女のこと。処女であることが絶対条件。
その他にも結婚したり悪魔になったり死んだりすると代替わりするため、現在は100代目。

・万 七海
刀を下げた巫女服の少女。上級悪魔になってからは日が浅いため若手と言われてはいるものの年齢はとうに100を越えているとか。
かつてはとある悪魔の転生悪魔であったが、主が病で死に、たまたま引き取り先もなかったため独学で上級悪魔になった。
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