二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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最後の悪あがき

――来た。

兵藤君の行動不能――今しかない。

『匙と翼紗。兵藤君を潰すわよ』

『『了解です!』』

ここで小猫さんとギャスパーくんが退いてくれたのは有り難い――でも妙ね。兵藤君をおいておくなんてリアスがするだろうか?

……罠、かしら。

『巴柄と椿姫は本陣の警戒を怠らないように』

『『了解』』

私の手持ちは――匙、翼紗、椿姫、巴柄、留流子の五名。

あちらは――ゼノヴィアさん、木場くん、小猫さん、ギャスパーくん、兵藤君、朱乃さん、アーシアさん――つまりフルメンバー。

恐らくアーシアさんとリアスは動かない。兵藤君を封じて動けないとすると――木場くんとゼノヴィアさん、朱乃さんが動く……いえ、おそらくはどちらかを動かす。なら――

『留流子。貴方も本陣を守って』

『……了解』

――まずは兵藤君を潰す。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

『Welsh Dragon Soul Fusion!!』

『30min 88%』

よし……時間も増えてるな。まぁ、おっさんとおいかけっこしただけはある。

サポート頼むぞ、ガウェイン。

《了解》

まずは俺達を縛っている水を吹き飛ばす。

んー、軽く力むか。

「『ふんっ!』」

びしゃ、という音と共に水が飛び散るが……また俺達にまとわりつこうとする。

なら、こうだな。

俺達は魔力を肺に溜め込むと、ふぅっ、と軽く吐く。

じゅわぁぁ、という音と共に水が蒸発していく。……よし。

『26min』

おとと、時間を掛けすぎ――っ!

「『そこか!』」

後ろを向くと、攻撃体制の二人がいた。

「っ、バレたぞ!」

「はい!」

由良さんと……匙か。……ん? 魔力の波動が……成る程、プロモーションしたか。

……最悪の場合だが、会長がここに来る可能性もあるよな、なら!

「『まずはお前だ!』」

背中の魔力噴射口から火を吹かせて由良さんへ突撃。速度に対応できていないそのまま――殴り抜く!

「ぉ――」

腹へ一撃を入れたら、そのまま旋回して脳天へ踵落とし。

「ごっ!?」

コンクリートへ頭を強く叩きつけられた由良さんはそのまま気絶、リタイアの光へ包まれるだろう。

「『次はお前だ!』」

「!! こいっ、兵藤!」

そういうと、匙は俺に向けてラインを何本も放ってくる!

「『こんなものぉ! アスカロン、ガラティーン!』」

『Twin Blade!!』

両籠手のガトリングの砲口と杭の位置が肘の近くに移動し、手の甲のあたりの宝玉が顔を覗かせる。

そして、しゃこん、と二つの刃が現れる。

高熱で白くなってしまったかのような白い刃、龍の血で染まったかのような赤い刃。

それらは匙のラインをざくざくと切り裂いていくが――

「っし、捉えた!」

「『……っ!』」

よりにもよって腕か、だが――

「『こんなんで俺たちを止められるとでも――』」

「食らえよっ!」

匙の魔力撃――くそ、いてぇ!

やっばり、『こもった』一撃は効くなぁ。

だが――

「『こちらも負けてられん!』」

ぶしゅ、と繋がれたラインを切れば――やはり俺の血が出てくる。

「『無駄に血を失う訳にはいかんな』」

「まだまだ!」

どしゅどしゅと細い、棘のような魔力が俺を貫く。面でダメなら点で、ってか。

くっ……。

魔力に気をとられればラインを、ラインに気をとられれば魔力を食らってしまう。

なら俺達のやることは――まっすぐいってぶっ飛ばす。

それだけだ!

……さぁ、俺達の一撃を受けてもらうぜ?

俺達は剣をすべてしまう。そして――右腕に魔力を集中させる。ありったけだ!

「『ぉおおおおおっ!!』」

予備動作で動けない俺達へ向けて魔力がいくつも飛んでくる。

だが――これが、どうした?

傷ならあとで治せばいい。ただ――殴り抜く!

「兵藤ぉおおおおおお!!!!」

「『匙ぃぃいいいいいい!!!』」

匙が自らの右腕へラインを過剰に巻き付け、さらに魔力も集中していく。

そして――俺達の右腕は魔力でおおわれていた。

匙は黒の、俺は赤の魔力で。

――これで決めるしかない。

短期決戦。

俺達は同時に動きだし、刹那――

互いの拳がぶつかり合う。

出力ならばこちらが上。だが――

「ぉぉぉがぁぁぁあああああああああ!!」

絶叫に近い――もはや獣の咆哮にも聞こえる声を出しながら前へと拳をつき出す匙。

――つよい。

ああ、強ぇよお前は。曹操やヴァーリとも違う。幾多の経験をした今だからこそわかる。

曹操やヴァーリにはなく、こいつやサイラオーグさんにはあったもの。それは――『夢』。

ヴァーリの目標はどこか漠然としていて、曹操は――今考えれば力をもった子供の駄々のようにも思えた。

「『ぐっ……』」

想いは力となり、ヴリトラが匙に手を貸しているのがわかる。

でも、だからこそ。

「『こっちも……負けるわけには行かないんだよぉおおおおおお!!!』」

ごしゃり、と嫌な音がする。

互いの拳が頬に突き刺さる。

まだ足りぬと左でもう一撃。

避けることもなく、受け流す事もなく、ただひたすら、打つ。

打つ。打つ。打――

互いの死力を尽くす。

「――――――――――――――――――ッッッ!!!」

声にならない叫び。痛み、想い。

――やっぱすげぇよ、匙。

熱く燃え上がる闘志のとなりに、静かな感謝が芽生えた。

『10min』

どうする? 匙はこんな“やわ”な拳では倒れねぇ。文字通り命を懸けてる。

俺達だって――命を懸けてやる。

「『――――ぉおおおおっ!!!』」

残った味噌っかすの魔力をかき集める。

『89%』

すぅ、と呼吸を整える。イメージは螺旋。

『93%』

拳を構え、無心で、ただ、一撃。

『97%』

想いを込めて――――捩り込めッッッ!!!

 

これが、『洋服破壊(ドレスブレイク)』を攻撃用に高めに高めた一撃。

名付けて――

 

「『螺旋の一撃(スパイラルブレイク)ぅぅぅぅぅぅ――!!』」

 

おれの拳は寸分違わず匙の胸へ吸い込まれるように動く。

 

そして――

 

「ぐはっ」

 

『Absorb……』

 

また勝たせて貰ったぜ、匙――こればっかりは敗けられねぇ。

そうだろ?

『ああ』

俺があの時死んだあの瞬間から、“リアス・グレモリーの兵士”兵藤一誠に――敗北など、許されはしない。俺の、ちっぽけなプライドと、優柔不断な俺自身に賭けて。

 

『ソーナ・シトリー様の『兵士(ポーン)』、リタイアです』

 

「――『反転(リバース)』っ!」

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