選択肢に抗えない   作:さいしん

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バレてなかった、というお話。




第101話 シャルルくんの受難?-旋焚玖-

 

 

「そ、そうなんだ、うん。僕は信じるよ、あはは…」

 

 シャルル君、渾身の苦笑いである。

 感情込めて言った結果がこれだよ。

 コイツいつも苦笑いさせられてんな(反省)

 

 自分を女神だと思い込んでいる選択肢は放っておいて。違う話しようぜ違う話。結局まだ俺はシャルルの事もそんなに聞けてないし。聞いたのはパパさんがシャチョさんで、ISの適性が【A】って事くらいか?

 

 

【この際もう黛方式で聞いていく】

【その前に俺の武勇伝から語っていく】

 

 

 黛方式って何ですか?

 黛、黛……あ、あれか、黛先輩の事か!(※ 第69話参照)

 

 そうだな、自分でアレコレ考えて聞くよりも、そっちの方が楽かもしれんね。よし、【上】でいこう! というか【下】がキモい時点で【上】なんだ!

 

「じゃあまず、年齢を教えてくれるかな?」

 

「へ? え、あ、うん…? えっと、15歳だよ?」(な、なに? 何でいきなりインタビューみたいになってるの?)

 

「え、身長・体重はどれくらいあるの?」

 

「え? え、えっと、身長は154センチで体重は……」

 

 体重は?

 

「ひ、秘密だよっ!」(プイッ)

 

 女子か!

 何だその感じ!?

 

「今なんかやってんの? すごいガッチリしてるよね」

 

 一見、細身で華奢なボーイに見えるシャルルだが、実習中にそれは間違いだと分かった。しっかりと鍛えられた体つきしてるぜ、コイツ。

 

「そ、そうかな? でも旋焚玖には遠く及ばないよ。僕も一応トレーニングはフランスでやってたけど」

 

 フッ……まぁな!(ご満悦)

 っとと、今は俺の話はいいから次いこうぜ次。

 

「ふーん……週どれくらいやってたの?」

 

「シュー……7日から8日ぐらいかな」(遠い目)

 

 フランスの1週間は日本より長いのか(唖然)

 しかし流石はフランス一の企業を名乗るだけある。心なしかシャルルの瞳から色が失われているところを見ると、かなりスパルタンXだったんだろう。

 

 シャルルの上手い操縦っぷりも、確かな地盤作りを経たからこそってな訳か。俺もシャルルを見習って、ちゃんと【たけし】と鍛錬しないとダメだな。適性でいちいちプリプリしてたらイカンよ。

 

「彼女とか、いらっしゃらないんですか?」

 

 この質問だけはまだ何となく覚えてるわ。

 アホな【選択肢】にあ゛ぁ゛った気がするもん。

 

「えー? やだなぁ、いる訳ないよぉ」

 

 いる訳ないのか。

 

「だって僕、お……ッ…!!?」(ぉぉぉおおおお!? あっっっ……ぶなぁぁぁ…! 気付くのがあとちょっと遅かったら普通に『僕女の子だもん』って言っちゃってたよ! も、もしかして誘導尋問されてたり、する…?)

 

 お?

 何故そこで止まる。

 止まられると俺も脳内推理しちゃう訳で。

 

『彼女いんの?』→『いないよ』→『なんでぇ?』→『だって僕、お…』に続くと思われる言葉は…? 今日一日、共に過ごしたシャルルの動向を顧みて――。

 

 

『わあっ!?』(お着替え1回目)

 

『……うわぁ…旋焚玖って凄い身体してるんだね』

 

『うわぁ……うわぁ……』

 

『わあっ!?』(お着替え2回目)

 

 

 結論:『だって僕、男の子の方が好きだもん』

 

 顧みた結果がこれだよ!

 まるで穴の無い推理が出来てしまったじゃないか! 

 

(ま、まずい…! 旋焚玖が明らかに疑惑の目になってるぅ! は、早く何か言わなきゃ…! お、お……えっとえっと…お、でしょ、お…!)

 

「お、オペラ座の怪人!」

 

 何言ってだコイツ(ン抜き言葉)

 

(うわああああ! 全然意味わかんないよぉ! 何言ってるの僕!? バカじゃないの僕ぅ!!)

 

「……そうだな、オペラ座の怪人だ」

 

 シャルルがそう言うならそうなんだろう。

 俺は何も言わないさ。

 

シャルルを見る少年の瞳はとても温かかった。

 

「ど、どうしてそんな温かい笑みを浮かべてるのかな?」(分かりにくい反応やめてよぉ! バレてるの!? バレてないの!? どっちなんだよもぉぉぉぉ! でも聞けないよぉ! 聞いた時点でアウトだよぉ!)

 

 

【恋愛は自由さ。俺は否定しないよ(にっこり)】

【お前ホモなんだろ?(にっこり)】

 

 

 こ、コイツ…!

 とうとう核心を突いてきやがった…! 

 

 こんなモンお前二択に見せかけたホモ一択じゃねぇか! 【上】も【下】も言い方が違うだけで内容はホモだろぉ! やんわり言うかハッキリ聞くかの差じゃないか!

 

 くっそぅ。

 正直、シャルルが着替えでアタフタした時点で、いずれはこういう系の【選択肢】が出される予感はしていたよ、ああ。

 

 しかし、しかしな…!

 内容が内容なだけに、せめてもっと仲良くなってから、俺は出してほしかったんだ。出会って一日足らずの内に、ホモにホモを追及しなきゃいけない俺の気持ち、考えた事あるか?

 

「……恋愛は自由さ。俺は否定しないよ」(にっこり)

 

シャルルを見る少年の瞳はとても優しかった。

 

「ど、どうしてそんな優しい笑みを浮かべてるのかな?……ん? 恋愛…?」(何でいきなり恋愛話? 旋焚玖の話は脈絡無しで急に飛ぶから、聞いてるこっちも……ん、待てよ…? 恋愛は自由? 俺は否定しない?)

 

 

その時シャルルに電流走る――ッ!!

 

 

(あっ……アッー! も、もしかして僕は根本的な部分を間違ってたんじゃ…! 旋焚玖は僕を女の子だと疑ってはなかった…? だって、そうでなきゃ男の子の振りしてる僕に『恋愛は自由だよぉ』なんて言わない筈だよ…! ママみたいな慈愛の目で僕に微笑みかけないよ! いや、待って。という事は何? 僕は今違う意味で誤解されてる…? いやいや、落ち着いて整理するんだ僕。そうだ、今日一日で僕が旋焚玖に見せた行動を男子として顧みて――)

 

 

『わあっ!?』(お着替え1回目)

 

『……うわぁ…旋焚玖って凄い身体してるんだね』(恍惚?)

 

『うわぁ……うわぁ……』(恍惚)

 

『わあっ!?』(お着替え2回目)

 

 

(アッー! 完全にホモなリアクションだこれぇぇぇッ! 僕のバカバカ! 今の僕は女の子であって女の子じゃないのに! 男子がこんな反応したら、旋焚玖だって僕をソッチ系だと勘違いしてもおかしくないよぉ! あっ、でも、女の子って旋焚玖にバレてない事が分かったのは朗報だよね!……その反面、ホモだと思われちゃってるんだけどね。ホモだと思われる女の子とか世界でも僕くらいじゃないかな、あはは…。あれ、ちょっと待って? まだ何か見落としてない…?)

 

 

その時シャルルの脳裏に旋焚玖な回想が――ッ!!

 

 

『パンツくれ』

 

『お手手つないで行こうぜ!』

 

『俺の着替えを見てくれ』

 

『なら、そこで俺たちは着替えさせてもらう』

 

 

(旋焚玖もホモだこれー!? だからそんな優しい笑みで僕に理解を示す言葉を投げかけたんだね! 僕をホモダチだと思ってのソレだったんだね! ああ、だめだ、一度思ったら旋焚玖がホモにしか思えない! そうだよ、僕の着替えをチラ見して、お姫様抱っこもして、僕の着替えを二度見もしたんだ! これはもうホモに間違いないよ! というか行動的に旋焚玖は僕に惚れちゃってるんじゃないの!? 男装して男の子に惚れられるとかこれもう分かんないよ!)

 

 

旋焚玖はシャルルをホモだと思った。

シャルルは旋焚玖をホモだと思った。

 

とうとう絡まり始めた勘違いの螺旋。

旋焚玖にとっての不運は、此処に察しの良い一夏が居なかった事。逆にシャルルにとっての幸運は、此処に察しの良い一夏が居なかった事か。

 

(落ち着こう。旋焚玖の好意は後で考えるとして。とりあえず、ホモの旋焚玖が僕もホモだと勘違いしている事は分かった。ここからが問題だよ。僕はどういう言葉を返すのがベストなのか。ここで変に否定したら、それを機に僕が女の子だってバレちゃう可能性もあるよね? それを悟らせない為には……)

 

「……ありがとう(にっこり)」(否定はせず、明確に肯定もしない! この返答が多分ベスト…!)

 

 あらやだ、ヒマワリのような笑顔ですね。

 しかし、笑顔か……。

 

 怒って否定するか、苦笑いで誤魔化すかと思ったが。狼狽えず『ありがとう』とまで言えるって事は、自分がホモである事に何の引け目も感じてないって事だ。

 

 まぁ俺も【選択肢】に言わされた口ではあるが、『恋愛自由』肯定派だからな。性別の壁なんざ不要だ! たまたま俺や一夏、弾はノンケだったってだけなのさ。

 

「それじゃあ、僕はそろそろ学生寮に帰るね」(ボロが出ないウチに別れた方がいいよね。でも……誤解されてるから声には出せないけど、僕も恋愛に偏見は持ってないよ。だから旋焚玖がホモでも、僕は君を否定なんてしないから!)

 

少年を見る少女の瞳は何だか生温かった。

 

「ああ、また明日な」

 

「うん! 今日は案内してくれてありがと!」

 

 ルンルンなスキップで帰って行きおったわ。

 しかし、やっとアイツのまともな笑顔が見れた気がする。

 

 ここまで断トツでアイツを苦笑いさせてきた俺だもんな。悲しいかな、アホの自称女神(笑)が憑いてる限り、きっとこれからもシャルルには色々と迷惑を掛ける事になるだろう。そんな予感が今からビンビンだ。

 

 ならその分も含めて、せめてシャルルのフォローをしてやらんと。それが唯一の免罪だろうし、明日からは褌を締め直して臨むぜ!

 

 

【さっそく売店でフンドシ買ってガッチリ締めるんだぜ!】

【売店で買うのは恥ずかしいから千冬さんに頼むんだぜ!】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 





シャル:二人目の男子がホモでした!

アルベール:ああ^~

ロゼンタ:あら^~

シャル:(゚▽゚*)


シャル:あと僕もホモだと思われたんですけど

アルベール:うっそだろお前ww

ロゼンタ:テラワロスww

シャル:(´・ω・`)


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