選択肢に抗えない   作:さいしん

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幕開け、というお話。



第110話 先手

 

 

 目は口ほどに物を言うとはよく言ったモンで。

 無言な筈の一夏とシャルロットから、すんごい期待な感情を感じるぜ。そんなに見られても、無い袖は振れないんだよなぁ。

 

 だが、これは俺の落ち度とも言える。悲しいかな。

 正直、さっきの【選択肢】を選んだ時点で、こうなる事は予見できた筈なのだ。真に冷静な男なら、あの静止した時間を利用して、2人の求めるナイスな対策案を考えていただろう。それをせず【2人を安心させる】にウェーイと飛びこんでしまった。

 

 ううむ。

 一夏とシャルロットのメンタルケアに意識を傾かせ過ぎたが故の失敗だな。フッ……俺もまだまだ未熟って事か(割とキメ顔)

 

 

(ねぇねぇ一夏。さっきから旋焚玖、黙っちゃってるよ…?)

(ん? 大丈夫だろ、『フッ…』とか言ってるし。何かカッコいい顔もしてるし)

 

 

 ヒソヒソ話が聞こえるよぅ。

 ところどころ聴こえてくるよぅ。

 

 それがまたプレッシャーになってんだよこのヤロウ…! 急かされたらダメなタイプなんだよ俺は!

 

 

【小細工不要。俺が直接ナシつけてきてやる】

【遠からず近からずな話題で時間を稼ぐ】

 

 

 よし【下】だな!(所要時間0.0072秒)

 

「フッ……まぁ待て。それを話す前に、シャルロットの呼び方を決めておこう」

 

 自信満々オーラは打ち消さずに話す。

 それがハッタリの基本である。

 

「へ? どういう事?」

 

「シャルロットの件が俺たちにバレたからと言って、別に明日明後日にデュノア社がナニかしてくる訳でもあるまい? だが、俺たちは明日からまた皆の前に出る訳だ。そこで今みたいに『シャルロット』なんて呼んだら、それこそ不思議がられるだろう?」

 

 ここで問い掛ける相手を間違えてはいけない。シャルロットに聞いてしまえば『そんな事より対策を……』と返される恐れがあるからな。俺たちより本人の方が必死になるし。

 

 なので一夏に問い掛ける風で言うのである。それも、一夏が反応しやすい、かつ返しやすい言い方を心掛けるのである。

 

「あ、そっか。確かにソレはちゃんと決めておかないといけないな。自然体を心掛けてるのに、何かの拍子で『シャルロット』って呼んじまったら、元も子もねぇや」

 

 どや?

 実にナイスな言葉が返って来ただろう? 

 

 あとはもうこの流れに俺も乗りまくるのだ。

 シャルロットにも積極的に振るのを忘れるな。

 

「そういう事だ。シャルロットもまた『シャルル』と呼ばれるのは抵抗あるだろう?」

 

「それは……うん、そうだね。『シャルル』は僕にとって偽りの名だし」

 

 『偽りの名』ってのが厨二っぽいと思いました(小並感)

 それを言ってしまうと話が脱線する予感プンプンなので言いません。話題のすり替えは既に完了してるし、脱線し過ぎてもアレだしね。

 

 

【小細工不要。俺が直接ナシつけてきてやる】

【『偽りの名』って厨二っぽいな!】

 

 

 俺には【下】しか見えない!

 

「『偽りの名』って厨二っぽいな! ちなみに『厨二』ってのはカッコいいって意味なんだぜ! だから思わず拾ったんだぜ!」

 

 付け加え(アドリブ)だオラァッ!!

 俺の発言が脱線させるのなら、そのまま元の鞘に収まらせてやるんだぜ! これで変な方向に話は膨らまないんだぜ!

 

「あ、ありがとう?」

 

 引かれちゃっても気にしないもん。だって俺ツエーし。

 

「じゃあさ、これを機にシャルロットのあだ名を考えるってのはどうだ?」

 

「いいな、一夏。それでいこう」

 

 

【金髪偽ホモ女郎】

【シャルル・デュノア】

【小細工不要。俺が直接ナシつけてきてやる】

【シャルロット・デュノア】

【シュトルテハイム・ラインバッハ3世】

 

 

 悪口と偽名と本名とイミフな名前しか無いんですが。

 【真ん中】は見えない(断固)

 

「……シュトルテハイム・ラインバッハ3世で」

 

「長いよ!? 何か前にも一度言われた気がするし」

 

 そうだっけ?

 まぁ俺は過去に拘らない男だからな。

 

「一夏は何か思いついたか?」

 

 困った時は一夏に頼るに限る。

 

「んー、そうだなぁ……あ、『シャル』ってのはどうだ?」

 

「……ふむ」

 

 ええやん。

 違和感もないし本名からも取れてる。

 

 流石は一夏、いい仕事してくれますねぇ!

 あとはシャルロット本人の判定だが。

 

「……シャル、かぁ。うん、いいね! 僕のコトはこれから『シャル』って呼んでよ!」

 

「おう! よろしくな、シャル!」

 

 俺も一夏にツヅクゾー。

 

 

【金髪偽ホモ女郎】

【シャルル・デュノア】

【小細工不要。俺が直接ナシつけてきてやる】

【シャルロット・デュノア】

【シュトルテハイム・ラインバッハ3世】

 

 

 しつこいぞコラァッ!!

 負けたんだよ、お前はなぁッ!! 一夏のハイセンスなネーミングによぉッ!! 

 

 女神らしく潔く認めろバカ! 

 というか俺が未練タラタラに思われちゃうだろぉ! それが一番嫌なんだよこのヤロウ!

 

「……シュトルテハイム・ラインバッハ3世」

 

「「………………」」

 

 や、やめてよ。

 そんな目で見ないでよ。

 

「よりも『シャル』の方がいいな、うん」

 

 フッ……自分の発言を自分でフォローするのは慣れてる筈なのに、どうしてこんなにも切ないのだろう。

 

「おっ、そうだな」

 

 短い言葉で済ませてくれる一夏の優しさに、今は感謝を。……ん? 何だシャルロットその笑顔は。どうしてそんな顔で俺を見てくる?

 

「……おっ、そうだな!」(にっこり)

 

 ブッ殺すぞ金髪偽ホモ女郎!

 

 

 

 

「シャルのあだ名も決まったし、もう明日の憂いはなくなったな!」

 

 おっ、そうだな。

 

「うんうん! 後はお待ちかねの旋焚玖が思い付いた対策案だね!」

 

 おっ、そうだな。

 

「フッ……」

 

 正直、考えている暇がなかったでござる。

 しかし、流石にもう時間稼ぎは出来ないのである。さっきの話題すり替えでも多少不自然な感じはしたのに、また違う話へ持っていこうとすれば、2人はどう思うだろうか。

 

 少なからずガッカリするだろう。

 付き合いの浅いシャルはもちろん、俺を大好きな一夏ですら厳しいだろう。

 

 くっ……何か思い付けよ俺…! 

 何のためのアドリブだ!

 

 

【小細工不要。俺が直接ナシつけてきてやる】

【電話で交渉する】

 

 

 お前には言ってないよぉ!(上は視界拒否)

 

 待てコラお前コラァッ!!

 何で俺がずっと思い付かなかったと思ってんの!? 下手に事を動かしたら、デュノア社とオラァッするのが早くなるかもしれないからだろぉ! 相手は超が付く大企業なんだぞオイ!……オイ!

 

 下手に刺激してソッコー動き出されたらどうすんの!? 

 

 逆を言えば、さっきの一夏の台詞じゃないけど、変に突っつかなければ、それなりに猶予はあるの! あったの! その間に有効的な案を考えようと思ってたの!

 

 だから俺はずっと『デュノア社に何も刺激しない』縛りで考えを巡らせてたの! だから中々思い付かなかったの! 

 

 な・の・にッ!

 このバカ! バカぁ!!

 

 わざわざ口火切ってどうする!?

 完全にもうデュノア社との無駄ァッ幕開けやんけ早すぎィ!!

 

 どうしてそんなに僕を生き急がせるのですか!? ハイスクールライフくらいゆっくりさせてよぉ!……ふえぇぇぇ…。

 

 と、嘆きつつも。……くすん。

 俺がどれだけ泣いても喚いても、どうせアホの超アホの【選択肢】が変わる事なんてないもん。……ちくせぅ。

 

 変えられないなら俺が変えるしかないんだよ。

 何を?

 気持ちをだよ! 

 

「電話で交渉する」

 

「「!?」」

 

 俺がどうして今まで生きていけたと思うのかね! こんな無茶ぶりをされて! どうやって歩んできたと思うのかね!

 

 覚悟をキメるんだよ!

 出されたら最後! 腐らず迷わず突き進んできたから、今が在るんだよコンチクショウッ!!

 

「ちょちょちょっと待ってよ! 本気で言ってるの旋焚玖!?」

 

 何がじゃい!

 

「そんな事したら、もう後戻りは出来なくなるんだよ!?」

 

 だから何じゃい!

 いまさら俺の覚悟を鈍らせんじゃないよ!

 

「俺と一夏を見損なうなよシャル。俺たちはその場しのぎで適当コイてんじゃねぇ。俺たちの言葉に嘘もねぇ。お前を守るツったら守る。なぁ、一夏よ?」

 

 意地でも一夏を巻き込んでいくスタイル。

 嫌いじゃないし好きだよ(自画自賛)

 

「おうよ! 旋焚玖と一緒なら、どんな相手でも怖くなんかないぜ!」

 

 その台詞そっくりそのまま返してやるわ。

 恥ずかしいから言わんけど。

 

「旋焚玖……一夏……!」

 

 あらやだシャルくん…じゃなかった、シャルちゃん涙目になってるぅ。しかしホモイメージがまだ抜けきれてないので、琴線には響かないんだぜ。

 

「という訳で、携帯を貸せ。父親の番号は登録されてあるんだろう?」

 

 というか、そこでプチ疑問。

 

「の前に、シャルはスパイとして此処に来てるんだよな?」

 

「う、うん」

 

「それじゃあ報告とかはどうしてんだ?」

 

「それはその、携帯で…」

 

 なるほど。

 定例報告的なヤツだな。

 

「ちなみに次の報告はいつだ?」

 

「えっと……今夜の8時だよ」

 

 ほう、それはある意味渡りに舟かもしれない。

 その時間に電話するのも一興か?

 

「はぇ~、今日なのかぁ。たまたまだけどすごい偶然だな」

 

 確かにな。

 報告なんて月1か週1くらいだろ。何となくスパイのイメージ的に。

 

「うん、そうだね……えっと…実は昨日も報告したんだけどね」

 

「へ? 昨日の今日でまたするのか?」

 

「うん……っていうか、毎日8時に電話しろって言われてるんだけどね…」

 

 いやいや。

 いやいやいやいや。

 

 24時間で報告内容なんざ、そんなに変わらんだろ。ってのは素人考えか? スパイってのは、案外それが普通だったりするのかもしれんな。

 

「毎日かぁ。シャルはどんな事を報告してるんだ?」

 

「え? えっと、学校での出来事とか、ご飯のメニューとか」

 

 お前ソレ俺が乱に送ってるメール内容とほぼ一緒じゃねぇか! 

 

「はぇ~、色んな事を報告しなくちゃいけないんだなぁ」

 

「うん、スパイだからね」

 

 俺もスパイだったのか(困惑)

 

「これまで8時以外に電話した事は?」

 

 俺も俺で聞くこと聞いておかんと。

 今の俺はマジに電話だけで片すつもりなんだぜ? いやホントに。

 

「ないよ。時間厳守って強く言われてるから…」

 

 ふむ。

 さぁ、どうするべきか。

 

 いますぐ掛けるか、8時に掛けるか。

 

 

【小細工不要。俺が直接ナシつけてきてやる】

【今すぐ掛ける】

 

 

 今でしょ!

 今しかない!

 

「なら敢えて今すぐ掛けるのがジャブになるな。ほれ、親父さんに繋げ。俺が出る」

 

「う、うん、分かったよ……えっと…………」

 

 コール状態でシャルから携帯を手渡された。

 ここまできたら、もう本当に引き返せない。

 

 今一度覚悟をキメろ。

 

 俺ならやれる。

 俺だからやれる。

 

 俺は誰だ?

 天下無双の旋焚玖さんだ。

 

 

『……時間は守れと言った筈だが?』

 

 

 あらやだ、いきなり厳格そうな渋いお声。

 これは怖い(素)

 

 ヤバいぞ、第一声が上擦る自信しかない…! 

 

 もう緞帳は上がってんだ、今更ビビッてんな…! 

 渋い声だから何だ! 

 俺の方が渋いわ!(反骨)

 

 

【挨拶代わりに履いてるパンツの色を聞く】

【まずは奇襲で相手をビビらせる(アドリブ)】

 

 

 【上】がもうまさに奇襲でビビらせてるんだよなぁ。違う意味で。

 そういうビビられ方は俺が普通に嫌だ。というかシャルも嫌だろ。

 

 実の父親が電話越しとはいえ、目の前で友達にパンツの色聞かれるとか、割と微妙な感情になるだろ。

 

「……もしもし」

 

『!……誰だ?』

 

 ヒェッ……明らかに声色が変わったよぅ…!

 でも負けぬ! 

 

 ここで引いたら事態は悪化すると思え。律儀に質問に応じる必要は無し。受けに回ったら負けと知れ。

 

「お前に今年16になる娘がいるな?」

 

 絶対に受け身にならない。

 常に先手を取る…!

 

『……それがどうした?』

 

「俺はまだ15歳だ」

 

『……?』

 

 

 我、奇襲、成功せり――ッ!!

 

 






アルベール:(´_ゝ`)?

ロゼンタ:(´_ゝ`)?

シャル:(´_ゝ`)?

一夏:(゚д゚)ナルホドナー
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