選択肢に抗えない   作:さいしん

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交流するには勝負から、というお話。



第130話 vs.ラウラ

 

 

「お待ちください教官! 先ほどの言い方ですと主車旋焚玖の方が代表候補生より……いや、私よりも実力が上だと言っているように聞こえますが!」

 

「ああ、ずいぶん上だと思う」

 

 ダニィ!?

 コイツら開幕から何イミフなやり取りしてくれてんの!? 勝手にセル編オマージュしてんじゃねぇぞ!

 

「なっ……そんなバカな…いや、しかし教官が嘘などつく筈も無し。だが……うぐぐ…」(あの変な男が私よりも強いだと…? ドイツ軍最強のIS特殊部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ』でブイブイいわせていたこの私よりも強いだと…!? 私が唯一尊敬してやまない教官のお言葉でも俄かに信じられん…!)

 

 百面相ってる、はっきり分かんだね。

 それでこの後の展開も読めちゃうんだよね(げっそり)

 

「おい貴様!」

 

 やっぱりね♂

 

「貴様も私より上だと言うつもりか!?」

 

 そんな訳ないじゃん。

 コイツの顔面偏差値と今のやり取りを聞いた感じ、おそらくボーデヴィッヒは代表候補生に違いない。普通に専用機も持ってんだろ。

 

 そんな奴に敵う訳ないだろアホか! 俺なんてどうせケツ蹴られてペチペチやられるのがオチだわ! 

 

 ここは思いきって大胆に話題を転換するべし! 

 下手に誤魔化しにかかるのは、コイツ相手には悪手とみた。コイツは初対面なのに問答無用で一夏をビンタするくらい好戦的な奴だし。

 

 

【ああ、ずいぶん上だと思う】

【試してみるか…?】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 【上】も嫌だけど【下】は論外だよぉ! 

 

 お前そんな事言ったら絶対試されちゃうって! ケツ蹴られちゃうって! 俺のケツを蹴っていいのは箒だけだ!(錯乱)

 

「ああ、ずいぶん上だと思う」(震え声)

 

「なに…!?」

 

 やべぇよやべぇよ。

 なんかもうバイオレンスな気配しかしねぇよ。俺のラブコメどこ行っちゃったの…? 

 

「やけに自信満々だが、貴様も専用機持ちなのか?」

 

 声を震わせて言ってるのに、どうして真逆に捉えるのか。コレガワカラナイ。

 しかし専用機か。たけしは俺が勝手に使い続けているだけで、別に俺だけのISって訳じゃないからなぁ。

 

 

【お前が専用機になるんだよ!】

【専用機など使うまでもないな】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

「お前が専用機になるんだよ!」(やけっぱち)

 

「まるで意味が分からんぞ貴様ァッ!!」

 

 俺だって分からんぞ貴様ァッ!!

 

「フッ……そこまでにしておけ、お前ら。ではホームルームは以上だ」(私とクラリッサ以外には目もくれないラウラをここまで熱くさせるとはな。やはりラウラが纏う壁を壊せるのは旋焚玖しかいないな可愛い)

 

 何で少し嬉しそうなんですかね(困惑)

 しかもこのボーデヴィッヒプンスカ事件の発端は、あくまで日本政府の言葉だとしても、そこへ更にガソリン投入したのは、紛れもなく千冬さんなんだよなぁ。

 

 反省してくださいよホント!

 千冬さんじゃなかったら俺もプンスカしてますよ!

 

(後でコーラ奢ってやるから許せ)

(ナチュラルに心読んでテレパシってくるのやめてくれませんかね)

 

 

 

 

 一悶着はあったが、それでも時間は過ぎるモノよ。

 

 帰りのホームルームの終わりを告げる号令も済んで、千冬さんとやーまだ先生も教室から出て行って……おぉう、おもいっきり視線を感じる。

 

 ボーデヴィッヒが睨んできてるんですね分かります(げっそり)

 

 このまま教室に留まっていれば、確実にさっきの続き、第二ラウンドが催されるだろう。ぶっちゃけ俺としては、最終的に仲良くなれたらひゃっほいなだけで今は別にいいです。というか、どう考えても今は仲良くなれんでしょ。

 

 という訳で結論。

 絡まれる前にスタコラサッサだぜ!

 

 

【そんな目で見つめるなよ♠(ヒソカ)】

【興奮しちゃうじゃないか…♥(ヒソカ)】

【ズキュ~~ン(ヒソカ)】

 

 

 ヒソカはそんなこと言うけどそこまでは言ってない。【下】は多分効果音だと思うんですけど(名指摘)

 

 しかし【上】はキモいし【中】はもっとキモいし、消去法で結局【下】なんだよなぁ。何言ってんだろ俺ホント。

 

「ズキュ~~ン」

 

「はぁ? 貴様はちょこちょこ気色悪い事を言ってくるな」

 

 はぁん!?

 

 お前言っていい事と悪い事があるだろ!

 今のはそんなにキモくないわい! 

 

 なぁ乱!

 

「乱は今「キモいよ旋ちゃん!」……超はやいよねぇ」

 

 やっぱりキモいんじゃないか(納得)

 でも【上】2つより全然マシなんだ。俺しか分かんねぇけど。

 

 まぁいいや。

 とりあえず今見るべきは、想定とは違う方向に展開が進みつつあるこの状況だ。

 

 これはこれでアリだろ。

 少なくともバイオレンスな展開よりよっぽど良い。このまま『キモい俺はクールに去るぜ』とか言って、教室からフェードアウトするのが自然である!

 

 

【ボーデヴィッヒを校舎案内する(ケンカルート)】

【乱を校舎案内する(ママああああああああ!!)】

【ボーデヴィッヒと乱を校舎案内する(自然な流れ)】

【ボーデヴィッヒと乱を誰かもう1人連れて校舎案内する(欲張りセット)】

 

 

 あ、欲張りセットで。

 

「ボーデヴィッヒと乱を校舎案内しよう」

 

「は?」

 

「それは助かるね!」

 

 連れて行くのは……放課後だし、そんなモン1人しかいないだろ。

 

「箒も付き合ってくれ」

 

「ふぉっ…!? う、うむ! 私も付き合おう!」(おいおいおいおい! 最近の旋焚玖はどうしたんだ!? アリーナの件といい、グイグイくるじゃないか! こんなのもう私に惚れ直してるだろ間違いない! むぁーちがいない!)

 

 『ふぉっ』てお前、中々愉快な驚き方してんなお前な。

 拒否されなかったし、深く考えなくていいか。乱も乗り気だしボーデヴィッヒの反応は無視しつつイクゾー。

 

「参考までにッ!!」

 

 うわビックリした!?

 真後ろの席で急に叫ぶなよ! 俺に『ぴゃっ』られた事を根に持っての犯行か!

 

「どうして数在る中から箒さんをお選びになられたのか! 後学のためにお聞かせくださいまし!」

 

 えぇ……何でそんな気合い入ってんの?(困惑)

 理論派なセシリアは論理的思考から逃れられない体質なんか? まぁでも、俺が箒を選んだのも、普通に根拠あっての事だしいいか。

 

「俺が気軽に誘える奴は元々限られている。一夏に鈴にセシリアにシャルの兄弟に、そして箒だな。んで箒以外は専用機持ってるから放課後はアリーナで鍛錬だろ。今月はトーナメント戦があるし、鍛錬の時間を割いてまで誘ったらイカンだろ」

 

「ン~~~なるほど! それは素晴らしい根拠に基づいていますわね!」(これでモヤモヤした気持ちは無くなりましたし、本日の鍛錬も集中して行えそうますわね)

 

 豪快な納得っぷりだぁ(困惑)

 まぁ確かに筋が通ってた方がスッキリするもんな。

 

「……うむ」(うむぅ……私への隠し切れんばかりの好意で誘ってくれたのではないのか。だが私に憂い無し。かつて勝手にフッておいたくせに、誘いの過程にまでケチをつけるのは恋愛道において三流もいいとこだ。まずは結果を喜ぼうじゃないか! しかし専用機持ちでなくて良かった…! 姉さんに迷惑料としてゴネようとか思ってたけど、むしろ要らんな!)

 

 おぉ、何か箒が百面相ってんの久々に見るな。でもなんかニヤニヤしてるし、怒ってはなさそうだ。そんでもって、他に誰からも異議は無さそうだし今度こそイクゾー。

 

「よし、んじゃあ行くか」

 

「うむ!」

 

「あいよ!」

 

「いやちょっと待て」

 

 チッ、割と自然な流れを作れたと思ったんだが。

 それでも抗ってくるかボーデヴィッヒ…!

 

「どうして私も行く流れになっている?」

 

「イカンのか?」

 

「行かん!」

 

「いや今のイカンは行かんじゃなくてイカンの方でだな」

 

「意味不明な事を言うな!」

 

 怒られた。

 割とキツめに怒られたでござる。

 一夏だったら(´・ω・`)するとこだぞ、と。……ん?

 

「(´・ω・`)」

 

 しょんぼりしてたでござる。

 お前俺が怒られても割と(´・ω・`)するよなお前な。そんで(´・ω・`)しながら鈴たちと出て行ったでござる。鍛錬がんばれよ~ぃ。

 

「行く行かんはこの際いいとして、少なくとも乱とボーデヴィッヒはそれなりにコミュニケーションを取っておいた方がいいんじゃないかね」

 

「む……何故だ?」

 

「ふむ……ルームシェア、か?」

 

「正解」

 

「ふっ」

 

 ドヤ顔箒も美人である。

 同じ日に転校してきた訳だし、多分部屋割りもペアになっていると思うんだがどうだろう。

 

「ふんふむ。アタシは1030号室だってさ」

 

 乱が学生寮のキーを見て確認する。

 ほんとホテルみたいなキーしてんな。

 

「む……私も同じだな」

 

 やっぱりね♂

 旋焚玖さんの推理に外れ無し!(ドヤァ)

 

「ふむ。ならばまずは、2人の部屋のセッティングをするというのはどうだ? 私と旋焚玖も手伝おう」

 

「いい案だ、それでいこう」

 

「さんせーっ!」

 

 ナイスなアシストだぜ箒。

 よし、そうと決まればさっそくイクゾー。

 

「いや、ちょっと待て」

 

 チッ、これでもダメか。

 

「どうして私も行く流れになっている?」

 

「イカンのか?」

 

「行かん!」

 

「いや今のイカンは「その流れはもういい!」……イカンジャナクテイカンノホウデダナ!」(不屈)

 

「き、貴様…! もういいと言っただろ!」

 

「早口で言ったからセーフ」

 

「なんだと…!」

 

「まぁ今のはセーフだね」

 

「うむ。確かに今のはセーフだな」

 

 やったぜ。

 

「多数決により俺の勝ちだな」

 

「ぐっ……ふ、ふん。何が勝ちだ。貴様らと一緒だとアホが移る、私は行かせてもらうぞ」

 

 割と堪えてんじゃねぇか。

 やっぱボーデヴィッヒのメンタル力は△だな。

 

「何処へ行くと言うのかね?」

 

「貴様に教える義理はない」

 

「勝手に俺達で部屋イジっちまっていいのか? お前もこれから住むトコなんだぞ」

 

「勝手にしろ。私はベッドさえあれば良い」

 

「お前のベッドにウンコするぞ」

 

「なにぃ!?」

 

 フッ……他愛もない。

 口先で俺に勝つなんざ100年早いんだよ!

 

 多少下品ではあるが、狙いはボーデヴィッヒも連れて行く事なのでセーフ。

 

「旋ちゃんアウト!」

 

「!?」

 

「女の子には下品禁止! 完全にアウトだよ!」

 

「うむ。今のは確かにアウトだな。流石にウン……ンンッ、直接的な言葉は私も擁護しかねる」

 

「!?」

 

「フッ……ふははははは! どうした主車旋焚玖! 今度は貴様の負けのようだな、多数決的にッ!」

 

 なんだコイツ!?

 何でこんな急にテンション上がってんの!? 

 

 何かさっきも何処かでこんな感じのヤツなかったか?

 

「私の勝ちは決まったし、今度こそ私は行かせてもらう。大手を振ってな!」

 

 ぐぬぬ…!

 どうして俺が負けたから去って行くみたいな感じになってるんですか! ボーデヴィッヒが背中に圧倒的勝者感を出してるのも納得いかん。

 

「まぁ待て、ボーデヴィッヒ」

 

「何だ、敗者の戯言は見苦しいぞ」

 

「イーブンだ」

 

「む…?」

 

「最初は俺の勝ちで次がお前の勝ち。ならまだ引き分けだぞ」

 

「む……むむぅ、確かに一理あるな」

 

 一理あるのか。

 理詰めで攻めれば結構納得してくれるよなコイツ。

 

「もう一回勝負しろ。それに勝てば去るがいい。負けたら大人しく俺達と交流しろ」

 

 ここで乱だけでなく、さり気に『俺達』と言い換えるところに巧みを感じますね(自画自賛)

 

「……いいだろう。貴様とは一度闘り合わねばと思っていたところだ…!」(本当に私より強いのか確かめる良い機会だ。教官のあの口ぶりからして、おそらくISだけでなく身体的にもコイツは一目置かれている筈…!)

 

 好戦的に隻眼をギラつかせたボーデヴィッヒは、懐からサバイバルナイフを取り出し――。

 

「はいアウト」

 

「超絶アウトー!」

 

「急にナニを出してるんだお前は。普通にアウトだアウト」

 

「な、なにぃ!?」(というかこの女は誰なんだ!? なんか今聞いたら負けな気がするから聞かんがな!)

 

 いや当たり前だろ。

 なに普通にナイフ出してんの? 

 

 この流れでガチな勝負に行く訳ないだろマジで。普通にビビるわ。街の不良ですら最初は素手だったぞ。

 

「圧倒的多数決により最終試合も俺の勝ちだな」

 

「ま、待て! あんな急に雰囲気を変えて『勝負しろ』なんて言われたら、誰だって手合わせ的な意味合いだと思うだろ! いや、少なくとも軍人ならそう捉える筈だ!」

 

 軍人って怖い。

 やっぱり一般人とはドコかズレてんだね。

 

「教室は学ぶトコであって暴れるトコじゃないからな。そんな事してたらお前千冬さんに怒られるぞ」

 

「むっ…! それはシャレにならんな!」

 

 一夏をドツいた時点でシャレになってねぇけどな。そういや結局その理由もまだ聞けてねぇよ。

 

 こうなったらもう絶対コイツも連れて行く。んで、色々と聞かにゃイカンでしょ! 箒とも乱とも交流できるし一石二鳥だな! 

 

「だろ? だからもう一回勝負したいなら……そうだな、もうジャンケンでいいだろ。ほれ、じゃ~んけ~ん……」

 

 有無を言わさず始めちまうのがコツである。特にジャンケンってモンは音頭を取られりゃ――。

 

「むっ…!」(考える時間はない…! とりあえずコレだ!)

 

「ほい」

 

 それ、声高に勝者の名を叫びな!

 

「旋ちゃんの勝ち~!」

 

「なっ…!? う、うぐぐ…」

 

「フッ……旋焚玖は武術やってるからな」(私も一回すらコイツには勝てんからな。詳しく言ってしまえばイカサマだと騒がれるだろうし、ここはソレだけに留めておこう)

 

 おっ、そうだな。

 パーを視てからのチョキ出し余裕でした。常人じゃジャンケンで俺には勝てんよ(ドヤァ)

 

「何が武術だ。ジャンケンに武術は関係ないだろうに」(しかしコイツが何らかの武を嗜んでいる事は今の発言で分かった。今はそれだけでも良しとしておくか。何事もまずは下調べが肝要だとクラリッサも言っていたし、コイツを打ち負かすのはコイツを理解してからの方が良さそうだ)

 

 転校初日にしてボーデヴィッヒも百面相の仲間入りか。理不尽にキレたりしないかな?

 

「負けは負けだ。ここはお前らに付いて行くとしよう」

 

 やったぜ。

 ボーデヴィッヒを誘うだけで、どうしてこんなに時間が掛かるのか分からんけど、それを気にしたらお終いなんだぜ。きっと回数を重ねれば、だんだん短くなっていくさ。

 

 という訳で。

 今度の今度こそイクゾー。

 

 






女子の部屋に入る旋ちゃんマジリア充(*´ω`*)

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