選択肢に抗えない   作:さいしん

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これでお友達、というお話。



第136話 ルームメイト

 

 

 アタシの名前は凰乱音。

 旋ちゃんが心配でこのIS学園に飛び級って来た天才少女だよっ。

 

 今日は転校初日なんだけど、一日がとっても濃い気がするのは何でだろう。きっと旋ちゃんのおかげだねっ! リア充してますよ、アタシ!

 

 初めての事だらけで、今からワクワクが止まんないよ! 寮生活だって初めてだし、初めて会った子と共同生活するのもモチ初めて。ルームメイトとはやっぱり仲良くなりたいよね!

 

 という訳で!

 旋ちゃんと箒さんと別れて部屋まで戻って来たアタシは、さっそくボーデヴィッヒさんに話し掛けるのだ!

 

「いやぁ、山田先生の知識っぷりは凄かったね!」

 

「……………ぷいっ」

 

「え、なにそれは…」

 

 えぇ~……?

 話し掛けたら『ぷいっ』てされたでござる。

 

 なんでぇ?

 

 まぁとりあえず。

 わんもあちゃれんじ!

 

「ねぇってば~。ボーデヴィッヒさーん?」

 

「つーん」(顔そむけー)

 

「えぇ……」

 

 いや、つーんて。

 そんな可愛く拒絶されても、反応に困るんだけど。

 

「ねぇねぇ、急にどうしたの? ポンポン痛いの?」

 

「痛くないわ!……ふん、いいか凰乱音。私は別に同居人だからといって、馴れ合うつもりはないのだ。故に、貴様とお話するつもりもない!」

 

 お話するって言い方が可愛いと思った(ママ並感)

 そしてツッコミポイント発見伝!

 

「旋ちゃんとはいっぱいしゃべってたじゃん!」

 

「当然だ。あの男は強いからな」

 

「どゆこと?」

 

「フッ……ならば教えてやろう。私は生まれた時から、ひたすら実力社会の中で育って来たのだ。求められるは『力』のみ。……分かるか、貴様に? 『力』こそ正義であり絶対なのだ。年功序列などというフザけた風習はそこには無く、強い者だけが上に立つ。私が生きてきたのはそんな世界だ。そして主車旋焚玖は、そんな私を唸らせる程の実力を見せた。そんな男を無下には出来ん。アイツとはおしゃべりだってするさ」

 

「アッハイ」

 

 なんかすっごい話してきた。

 お話するつもりもない!とは何だったのか。

 

「私とおしゃべりしたければ、貴様も主車旋焚玖のように『力』を示す事だな」

 

「……うーん」

 

 えぇ、何その世界観。

 仲良くなるために暴力を振るうとか、アタシには分かんない世界だなぁ。

 

「フッ……まぁ、意識が甘く危機感に疎い学生程度じゃあ、私を感心させる事など無理な話だがな」(そういう意味でも、やはり主車旋焚玖は興味深い。アイツは一体どのようなトレーニングで、あのような力を手に入れたのか)

 

「むっ…!」

 

 っとと、いけないいけない。

 売り言葉に買い言葉が許されるのは小学生までだよねー!

 

「挑発には乗らないよ。アタシはアタシで別の方法を考えて、ボーデヴィッヒさんと仲良くなるし」

 

「ふん、無駄な事を。そんなモノは存在しない。主車旋焚玖が例外中の例外だった程だからな」

 

「そんなの、やってみなきゃ分かんないもん」

 

 とはいえ暴力以外の方法はアタシ1人じゃ思い付かないし、とりあえず旋ちゃんにメールで聞いてみよっかな。……あっ!

 

 その前に、まだ開けてない段ボールが1つ残ってるんだった。まずはソレを片しちゃおう。せっかく持って来たんだもん。しっかり飾ってあげなくちゃね!

 

 トップバッターはこの子!

 キツネのごんちゃんだよ~っ!

 

 

それは乱音が鈴音と一緒に、初めてUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみだった。鈴音から『乱はあたしの妹分だから、コレはアンタにあげる』と頭を優しく撫でられた、少女にとって大切な思い出が詰まったぬいぐるみなのだ。

 

 

「ふんふんふーん…♪」

 

「……ふん」(くだらん。やはりコイツも他の連中と同じく、何の覚悟も持たずこの学園に来ているようだな。何がぬいぐるみだ、凡愚め)

 

 

家から持って来たぬいぐるみコレクションを楽しそうに飾っていく乱音。そんな少女を見るラウラの視線は、何処までも冷ややかだった。

 

そんなラウラの視線何するものぞ。

自分のテリトリーに自分の好きなモノを置いて何が悪い、な精神でトントコトントコ置いていく。

 

「よぉし、この子でラストだよ~」

 

 これにて飾りつけ完了!

 うんうん、我ながら壮観な並びっぷりが出来たよ~♪

 

「ふん……んんっ!? ん゛ん゛ん゛ん゛ぅぅぅ――ッ!?」

 

「うわビックリした!? 急にどうしたの!?」

 

「な、なんでもない」

 

 いや何でもあるでしょ。

 そうでなきゃ、あんなブロリーみたいな反応しないっしょ。

 

 そんでもって!

 ここで大事なのは原因だよね!

 実はボーデヴィッヒさんもぬいぐるみに興味があった説…?

 

 うんにゃ、それはないね。

 だってそれなら、ごんちゃんを出した時にブロリーった筈だもん(名推理)

 

 という事は…?

 気になったのは『ぬいぐるみ』じゃなくて『本体』とみた! ちなみにどれが気になってるんだろ。それが分かったら、もしかしたら仲良くなれるかもだよ~っ!

 

 ど・れ・か・な~?

 うん、直感でコレだ!

 

 むぎゅっと掴んでボーデヴィッヒさんにアピール!

 

「ネコショウグン!」

 

「ぷいっ」

 

 これじゃねぇ!(猪木)

 

 この子も可愛いのになぁ。

 でもまだまだいっぱい居るもんね!

 

「ジャックランタン!」

 

「ぷいっ」

 

「ジャックフロスト!」

 

「ぷいっ」

 

「キングフロスト!」

 

「ぷいっ」

 

「ボンチュー!」

 

「ぷ……いや待て。そのぬいぐるみだけ、他と何やら毛色が違くないか?」 

 

「転校祝いだって、旋ちゃんがさっきくれたのさ!」

 

 

モフモフの可愛いぬいぐるみ達の間に、突如現れた期待の新星ボンチューくん。

 

身長178cm!

体重73kg! 

血液型はAB型! 

年齢7歳!

 

モフモフの可愛いぬいぐるみ達の間で、明らかに場違いなボンチューぬいぐるみではあるが、そんな細かい事など乱音は気にせず、何だったらど真ん中に配置する好采配まで見せるのだった。 

 

 

 ん~……ボンチューでもないかぁ。

 じゃあ、お次はこの子だ!

 

「うさぎのウサミン!」

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!?」

 

「…………………ボンチュー!」(再確認)

 

「(´・ω●`)」

 

「ウサミン!」

 

「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!?」

 

 ウサミンだコレー!

 ボーデヴィッヒさんはウサギさんがお気に入りとみたね! アタシの名推理に間違いはないよ~っ! 

 

「ボーデヴィッヒさん、この子に興味あるの?」

 

「ないです」

 

「ないです!? 何で急に敬語になってんの!? あるんでしょ!」

 

「ないです!」

 

「いいや、あるね!」

 

「憶測でものを言うんじゃありませんよ!」

 

「せんよ!? もう動揺しまくってんじゃん! 正直に言いなよ!……言わないと……すりつぶすわよ?」(ティファ)

 

「な、なんだと!? ぐっ……き、貴様ぁ…! 私を脅して一体何が目的だ! 金か物か!?」

 

 う~ん。

 今のはアタシも悪ふざけがすぎたかな。

 というか、旋ちゃんか山田先生が居ない所でネタに走ってもあんまり意味ないね。それが分かっただけでも良しとしよう。

 

 そんでもって!

 ほい、パース!

 

 ウサミン、パース!

 

「むぉっ…!?」

 

「ナイスキャッチ! んで、それアンタにあげる。からかったお詫びだよ」

 

「な……い、いいのか? この子は貴様…いや、お前のだろう?」

 

 この子とか言い出しましたよ。

 やっぱ気に入ってんすねぇ(ご満悦)

 

 それに、一つ分かった事があるのだ。

 

 ボーデヴィッヒさんは認めた相手には『貴様』から『お前』に昇格するんだね。いや、昇格してるかどうか分かんないけど、きっとそういう感じで使い分けてるとみた。旋ちゃんに対しても、いつの間にか『お前』呼びに変わってたし、信ぴょう性は高いっしょ。……やっぱり名探偵じゃないか!(自己再認識)

 

「い・い・の!」

 

「凰乱音……お前、いい奴だな」

 

 やったね!

 みっしょんこんぷりーと!だよっ!

 

 旋ちゃんが身体能力ならアタシは懐柔力! もしくは交渉力! どっちにせよボーデヴィッヒさんを唸らせるだけの『力』を見せれたって事だよね。

 

 あとはもうドンドン突き進むしかないっしょ!

 

「そんでさ、もうフルネームはやめなぁい?」

 

 フルネームは絶妙に距離感を感じるからね。

 

「む……ならば、何て呼べばいい?」

 

「乱、でいいよ。みんなにもそう呼んでもらってるし」

 

「分かった、乱」

 

「おお、いいねいいね! ならアタシもラウラさんって呼ぶよ!」

 

「う、うむ。しかし、何やらくすぐったいモノがあるな」

 

 ふんふむ。

 ラウラさんは幼い頃から軍隊にいるっぽいし、きっとアタシ達で言うところの普通を経験してきてないんだろうなぁ。

 

 これはルームメイトのアタシが常識的な部分も含めて、色々と教えてあげなくちゃいけないよね! そういう意味では、ラウラさんと旋ちゃんって似てるかも。

 

「で、まだ夕食まで時間あるけど、どうしよっか?」

 

「ふむ……いい頃合いだし、クラリッサに電話してもいいか?」

 

「誰?」

 

「私が率いる部隊の副隊長だな。主車旋焚玖の事で少し相談が……あ、もしや主車旋焚玖もフルネームはヤメた方がいいのでは…?」

 

「そこに気付くとは…!」

 

「むふん」(ドヤァ)

 

 というか、基本的にフルネームはヤメた方が他の人とも距離感が縮まるしオススメなんだけど、それだとラウラさんのポリシーに反するっぽいし、アタシもうるさく言わない方が良いかな。せっかく上機嫌にむふんとか言ってるし。

 

「しかしどう呼べばいいものか……ふむ。ここは乱に倣って旋ちゃんと呼「は?」……む?」

 

「は?」

 

「あ……いや……えぇ…?」

 

「は? はぁ? はぁぁぁ!?」

 

「(´・ω●`)」

 

 






乱「ママのこと本気で怒らしちゃったねぇ!」

ラウラ「ライダー助けて!」

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